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5話 会ったことありましたっけ?

ブクマ、評価ありがとうございます!

更新頑張りますので引き続きお付き合いくださいね。

 

「本当にこのお姿でよろしいのですか……?」


 テティスが意気込んでからしばらく。ディナーの時間の直前、常に笑顔だったルルの表情が強張っていることに気付きながらも、テティスは力強く頷いた。


「ええ! この方がきっと、ノア様は喜ぶはずだから!」

「……そうだと……良いのですが……」


 ヒルダの顔立ちに似るように、ルルに頼んでかなり濃い目の化粧を施してもらったテティス。

 輿入れ時に着用していた古いデザインのドレスもディナー用に着替えようという話になったのだが、それも普段着るようなおとなしいデザインではなく、かなり主張が強いブルーのドレスを着せてもらった。


(こんな豪華なドレス着たことがなかったけれど、ルルの助けがなきゃ到底着れなかったわね……んー、それにしても、似合ってるかどうかは別にして、多少お姉様に近づいた気がするわ!)


 髪色はどうもならないので、ルルに頼んで毛先を巻いてもらうことで華やかさを演出し、テティスは姿見で見た自身の姿に概ね満足気である。


 しかし、美意識が高く、かつテティスがヒルダに寄せようなどと思っていることを知らないルルは、不満げに声を漏らした。


「テティス様にはこちらのピンク色のドレスや、ミントグリーンの淡い色のドレスの方がお似合いだと思うのですが……」


 嫁いで数時間で、すっかり打ち解けたテティスとルル。

 ルルのアドバイスは大変ありがたいのだが、今回ばかりはとテティスは苦笑いを零した。


「選んでくれてありがとう、ルル。今度着させてもらうからね!」

「必ずですよ……!! それに、お化粧ももっと薄くでも良いと思います……! 元から整ったお上品なお顔立ちだというのに……ここまで手を加えては……」

「お、お上品なんて初めて言われたわ! ありがとう! けれど、地味な私にはこれくらいはお化粧をして丁度良いのよ!」

「……ううっ、勿体ないです……」


 ──まあ、確かに、今日の化粧は如何せん濃すぎたような気がすることもないようなあるような。


 しかし、ヒルダに寄せるにはこれくらいのほうが良いだろうと、テティスはドレッサーの前で一人頷くと、先程ルルが着けてくれた胸元の宝石に目がいった。


「これってルビーよね……本物、よね……?」

「当たり前じゃないですか! 今着けているものの他にも、サファイアもダイヤモンドもオパールもエメラルドも、全て本物です。もちろん、ドレスも超有名な仕立て屋に頼んで作らせた一級品ですよ」

「そ、そうなのね……わぁ、すごーい……」


 ドレッサーに並ぶ数多くの宝石類に、クローゼットの中にある、誰も袖を通していない美しい数多くのドレス。これらは全て、ノアが事前にテティスのために用意したものである。


(殆どのドレスは淡い色だったり、可愛らしいデザインのものばかりだったけれど、お姉様は大人っぽいデザインや濃い色を好んでいたのよね。ノア様はそこまでは知らなかったのかしら?)


 そもそも、男性がそこまで女性のドレスについて詳しいはずもないし、この準備されたドレスは単純にノアの好みという可能性もある。


(ま、深く考えなくても良いわよね。けど……本当に、私の好みのドレスばかり……実家ではお古の地味なドレスばかり着ていたけれど、本当はルルが持っているような淡い色のドレスが好きなのよね……。それに、この顔だもの。自分でも濃い色よりは淡い色のドレスの方が似合う自信があるわ)


 そんなことを思いながらも、一人のメイドが「ディナーの準備が整いました」と連絡をくれたので、テティスはルルに案内をしてもらいながらついて行く。


 先に部屋に入って待っていようと思っていたテティスだったが、入り口の扉に凭れかかって既に待っているノアに、驚いて「へっ」と素っ頓狂な声を上げた。


「本当は部屋まで迎えに行こうかと思っていたんだが、メイドが既に伝えたと言っていたからここでテティスを待っていたんだ」

「な、何もここでなくとも席について待っていてくだされば……!」

「ん? ここの方がほんの少しでもテティスに早く会えるだろう?」


 ノアの言葉に、ついテティスの頬がぽっと赤く染まる。


(って、違うから! ノア様は私にではなくお姉様に向けて言っているのだから!! 勘違いはダメ! 絶対!)


 ついときめいてしまった自分にムチを打って、テティスは出来るだけ冷静にありがとうございますと告げると、ノアに差し出された手に、おずおずと自身の手を重ねた。


「さあ、席に案内するよ。こちらへどうぞ」


 流石公爵というべきか。慣れた手付きでエスコートされ、テティスはミスがないだろうかと心配しながら、着席すると、斜め向かいの上座に着席したノアをちらりと見やる。


 再びふわりふわりと花を飛ばしながら、こちらをニコニコと見つめてくるノアに、テティスはどうしようかと悩んで、とりあえず笑い返した。


「今はお化粧をしているんだね」

「はい! そうなのです! ど、どうでしょうか?」

「そうだな……テティスなら化粧はしてもしなくても、どちらでも構わないと言ったら、失礼だろうか」


 一瞬、安易に化粧が濃すぎると言っているのだろうかと思ったテティスだったが、次のノアの言葉にその疑念はすぐさま解消された。


「テティスはどんな姿でも綺麗だから。だが、俺のために化粧をしてくれたのなら、ありがとう。嬉しくてニヤけそうだ」

「……っ、いえ。こちらこそ、ありがとうございます」


 ヒルダに寄せた化粧を喜ぶわけでもなく、かと言って「そんな化粧如きでヒルダに似るわけがないだろう! ヒルダを侮辱するな!」と激怒されるわけでもなく、想像していなかったノアの反応に、テティスは気恥ずかしくてゴホォン! と力強く咳払いをした。


 すると、ノアは幸せそうに花を飛ばしながら、テティスに話しかけた。


「俺が準備したドレスを着てくれたんだね。嬉しいな。とても似合っているよ、テティス」

「あ、ありがとうございます。こちらこそ、沢山のドレスやジュエリーを用意してくださって、本当にありがとうございます。こんなに素敵なドレスを着たことがなくて……どのドレスにしようか悩んでしまいました」


 テティスの言葉に、ノアは一瞬薄っすらと目を細めると、すぐさま元のにこやかな表情へと戻った。


「そうか。それで今日は深いブルーのドレスを選んだんだね? ()()()()()()淡い色の可愛らしいドレスが似合うかなと、そういうデザインを多めに選んでおいたんだが、君はそういう大人っぽいドレスも着こなしてしまうんだね。本当に、綺麗だ」

「…………ほ、褒め過ぎでは……」


(……って、ん? 今なんて言った? 私のために選んでおいたって言った?)


 伯爵邸でも出てこないような、美しい前菜を口にして、「美味しいです!」なんて感動しながらも、テティスの頭の片隅からは疑問が消えなかった。


(どうして? 私の見た目にお姉様の面影を感じているなら、(テティス)に似合いそうなドレスを選ぶ必要ある?)


 そもそも、ノアはテティスの見た目を知らないはずだというのに。


 というのも、テティスは貴族の令嬢ということで両親から強制的に社交場に参加するよう言われていたが、その実はただのヒルダの引き立て役だった。


 有能な姉と比べて無能な妹という烙印を押されているテティスに話しかけてくる者はおらず、あったとしてもヒルダの取り巻きで、悪口を投げかけられるだけ。殆どは壁の花だった。


 だからテティスは、社交場では誰よりも暇を持て余していた。暇過ぎて誰が参加しているか完全に把握できるくらいに。


(ノア様のような容姿端麗な方、見たら印象に残ってるはずだもの)


 不思議に思いつつ、一旦疑問を飲み込む。


 とりあえず、今のところ分かったことと言えば、ヒルダに寄せて化粧をしたり、姉が普段着るようなドレスを着用しても、ノアがヒルダに対して思いを馳せたり、喜んでいるような感じがしないということ。

 いや、内心は何かしら思っているのかもしれないが、それはテティスの知るところではない。


(んー、こんなことくらいでは、やはり似ても似つかないのかしら。それとも、私の考えが間違ってる……?)


 闇が深まったテティスだったが、口内に涎が溢れ返りそうになるほどの美味しそうな牛肉のメイン料理に、とりあえず良いかと、一旦思考を放棄した。

読了ありがとうございました! 


◆お願い◆


楽しかった、面白かった、続きが読みたい!!! と思っていただけたら、読了のしるしにブクマや、↓の☆☆☆☆☆から評価をいただけると嬉しいです。今後の執筆の励みになります!

なにとぞよろしくお願いします……!

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