会社の教訓その2:出来る人から学ぼう
人事とは何をする職業なのか簡単に説明を受けた家庭円満の神。しかし自分の世界に人事ができるものがおらず穏便の神の世界で貸してもらえないか頼むことに
穏便の神が自慢げに微笑みながら答えた。
「人事とは、その場に応じた人種や人数を決めるものです」
「適材適所に人員配置を専門とする職業です」
家庭円満の神は頭が真っ白になった…
「それは神々がおこなうことではないのですか?」
「そんな大切な権限をその世界の人種に任せるのは不安ではありませんか?」
「すべてのことを神々が毎回決めていたらキリがないので自分達のことは自分達で解決してもらわないと疲れますよ」
「確かに…けど私の世界にその『人事』をおこなえるものがおりません」
「もしよかったら穏便の神の世界より『人事』をお貸して頂くことは可能でしょうか?」
「人間側と魔王側で各1名づつでお願いしたいです」
「いいですよ。これは貸し1ってことでお貸しします」
「こちらの世界にいる人事は私の方で選定しておきますね」
「はい!ありがとうございます」
「これで私の世界にも平和がやってくるのですね」
家庭円満の神は油断していた!
穏便の神は人事の職業を作った神ではあるが、人事ができるわけではない!
きっと凄腕の人材を選んでくれると思い込んでいた家庭円満の神である…。
「ん〜誰にしたらいいかな〜」
鼻歌を歌いながら自分の世界の人種を眺める穏便の神。
「人数が多い組織に入っている人事を送り込んだらいいかな〜?」
「その中から人事ができる人間を適当に2名選ぶだけって簡単な仕事だな」
「これで貸しを1つ手に入れれるなら笑いが止まらない」
「私が困った時に使わせてもらおう」
いろいろと見ている中で日本の国が選ばれた。
「よし!この3,000人が働いている大手企業の人事にしよう『柳瀬 鉄男』で決まり!」
「あともう一人選ばないといけないの面倒だな〜」
「この人間の近くに人事している人間いないかな?」
「お!隣にいる人間も人事しているからちょうどいい。この人間で決まり!」
たまたま通勤中に横にいた『岡田 久義』が選ばれた。
彼もまた偶然にも人事を担当していたが、『柳瀬 鉄男』に比べて働いている会社の環境が大きく異なる。
いわゆるブラック企業に勤めている。社員数が30人で人材を道具でしか見ていないワンマン会社である。
『岡田 久義』は社員がすぐに辞めていくので毎日人員数の確保が大変になっていた。
「も、もうだめだ…。最後に会社を休んだのいつだ…。」
今にも倒れそうになりながら吊り革を握るが、倒れる手前である。
「今日の新人面談が8件も控えているんだ!ここで倒れたら社長に何言われるかわからない」
自分に気合を入れ外を見た瞬間、周りが真っ暗になった…。