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17話 魔力増加の原因を考えよう

 

 魔物の森の調査の次の日。


 急ぎ仕事を終わらせて帰宅したノアは晩餐時、人払いをしてから、いつもと比べてややぼんやりしているテティスに声をかけた。


「テティス、今日は一日どうだった? 試してみたかい?」

「はい。その件なのですが……」


 テティスは昨日、突然、魔力量を測るブレスレットが眩く光り、かつ結界魔術を発動することができた。


 そして、それは昨日だけの突然の能力だったのか、それとも日を跨いでもできるのかを検証するため、ノアが魔法省に行っている間、テティスは部屋に籠もって結界魔術が発動するか実験をしていたのである。


「今日も結界魔術は作動しました。そこで結界の強度や範囲、発動回数を調べるために何度も試したら、あんなにできるとは思わなくて少し疲れてしまいました……」


 ──ああ、だから少しぼんやりしているのか。

 そう納得したノアは、食事を摂りながら、テティスが試した結界魔術についての詳細を聞いていく。


 そこで、テティスの証言から、彼女の魔力がかなり増えたことを確信したノアは、おもむろに口を開いた。


「おそらく後天的に魔力が増加したことで、元から素質は持っていた結界魔術の能力が使えるようになったんだと思う。だが、突然魔力が増えた原因が分からないし、これが永久的に続くかも分からない。もう少し何か分かるまで、この件は俺とテティス、セドリックの三人だけの話にしようと、今日セドリックと話していたんだが、構わないだろうか? 騒ぎ立てても何も分からないじゃ、研究員たちが謎の解明に期待した分落ち込むだろうし」

「はい! 勿論です」


「それにしても、一体何でなんでしょうね……?」と不思議そうな顔をしながらも、どこか嬉しさを孕むテティスの表情に、ノアは頬が綻ぶ。


 長年、魔力が少ないことで辛い目に遭ってきたのだから、テティスが喜ぶのは当然の反応だろう。


「テティスが嬉しそうで俺も嬉しい。これで、夢にかなり近付いたな」

「ノア様……」


 我が事のように喜んでくれるノアに、テティスの胸はドキドキと音を立てる。


(こんな素敵な人、もっと……)


 すると、手首に嵌めてあるブレスレットが、瞬く間に光りだしたのだった。


「えっ、どうして……!」

「……っ、これは昨日よりも……!」


 二人の驚きの声と同時に、その眩い光は収まっていく。

 テティスは戸惑いの瞳でノアと目を見合わせた。


「もしかして、また魔力が増えたのでしょうか……?」

「あり得るな。……光の強さが魔力量を示すが、昨日よりも眩かったとすれば、やはり──」


 テティスはゴクンと喉を動かしてから、手を胸の前辺りに持ってくる。


 ノアがコクリと頷くのを確認してから、昼間に幾度とやった結界魔術を発動させた。すると。


「やっぱり、昼間に全力で張った結界よりも、強度も範囲も増しています……! 昨日今日で私の技術がそれほど向上するとは思えませんから、やはりこれは……」


 昼間は、自身の部屋を覆う結界を作るのでやっとだった。

 しかし今は、ダイニングルームだけではなく、テティスの感覚で屋敷の半分ほどは覆えるほどの結界が張れるようになっている。


 今までの努力のおかげか、結界を発動するまでの時間も短く、結界に乱れもない。

 強度も上々で、ヒルダたち結界魔術師の結界を近くで見てきたノアからしても、テティスの結界はなかなかに良い質だった。


「テティス、この結界を毎回できそう?」

「何度か試してみないことにはなんとも……継続時間や、魔力の限界量も知らないので、また色々と試してみます!」

「ああ、無理だけはしないようにね。絶対だよ」


 絶対を強調され、ノアに心配されているのだと思うと嬉しくなって、テティスの頬がポッと色づく。


 そのまま控えめに頷くと、そんなテティスに、ノアは嬉しそうにふわふわと喜びの花を咲かせたのだった。


「あ、そういえば一つ、報告というか、確認があるんだが良いか?」

「はい、何でしょう」

「今度、殆どの上級貴族の参加する夜会のことなんだが……」


 夜会での話なら、今朝ルルから少し聞いていたので、テティスは先読みして問いかけた。


「私も参加するかどうかということですか?」

「ああ。一応可能な限りは婚約者を同伴するようにとはなっているが、別にテティスが嫌なら──」

「いえ、行きますわ。行かせてください!」


 まさかテティスがそう言うとは思わなかったのだろう。

 ノアは僅かに瞠目してから理由を問いかけると、テティスは少し顔を背けてから恥じらいだ表情を浮かべた。


「ノア様となら、大丈夫ですから」

「……!」


 テティスは今まで、社交界で針の筵だった。

 突然の魔力増加についても今はまだ公にするつもりはないことから、おそらくそれは今度の夜会でも変わらないだろう。


 否、ノアの隣りにいるときは直接何かを言ってくる者はいないだろうが、その代わりにひそひそと陰口を言われることは増えるかもしれない。


 ノアはそのことが分かっていたので、いくら貴族の務めとはいえ、テティスを無理やり連れて行くなんてことしたくなかった。

 テティスが不安に思うようなことは、可能な限り排除したかったのだ。


「それは、どうして?」

「そ、それはその。ノア様と一緒なら、きっと夜会は楽しいと思いますし……それにその、正装姿のノア様も見てみたいと言いますか……」

「…………! テティス……君って子は……」


 しかし今のテティスに、我慢したり、無理をしている様子はない。

 どころか、言葉の端々が弾むように聞こえることからも、夜会を楽しみにしているような節さえ感じられた。


「なら、とびっきりお洒落しないとな」

「はい! とっても楽しみです!」

「テティスも楽しみにしてるよ。まあ、テティスは天使のように清らかで可愛いから、何を着ても似合うんだが」

「〜〜っ」


 ノアの言葉にテティスは言葉を詰まらせながら、それからの食事の時間を楽しんだ。



 ◇◇◇



 しかし、テティスは忘れていたのである。


 何故なら、夜会の日まで、結界魔術の練習や、日々の勉強や体力作り。その他にもダンスの練習や、マナーの確認、夜会のために新たに仕立てたドレスの試着など、多忙を極めていたからだった。



「そうだわ……この夜会って、お姉様も参加するんじゃない……!! つまり、ノア様とお姉様が会ってしまうということ……!」


 一番大事なことを、夜会当日まですっかり忘れていたテティスは、突然大声を出したことにルルに心配されながら、身支度を済ませていくのだった。

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