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1話

4月。新しい場所、人との出会いがあり桜の舞う華やかな季節。と言いたいところだがここは北海道なので今の時期はまだ冬景色だ。そんな中、校舎の入口では寒〜いなんて言いながらこれからの高校生活に目を輝かせている新入生が大勢いる。その輝きはもうアラサーの俺には出せないな。そんな事を思いながら次々と校舎に入る新入生に声をかける。俺とあと数人の教員が新入生が全員校舎に入ったことを確認すると門を閉じた。


「いやぁ、やはり高校生は元気が良いですなぁ〜」


そう言って俺の肩に手を置いたのは、今年3年に上がった男。生徒会副会長の大橋玲おおはしれいだ。


「お前も高校生だろ」


肩に置かれた手をしっしっと払う。


「高一と高三はぜーんぜん違うんだよ〜?せーんせ」


ニヤリと笑う大橋は俺よりも20cm程背が高く、どうにも見下されているような気がしてならない。この教師に対するタメ口は3年間いるからとか、仲がいいから(まあ仲良くないが)とかではなく入学初日からだ。見下されているかは怪しいものの、完全に舐められてはいるだろう。


「お前入学式出席だろ。さっさと体育館行けよ」


そう言うとあからさまに嫌な顔をした。


「なんで生徒会ってだけで入学式出席しなきゃ行けないわけ〜?ただ座ってるだけなんだけど」


「お前が生徒会副会長だからだよ」


大橋はちぇ〜と口を尖らせると、俺の腕を引いた。


「センセーも出席でしょ!一緒に来てよ〜」


ダル絡みだ。こういう所が本当に面倒くさい。


「知らん、一人で行け」


するとますます嫌な顔をした。しかし時間も時間だ。限度は心得ているため、とぼとぼと一人で体育館へ向かって行った。


勿体ないよなぁ…。

そんな言葉をこぼしそうになった。大橋はああ見えて、成績は学年でも上位5位に入るほど優秀だ。素行も少々悪いところはあるが、副会長という立場上ある程度の節度はもって生活している。そして、これは俺も最近知ったことなのだが、大橋財閥の一人息子らしい。だが一人息子が故に幼い頃から英才教育を必要以上に受け、本人としては相当参っているようだ。本当であればもっと優秀な高校に行くことも出来たが、敢えてランクを下げてここに来たのもそのせいだとか。進路希望調査もごく普通の大学名を書いていた。本人曰く会社の跡継ぎをする気はなく、個人企業を立ち上げるとの事。聞いた時はかなり苦い顔をした。きっと親との関係は良好ではないのだろう。

ここまでのスペックに加え、それだけでも食って行けるような顔面も持ち合わせている。ぶっちゃけ俺は大橋の学力とか家柄とかよりこっちのが断然羨ましい。副会長なんてやっているもんだから女子生徒からは大人気だ。恐らく、新入生の何名かは今日の入学式で目を付けるだろう。

俺とは程遠い存在だ。

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