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46-常識と非常識

閲覧して下さりありがとうございます。


素人丸出しのハイファンタジー物ではありますが


生温かい目で見守って頂けると幸いです。




尚、更新は不定期(気が向いたら)となっております。

門をくぐり、馬車が二台余裕ですれ違える程

大きな石畳の道を馬車が進む。


小さな出窓から見えるのは、ややチグハグに建てられた

住居の数々。窓から伝う紐には洗濯物が

風を受け棚引いている。



「マサト様は、カルシエは初めてでしょうか?」


「あぁ、こうして中に入るのはこれが初めてだ」


「左様でしたか。ここはカルシエの外郭部にあたる

 住宅街です。工房や兵舎もあったりはしますが

 多くの住民はここに住んでおります」



立ち並ぶレンガ造りの建物、時に小さな商店。

道端には手を繋いだ親子連れ、警邏中だろうか、兵士の

姿も時々あったりする。実に長閑な光景である。



「私共の店はここから少し先の中央区にあります。

 ここからさほど時間はかかりませんよ。すぐそこです」


窓に流れる光景を眺めながら、真人の心は複雑だった。

ここの人達は知っているのだろうか。外の世界を。


家とも言えないような劣悪な環境で逞しく生きる

カルロの姿が目の前の光景と重なる。



(マサト、大丈夫?)


(…なぁに。少し感傷に浸ってただけさ。平気だよ)



やがて、風景がガラッと変わり、周りからは

喧騒とも言えるような活気が押し寄せ、様々なお店が並ぶ。



「ここが商業区、中央に位置する一番賑やかな

 場所ですね。もうすぐ私共の店舗に着きますよ」


やがて、馬車はゆっくりと速度を落としながら進み

一つの店の前で完全に停止した。



「ようこそカール商会へ。歓迎しますよ、マサト様」



馬車を降りて見上げると、白い漆喰で塗られた綺麗な壁に

三階建ての堂々たる佇まい。周りの店舗とは一線を画す

まさに大店、と言うような立派な店舗であった。



(言葉遣いから、普通の店主ではないとは思ってたが

 これは…想像以上の大物だな)



さぁどうぞ、とまるでエスコートされるかの様に入店。


店内は整然としており、商品は少ないものの、赤い布が

敷かれた展示台に乗せられた品々はどれも高級感たっぷり。


壁に掛けられている武具も、埃一つ無く輝きを放つ。



「代行、お待ちしておりました。お帰りなさいませ」


真人がそんな品々に目を奪われていると、店の奥から

1人の女性がやってきた。

黒を基調としたシンプルなビジネススーツとでも言うのか

これもまた、店の雰囲気に負けない気品が漂っている。

 


…いや俺、場違いも良いとこじゃね?

何ここ。絶対に貴族御用達とかそんな店だよな?

ドレスコードなんてあったら門前払いじゃん。真っ赤だし。



「…ところで代行、そちらの方は?」


やや訝しげにこちらを見る女性。

いや何か本当…すんません。



表情はクールビューティー。目つきはキリッとしてて

まさに『デキる女』って感じしかしない。

流石一流。店員ですらこれだもんな。すげぇや。



「こちらは私の大切な(・・・)客人です。粗相の無いように。

 少し、裏の解体所へ行きますので、戻るまでに

 部屋の用意をお願い出来ますか」



「では直ちに。代行、お客様。これにて失礼致します」


短いやりとりを交わすと、彼女は再び店の奥へと消えた。



「さぁマサト様。こちらです」


カントが歩きだし、言うがままについていくと

店の横の通用門らしき扉を抜け、更に奥へ進んでいく。


やがて、立派な扉と頑丈そうな錠前が付いた、倉庫の

ような建物へとたどり着いた。

扉は半開きになっており、そこから俺達は中へ。


少し血なまぐさい。壁には鉄のフックがいくつもあり

そこには色々な魔物が逆さ吊りに吊されている。

中では数人の職人であろうか。台の上に置かれた

様々な肉塊と奮闘している所だった。



「ベケット。少し私に時間を貰えますか?」


ベケット、とカントに名を呼ばれた男は

作業の手を止め、こちらに振り返る。



「誰だよこのクソ忙しい時間に…って代行!?」


ベケットの叫び声に、一斉に皆の視線がこちらへ集まる。



「忙しいのは重々承知の上で、あなたに頼みたい事が

 ありましてね。こうして足を運んだのですよ」


「こんな場所にわざわざ…用事なら使いを寄越せば

 代行が足を運ばなくても良いでしょうに…

 それで、そちらの…」


ベネ…ベケットが俺を見て一瞬言い淀む。

そりゃあね?こんな血腥い場所に全身真っ赤じゃ

どう考えても不審者ですよねはい。

ヒャッハー!テメェなんて怖く…おっと。


あ。鎧が少し反応してる。今はダメだぞ?



「こちらは私の商談相手のマサト様です。

 ベケット、隣の倉庫は空いてますね?」


「えぇ、まぁ。繁忙期以外は常に空いてますけど」


「では、ベケットは私共と一緒に付いて来て下さい。

 あ、他の方はそのまま作業を続けて下さい」


その一声で、まるで止まった時が動き出したかの

ように再び作業を始める男達。



ギィィィ…



作業場の壁にある小さな門を開けると、そこは

いくつかの作業台だけがある、がらんどうな物置部屋。



「…何分、普段は滅多に使わない倉庫なんで、少し

 埃っぽいのはだけは勘弁して下さい。

 それで、一体こんな場所に呼び出してまで

 俺に何の用があるってんです?代行」


「ある物の解体をお願いしたいのですよ」


「それなら店を通してくれれば___」


カントがベケットの言を手で制す。



「マサト様。例のアレを、ここにお願い出来ますか?」


俺は部屋をぐるっと見渡した。

大きさは十分。作業スペースは少し狭くなるだろうが

そこは職人に任せよう。だけど…



「カント、出す前にちょっといいかな?」


「お前っ!代行に向かって何て口を__」


「いいのですベケット。

 それでマサト様。この部屋では不足ですかな?」



「いや、大きさ的には十分なんだけどさ…ちょっと…

 汚れてるかなって。だから掃除してもいい?」


「では、早速人を呼んで掃__」


「いや、時間かかるし俺がやるよ。〈清浄化〉(クリーンネス)



普段、使い慣れてるけど部屋全体にするのは初めて。

でもまぁ、こんなん大して変わらないだろう。


天井、壁からパラパラと、シミや血糊がカスとなり

小さな塊となって落ちてくる。

天井から壁、そして床へと。ありとあらゆる汚れが

みるみるうちに落ちていく。

部屋の隅に置かれた作業台もついでにピッカピカだ。



掃除機があれば良いんだけど、無いので〈収納〉で代用。

条件付けさえすれば、一々指定しなくても汚れだけ

収納する事が出来る優れ物。一家に一台!いや無理か。


ほい。作業完了っと。時間にして3分ってとこかな。

人相手なら一瞬だけど、この広さだとこんなもんか。

拾ったカスは後で外に捨てればよろし。


全てがピッカピカ!やっぱり綺麗な場所でないとね。

食中毒とか怖いし。でも火を通せばいけるのか?



「えっと、終わりましたので出しますけど…え?」


2人を見ると、完全にフリーズしていた。

もしもーし?あ。戻ってこないや。どうしよう。



パァン!!



両手をパーにしてお互いを打ち付け、音を鳴らす。

クゥゥ。閉鎖空間だから、よく響くねぇ。

あ。皆さん作業邪魔してすいませんね。でも2人がね?



「今、何が起こったんだ…?」


「…マサト様。次から何かする前に一言頂けませんか?

 流石に私も驚いて気を飛ばしてしまいましたよ」


えっ?ただの生活魔法ですけど。

確かに人と服以外にかけたのは初めてだけど

そんなに驚く事かなぁ?



(マサト)


(…うひゃい!?)


(…もう。私も呆れちゃったわ。怒る気にもなれない)


(何か、不味かったか?これ)


(続きは帰ってから、じっくりとね)


うへぇ…今日の説教は長くなりそうだぁ…



ベケットは、綺麗になった部屋の壁を撫でる様に

確かめている。



「こりゃぁ、まるで新品…血の染み1つねぇ…」


何か壁に向かってブツクサ言ってる。大丈夫?


コホン。改めまして。



「んじゃ、例のアレ。ここに出すけどいいかな?」


「…ええ。お願いします。

 ベケットも危ないから、こちらに戻りなさい」


作業台を舐める様に検品していたベケットを入口まで

呼び戻すと、俺は〈収納〉から非常食君を取り出した。



ズドゥゥゥン…



これが二回目のカントは、少しビクッとしたものの

態度は慣れたものである。肝っ玉太いねぇ。流石。



「な…なっ…なな」


あっ。こっちはダメそう。

俺は次に起こるであろう事態を見越して、指で耳栓。



「なんじゃこりゃぁぁぁ!?」



今回もお読み頂きありがとう御座います。


のんびりペースで話は続きますが

それでも良ければ今後ともご贔屓に。


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