100-影を喰らう闇
閲覧して下さりありがとうございます。
素人丸出しのハイファンタジー物ではありますが
生温かい目で見守って頂けると幸いです。
尚、更新は不定期(気が向いたら)となっております。
__宴会の喧騒が響く、アグニ城塞の外壁。
見張りに見つからぬ様、城壁からやや離れた位置に
賑やかさとは縁の無さそうな、闇夜に溶ける様に
身を潜める、光を見つめる者達が居た。
『__おかしい。何故今、このタイミングで宴など。
奴らにそんな余裕等は無いはずだ』
いつもの偵察任務であったが、今日の様相は違う。
出兵の熱気がある訳でも無く、混乱の悲鳴でもない。
聞こえて来るのは、楽しそうな喧騒。
考えられるのは、中で宴か何かを催している。
もしくは、現状に悲観して自暴自棄になったとしか__
『…ここ最近、城塞に出入りした者は?』
『いえ。斥候らしき小集団は何度か見ましたが…
特に大きな動きは無かったかと』
であれば、ますます理由が分からない。
ありとあらゆる手を使い、この城塞への補給を断ったはず。
先月も、運良く補給部隊を捉え、これを潰した。
証拠は一切残ってない筈。全ては荒野に混ざり、溶けた。
元より備蓄は尽きかけ、補給すら無い。その筈なのに。
『隊長。どうしますか?』
『…ここは退こう。まずは報告と様子を__』
「__やぁ。帝国のお客様。招待状はお持ちですか?」
『__なっ!?』
いつの間に!〈探索〉にもかからずに
この距離まで詰めてきただと!?何者だっ!
五つの影が合図も無しに、赤い鎧の男を取り囲む。
__1対5。本来であれば、確実に殺せる戦力差。
……だが、何故だ。何故、私は震えている?
あの補給部隊、20人相手でも、何とも感じなかった。
圧倒的な力量差。故に感じなかった、死への恐怖。
だが、今目の前に居る存在。こいつは…危険だ。
理由は分からぬ…が、気を抜けば…死ぬ。
「あらら。招待状をお持ちでない?それは困りましたね。
本来ならお引き取りを…と言いたいんだけど
今回は帰られるとこっちが困るんだよね。
もし、降伏するんだったら生きて帰れるかもよ?
…まぁ、あんたらならしないだろうけどさ。
あの爺さんと同じ臭いがするんだよね。お前ら」
前方と後方。影の2つが音も無く同時に襲いかかる。
どちらかを避けても、二の矢が仕留める。
こいつらも私と同じ、手練れだ。こいつを強者と
感じ取ったのだろう。私でもそうせざるを得ない。
例え、一人が倒れようとも。一見必殺の影の牙。
決して外しはしない。命を賭けるこの一撃は。
「んー。やっぱりそうなるよね」
なっ、消え…た?
上かっ!いや居ないっ!?どこだ!?
ボキィッ!……ドサッ。
「とりあえず一匹、と。
んで、どうする?戦うかい?降伏するかい?
あ。逃げる、って選択肢はねーからな。
10秒だけ猶予をやる。どちらかに決めな」
くっ…やられたか。しかしあの距離を、一瞬でだと?
我等の背後をこうもあっさりと取り、一撃で首を…
こやつ…我等では勝てぬやもしれぬ。どうすればいい?
『隊長…私達で時間を稼ぎます。その間に!』
「…ほい10秒。残念。お前等全員あの世逝き決定だ。
今までお前等がやった事を後悔して逝くんだな」
『それでは。後は__』
ヒュッ!……スドドドドッ!!
『グハッ!』
『ギイッ!』
『ゴホッ!』
__ガッ!…クソッ!これは?黒い…槍か?…ハッ!?
…聞いたことがある。
暗部でも、一部の間で囁かれている伝説の存在。
その手には、夜闇より黒き、漆黒の槍を持ち。
一凪ぎで幾つもの命を喰らうという。
古来より帝国を影から支え、決して表には出ない。
光一筋すら通さぬ、その闇を纏い、振るいし者…
先代皇帝から仕えると言う、男とも女とも知れぬ存在。
『漆黒の闇の使い手』…グハッ!グゥッ!
これがまさかっ!そうだというのかっ!
何故だっ!何故っ!我等を喰らうっ!
お前は…帝国の…影…
__
___
(…まだだ。気を抜くなよアイシャ)
(うん)
目の前には、黒い槍に貫かれた4人。
既に、ほぼ半分以上が槍に喰われている。
月夜に浮かぶは、大地に突き刺さった漆黒の槍。
(〈探査〉にも〈第六感〉にも感無し、か…)
…敵の気配も、反応も無い。
遠くからは、宴の喧騒の声が風に乗って流れている。
だが、真人は警戒を怠らない。ここは戦地、しかも外だ。
いついかなる状況にも即時対応出来る様、アイシャも
周囲の気配に慎重に気を配る。
真人は、ここに来る時にハインリッヒから聞いた
情報を元に、一つの罠を張った。
夜闇に乗じてやってくるという、望まぬ訪問者達。
暗部だとすれば、あの老僧と同じか、それ以上の
存在かもしれない。
そんな連中。まともに相手をするのは、リスキーだ。
だが、暗部といえど人間。どこかで油断する事もある。
あの闘いも、そんな油断の隙を付いて勝てた
ギリギリの死闘。であれば、そのキッカケを作ればいい。
宴会をすれば、否が応でも外に気配が漏れる。
それが500人であれば、尚更だ。
宴会を抜け出し、〈影潜り〉で
グルッと潜りながら外周を索敵していく。
やがて、〈探査〉に反応が。
そこには、灯りが漏れる城壁を見つめる、謎の集団がいた。
__間違い無い。こいつらだ。
奴等は、全員城壁に視線と注意を向けている。
敵は見事に食いついた。後は、竿を引くだけ__
そして、影達は1人を除き、槍に喰われた。
真人は、最初に手を掛けた影へと近付く。
既に事切れた、黒装束の男。
その顔には苦悶の色は無く、驚愕の表情のまま
首があらぬ方向に曲がっている。
真人は、黒装束の裾を持つと、引き摺りながら
遠回りして正門近くへ。
監視塔から発見されぬ様、気を払いながら
近くの馬防柵の一つにその影を引っ掛け、吊した。
(どうしてこんな所に?見付させたいなら
もっと近くに置けばいいじゃない)
(そうしたいのは山々なんだけどな。
この現場を見られたら、俺に疑いがかかるかもだし。
それにここなら、夜が明ければ嫌でも目に付くはずさ)
(多分、そんな事は無いと思うけど…)
(アイシャ。人間ってのはな。良い所ばかりじゃない。
悪い所もかなり多いのさ。特に『疑心』ってのは
一度そう思われるとすげぇ厄介なんだよ。
今、俺達があの髭親父と事を構えるのは得策じゃない。
…あんなんでも一応、同じ国の兵士だしな)
……何とかしないとな、この問題も。
あの髭親父を殴って解決出来たら、どんなに楽な事か。
人間ってのはな。結構不自由な生き物なのさ、アイシャ。
(さっ、皆に心配される前に戻ろうぜ。
今なら転移しても気付かれないしな)
こうして、2人を除き、また1つ。
帝国の影は、ひっそりと。
その最期を誰にも知られる事無く
夜の闇へと溶け、消えたのであった。
今回もお読み頂きありがとう御座います。
100話記念は、ちょっとダイジェスト的な
裏の闘いのお話でしたね。
というか、もう100話かぁ。って感じです。
早いなぁ…どこまで続くかは作者の気分次第っ!
ビバ!フリーダムッ!でわでわ。




