コミック2巻 発売記念SS お相手は……?
『姉のことが好きな筆頭魔術師様に身代わりで嫁いだら、なぜか私が溺愛されました!? ~無能令嬢は国一番の結界魔術師に開花する~②』
モンスターコミックスf様より11/08日に発売しました!ぜひお手に取ってくださいね♡
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愛する人──テティスとの生活になんの不満もなかったノアにある日、一つの不安がよぎった。
「テティス、そろそろ読み終わった?」
夕食を済ませたあとは、自室でテティスとゆっくり過ごすのが日課だ。
今日の仕事内容や楽しかったこと、今度の休日にはどこに行きたいか、何をしたいかなど話す、それはそれは至福の時間だった。
だというのに、隣に座るテティスは手紙を読むのに没頭している。
読み終えるのを待っていようかとも思ったが、しばらく経ってもテティスは手紙から目を離さなかった。
痺れを切らしたノアが問いかけると、テティスはようやく顔を上げて美しい瞳を向けた。
「ノア様、すみません。もう少し……」
「……まだ読み終わらない?」
「いえ、読み終わってはいるんですが、繰り返し読みたくて」
テティスがこんなふうに言ってくるなんて珍しい。
相当読みたい手紙なのだろうと考えたノアは、これ以上口を出すことはなかった。
(だが、気にならないのとは別だ)
手紙の内容を盗み見するのは流石に気が引ける。
それならば送り主の名前くらい──と、ノアはテーブルに置かれた封筒にちらりと視線を送った。
(マイケル・ヴィート……男か)
その名前の達筆なこと。おそらくしっかりと教育を受けた男性だろう。
(……気に食わない)
別に、テティスのもとに男性からの手紙が届いたのはこれが初めてではなかった。
昔こそ無能だと揶揄されていた彼女だが、今やこの国を誇る結界魔術師だ。
任務で助けてもらった礼に手紙を送るもの、家同士の繋がりを持つためにあえてテティスを選んで手紙を送るものや、ファンレターのようなものもある。
そこに、男性が1人もいないかというとそうではなかったし、今まで手紙の一つや二つにノアが感情を揺さぶられることなどなかったというのに。
「テティス、その手紙はそんなに大事なのかい?」
「え?」
「あ……いや、今のは……」
言うはずではなかった言葉が自然と漏れてしまい、ノアは片手で口を押さえた。
しかし時既に遅し。
気まずそうにするノアに対して、テティスは手紙をテーブルに置き、彼に向き合った。
「す、すみません……! ノア様がいるのに、手紙に夢中になってしまって……」
「いや、さっきのは俺が──」
「その、初めて幼い子から憧れているという内容のお手紙をいただいたので、嬉しくてつい」
「え……幼い子ども?」
この達筆の字が?
不思議そうな顔をするノアに、テティスは「あっ」と声を上げた。
「この手紙自体は送り主のお父様が書いてくださったようです! まだ字も書けない子が私に憧れてくれているみたいで、どうしてもその思いを伝えたいから代筆しました、って」
勝手に不安になって、醜い感情まで抱いていたことを嫌でも理解したノアは、ハァ……とため息をついた。
「ノア様、どうされたんですか……!?」
「……ううん、何でもないよ。俺は小さい男だなぁって思っただけ」
「? ノア様は一般的に長身の方だと思いますが……」
「ハハッ、そうだね。そういうことにしておこっか。それで、手紙にはなんて書いてあったの? 良ければ聞かせてくれないか?」
「もちろんです! あのですね──……」
その後、テティスは幸せそうに手紙の内容を話してくれた。
ときおり恥ずかしそうにする彼女の髪を手で優しく梳きながら、ノアは耳を傾けたのだった。
お読みいただきありがとうございました!
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