鹿児島投下
本来、日本の最南端は沖縄だが、あえてそこは後回しにした。沖縄なんて名乗ってはいるが、あれは事実上のアメリカみたいなものだ。核兵器は完全に移動させたなんてニュースもあったが、まぁ嘘だろう。それに沖縄は離島も多く、互いに距離も離れていて面倒だしね。
離島に関しては沖縄に限らず全て後回しにするつもりである。まず最初にすべき事は国としての体を終わらせる事、つまり主要都市の破壊である。そこをクリアしない事には細かい掃討作業は出来ない。神気のコントロールにはまだ不安が残ったが、僕はもう滅べすべき都市の真上に構えていた。天気は曇り、時間は零時を少し切った辺りだ。
鹿児島は人口約154万、鹿児島市が約59万、霧島市が大分離れて約12万、そこから、鹿屋市、薩摩川内市と数万単位の街が続いている。最終的に1億以上の人間を殺す事になるが、鹿児島一つをとってもなんと多い数だと呆気にとられる。思えば何故そこまでにして人は増え続けたのだろうか?人間は当の昔に種の存続権は勝ち取っている。それなのにも関わらず、こうして今も無限に増えようとしている。理由は至極簡単だ。それが自然であると考えているから、まぁこう言ってはアレだが、結局、何も考えちゃいないのだろう。増えれば増えるだけ良いと思っいる。日本は人口のピークを達したようだが、だからと言って一億いる人間がすぐに消える訳じゃ無い。僕の見立てじゃ最終的に地球に残る数は百も満たないだろうと考える。それを全部自分がやる羽目になるのか。と、考えると今からでさえ億劫なので考えないようにしている。同志が居る事を願うばかりだ。
深夜の鹿児島市の夜景はなかなかの絶景である。
街灯が灯るだけでもこれ程までに明るいのかとさえ思う。
これに日があればさぞ雄大な桜島を堪能出来た事だろう。
まぁ、昼にまたこれば良いがその時にはもうこの夜景は無い。
神気は充分に練られている。
後はこれをあの街並みに投下するだけだ。
大きく深呼吸をする。
吸った空気は通り抜けるように何処かへ消えた。
肺も無いくせに呼吸の真似事はまだ出来るようだ。
視界を温感識別型へと切り替える。そこで意外な盲点を知って少し顔を顰めた。人の生命判断はこの温感識別で行おうと思ったが、いかんせん人間の温度が蟻のように小さく、識別が困難になっていた。恐らく、殆どの人間が眠りについているからだろう、体温がそれ程まで高くないのだ。
軽く舌打ちしたが、続行に移る事にした。
視界を神気色感型へ切り替える。
神気は目に見えない糸のような構図をしている。それを見るには独自に色付けしなければならない。僕は黄金をイメージして神気を見る。近いイメージだと某映画に出てくる巨大な芋虫からでる触手のようなものだ。それをゆっくりと街中へ投下していく。およそ数十本程が何かを辿る様に街へと降りていく。
そして最初の一本が建造物に触れた瞬間だった。
急激に全ての空間が吸い込まれるような衝撃の次の瞬間、物凄い爆風が巻き起こった。瞬時にして衝撃波の輪が辺りを鋭く切り裂く。少し間を空いて鼓膜が破れる程の轟音が辺りに響く。地に足が着いていたのならその地響きも凄まじいものだったに違いない。
たったの一本の放った神気の糸は、それだけで数十キロ圏内の建造物を一気に破壊させていた。こちらから見えるのは黙々と立ち上がる煙と、轟々に燃え上がる炎のみである。そして間を待たず次の糸が地上へと触れる。僕と言えば一つの糸が役目を終わる度に新たな神気を用意し、そしてそれをまた街へと投下するのみ。温感識別型へ視界を切り替える暇も無かった。
中々に疲れたが、時間は5時に差し掛かろうとしていた。
夜が明けるにつれ、徐々に街の状態が日に照らされていく・・・。
自分でやっておきながらその様子には愕然としたね・・・。
あれだけの街が瓦礫も何もかも消えて無くなっていた。
信じられない程奇麗な更地になっていたのだ。
そして更に信じられない事に、盆地の手前、山のギリギリの所で何故が火の手が全部止まっていた。何処を見ても白い煙が燻っている程度だ。これぞまさしく、神のなせる業というのだろう。疲れはあったが、それよりも武者震いの方が強い。なにせ、一夜にして僕は59万人の命を奪っ・・・・。
いや、居るな。
温感識別型のままだったから見えたが、芋虫のような赤い色がちらほらと蠢いているのが見える。これだけ更地にしたのにまだ生きてる人間が居た事には驚いた。そして、同時にしぶとい虫か何かを連想した。まぁさすがの繁殖力だけあって生命力もまずまずと言った所なのだろうか。僕はそれらを放置し、さっさと次の街へと移動を開始する。どうせすぐには行動出来ない。また神気を練らねばならない。だけど、目に見えた結果は確実な勝鬨であった。慣れればもっと多くの人間を無に還えす事が可能だろう。
当たり前だが罪悪感など微塵も感じなかった。
僕がした事は足元にある虫を踏みつぶしただけだ。
もし僕が殺しを楽しむような思考の持ち主なら、この役目に選ばれる事は無かっただろう。
人類は立った今から滅びる運命なのだ。
それが僕という存在、神代によって実行されるだけ。
ただ、それだけの事だ。
本日次話公開予定。