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01-プロローグ

なろう初投稿で素人小説です。

更新は不定期。クォリティーうんぬんは

目を瞑って頂けると幸いです(笑)


9/9 追記


皆様初めまして。作者のニッシーです。

こんな拙い素人モノの小説を、多くの方々に

読んで頂き、驚きと感謝でビックリ箱です。

今後ともご贔屓に。


あ。そうそう。本題ですね。

話数が結構増えたので章で二分しました。それだけ。

のんびりと、長々と話が続きますが

宜しければお読みになっていって下さいませ。


2024/3/19 追記


全体的に行間や区切りが読みにくいなぁ…と思い

1話から順次、見直しと推敲を行っています。

うん。やっぱり『間』って大事だなぁ。




「…知らない天井…いや。これは空…なのか?」



男は微睡みの中、ぼんやりと意識を覚醒させた。

連勤続きのせいだろうか。身体全体がやけに怠い。

ここ数日の熱帯夜のせいで眠りが浅かったのだろう。



「ファァ…今日も昼からバイトかぁ…行きたくねぇ」



人は、生きる為には金を稼がなくてはならない。


男1人、ヤモメ暮らしとは響きはいいが

世界大不況が叫ばれる世知辛い世の中で

ただでさえ食うに困る生活を送る男にとっては

仕事をサボる事は死ぬ事と同義である。


寝ぼけた頭の中に二度寝の誘惑が誘ってくるが

頭をブンブン振りながら身体を無理矢理起こす。



「よいしょっと…あ?うん?」



身体が寝汗ベッタリで気持ち悪い。

仕事前にとりあえずシャワーを浴びようか、と

立ち上がった時に違和感の正体に気がついた。


足元を見ると白い煙がモクモクと湧いて流れる床。

床自体は煙の様な霧で常に覆われて見えないが

足裏には平面パネルみたいなツルツルとした感触。


少しだけヒンヤリしてて気持ち良さすら感じる。

だが…見た目は完全に雲。え?どういう事?



そんな事よりこの現状よ。


振り返ると住んでいた部屋どころか

寝ていたマイベッド以外に何も無く、フリーダム。

世のミニマリストでもここまでしないだろう…と

乾いた笑いをしつつ、男は周囲をグルリと見渡す。


360度見渡しても雲一つない真っ青な空と雲の床。

どこまでも続いてそうな水平線が見える所を見ると

大きさ的には自宅のアパートどころの広さではない。

東京ドーム何個分とかのレベルだわこりゃ。



「はは…こりゃぁ参った。俺、夢でも見てんかな」



__ギュュウ!



お約束だが頬を抓ってみる。勿論痛い。

そして周囲の状況も全く変わらないし

目が覚めて現実の小汚い六畳間に戻る事も無かった。

これは夢では無い。それだけは確定したようだ。



「夢では無い、と。はてさて、どうしたもんやら」



あるのは己自身と長年使い続けてきたベッドだけ。

腰掛けるとギシギシとスプリングが軋みを上げる。

周りはどこを向いても同じ景色のパノラマビュー。

一体ここはどこなのか。


男は頭に手を組み、思案を巡らせる事数分…



「もしかしてだけど、ここは天国とかだったり?

 いやいや…それってつまり、死んでんじゃん」



つまり自分は…死んだのかと。

もしくは、何かしら重症で生命の危機にあって

意識だけがここに飛ばされたとか?



…落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない。

昨日はバイト2連勤を終えて帰宅、疲労感に負けて

シャワーも夕食も取らずにベッドにダイブした…

うん。これはハッキリ覚えてるぞ。


でも何故に?

バイト2連勤なんて今までザラにあるし

酷い時は3~4連勤なんてのもあったよね?


新人が勤務初日でバックラーした時なんて

後始末で一週間店に泊まり込んだ時だってある。

そっちの方がよっぽどキツかったぞ?

お金的には助かったけどさ。



理由がサッパリ思い当たらないのが癪ではあるが

この超常現象を説明するとなるとやはり

それしかないんだろうなぁ。



「ははっ…なんだ。あっけねぇなぁ。

 俺の人生はここまでって事かよ」



ベッドに仰向けに寝転びながら1人ごちる。

死んだならこのまま二度寝してやろうかと思ったが

眠気と身体の怠さはすっかり抜けてしまっていた。



ベッドに横たわりながら目をそっと閉じる。



…思えばツマらない人生だったなぁと。

地方都市、とは聞こえがいいものだが

人口が1万人も居ない超辺鄙なド田舎で生を受け。


家は良く言えば慎ましい、悪く言えば貧乏な

ありきたりな農家に生まれ。


両親は物心つく前に離婚しており、自分は

父親に引き取られる事になったらしい。

離婚の理由は聞かされていない。



数ヶ月に一度、様子を見に来る親戚達にそれとなく

聞いてみたのだが無言の作り笑いで誤魔化された。

父に聞くとあからさまに不機嫌な顔になる。


そんな父を見て、子供ながらに悟ってしまった。

これは聞いちゃいけない事なんだと。

それからは一切母親の事を考えるのをやめた。



一方、父親は自分に全くの無関心。

簡単に言えば完全放任主義。


別に厳しく当たる訳でも無し、かといって

暴力を振るってくる訳でもない仕事人間。



ただ、自分の飯を食わせてくれる甲斐性は

無かったようで、働いて得た金はほぼお酒に代わり

自分に向けられるものはほんの僅か。



父の機嫌を損ねないように顔色を窺い、ただ毎日を

生きる事だけで一杯一杯の日々を過ごしてきた。


転機はそれから数ヶ月後、時々様子を見に来てくれた

祖父母に家の惨状がバレてしまい、あまりな状態に

祖父が大激怒。父と取っ組み合いの喧嘩に発展。



激闘の末、父に絶縁を突き付けて自分を養子として

引き取る事になったのであった。

それから父との交流は途絶えている。


なので幼少期の記憶の殆どは祖父母宅での生活。

実家とは違い、これでもかと愛情たっぷりに

良い意味でチヤホヤと甘やかされて育てられた。



祖父母に保護された時にガリガリにやせ細った

子供を目の当たりにした反動とも言うべきか。


ただ、間違った事は違うときちんと叱ってくれるし

正しい事をすれば頭を優しく撫でて誉めてくれる。

ここで初めて「愛情」と言うものを知った。


もしあの時に祖父母が来てくれなかったらと思うと

今でもゾッとする。間違いなく死んでいただろう。

二人には感謝してもしきれない。



祖父母に引き取られてから早数年。高校二年生の時

突然祖父が病でこの世を去った。癌だった。


その翌年、まるで祖父を追うかの様に

三周忌を待たずして祖母も亡くなった。



愛する二人の突然の喪失。俺は悲しみを通り越して

無に近い、胸にポッカリと大穴が開いてしまい。

悲しみから抜け出せない中、喪主として立つ俺に

名前すら知らない自称親戚の人達が話しかけてくる。



「今回は残念だったね」

「後の事は心配しなくていいから」

「まだ若いのに良く頑張ったね」



挨拶と合わせて口々に慰めの言葉がかけられる。

だけどもう…俺も無邪気な子供じゃないんだ。

その仮面を被った内側に何があるかなんて

祖父母の遺産目当てに決まってる。



(心の中が見え見えなんだよ…このハゲタカめ)



祖父が緊急入院した時も、闘病中も、最期の時も。

一度だって見舞いに来なかったヒトデナシ達。


沸々と怒りがこみ上げて来るのを感じたが

きっと祖父母はそれを望んではいないだろう。

俺は感情を殺し喪主という人形を全うする事にした。



幸い、遺言書がきちんと残されており、預かり人が

内容を親族一族の前で読み上げる。

ヘソクリの定期預金通帳の所有権は俺に。

その他の資産は遺言書通りに。実に簡潔な遺言。 



祖父母二人は内緒にしているつもりだったのだろうが

実は俺の将来の為にと毎月コッソリ

少ない年金から定期預金を積み立ててくれていた。

毎月コツコツと。総額は400万円にもなっていた。


2人とはいえ少ない年金からやりくりしたのだろう。

祖父母が貯金をしてる事は知ってたはいたのだが

それがまさか俺の将来の為にとは…

葬式中、枯れる程泣いた筈なのにまた涙が溢れた。



一夜明け、葬儀も一段落…と思いきや

喪も明けぬ内に集まった親族達がギャースカと喚き

骨肉の争いが始まったのを見て…俺はそっと家を出た。



大恩人の喪主として最期の勤めは果たした。


名残惜しい気持ちはあるが、もうここは自分の

居るべき場所では無くなったのだ。

今まで育ててくれた家に向かって深く一礼。



(じっちゃん…ばっちゃん。今まで育ててくれて

 本当に…ありがとう)



誰にも告げず家を飛び出したのはいいものの

祖父母が残してくれたお金では流石にこのまま

高校生活を続けるのは厳しかったので

家を出た足で退学届を出し高校を中退。


そのまま電車に飛び乗り上京、不動産屋を歩き周り

何とか未成年でも契約出来る

訳あり物件(ボロ家)を手に入れた。



後は仕事…だが最終学歴は高校中退である。

実質中卒なので普通の就職活動は望めず

それでも諦めずに半年程粘ったが全滅。


高卒者が底辺扱いされる世の中で

中卒というのはあまりにも大きいハードルであった。



その間の毎月の生活費や家賃や税金諸々で

せっかく祖父母が遺してくれた虎の子の400万も

ほぼ使い果たしてしまった。



…このままじゃいけない。



精神的にも物理的にも尻に火が着いてしまい

正社員の道をスッパリ諦めて方針転換。


色々なアルバイトを渡り歩いて現在に至る。

今の職場は最低賃金で忙しい飲食店と条件は悪いが

何とか自分1人なら飢える事はない。



「子供の頃はヘビー級なサバイバルで?

 青春ってーもんも全然無くて、ひたすら生きる為に

 日々働いては寝る人生とは…我ながら酷いもんだねぇ」



過去を思い出すと、無意識に頬を涙が伝う。


我ながら呆れる程に味気も色気もへったくれも無い。

あの優しかった祖父母に救われた命の代償がこれか。

これじゃあの世で合わせる顔がない…

あ。そもそもここがあの世だったっけか?



「でもまぁ…もしも来世があるのなら」



突き抜けるような青空に右手を伸ばす。



「風の様に自由に。そして…面白可笑しく生きてみたい」



なぁ。ここが天国だとして、俺が死んでいるのなら

少しぐらいワガママ言ったっていいよね?

それぐらい前世は辛い世界だったからさ。


大金持ちに生まれたい、なんて贅沢は言わない。

多少貧乏でもいい。でもド貧乏は勘弁して欲しいな。

前世で関わり合う事すら無かった『当たり前』を。

人並みに幸せに生きてみたいんだよ。ダメかな?



「…なんて、俺は一体何を言ってるのやら…ハハハ」


「そんな事で良いの?」



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