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21話 テティスとノアの出会い

 

「上級貴族だけが参加を許されていた、王家主催のお茶会を覚えているか? あのとき俺とテティスは会って、少しだが話しているんだ」


 そのお茶会では、テティスは両親とヒルダと、四人で参加していた。


 しかし、両親が周りの貴族に誇らしく紹介するのはヒルダばかりで、テティスはついでの扱いだった。相手の貴族も、そんなテティスに哀れな目を向け、建前の挨拶だけ済ますと、それからの会話はテティスだけ蚊帳の外だった。


 そんなとき、話が長くなるため適当に待っていなさいと言われたテティスは、家では殆ど食べさせてもらえない苺のケーキを食べるため、パタパタとドレスを揺らす。

 立食形式のお茶会だったため、テティスはその足で目的地に辿り着くと、周りから躾がなっていないと思われないように気をつけながら、ケーキを頬張った。


『ん〜! 美味しい……』


 ヒルダの引き立て役として連れて来られたお茶会だったけれど、ケーキが食べられるなら耐えられる。

 そんなことをテティスが思っていると、オッドアイの少年と目が合った。


 右目が緋色、左目が碧色の整った顔をした少年がじいっとこちらを見ているのに気づいたテティスは、気まずさに耐えられず『貴方も食べる?』と声をかけた。


 これが、テティスとノアの初めての会話だった。


「ケーキを頬張っている君があまりにも可愛くて、ついじいっと見てしまったんだ。最後に残しておいた苺を食べているときなんて、もうほんっとに、可愛くて……」

「……っ。あのときの少年がノア様だったなんて……。だから好物を知っていたんですね……。しかし、ノア様の今の瞳の色は薄い菫色……オッドアイではないですよね?」


 テティスの疑問に、ノアはゆっくりと頷く。


「コントロールしきれないほどの膨大な魔力を有している者は、稀にオッドアイになるみたいなんだ。当時からそれは知られていたんだが、中々不吉というイメージが拭われなくてな。とはいえ数年前、魔力を完全にコントロール出来るようになってからは、緋色と碧色が混ざった、今の菫色の瞳になったから、もう誰も俺のことをそんな目では見ないが」


 ノアの両親はそんなことは気にせずに愛してくれたので、それ程辛い幼少期ではなかったが、あんなふうに話しかけてきた同世代の人間は、テティスが初めてだったので、ノアにとってテティスは忘れられない人になったのだ。


「私はその……多分ケーキに夢中で……それに、私自身が誹謗の対象だったので、あまり人の個性に気をやる余裕がなかったと言いますか……」

「ああ。それでも俺は嬉しかったんだ。君が話しかけてくれたことも。俺にかけてくれた、あの言葉も」


 それからテティスとノアは、互いが周りから好奇の目を集めてしまうことを危惧して、茶会から抜け出して、少し離れたガーデンへ訪れた。


 二人して芝生の上に腰を下ろし、自己紹介をするのも忘れて、様々な話をしたのである。


「あの言葉、ですか……?」

「そう。……当時、テティスが魔力が少ないことで無能だと言われていることをあまりよく知らなかった俺は、テティスにこう愚痴ったんだ。『魔力が多すぎるせいで人に嫌われるオッドアイになるくらいなら、こんな魔力はいらない』って。……テティスからしてみれば腹を立てたっておかしくないのに、君はなんて言ったと思う?」


 ノアは泣きそうな顔で、穏やかに笑って見せる。

 そんなノアの表情に、テティスの胸がきゅうっと音を立てた。


 ──『人に冷たい目を向けられるのって辛いよね。分かるよ。けどね、沢山魔力があったら凄い魔術師になれるかもしれなくて、そしたら、困っている人を沢山助けることができるんだよ! それはとっても、とーーっても、嬉しいことだと思わない?』


 今でも、そう言ったテティスのことを思い出すと、ノアは胸が弾んで仕方がなかった。


「そう、目をキラキラと輝かせて言ったテティスのことを、俺は好きになったんだ」

「…………っ、ノア様……」

「魔力のコントロール練習に、隣国の魔法学園への留学、突然両親が事故で亡くなって、公爵を継いだり、筆頭魔術師も兼任していてあまりに多忙で、テティスに婚約の申し出をするのがかなり遅くなってしまった。……実家ではさぞ辛い思いをしただろう? 済まなかった」

「ノア様が謝ることではありませんわ……!」


 ブンブンと首を横に振ったテティスは、ノアに掴まれた手を力強く握り返した。

 そして、じいっとノアの顔を見つめる。


「私を愛してくださって、ありがとうございます。とっても、とっても、嬉しいです」

「ああ。テティス、君が好きだ。君だけが、好きなんだ」


つまり、淡い色のドレスが用意されていたのも、そのほうがテティスに似合うと思ったから。

嫁いできてすぐ快く迎え入れてくれたのも、使用人たちが優しいのも、ノアの甘い言葉も全て。


(お姉様じゃなくて、ずっと、私のことを……)


 ──その瞬間。テティスの手首にあるブレスレットが眩い光を放った。


 あまりの強さにテティスたちは目を瞑ると、それはすぐさま元の輝きのないブレスレットに戻り、テティスとノアは同時に目を見合わせた。


「今のは、今までとは比べ物にならないほどの光でした……もしかして、また魔力が増加したのでしょうか?」

「その可能性は大いにあり得るな。……理由は分からないが、自分の魔力量や結界魔術の精度は把握しておいたほうが良い。テティス、疲れているだろうが、今から結界魔術を──」

「テティス様失礼いたします! あ!! やっぱり旦那様こちらにいらしたのですね!!」


 するとその時、ノアの言葉を遮るようにして「探しました……!」と焦った素振りでルルが入ってくる。


「何ごとだ」と立ち上がったノアに、ルルは慌てて口を開いた。


「大量の魔物が、一斉に王都に向かって来ていると、たった今リュダン様から連絡がありました!!」

「「……!」」

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