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神代 〜人類滅殺之儀〜   作者: かみしろ
4/10

大都市福岡




翌日、スマホでネットニュースを見てみた。このスマホは人であった時に持っていたスマホだ。まだ解約されては無いし、どうせ自分のものだから使えるうちは利用するつもりだ。


やっぱりどこも一面は、鹿児島市が一夜にして焦土と化したニュースで持ちきりだった。原因は謎だとしてるが、どこの記事も様々な憶測を描いていて面白い。一番有力な説が、北朝鮮による弾道ミサイルが直撃した。との見方だ。まぁ、それが一番の落とし所だろう。気がつくと僕は自分がニヤついているのに気づき、慌てて顔を正した。誰かに見られる心配などしてないが、神に最も近きにある僕が下衆な顔になる事は許されない。


今起こっている事は日本が生まれ変わる為の神聖なる儀なのだ。おくびにも私情を表に出す訳にはいかない。


それから、鹿児島を始め宮崎、熊本、大分、佐賀、長崎の主要な市町村を軒並みに破壊していった。はっきり言ってこの時点で僕は退屈を持て余していた。あれからまだ一週間、もう一週間と言うべきか、こちらが律儀に順番に都市を破壊しているのに、国は何ら行動を起こしていないのだ。足元から人民が食われていると言うのに何と言う怠慢なんだろう。おそらく、自衛隊じゃ対処不可能と割り切って大方米軍と協力を要請し、その調整に時間がかかっている。そんな所だろう。さすがに福岡に駒を進める頃には、何か対策が欲しい所だ。


そして、国もさることながらそこには住んでる人間はもっと酷いと思った。現実をまるで直視できないのか、破壊される直前まで平然と普通にしてる人間の多さと言ったら、呆れも通り越しそうになる程だ。まぁそれは、逃げようにも高速だったり幹線道路、さらに唯一の逃げ道でもあった門司トンネルを先回りで破壊したからでもある訳だが。綺麗に並んで止まってくれてる渋滞の列に糸を放すのは割と爽快だった。ちょっと火を入れただけでまるで花火のように引火爆発を起こし勝手に燃え広がってくれる。まぁ、派手な割にはあんまり人は死んでないようだが。


そして長崎市での作業を終えた頃には、神気の使い方も大分マスターしていた。それと同時に1256万程いた九州の人口の内、沖縄と福岡を除く人間はほぼ無に帰した。人口が1万にも満たない過疎地や、運良く飛行機で逃げた人間などを省いても軽く600万は駆除した計算になる。この時点で、自分は世界で1番人類を殺した存在になってしまったが、目標を考えるとかえってウンザリするだけだった。


神気の糸を街中に放出するスピードは格段に上がり、一糸が放てる破壊力もある程度調整できるようになる。どうやら糸は長ければ長いほどその破壊力は増すようだ。つまり、短く区切れば、その分だけ威力は収まり、さらに神気の消費もぐっと抑えられる。この発見が軍と衝突する前に分かったのは良かった。街を一瞬にして消し飛ぶ力を、わざわざ単一の戦闘機やヘリなんかで使いたくないしね。それに今後の端数になった人間を処理するのも楽になる。


そして、次は九州最大の都市である福岡だが、ここだけで人口はなんと510万も存在するのだ。

いかに人間というものが無計画なのかを嫌というほど思い知らされる。窮屈な住宅で引き締め合うように暮らし、毎日満員列車に箱詰めされ、道は渋滞し身動きすら取れない。少し考えりゃわかる事だ。なのに誰も疑問愚か、不満さえ感じてない。挙げ句の果てに子供が生まれるのを喜んでいる始末。大きなため息を吐く、それを殺す僕の身にもなって欲しいものだ。


全く、何が少子化なのだろう。

子が生まれない事に危機感を抱く前にもっとすべき事があるだろう?生産性の無い人間を論理感の痛まない範囲で、生きて行く為と言い訳でもして処分していけばいい。何でそんな簡単な事ができずに頭を悩ませているのか、理解に苦しむ。


ああ、いかんな。

人間である事の名残が僕にこんな無用の世話を焼きたがろうとしている。510万人を前にしてちょっと現実から離れたい気持ちになったのかもしれない。



「はぁ、早いとこさっさと滅ぼして人のいない美しい朝日が見たい」



それが僕の本音であり、神の願い。

そして新たな命の始りでもあるのだ。



-----------------



福岡をどう進めて行くか迷ったが、結局、大牟田市から北上するように久留米市を攻めた。と言うか、それ以外のルートは見事なまでに上空警戒が施されていたのだ。夜中に動く事はさすがに読まれていたのか、サーチライトが至る場所に設置されて、軍用ヘリや戦闘機、哨戒機などが慌ただしく飛び回っていた。おそらく久留米を捨て駒にして、太宰府や福岡市内に最終防衛ラインを構築したのだろう。ようやく、それなりに人類初の対抗戦力を目に前にでき、拍手を送りたい気分だった。



勿論、それらも全て破壊し、連中の牙を折るつもりである。結局どんな手段を講じた所で僕に勝てる見込みなどないのだ。それならばさっさと心を折って、無抵抗のままに死んでくれた方がいいと言うものだ。


さて、僕はいつものように準備を開始する。今回はまず飛び回るうるさい蝿から叩き落とす必要がある為、標的をそれらに絞る事にした。


色々レーダーなりで僕のことを探しているのだろうが、見つかりっこない。僕は今、たゆまぬ神気と、その器だけの存在。その姿こそ透明に出来ないまでも、何の反応も示さな......



それは瞬間敵だった。

何処から飛んできた無数の暴力が急に頭か振ってきたように僕に着弾した。器は瞬時に木っ端微塵になり、僕の神気さえも瞬間的に飛散した。


微かな意識の中で、落ちてゆく残骸を見た。




それは、僕のスマホだった。


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