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神代 〜人類滅殺之儀〜   作者: かみしろ
2/10

始動





その神の名は伏せよう。何せこれから自分がする事を、その使命を口伝えでも他所に知られるのは不味い。だがあれはまごう事なき、疑う事なき、真なる日ノ本の神ぞ。あれはけして、そうけして夢などでは無い。私は、私こそがその神に命じられたのだ。



日ノ本に生きる全ての人を、我が子らを全て無にせよと......。



呼吸はもうしてない。だが自分の体を虫が這うのは不快だった。もう十分に仮初の肉はその体を成していた。まさかもう一度女の膣から出る訳にもいかない。しかしだからと言って虫が背中をなぞるのは勘弁であった。


体は動くようなので、ゆっくりと土を取り除く。

神気によって生み出された物にしては、まるで黄泉比良坂(よもつひらさか)を這う幽鬼のようだ。成る程、表に出てこれぬ以上、これが限界という訳か。


人であった事の記憶は未だに覚えている。気づけばずっと同じような事、物を見ていたようなす気がする。なのであろうか、その日が来た時こそ自分という存在を嬉しく思った事はない。

痛みはあったが、最後まで笑ってその首を斬ることができた。


そして、今宵目覚めた。


この仮初は言うなれば藁人形、さもすれば形代。

どちらにせよ神気なくば体にもならん。


神と我が願いは一致した。


我これより神代(かみしろ)と名乗り、神の血を脈々と受け継がんその人らを...全て滅ぼすまで!


--------------



ふーっ。大分思考が安定してきた。


名は神代か、まんま神の名代と言った所か。前世であった時の名前も覚えているようだけど、まぁこれはどうでも良いだろう。


いきなり土からモゾモゾと這い出た時は、支離滅裂すぎて何がなんだかよく分からないままで覚醒したもんだから、それを上手く落ち着かせるのに大分時間がかかってしまった。外見は相変わらず生気の感じない細い男だが、思考はそれよりも幼くなるようにした。この辺りが総合的に最適解だと思ったからだ。


神気(しき)と呼ばれる目に見えない、強力な糸によって僕は存在している。そして、それをより強力に扱えるようにして、準備が整い次第人間を片っ端から処分して行くのが僕の使命だ。

とりあえず、離島を除く下は鹿児島から、上は北海道まで順番に滅ぼすつもりだ。



そりゃあ僕だって最初は驚いたさ。強い光が表れて、それが僕に「人類を全て消してほしい」なんて言ってきた時はね。でも誰だって一度は「こんな世界がなくなれば良い」なんて思った事があるはずだ。若い時なら一時的な感傷でも、大人なりくだらない理不尽を受けるたびにそれは心の奥で燻り続けて行く。僕があれに出会ったのはそんな時だった。条件は至って簡単だった。それは神の前でその覚悟を示す事、


つまり、死ぬことだ。



そして紆余曲折あって、ようやく今に至る。神気のコントロールも大分安定してきた。あとはさっさと人類を駆逐するだけだが、その前に戦略的なおさらいをしておこう。


神だと思うが、あれが一体なんなのかは名言できない。ただ強い光から、何となくとある神様を連想しただけだ。それがもし仮に日本の神だった場合、日本の神が、日本人を滅ぼすと言う事になる。それは神話的にも酷だろうと思った次第だ。神のお告げは一方通行だったので、何故いきなり人類抹殺の勅令を出したのかは謎だ。


でも、それはさほど気にする事でもないだろう。

おっと、話が逸れちゃったか。僕は前でも自己中だったから、誰かに何かを説明するのは苦手だ。


気づいた人は気づいたと思うが、今回のターゲットは別に日本人だけじゃない。全人類、つまり言葉の通りだ。その日本担当が僕という事になる。もっとも、他にも神代が存在すればの話だが。その理由も至極単純で僕の前世が日本人だったからだと推測している。


それに日本を最初に攻略する理由として、攻略しやすい条件が整っているからでもある。自分としては大きく対策を立てられる前に、アメリカと中国を一気に叩くべきだと考えていたが、核兵器の対策がまだ未知数だ。一度使用すればそれだけで地球の生態系が終わることになりかねない為、この案を一時保留にした。



日本攻略はその間の時間稼ぎと、実験台である。

幸い日本はこれと言った防衛力もなく、攻める側から見れば丸裸も同然だ。アメリカと同盟もどこまで持つか分からない。その辺りをうまく刺激せずに進めようと思うが、それも連中次第と言った所か。


まぁまずは実戦して、色々と試さなきゃならない。最初のターゲットは鹿児島である。人口はおおよそで154万と言った所か。狼煙にしては十分だ。



では、宴を始めるとしようか。


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