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スキルを駆使して人生勝ち組っ!R  作者: 此花サギリ
小学生

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第33話 勉強会

 中学受験を控えているという事で、私は仕事をセーブしてもらっている。


 今年はコンサートは行わない。けれど国際ピアノコンクールへの出場は決まっているから、完全な休業というわけではない。芸能活動と受験勉強、その両立のためにスケジュールを整えてくれている容子さんには本当に感謝している。


 今日は久しぶりの休日だった。


「燈由、今日は一緒に勉強出来るって本気まじ?」


 光が目を輝かせて問い掛けてくる。私は頷いた。


「中学受験が始まるから、仕事をセーブしてるの」


 その一言で、教室の空気が一気に華やいだ。


「じゃあ勉強会しよ!」


「私も参加したい!」


「今回は女子だけにしない?」


 次々と女の子達が手を挙げる。


「えぇ!?俺達も参加したいんだけど!」


 男子達からは不満の声。けれど光がぴしゃりと言い放った。


「女子会に男は立ち入り禁止!」


 教室に笑いが起きる。


 前世の私は、こんな中心に立つ存在ではなかった。陰キャで、人の輪の端にいるのが常だった。でも今は違う。社交は“スキル”だと理解している。場の空気を凍らせない。それが私の役目。


「今回は女子会兼勉強会だから、ごめんね」


 男子達に軽く謝ると、渋々引き下がった。


 場所は立候補が多く、最終的にくじ引きで決めることになった。結果は命ちゃんの家。


「やった!燈由ちゃんを家に呼べる!!」


 以前よりずっと明るくなった命ちゃんの笑顔に、私もつられて微笑む。


「苦手な教科、持ってきてね」


 私の勉強はイリスが見てくれているけれど、皆の勉強は私が見る。問題集はイリス作成。私は監修と調整役だ。


 放課後、私はノートパソコンを持って命ちゃんの家へ向かった。


「燈由ちゃん、いらっしゃい!!」


 命ちゃんと、そのご両親が出迎えてくれる。


「秋月燈由です。命ちゃんと仲良くさせてもらっています」


 きちんと挨拶し、手土産のお菓子を渡す。


 部屋に通されると、そこは可愛らしい“THE・女の子”な空間だった。


「高校生になったら燈由ちゃんみたいなクラシック系にするんだ!」


 隣の芝は青い、というやつだろう。私だって、将来は欧米風の部屋に模様替えしたいと思っている。


 そこへ命ちゃんの両親が再び入ってきた。手には私のCDと色紙。


「もし嫌じゃなければ、サインを……」


 命ちゃんが小声でお願いしてくる。私はウインクで了承した。


「サインで良いですか?」


 さらりと書き上げる。今日は特別サイン。一般用とは少し違う、限定版だ。


「わあ!特別だ!」


「宝物にするわ」


 大切そうに抱える姿に、胸が温かくなる。こういう瞬間は嫌いじゃない。


 やがて全員が揃い、勉強会が始まった。


 算数の図形、理科の電流、国語の記述。それぞれ苦手分野を持ち寄り、得意な子が教える形式。私は全体のレベルを見ながら小テストを作成し、ときどき解説に回る。


 真剣な顔でノートに向かう皆を見るのが好きだ。競争ではなく、向上の時間。


 一段落すると、自然と話題は変わる。


「○○くんって優しくない?」


「最近のモデル△△、可愛くない?」


 女子会らしい会話が始まる。精神年齢おばちゃんな私は聞き役に徹するが、逃げ切れなかった。


「燈由ちゃんは誰が好み?」


 少し考え、四十代のイケオジ俳優の名前を出す。


「年上で包容力ある人がいいな」


「渋い!」


 爆笑が起こる。同年代は恋愛対象外、という本音は伏せたまま、理想だけ語る。


 笑い声と真剣な勉強が混ざり合う、不思議で心地良い時間。


 夕方、解散。


 帰り道、茜色の空を見上げる。


 ランドセルの中には受験教材。スマホには通知が溜まっている。自宅ではイリスが待っている。


 芸能界も、ピアノも、受験も。


 全部、自分で選んだ道。


 前世では味わえなかった“普通の友達との時間”が、こんなにも尊い。


「帰ったら英単語テストだな」


 小さく呟き、私は歩き出す。


 天才と呼ばれても、努力は必要だ。


 女子会の笑い声を背に、私は次の戦場へ向かう。


 中学受験本番は、もうすぐそこまで来ているのだから。


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