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05-譲れないモノ

閲覧して下さりありがとうございます。


素人丸出しのハイファンタジー物ではありますが


生温かい目で見守って頂けると幸いです。




尚、更新は不定期(気が向いたら)となっております。



「うぅむ…」



目の前に現れた白い石版と睨めっこする事…早数時間。


こんなに何かを長い間凝視するなんて、学生時代に

教科書を読んでいた時ぐらいだ。


まぁ、俺の場合は読むんじゃなくて、偉人達に

イタズラ書きしてた方だけどね?楽しいのよこれが。



いい加減目が疲れてしまい、眼球の周りをマッサージする。

ほんの気休めだが、これはきっと…今後の人生に関わる

大事な事である。手を抜くのはナンセンスってもんだ。



ふと__空を見ると…神様が気持ちよさそうに浮いている。


風があるのかは分からないが、たまに少し流されたり

かと思えばフラフラと戻ってきたりする。

うーん。フリーダムだなぁ…ここは見習って

俺も少し仮眠でもしようかしら。



事の発端は、数時間程遡る。

説明するのに飽きてしまった(のだろう)神様が



「はい、これがあなたに与える事が出来るギフトだよ!

 何を選ぶかは…君次第。よーく考える事だねー」



と、言い放つと同時に机から真っ白な四角い石版が

ズズズ…と生えてきたのだ。石版の最上段には日本語で



__ギフト一覧表



実にシンプルに、そう書かれている。助かるわぁ。

その下には、格子状にギフトの数々が羅列されている。

パッと見ただけでも結構な数だ。100は確実に越えている。



恐る恐る1つのギフトに指を伸ばすと、石版の表示が

切り替わり、選択したギフトの詳細が表示された。


…なるほど。こりゃ神様が投げ出したのも納得だわ。

これ全部を説明してたら1日どころか数日はかかるだろう。



「しかしなんだ…こうして操作してると

 まるでタブレット端末みたいだな」



これも魔法の力なのだろうが、前世の記憶も相まって

無駄にハイテクな石版にしか見えない。

死後の世界は何でもアリなんだなぁ…と感心してしまう。


だが、口頭で説明されるよりかは遥かに分かりやすいのと

神様のチャチャ…いやおふざけが間に挟まらない分

俺にとっては都合が良いし…ハッ!



咄嗟に両手を頭の上でクロスさせる!…が、何も起きず。


……予想を裏切り、今回は何も降って来なかった。

流石にこのレベルで10tハンマーは無いだろうが

タライもチョークもかなり痛い事に変わりはない。

今は神様もお休み中。聞こえてないのかもしれない。



(残念っ ちゃんと見てるし聞こえてるからね?)



くぅっ!頭の中に直接話し掛けてくる…だとっ!?

ちくせぅ。神様ってズルいや。



はぁ、と溜め息一つ。石版に目を戻す。


ギフトは確かに沢山あるのだが、その大半がグレーで

ハイライト表示されている。

試しにつついて見ても全く反応がない。


これは多分、既にこのギフトを持っている人間が

アーレスティに存在しているのだろう。



「…そりゃ、2人も要らないよね普通は」



表示一覧の最上段にある、グレー表示の〈勇者〉を

ツンツンしつつ、ひとごちる。

勇者が既に居るのなら、俺なんか必要無い気もするが…


どうやら強いギフトほど上に位置し、下になるにつれ

能力的に劣るギフトになるようだ。


上位的なギフトは八割方グレー表示になっており

残された選択肢は数少ない。



神様がオススメしてた〈剣王〉や〈大賢者〉も上位に入るが

残された数少ない白表示のギフトであった。



「ほへぇ…剣王、ねぇ…」



説明文をチラ見すると、剣技を究めた上位ギフト。

俺は…頭の中で自分が剣王になった姿をイメージしてみる。



…ダメだコリャ。



どう足掻いても剣に振り回される姿しか見えない。

そもそも、俺は剣を扱った事すら無いんだし!

ギフトでどうこう出来る範囲ではないのではなかろうか?


そりゃ、十年とか修行すれば極められるかもだけど?

俺は別に剣に興味がある訳でも、敵をバッサバサして

俺ツエー!したい訳でも無い。



〈大賢者〉に至っては剣よりダメダメだった。


なんせ魔法の『ま』の字の無い世界で育った身では、

魔法の概念がどうしても大雑把になってしまう。


ドラ○エのメ○とかギ○とか、本当そんなレベル。

抽象的な事ぐらいしか浮かばない。

唯一実感したのは、神様が使った怪我を治す魔法。

あれは色んな意味で凄かったな…


ゲームの魔法も、リアルならあんな風になるのだろうか…



下位の段に至っては、色々とツッコミ所が多いギフトが

殆ど白表示で残っていた。それもその筈で…



「〈暗殺者〉に〈女たらし〉に〈酒豪〉…ねぇ…」



暗殺者はまだ分かるさ。うん。なりたくはないが。

でも女たらしとかさ?ギフトと言っていいの?

マイナス面しか無い、ギフトと言うより呪いじゃない?



(世の中にはね、バランス、ってのがあるのだよ)



くうっ!また頭の中に直接…!慣れないなぁもう。



「そっか。バランス、ね。

 確かに全員が大魔法使いじゃ、終わってるわな…

 いや、少しカオスで面白いかもだけど、うん」



自分の様な凡人には理解しえない事情があるのだろう。


何たって、この世界の神様が作り上げたのだから。

無駄に見えるギフト達にも、何かしら…意味が

あるのだろう。違いない。

ならば考えるのは時間の無駄だ。切り替えよう。



そして、石版と睨めっこを続ける事…一時間弱。


時間はかかったけど、あらかた残ったギフトに目は通した。

だけど、自分が求める条件(・・・・・・・)に合う物は終ぞ見つからず。



さぁて。答えは出た。俺は意を決して神様を呼ぶ。



「神様、決まりましたよ」



「思ってたより長かったねー。チキューの子なら

 すぐに決まると思ってたんだけど、意外だったよ」



ん?それってもしかして…前例があったりするのか?

これは聞いとかないといかんな。

同じ地球の同郷に出会えたら、色々と聞いてみたいし。



「もしかして、アーレスティには既にもう…俺以外に

 地球の離魂の転生者が居たりします?」


「んーん。私の世界(・・・・)だと君が初めてのチキューの子だよ」



そう言えば最初、出会った頃にも地球について

何か知っている素振りがあったけど…



__ゴォン!



「勘のいいガキは嫌いだよっ!」



ここでまさかの不意打ちタライである。痛いっ!

くそ…全く気配がしなかったぞ?どういう仕組みだよ?

防御姿勢を取る間も無かったし…アイツツ…痛ぇ…


しかもこれ…前より少し重量がアップしてません?

そして、何故そのネタを知っているんですか神様。

全く…何が何だか。こんなん不条理過ぎるわっ…!



「ちょ…いきなり落とすのは勘弁してくださいよ!」


「…ふぅんだ。悪いのは君だし。これぐらい当然さっ」



え、俺…何か神様を怒らせるような事をしたか?


いかんいかん。これ以上深読みしたらタライじゃなくて

本気であの10tハンマーが落ちてくるっ…!



そうだ、本題に話を戻せばまだチャンスは…

命の危機を感じつつ、ヒリヒリする頭皮をさすりながら



「神様、話を戻しましょう。その…ギフトの件ですが」


「ん」



「私如き凡人に対する神様のご厚意には深く感謝します。

 ですが、私にギフトは必要ありません」


「ほぇ!?」



今まで感情の波が良く分からない神様だったが

これは明らかに狼狽した声だな。

これは…誤解がないようにもう一押し必要か。



「色々あって目移りする位に、魅力的ではあるのですが…

 どうにも、しっくりと来ないんですよ。

 どれも能力が強力過ぎて…自分には分不相応かなと」


「……………」



ありゃま、また硬まっちゃったよ。

神様の性格を考えて、出来る限り角が立たない様に

丁寧に辞退させて頂いたと思ったのだけども。



「…何で」


「今話した事が理由ですよ?嘘はついてません。

 疑うのであれば、どうぞ存分に調べて下さい」



そう。神様は俺の心を読める。これは既に実証済みだ。

であれば、話さなくてもその理由を汲み取ってくれるはずだ。



「あのね!管理者の私も、全能って訳じゃないんだよ?

 ある程度の意志疎通は出来る。けど、そこまでなの。

 君の全てを見通すなんて私には出来ないよ?



 かの御方…創造主様なら出来るかもだけど。

 君と私が今居るここはね、アーレスティでもなく

 チキューとも違う場所なんだ。

 創造主様は『次元の狭間』って呼んでいたみたい」



へぇ…そうだったのか。知らなかった。

神様と言うからてっきり、俺の事を全てを知っていると

勝手に勘違いしてしまっていた様だ。



「管理者は世界に直接干渉してはいけない。

 これは創造主様から課せられた絶対的な原則。


 でもここ…次元の狭間だけはね。


 管理者の自由が許される唯一の空間なんだよ。

 同時に、私の世界を守る為の防壁なの。

 離魂である君が実体を持つのもここが特別な場所だから。



 …このまま何も与えず君をアーレスティに送り出したら

 間違い無く…すぐに…死に至る。分かってるのかな?

 チキューとは全然違うの。ここ…アーレスティは。

 そんな…ちっとも優しい世界なんかじゃない」



だろうな。それはとっくに覚悟しているさ。

何せ剣に魔法、魔物に勇者や魔王なんかが居る世界だ。


前世のヌクヌクした、温室育ちの人間が突然

サバイバル精神タップリの世界に放り込まれたら

その末路なんてロクなものではないだろう。

下手をすれば1日でサヨナラだ。



「…何でかなぁ。それが分かってるならどうして…

 こんなチャンス、二度は無い…それだけ珍しい事。

 普通では起き得ない事なの。それなのに、どうして?」



少し呆れる様な声で、いつの間にか定位置となった

机の上でポヨンポヨンしながら神様は問う。



「…確かに自分は凡人で、秀でた才は持ち合わせてません。

 でも、1つだけですが人に自慢出来る事があります」



そう。それは俺が俺である存在証明と言うべき物。



どんな辛酸を舐めようとも決して曲げる事は無い。

それこそ、それが原因で己が命が途絶えようが。

これだけは絶対に譲れない。例え神様が相手であろうと。



「ギフトを辞退した理由は…私の祖父の教え、です」







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