宮城/北海道
神とは一体なんだろう?
目覚めながらこんな事を考えていた。別に疑っている訳じゃ無い。ただ、この圧倒的な力以外、僕が持つ神の力は、大分イメージとはかけ離れていた。まず目覚めが最悪だ。口の中にミミズが入ってこようとするのを手で毟りながらもぞもぞと這い出てくる。この体になって一度も朝日を清々しいと思ったことも無い。極めつけは森に居る動物達だ。仮にも神の使いなのだから恐れる必要など無いのに、その反応は人間の時と全く同じだ。
僕は本当に神の名代なのだろうか?
でもさすがに、警戒心むき出しの鹿に八つ当たりをするのは可哀そうだな。
だから僕は起きて早々、更地になった場所で細々と集まる米粒のような人だかりを攻撃した。数にしておよそ千も居ない。だが、軍関係らしき影もチラホラ見える。軍用ヘリも飛び交っている。何より腹が立ったのが僕がせっかく奇麗にした更地を利用して軍用貨物機が滑走路代わりに着陸していた事だった。
力のセーブは充分。僕は明確に人と軍事物質だけを奇麗に破壊した。さすがに最小火力だけあって人が血ノミを潰したみたいに真っ赤に潰れるのが上空からでも確認出来た。今度こそあの煩いヘリも神気で落とす。マスコミらしきヘリもついでだから落しておいた。まぁ僕をコケにしてくれた罰だ、ありがたく神罰と受け取って欲しい。
それから僕はあえて福岡は目指さず、太平洋側から本州に沿って北上した。
物理的には発見されるだろうが、器も神気もエネルギー反応される事は無いだろう。それに対しこちらはしっかりとエネルギーの類は神気で対応できるようになっている。それと同時に大きなエネルギーを貯めこんでいる施設や兵器に関してはかなり広範囲で把握出来るようになった。それで分かったのだが、太平洋には夥しい数の軍艦が日本を囲むように押し寄せていた。数にして自衛隊だけじゃない、アメリカだけでもない、きっともっと多くの多国籍の軍艦が日本にやってきて何かを警戒しているようだった。
もし日本が原発でも降伏せずに続戦していたら、まさにこんな感じになっていたのかもしれない。今ここで全部破壊してやろうかとも思えたが、下手に他の国を刺激させたくない。それに、主力は恐らく福岡に集まっている。いくら神気とは言え、あまり移動は得意じゃ無いが、ここは手薄な場所に回るのが得策だろう。ベタな戦法だが、僕は次に宮城と北海道を狙うつもりだ。どちらも中央規模の都市が集まっている。
つまらなそうな四国を狙うよりはよく多くの人口を減らせるという物だ。
・・・・・・・・・・・
チッ、どうやらここにも駆逐艦やら巡視船やらが警戒しているようだ。さすがにいい加減自衛隊ぐらいはまともに潰しておいた方がいいな。ふふふ、それにしても復活した僕の神気力は研ぎ澄まされている。以前の何十倍も効率良く仙台の街並みを破壊出来ていたのが嬉しかった。破壊を開始してすぐに煩いアラートが鳴り響くが関係ない。視力も聴力にも神気を宿したから遠くからでも人々の悲鳴や叫び、爆風を受けて風船のようにはち切れる臨場感を楽しむ事が出来た。
ははは、ハハハハ良いぞ、そうだ、もっと死ね。
この神の前にもっと卑しく泣き叫べ、もっと血で汚せ。
僕は前より上手く出来た事に心が紅潮していた。しばらくして遅刻したように僕の周りをミサイルが通り過ぎていく、当たるものか。どうせ適当に座標を狙って当たれば良いなんて思っているんだろうが、くだらない弾幕だ。ふふふ、でもこうやって避けながら並行して街並みを破壊するのも悪くない。なんだか、子供の頃、蟻の行列を踏みつけて遊んだ記憶を思い出した。人も同じだ、蟻のように無力に死んでいく。
僕はたぶんうっすらと笑みを浮かべていただろう。
頭の中はからっぽだ・・・何故なら
こんな遊び、たいして面白いだなんて思って無いだろうから。
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クソ、クソ、クソクソクソ・・・・・・!
クソがクソがクソがクソが!!!
宮城県を完膚亡き迄に滅ぼし、そのまま順風満帆に北海道も落とす気でいたのだ。それが・・・思い出しても反吐が出る。今ならはっきり言える、人間と言う奴は馬鹿だ、大馬鹿野郎だ。まぁ俺は無事だったが、北海道は残すものも無く全滅だ。連中はそれで全てが終わるとでも終わったのだろう。何度思い出しても本当にふざけている。
・・・でも、まさか本当に実装していたとはな。
核共有論
それで北海道はその全土が粉々に吹き飛んだ。それだけの規模の核兵器だった。人も森も山も川も海も、空も・・・その全部が核によって破壊され、放射能によって汚染された。恐らくアメリカの差し金だろうが、それを最終的に下したのは日本だ。日本の馬鹿な官僚共が、北海道を丸ごと消滅させたのだ。
俺の手によって殺されていれば、日本は美しいままであったのに。愚か過ぎて何も言う気になれない。ただ、こうなっては最早止む負えんな。
俺は各地にある自衛隊基地を潰す事、そして
日本の中心地、東京を目指す。
待っていろ、首謀者共々皆殺しにしてやる。