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【連載版】気づいた時には大賢者の娘になっていた 〜最強の魔法使いの父に溺愛されながら、大賢者を目指します!〜  作者: 高八木レイナ
第一話 大賢者の娘

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四 お掃除

 まず、最初に行ったのは、屋敷の掃除だった。

 私の部屋として与えられた二階の一室はゴミこそなかったが、蔵書がそこここに高く積まれており、歩くたびにホコリの雪の中で足跡が残る。

 ベッドもあったが、いつから干してないんだろう……と絶望してしまうほど臭い。

 私は横になることはできず、朝を迎えた。


 空がうっすら明るくなり始めた頃、私はそうっと階段を降りて、台所に忍び込む。

 朝食を何か作ろうと思ったのだけど……どこに食材があるのだろう。見たところ、ゴミの山脈しかない。


「う〜ん……どうしよう」


 一応数日分の食べ物は家から持ってきているが、黒パンと果物くらいしか用意はない。

 ふと、台所の隅に私の身長くらいの大きさの四角くて白い箱のようなものを見つけた。そこに魔法の波動を感じる。

 ──もしかしたら、水を家に引く魔導具みたいに、何かの役割があるのかもしれない。

 そう思い、全面いっぱいにある蓋を手前に引っ張った。

 すると冷気が内部から出てくる。


「え〜と……氷室?」


 王宮にはあると聞いていたが、こんな小型のものが作られているなんて聞いたことがない。これも、きっと父が開発したものなのだろう。

 中には、何の生き物か分からない肉が吊り下げられていた。長い緑色の毛がびっしりと生えた、黒い鉤爪がついた手……まるで魔物のそれだったが、いや、まさかな……と頭を振る。さすがに父が魔物食をする変人だとは思いたくなかった。

 棚の中に調味料が入った小瓶っぽいのをいくつか見つけて、その一つを手に取り、おそるおそる舌で味わう。この怪しい白い粉は……塩?


「パンはあるし……よく分からないお肉と、塩。まぁ、なんとかなりそう」


 その白い氷室の中は生肉と調味料しかなかった。今まで父は何を食べて生きてきたのだろう? まさか、肉を塩で焼いただけのものを毎日食べてきたのだろうか。野性味あふれている。


 踏み台があったので、それを登って、とりあえず流し台を綺麗にした。

 そして平鍋で薄切りにしたお肉を焼き、黒パンに挟み込む。それに果物を添えて完成だ。


「う〜ん……完璧ではないけど、仕方ないか」


 材料さえもっとあれば、スープやサラダなど、ちょっとしたものが作れただろうが。

 後で台所を掃除してから、王都に買い出しに行くか。

 私がガサゴソする物音で、父は目を覚ましたらしい。

 廊下から靴音が近づき、寝ぼけ眼の父が居間兼台所に入ってくる。

 そして机の上に置かれた朝食に目を丸くしていた。


「あ、あの……おはようございます。ご飯作りました……良かったら……」


 私が言い終える前に彼は席につくと、「……頂く」と言って、パンにかぶりついた。

 その食べっぷりに私は面くらいつつ、向かいに腰掛けて自分の分を食べる。

 私が二口めに突入する前に、父は食べ終えていた。

 ……次はもっとたくさん作ろう。

 午後に買い出しに行くことを告げると、彼は部屋からお金の入った袋を持ってきた。


「これで買い物をすると良い」


「えっ、良いんですか?」


 渡されたものを手に持つと、ずっしりと重い。

 父は決まり悪げに後ろ頭を掻いている。


「俺は女子供の服なんて分からんからな。お前が選べ。ここに住むなら、必要なものもあるだろう。俺も偶然、町に用事があるから、一緒に行ってやっても良い」


 その言葉にじんわり胸が温かくなる。


「はいっ!」


 その後は、二人で部屋の掃除をした。


「ちゃんと綺麗にして下さいっ」


 私がそう言って指示を出すと、父は面倒くさそうな顔をしながら袋にゴミを詰めていく。


「これはこれで整頓されてたんだけど……」


 そう不満げな彼に、私は目を吊り上げた。


「どこが!?」


「ちゃんと場所は把握してた。位置を変えると分からなくなるんだ。……それに、これだって、いつか使うかもしれないじゃないか」


 そう言いながら、父は穴が空いた袋と割れた皿を私に見せる。

 言い訳ぎみの父に、私はホウキとチリ取りを渡した。


「一年使わないものは、今後も使いません。捨てて下さい」


 整理整頓は、まずいるものいらない物の仕分けから始める。

 父の表情はゲンナリしていたが、私のほうがもっとウンザリしている。

 この家を全て綺麗に片付けるには、少なく見積もっても二週間はかかるだろうから。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] 浄化魔法は関係ないのか、、 [一言] マジックボックスみたいのはないのかな
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