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コミック1巻 発売記念SS 〇〇しないと出られない部屋③

 

【テティス&ノア】




 焦った顔のノアと、プリプリ怒ったセドリックが異空間から戻ってすぐのことだった。

 またもや魔物に異空間へと取り込まれてしまったテティスは現在、ノアに真っ白で無機質な部屋の中で抱き締められていた。


「ノア様、こんなことをしている場合ではありません! 早くここから出てセドリック様のところへ行かないと……!」


 テティスもノアも、この空間に取り込まれるのは二回目だ。

 初見よりも動揺は少ない上、唯一の扉の上にあるプレート見て、その条件をクリアしなければここから脱出できないことは重々わかっている。


 ……ノアわかっているはず。はず、なのだ。

 けれど彼は、異空間に取り込まれてからというものテティスを抱き締めてばかりで、脱出に向けて動こうとしない。

 しかもノアの胸板に顔を押し付けられてしまっているテティスでは、条件を認識することも叶わなかった。


「ノア様〜〜! 一旦離してください!」

「ごめんね、テティス。もう少しこのままでいさせて。……さっきのことは忘れたいから」

「さっきのこと?」


 そういえば、ノアとセドリックがどのような条件をクリアして脱出したのかを聞いていない。

 ノアの様子からすると相当大変だったのだろうが。


「あの、どんな条件だったか聞いても?」

「……そうだなぁ。俺は話しても良いけど、テティスは聞かないほうがいいかもね」

「と言いますと……?」


 テティスの問いかけに、ノアは彼女の背中に回していた腕の力を少し緩める。

 そして、テティスの額に自分の額をコツンと合わせなから、片方の手で彼女の唇をなぞった。


「聞いたら、いっぱい消毒を付き合ってもらわないといけなくなるから」

「消毒……?」


 そこで、テティスはハッとした。


「まさか、お怪我を!? さっきセドリック様が怒っていたご様子だったのは、もしやノア様が脱出のために無理をしてお怪我をしたからなんじゃ……」

「いや、そうじゃ──」

「こうしちゃいられません! 早く条件をクリアしないと……!」


 テティスはノアの胸板から自由になった隙に、プレートを確認する。


「“互いに名前を呼び捨てしないと出られない部屋”……う、うそっ」

「ここでもう少し癒やしてほしかったけど、見られちゃったならしょうがないね。ね、俺はもう何度もテティスって呼んでるから、次はテティスの番だよ」

「〜〜っ」


 ノアのことを呼び捨てにしたことなんてない。

 彼は何度か呼び捨てで呼んでほしいと言っていたが、呼び方を変えたら職場や社交界でつい出てしまうかもしれないからと、これまで断ってきたのだ。


「ほらテティス、頑張って。俺はずっとここでテティスを抱き締めていても構わないが、テティスは早く出たいんだろう?」

「うっ、分かり、ました」


 テティスは一度ノアに抱擁を解いてもらうと、呼吸を整える。

 そして、意を決して彼の顔を見つめた。


「……ノア」

「くっ……! 照れた顔で俺を呼び捨てにするテティス、か、可愛すぎる」


 ノアが悶絶する一方で、扉がガチャリと開く音が聞こえた。


「っ、早く出ましょう、ノア様!」

「え……もう呼んでくれないの?」

「だ、だって恥ずかしいですし……それに、もしまた呼ぶとしても、二人で屋敷でゆっくりしている時にでも……」


 テティスの言葉に、ノアはカッと目を見開くと、彼女を素早く姫抱きにした。


「きゃあっ」

「そういうことなら、早くここから出て魔物をぱぱっとやっつけて屋敷に戻ろう。そして、今夜にでもまたノアと呼んでほしい。というか絶対呼んでくれ」

「そ、そんなにですか!?」

「ああ、テティスにノアと呼ばれると、この世の言葉では言い表せないくらい幸せになれるんだ」

「そんなに仰っていただけるなら……」


 ──たまには、ノアと呼び捨てするのも良いのかもしれない。そうテティスは思った。



 その後、髪の毛を振り乱し、怒涛の勢いで魔物を倒すノアに、一体何があったんだとセドリックはドン引きしたとかしていないとか。




 〜〇〇しないと出られない部屋、完〜

お読みいただきありがとうございました!

単行本1巻も、よろしくお願いいたします……!

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