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プロローグ
誰だって人に知られたくないことはあるものだ。
消えない過去。忘れたと思っていても自分の都合の良いように、心の隅に追いやっているだけだ。それに蓋をし、見て見ぬふりをして生きている。
「俺は…なんだったかな。」
思い出せないのか、思い出したくないのか。不意に呟いた一言は、しとしとと降る雨にかき消された。
天気が悪い。どんよりとした雲が空を覆って、太陽の光は全然入ってこない。そんな情景を見て、つい自分の心と重ねてしまった。"あの日"置いてきた物。それは光が差しても浮かんでは来ないだろう。
そういえば"あの日"もこんな天気の悪い日だったか。なんて、頭に残っている微かな景色と重ねてみる。
____ 雨は、嫌いだ。