11-お互い様って事で
閲覧して下さりありがとうございます。
素人丸出しのハイファンタジー物ではありますが
生温かい目で見守って頂けると幸いです。
尚、更新は不定期(気が向いたら)となっております。
…身体が…物凄く重い。
まるで自分の身体じゃないようだ。
行かなければ、そう。何か大切な事があったはずなんだ…
真人はゆっくりと瞼を開けると、目の前に見慣れたベッド。
「俺は…眠ってしまったのか?」
記憶の紐を辿るように思い出す。
「そうだ…神様はっ!」
ガバッと身を起こそうとすると、右腕に違和感を感じる。
「んぅー?…スゥ…スゥ…ムニャァ…」
慌てて視線を戻すと、真人の右手を全身で抱っこした
小さな神様が気持ちよさそうに寝息を立てている。
「良かったぁ…無事…だったか」
おっと、このままだと揺れで起こしてしまうな。
そっと、起こさない様にゆっくりと床に座る。
右腕だけは今、神様の抱き枕としてレンタル中だ。
病み上がりだ、このまま寝かせといてやろう。
「…寝顔はやっぱり子供、だなんて言ったら
また怒られちまうかな?」
…いいや、怒られるだけならそれでもいい。
生きていてさえくれればいい。ただ、それだけで。
…神様が自らの死を願ったあの時を思い出す。
正直、俺が何をしたのかあまりよく覚えてないんだ。
神様を止めようと、必死になってた事ぐらいしか。
目の前には頑固で死にたがりの子供が居た。
全てを諦め、襲い来る痛みに苦しみながら。
あれほど頑固なのは祖父以外で見たことがない。
だからなのか、俺も我を忘れてつい怒鳴ってしまった。
子供に怒鳴りつけても逆効果だってのに。
そんなん、俺が一番良く知ってる事だろうに。
「フワァァ…あれ、私は……それにこれは、腕?」
おや。どうやら眠り姫が目を覚ましたようだ。
いやこの場合は眠り神かな?
どうせなら、もう少し眠ってても良かったのに。
「おはようございます、神様」
「え…マサト…私…これは腕?」
__おやおやまぁまぁ。
眠り神様はどうやら寝ぼけてらっしゃるご様子。
フフフ…ちょっとだけ意地悪してみようか。
大人を心配させた罰を与えなきゃな。保護者として。
「そうです。私の腕ですよ。抱き心地はどうでしたか?
何分、筋肉質なので…不便をおかけしたのなら
申し訳ありません」
神様は薄目で、俺の顔と抱いていた腕を交互に見ると
顔を真っ赤にしてベッドからピョンと飛び退き。
__ガゴォン!
…と、同時に空から銀のタライが落ちてきたよ。
そんな昔の事でもないのに、何だろう、この安心感。
懐かしいなぁこの感じ。ホッとするわぁ。
「なっ…なななななななっ…!?」
「いつつ…言葉になってませんよ、神様?」
「うっ…うるさいっ!」
おー。照れてる照れてる。そんな神様も可愛いねぇ。
後はもうちょい素直になってくれたらなぁ。
よし…ここだっ!緊急回避っ!
_ガランッ!ガランゴロン!
素早く俺が身をよじって横に飛ぶと、元居た場所に
再び銀タライが落ちてきた。
絶対来ると思ってたんだよね。今の流れからして。
フッフッフ。甘いぜ。
そういつまでもやられっぱなしでは__グフォッ!?
…まさか椅子が水平で飛んでくるとはっ…不覚っ!
敵は空だけではなかったのかっ!?
そんな下らなくも、平和な時が過ぎる事暫し。
「神様ー」
「………」
「神様?」
「………」
…拗ねてしまった。流石にイジり過ぎただろうか。
勉強机に突っ伏して、こちらを見ようとしない。
このままでは拉致が開かない。平行線だ。
「ごめんなさい神様。私も少し意地が悪かったですね。
今までの無礼は謝罪します。ですのでどうか…
機嫌を治してはくれませんか?」
「……忘れて」
「え?今なんと?」
「忘れなさいっ!」
「そんな…忘れろ、と言われても。何をです?」
「~~~~~ッ!」
再び顔を赤く染め、頬をプクッと膨らませる神様。
あかん尊い…いやそうじゃない!
俺の可愛いセンサーが振り切れそうだ。
平静…平静だ。俺は石…ただの石ころ…精神集中…
「神様切っての頼みとあれば、喜んで忘れましょう。
ですから…そろそろ。私の話を聞いてくれませんか?」
やっと椅子から降りて、トコトコと俺の方へ歩いてくる。
ふぅ。これでようやく話が進むよ…長かった…
世の中の親御さん…育児って、皆こんな感じなのかね?
素直にすげーよ。尊敬するわ。
「マサト_」
「はい!ストップっ!」
「…えっ?」
神様が話し始める前に、俺が腕を突き出して遮った。
でも!って表情で訴えかけてくる。
__そんな顔するなよ。もう終わった事だろ?
「言いたい事は、俺にも分かります。ですが…
神様が俺にもう謝る理由は…無いんです。
だから、ごめんなさいじゃなくて、ありがとう。
そっちの方が、俺にとっては嬉しいです」
「そっか…そうだね。うん、分かったよ。
私ね、マサトに負い目を感じてたのかもしれない。
だからかな。いつも…後ろめたい気持ちがあったの」
…やっぱりそうだったか。全くこの子はもう。
幼い身で一つの星の管理者。俺には想像がつかんわ。
神様だから無理して抱え込み過ぎてたんだな。
はぁ。子供なのに、俺以上の苦労人かもしれん…
「ありがとう、マサト。こんな私を二度も救ってくれて」
「俺からも…ありがとう。こんな馬鹿を救ってくれて」
そっと神様の頭に手を伸ばす。
神様は嫌がる素振りもせず、両目を瞑り受け入れた。
優しく撫でてあげると、満面の笑みを浮かべる神様。
そうそう、それだよ!
やっぱり子供は笑ってなきゃダメだ。笑顔が一番ってね!
互いにお礼も済んだ所で、本題を切り出す。
あの後何が起きたのか。
神様はどうして無事に生き残れたのか。
自分の記憶に無い、欠如した部分だけを聞いてみる。
「マサト…本当に何にも覚えてないんだ?」
「いや、あの時は色々必死だったのもありまして…
所々はうっすら覚えてるんですが…面目ない」
「最期の言葉、覚えてるかな?」
「最期…ですか?」
「うん。私の命が尽きかけていた最期の時。
マサトが私の手を握ってくれたんだよ」
…あぁ。確か神様が咳き込んで吐血した時…そうだ。
思わず手を握った記憶がある。
あの時の俺は何も出来なかった。ただ、少しでも
神様が楽になるならと、身体が自然にそうさせたのだ。
「…そういえばそんな事したような気がします」
「あの時、マサトの周りにね。強い力が集まってた」
「力ですか?それは魔法…とか?
でも、私は魔法のまの字すら知りませんけど…」
「魔法かどうかは知らない…でもね。
それは柔らかくて、暖かい…とても綺麗な光だったよ。
私達管理者でも、創造神様とも違う、力強い光だった」
…うぅん。全く覚えが無いなぁ。
魔法なんかオレが使える訳ないし。
とはいえ、神様が嘘を言うとも思えないし、思ってもない。
「フフッ」
「えっ、今の話…笑う所なんてありました?」
「ううん違うの。本当に覚えてないんだなぁって。
今思い出したら可笑しくなっちゃった」
え。なになに?ちょっと待って!
何をやらかしたんだ最期の時の俺よ!
「命が尽きる…と感じた瞬間、マサトったら
私にこんな事言って来たのよ。
『ガキのくせに生意気な事言ってんじゃねぇ!』って。
そしたらね、マサトに集まってた光が束になって
私とマサトを包み出したの。
そこからは私も覚えてないんだ…ってマサト!?」
「大変っっ!!申し訳!!御座いませんっっ!!」
カッチリ足を揃え、両手はきっちり正反くの字。
額は床にグッとこすり付けるぐらい。まだ足りぬっ!
とくと見よ!ガチの土下座っ!ここに極まれり!!
…いやいやいや、何しちゃってるの最期の俺!!
いくらテンパってるとは言え言葉のチョイスがさ!!
もういっそ私を罰して下さいお願いします…
10tは流石に遠慮しますがタライ落ちなら甘んじて。
穴があったら入りたい…いやないな…ここには。
「マサト!ねぇちょっと!聞いてるの?」
…ええい、タライは、タライはまだなのかっ!
武士の情けだ。10でも100個でもドンとこい!
ハラキーリするよりマシと言うもの!さぁ来いっ!
__頭に感じる、柔らかい感触。これは…うむ。
タライではない…な…?
「もう…そんなつもりで言ったんじゃないけど。
全然怒ってないから立ってよ。話、聞きたいんでしょ?」
へへぇ、お奉行様…と時代劇ばりに固まった身体を起こし
恐る恐る…頭をあげると、困った顔をした神様が
俺の頭を撫でていた。
良かったぁ…いや良くないんだけどさ。
まさか自分がそんな事口走るとは予想外もいいとこだよ。
祖父に礼儀作法は厳しく仕込まれたつもりだったけど…
人間、素が出るとどうしようもねぇなぁ。反省。
「話を続けるね。…と言っても、ここからは私もよく
分からないんだ。でもね」
神様は口を止めると、自分の胸のやや上辺りに手を添えた。
「私は罪を贖うために…禁忌を破ったの。
決して使ってはいけないとされている魔法を行使し
その代償に…邪痕という呪いを受け入れて」
それは朧気に覚えてる。
なんて馬鹿な事を、とその時は思ったもんだ。
「今はもう、そんな気は微塵も無くなりましたけどね。
…誰かさんの言葉のせいで」
神様がじぃっと細目でこちらを見つめてくる。
あぅ…やっぱりここでハラキーリしなきゃダメかな?
「プッ…アハハハハッ!」
そんな狼狽する俺を見て、噴き出す神様。
「からかっただけだよ、マサトってば本当に面白いね」
ちくせう。意趣返しされてしまった…がこれも因果応報か。
「むしろ…私にとってあれは救いそのものでした。
だって。あんなに他人を想って説教するだなんて。
そこらの天使より天使らしい…高潔な行為だよ」
え?まさか俺、褒められてる?
いやいや、上げて落とすは常道。油断禁物だ。
「私ね。実は管理者としてまだ、日が浅いんだ。
他の管理者達は…上手く自分の世界を回してる。
でも、私の星…アーレスティは上手くいかなくて」
「マサトを手に掛けてしまったのもそれが理由…かな。
何もかも上手くいかなくて、そんなとこに君が来て。
おかしな事ばかり言うから、我慢出来なくなって…」
「神様__」
「大丈夫。もう平気だよ。これもマサトのおかげだね」
被害者の俺が言うのも何だが、特別何かした覚えが無い…
まぁ、サンドバッグ代わりにはなっただろうか?
ストレス解消には身体を動かす。これが一番である。
そう…筋肉は裏切らないのだっ!
「…話を戻そっか。
本来、刻まれた邪痕はその主から命を吸い取り
魂を闇で満たし…魔物となる。
この時空の狭間は防壁も兼ねてるって話、覚えてる?」
「ええ、それなら」
こっちに来てまだ神様が球体だった頃だな。
それなら覚えてる。球パンもね!あれは痛かったぜ…
もう二度と味わいたくは無いが。
「ここには世界の意志、っていうのかな。
私達管理者と同じ『均衡を保つ』力があるの。
アーレスティで邪痕に取り憑かれれば
魔物になって人々の脅威になるだけだけど
時空の狭間はそれを許しはしない。
異物として『浄化』し、そして存在は『消滅』させる」
「そっか、だから…あんな真似を」
「そう、私もそうなるはずだった」
神様の表情は穏やかだが、少しだけ靄がかかっている。
やはりまだ完全には割り切れていないのだろうか?
トラウマとかになってないといいが。
「私とマサトが、光の渦に巻き込まれて目覚めたら
刻まれていたはずの邪痕は消えて無くなってたわ。
多分だけど、マサトの力のおかげだと思ってる」
「でも俺にそんな力は…あ」
…力で思い出したぜ。
これを神様に聞かなきゃと思ってたんだっけ。
そもそも、これを聞こうと思ったらこんな事に…
本当、えらい遠回りをしたもんだ。
「…神様。〈調停者〉ってギフト、知ってますか?」




