94-天使と神の密約
閲覧して下さりありがとうございます。
素人丸出しのハイファンタジー物ではありますが
生温かい目で見守って頂けると幸いです。
尚、更新は不定期(気が向いたら)となっております。
__コォン!
「…おー。凄い。本当に割れないなこれ」
「だからぁ…言ったでしょ?それはねぇ…
あたし達の神気で鍛えた硝子なのよ…
ちょっとやそっとじゃ割れないし、冷やす効果も
二百年位は…保つはずよ…」
「ふわぁ…ポカポカぁ。僕、ずっとここに住みたいなー!」
〈…我ノ台座デ試スノハヤメロ。
イクラ頑丈トハイエ、鬱陶シクテカナワヌ〉
双子の神、鍛冶が鍛え直したビール瓶を
ガノの台座に軽く叩きつける。
まるで、ゴムを叩いたかのような感触。
軽い音を立てボトルは跳ね返り、反発した。
割れるどころか傷一つない。硬ってぇなコレ。
これなら武器としても使えるんじゃね?
ほら、酔っ払いの乱闘にはビール瓶は定番だろ?
そんなトンデモボトルを創り出した2人は今
俺が〈神性顕現〉で生やした羽の上で
蕩けきった顔をしてだらーんとしている。
余程気持ちが良いのだろうか?人をダメにする
クッションならぬ、神をダメにする羽である。
大分お疲れなのだろう。存分に休むといいさ。
まだ有給は2日もあるんだし。
ちなみに、ついでに普通の硝子で中ジョッキも
創ってもらった。やっぱり、ビールにはこれがないとね!
ビールを、中ジョッキに注ぐ…そして一気に煽るっ!
ゴクゴクゴク…プハァ!旨いっ!
しかも、ガノーラ君と同じで、こいつも中身が
減ることはない。ある程度減ると底から
ジワジワと湧いてくるのだ。ヒャッホウ!飲み放題だぜ!
約束のご褒美は1日増えたけど、それだけの価値は
十分過ぎるほどにある。この一杯の為なら1日なんて
余裕のよっちゃんよ!…何かツマミが欲しいな。
こんな事なら何か作り置きしとくんだった…
「そんじゃ次はガノの番だな。
確か、結婚式だったよな?…本当につまんないぞ?」
はぁ。あんなの見て何が楽しいのやら。
料理が旨かった事ぐらいしか印象に無いんだけどなぁ…
小さな神2人を羽に乗せたまま、俺は門へと両手を
ズブリ、と差し込んだ。懐かしい。このグネグネ感。
俺は、記憶を思い出す様に〈思念伝達〉を__
__
___
強欲のガノダロスは、ふと思い返す。
__そうだガノ。お前に渡したい物があるんだった。
マサトが、番であるアイシャという天使から託された
あの『手紙』の事を。
__中身は何か知らんが、お前なら読めるらしいぞ?
最初は、ただの天使の戯れかと思っていた。
だが、実際に手紙を受け取るとそれは間違いだと
思い知ることになる。
アイシャという天使から、マサトに託された手紙。
一見、何も書かれていない様に見えるが、違う。
〈…コレハ、神気デ書カレテオルナ。
我ラシカ見エヌ物カ。マサトニハ見ラレテハ
不都合ナノヤモシレン…シカシ…コレハ〉
インク代わりに、アイシャの神気で封筒に描かれた
短い一文。特に難しい言語でも無く、普遍的な
文字にて、封筒にはこう書かれていた。
__強欲へ。
もし、マサトがあなたにとって大切な存在なら
この手紙を開けて、中の紙を開いて。
違うのなら、このまま読まずに燃やして頂戴。
〈大切ナ、存在…カ〉
確かに、マサトが我の領域に来てから、実に騒がしく
だが、とても刺激的で、充足した日々が過ぎている。
今まで、どんなに願っても得られなかった知識。
陰鬱とした、停滞していた悠久の時を、マサトは
いとも容易く打ち払った。
…時には、煩わしいとも感じる事もあった。
だか、あ奴は何もかもが違うのだ。人でも無く
かと言って我らと同じ神とも違う。不思議な男だ。
__そんな男と、友の契りを結んだ。
本来ならありえぬ事だ。人間と神が、友などと。
だが、悪い気はしない。この者なら、きっと何か
大きな事を成し遂げるのではないか、と。
神である我に、そう感じさせる程の存在。
ならば、このアイシャの条件を満たすには
十分な理由であろう。
ガノダロスは、封筒の中の紙をそっと引き抜いた。
〈コレモ神気デ…コレハ?文字デハナイ_ナンダ!〉
サァッ…と、突如として意識が何かに塗りつぶされる。
黒い空間は瞬時にとある場所の風景に切り替わり
そこには、小さな天使が1人、立っていた。
まだ幼いな。千年も生きてはおらぬであろう。
天使たる証の羽すら、まだろくに生え揃ってすらない。
〈魔法ニヨル幻影ノ類カ?イヤ、シカシコレハ…
アマリニモハッキリトシ過ギテオル。
マルデ、コノ場ニ我ガ呼ビ出サレタ…マサカナ〉
その場所には見覚えがあった。
一度だけ、マサトに頼まれて連れられて来た場所。
始原の楽園とは違う、一面の青い空。
荒涼とした、まるで天上の様な風景。
だがまるで、現実の様に鮮やかで、これが幻とは思えない。
『初めまして強欲。…ううん。こうして会うのは
初めましてだね。私の名前はアイシャ。
あなた達七神が言う所の、聖霊の子…星を護る者。
驚かせてごめんなさい。これは、現実ではないの。
今、あなたが見ているのは〈記録映像〉。
七神ですら知らない、失われた魔法の一つよ。
これは…幻の一種だと思って頂戴。
だから、今、あなたの質問に答える事は出来ない。
私から、あなたへの一方的なメッセージなの』
この幼き天使が、マサトの番である、あのアイシャなのか?
しかし…失われた魔法か。
__何故それを知っている?
我ら七神でも、その存在を知るのは僅か。
それを何故、この天使は知っておるのだ?
しかも、それを行使して、あまつさえ手紙に封じる等と…
そんな事、我とて不可能だ。
ただの天使に出来る事ではない。
『…あの時は、ありがとう。あなたのおかげよ、強欲。
どういう魔法かは知らないけど、あなたのおかげで
マサトは闇に堕ちずに済んだわ。本当に感謝してる』
あの時か。多分、次元の地割れが起きた時の事であろう。
あれには、流石の我も消滅を覚悟したものだ。
あれほどまでに強い破滅の衝動は…そうであるな。
あの戦い以来か。
『多分、あなたも気が付いているはずよね、強欲。
彼…私が心から愛する…マサトには。
あの勇者の力と同じ力が宿っている。
一度、暴走してしまえば、また歴史は繰り返す。
再び神魔大戦が起きてしまうかもしれないの』
…待て!何故、その事をお主が知っているのだっ!?
それを知るのはもはや我を含めて三柱のみの筈。
しかも、それは遥か昔…二千年前の事…
齢千年も生きていないであろう天使が、何故だ!?
…まさか。
あの時。干渉を受けた時に発動したのは
『勇者殺しの結界』だったというのか?
そんな馬鹿な!あれは…完璧だったはず!
当時の七神が、その全ての力と知識を集めて創り上げた
究極とも言える、勇者だけに特化した対消滅魔導結界。
ありとあらゆる、という
マサトの願いによって、一応、組み込まれていたが…
それをあ奴は打ち破り、我の領域へと干渉したというのか…
なんと…なんと恐ろしい事であろうか。
もしそれが事実であれば、マサトはあの勇者以上の
力の持ち主、という事になる。
『今、あなたは『何故それを?』と思っているでしょう。
でも、私は…それに答える事は出来ないの。
ただ、お願い。この事はマサトには決して言わないで。
きっと、知ってしまえばマサトは苦悩し、苦しむ。
だって、あんなにも優しい心を持ってるから。
いずれ、彼自身が知る、その日までは…お願い。
もし、マサトが…第二の勇者になってしまったら。
その時は…迷わず…私を殺して。
どんな手段でもいい。私の事は気にせず、消滅させて。
マサトと私の命は、〈魂の回廊〉で繋がっているの。
勇者は決して殺せない。だけど、私なら殺せるはずよ。
それは強欲。あなたが一番よく知っているはず。
お願いよ。二度と、あんな悲劇を起こさない為に…』
…言葉が無い。
あの小さき天使は、その背中に羽では無く
とても言葉では言い表せぬ程の業を背負っておる。
どうやってそれを知ったのかまでは分からぬ。
だが、この小さき天使は、己の身を持って、その業を
止めようと私に手紙を送って来たのだ。
我に、世界の運命を託す為に。その小さな命を持って。
『…なんか、他人任せになっちゃったね。
本当なら、私がどうにかしなきゃなんだけど。
強欲、一つだけ私のワガママを聞いてくれないかな?
あなたが聞いたら…笑われるかもしれないけど。
私ね…マサトのお嫁さんになりたいんだ。
もし、万が一の場合の時には…
星の管理者としてじゃなくて、ただのアイシャとして。
私は、マサトのお嫁さんとして…消えたいの。
マサトの世界にはね、好きな人同士がする
特別なお祝い事があるんだって。
それとなく、遠回しに色々狭間で聞いたんだ。
でも恥ずかしくて、あまり深くは聞けなかったの。
そこでは、特別な衣装を来た男女2人が
知り合いの沢山の人からお祝いされるみたいなの。
…だから、強欲。
私の最期に相応しい、その衣装。創ってくれるかな?
せめて、それを着てマサトと共に天に召されたいな。
えへへ…強欲でもこれは、ちょっと難しいかもだね?
…これで、私からのお願いは全部だよ。
手紙、開いてくれてありがとう。
マサトの事、これからもよろしくね。ガノさん』
目の前には、幼さを残した笑顔の天使。
その風景が、徐々に鮮明さを無くしていく。
…やがて、いつもの漆黒が返ってきた。
〈…世界ヲ救ウ為ニ、己ガ存在ヲ賭ケルカ、小サキ者ヨ。
ナラバ七神トシテ、強欲ヲ冠スル者トシテ。
ソノ願イ、必ズ果タシテミセヨウゾ〉
1人の男への純情と、世界を未来を憂う
小さな天使のその揺るがない程強く、確固たる
意志に心を打たれ。
かの大戦を知る数少ない神の一柱、強欲のガノダロスは
新たな決意を、密かに心へと刻むのであった。
今回もお読み頂きありがとう御座います。
のんびりペースで話は続きますが
それでも良ければ今後ともご贔屓に。




