62-身に覚えがないんですけど
閲覧して下さりありがとうございます。
素人丸出しのハイファンタジー物ではありますが
生温かい目で見守って頂けると幸いです。
尚、更新は不定期(気が向いたら)となっております。
「えっと…どっちだったっけ?」
俺は迷っていた。いや思考もそうだけど物理的に。
カントのお店はデカいのだ。二階だけでも
ちょっとした迷路みたい。
所々に、ポールと紐で通せんぼされてる。
木札がぶら下がってるけど読めない。
多分『スタッフ以外立ち入り禁止!』とか
そんなんだろう。
でも、カントが来て良いよ!って言ってたし…良いよね?
「マサト様」
「うわっ!?」
いや決して部屋を覗いてみたいなーとか思ってた訳じゃ
無くてですね?ただ迷子になってただけなんです。
って、この人…カントの奥さんじゃん。
「マサト様。代行がお待ちですのでご案内します」
「はい…」
何か、イタズラしてるのがバレた時の心境だわ。
だってさ?こんなに部屋あったら見てみたいじゃん?
(…多分それ、マサトだけだと思うよ)
えー。アイシャ、男の子はな?こういう未知の場所に
ロマンを感じる生き物なんだぜ?
やべぇな。俺もガノの事悪く言えないかもしれん。
しかしやっぱり若いよな奥さ…アダっ!だからっ!何で!
別にそんな目で見た訳じゃないのにっ!
(ふぅんだ!マサトのスケベ!変態!エッチ!)
お前な。あの時の方がよっぽど__
「あの…大丈夫ですか?」
本の直撃を必死にかわそうと奮闘してたら心配された。
落ち着けアイシャ。これじゃ俺が変人扱いされてしまう!
「すいません…大丈夫ですので」
「…そうですか。こちらです」
やはり育児ってよく分かんねぇや…トホホ。
それから少しだけ歩くと、ようやく覚えがあるドアの前に。
何かドッと疲れたな…精神的に。
_コンコン
「どうぞ」
ノックをして応接室へ。
この光景にも慣れてきたな。安心感が凄い。
「ごめん、待たせたかな?」
「いえいえ。それほどでも。とりあえずどうぞ」
カントに勧められるまま、ソファーに座る。
もうね。フッカフカ。ここで昼寝したいぐらい。
「それで、俺に用事…話があるんだっけ?」
カント自らが淹れてくれたお茶を飲む。
お。これ最初のハーブの奴だ。美味しいんだよなぁコレ。
「実はとある方から頼まれましてね。
こちらをマサト様にお渡しして欲しいと」
テーブルにまるで砂時計みたいな形をした巻物が置かれる。
真ん中でギュッ!と縛られており、結び目には
蝋みたいな物で…これは鳥か?
「俺に手紙…誰からなんだ?カント」
「差出人は、カルシエの領主であるエドワルド公です。
昨日、使いの者が私へと預けに来たのですよ。
それと、言伝も預かっております。
『この度の非礼、心より陳謝する』だそうですよ?
…領主様直々の、しかも一個人への謝意だなんて。
あなたというお方はとんでもないお人ですね」
えっ?領主様から俺に?何故に。
一度も会った事すら無いんですけど?
しかも何で謝られてるの俺。全く意味が分からん。
「…とりあえず、一度読んでみてはいかがですかな?
私も少々気になりますし。もし都合が悪ければ
少し席を外しましょうか?」
「いや、そんな事しなくても別にいいんだけど…」
巻物の封をパキッと割る。
蝶々結びになった紐をほどくと、フワッと紙が
平面へと広がった。良い紙質してんなぁ。
(それじゃアイシャ、いつもの。頼めるか?)
(うんと…これは公文書だね。カルシエの領主の
サインと印が署名されてる。内容は__)
グーグ…アイシャ先生の翻訳によれば。
ガーノックの件は本人の独断だった事。
本来の命令とは異なり、俺に怪我までさせてしまった。
それについて改めて謝罪させて欲しいので
だから一度領主邸へ来てほしいと。
来るタイミングは何時でもいいらしい。
行く時はこの書類を持っていけば
門番さんが案内してくれるってさ。
最後に、名前と立派な判子が押されてある。
えっと…エドワルド・フォン・マリッセだって?
何か美味しそうな名前してんな領主様。食わないけど。
(__だってさマサト。どうするの?)
(いやぁ、確かにあれは少し強引なお誘いだったけども)
脳裏に浮かぶ、初めて味わった命のやりとり。
不思議と死への恐怖が無く、激闘の数々の記憶が
まざまざと思い出される。
…正直な、めっちゃ楽しかったんだわ。
確かにケガもしたし、最後に至っては思い出せないけど。
それでも、あの闘いからは多くを学ばせてもらった。
あの高揚感、刹那のヒリツキ。一歩間違えれば死。
これは魔物相手じゃ、多分得られなかっただろうな。
詫びどころか、こっちが感謝したいぐらいだわ。
ガーノック君は今頃元気にしているだろうか?
「いかがでしたか?マサト様」
そんな回想シーンに浸っていると、カントがお茶の
お代わりを淹れてくれていた。
気が付けばお菓子が追加されてる。いつの間に…あ。旨い。
「何か謝りたいから来てくれ、って話なんだけどさ。
正直、謝られるような事なんて無いんだよね。
それなのに行くってのも何だかなぁ…って。
カント、お前ならどうする?行っちゃう?」
「それは…難問ですね。
普通であれば、是非も無し。と言う所でしょうが。
ですがマサト様。これは良い機会かと私は思いますよ」
「え?何でさ?」
「領主様が直接、しかも公文書まで使って謝罪したい。
私の人生で、そんな話は一度も聞いた事がありません。
ですので、これを利用しない手は無いかと存じます」
「…悪い。カント。俺ってお前ほど頭良く無いんだよ。
だから分かり易く説明してくれないかな?」
「これはまたご冗談を。私なんぞマサト様程では
ありませんよ?」
何を言うかこのタヌキ親父め。
俺をあれだけコテンパンに丸め込んだくせによ。
ついでに爆ぜろ。このリア充めっ!裏山!
「マサト様は以前、こう言っておられましたね。
旅をするのに街を巡るのが大変だと」
「あぁ…そう言えばそんな事言ったかな、俺」
カルシエはカントのコネで密入国したけど…まぁ。
この先毎回こんなんじゃ、食べ歩きすら出来ないよな。
最悪〈飛翔〉で入国出来るけどさ。
でも旅ってそうじゃないよね。風情ゼロ。
「ですから、こう言うと言葉は悪いですが…
利用してしまえばいいのですよ。
カルシエ領主エドワルド様は武勲に秀でた名君。
その領主様からお墨付き…推薦状を貰ったとしても
今回なら恐らく何も言われないかと思います。
そうすればここ、シュルツ王国のみならず、北の
ゴライアス、西のメンデリン商業連合、その先の
デ・カルナ辺りまでなら通用するかと。
それ程までに領主様の権限とは大きい物なのです」
あー。なるほどなぁ。
つまりは詫びとして印籠よこせや!って事ね?
控えおろう!この紋所が…いかんいかん。
確かにそれは魅力的ではあるんだけどなー。
「俺、貴族様相手にするマナーうんちゃらとか無いし
流石にそこまで要求するのは何か違うんだよなぁ。
それに俺、まだここでやりたい事があるし」
「…マサト様は、カルシエに何か目的がおありで?」
「へへっ。まぁな!」
そう。最初にここに着いてからずっと考えていた事。
それを成し遂げなければ次の旅には行けないんだよね。
じゃないと、この先ずっとその事を引きずって
旅をする事になるから。そんなのは嫌だ。
「…ちなみに、何をするのか伺っても?」
「んー。カントになら話してもいいんだけどさ。
でも多分、言っても分かってくれないだろうから。
後のお楽しみ、って事で勘弁してくれよな」
「そうで御座いますか。残念ではありますが…
ここカルシエは争いが絶えず、楽しみが少ない土地。
マサト様のその『後のお楽しみ』とやら。
私は特等席にて観る事に致しましょうか」
「…あんまり、期待はするなよ?」
「マサト様。あなたはいつも私を驚かせてくれます。
ここまでされて期待をするな、という方が
無理のある話なのでは?」
そりゃちげぇねぇや、と2人は笑う。
まぁつまんない事かも知れないけどよ。
精一杯のデカい花火、打ち上げてやんよ!
今回もお読み頂きありがとう御座います。
のんびりペースで話は続きますが
それでも良ければ今後ともご贔屓に。




