表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深淵  作者: ひろね
1/24

プロローグ

暗い話です。

 ――何故?


 ――どうして?


 息を切らしながら走り続けるけど、心の中の疑問は常に頭から消えない。

 背後は夜なのに家々に点けられた火のせいで昼間のように明るかった。その明るさから逃れるように、闇に向かって急ぎ歩を進める。


 何故?――わたくしは何度その疑問を思ったことかしら?

 けれど、その問いに答えてくれるものは存在しなかった。


 ――今度こそ逃げきれねば――!


 疑問は消えないけれど、目の前のことのほうが最優先。

 煌々とした火が逆巻く方から、男たちの怒声が響き渡り、体を強張らせた。


 ――もうこんな近くに!?


 いくら逃げても女性の足と、男たち――しかも馬を乗りこなしている――では、進む度合いが違う。

 懸命に走っても、後から追ってくる男たちに追いつかれ――


「へへ、やっぱり女だったぜ」

「一人だけとはちと寂しいが、愉しんでから()っちまおうぜ!」


 男たちの言葉に、わたくしは、ああまたか……と表情に諦念を滲ませた。

 すでに逃げることは不可能で、このままいけば男たちの餌食になる未来しかなかった。

 ――それなら――

 わたくしは近づいた男が帯剣している剣を奪い去り、相手に向ける。

 男たちはその行動に一瞬虚を突かれ、動きが止まる。

 が、すぐに気を取り直した。


「おいおい、あんたが俺たちをどうにかできるなんて思っているのか?」

「……わたくしに近づかないで。それ以上近づいたら……」


 もとより生き残ることを考えてはいない。

 それなら、辱められ殺されるよりは、自決を選ぶ。剣を首筋にあてた。

 ――死など、何度目か……それでも、ここでいいようにされるのなら……辱めを受けるより、自死を選ぶ。

 首筋から血が噴き出し、わたくしは後ろによろめいた後倒れた。


 ――ああ……今回も、わたくしは何もできなかった……


 ぼやける視界で空を見上げながら、最後にそんなことを思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ