初めての狩り
ゼインの地図によると最短距離は大きな街道を使う道だが、人と接することで正体がバレたら困るので街道から外れた山道を行こうと思う。
村では気づかなかったが、私は鼻がものすごくいいらしい。
こちらにやってくる魔物の匂いが分かり、高かった身体能力を生かして木の上などに登り、回避するのだ。
他にも食べられる木の実やきのこが分かったりもした。
その例として道中で嗅覚に関係することがあった。
その事件に関係するのはプリュアリコという魔物だ。
このプリュアリコは紫のようなピンクのような毒々しい色をしており、体に空いた穴の中に腐った豆を熟成させ匂いで身を守る魔物だ。
腐った豆、つまりそれは納豆だ。
日本の味に飢えていた私はその匂いを感じ取ると真っ先に走り出した。
しばらく走った先にいたのは、図鑑通りのプリュアリコ。
どうすべきかよく分からないが家から持ってきたナイフで目らしきところを刺してみる。
「キエエエエェェェェェ!!!」
途端、耳をつんざくような悲鳴が私の耳を貫いた。
プリュアリコが潰れながら納豆臭を撒き散らしている間、私は耳を澄ませていた。
聞こえたのは、こちらに向かってくる数えきれない量の足音。
囲まれている。
生憎ここは開けた場所で隠れられそうな場所もない。
覚悟を決めて迎え撃つしかなかった。
茂みから姿を現したのは白銀の毛皮を持った狼のような魔物。
よく見れば所々に黒い部分のあるその魔物はシャドウウルフ。
図鑑によると一年に冒険者チームが10隊以上もやられているらしい。
そんな狼の群れ、私に倒せるだろうか。
そんなことを考えている間にも、狼達は群れの輪を狭めてくる。
そしてーー
伏せた。
「…へ?」