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【連載版】気づいた時には大賢者の娘になっていた 〜最強の魔法使いの父に溺愛されながら、大賢者を目指します!〜  作者: 高八木レイナ
第三話 過去との決別

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十九 裁判


 父とルルと一緒に朝食を食べ終え、私は自室の姿見の前で襟元のリボンのしわを伸ばした。

 いつもよりパリッとした襟つきのブラウスと、ふんわりと広がる膝までの青いスカート。その下は革ブーツだ。

 金色の髪は一部だけ編み上げて青いリボンをつけ、残りは背中にふんわりと垂らしていた。

 ふだん家ではもっと楽な格好をしているのだけれど、今日はきちんと身なりを整えなければならない。

 姿見の上に留まっていたルルに向かって、私は言う。


「ルル。今日はちゃんと、おるすばんできる?」


 私が尋ねると、ルルは嫌がるようにブンブンと頭を振った。

 賢い鳥なので、人語を理解しているのだ。


「でも、ルルの姿を誰かに見られたら、大変なことになっちゃうんだよ? ルルは不死鳥だし……」


 今までも何度かルルを残して父と町に買い物に行ったことがある。

 だが、そのたびに置いていかれたルルが拗ねて、家の中を荒らしてしまうのだ。

 机の上の物を落としたり、餌をバラまいたり。あげく、叱りつけると、ストレスで自分の羽をむしり始めてしまう。

 その様子があまりに可哀想なので、最近は懐に忍ばせて一緒に出かけていたのだが……さすがに、裁判の場に連れて行くのはリスクが大きすぎる。


 買い物に行くだけなら、服の中に隠したルルがもぞもぞと動いても、その時だけ私が変な動きをして「え? 何か?」と誤魔化せばなんとかなりそう(?)だけど、法廷となれば話は別だ。

 しばらくは座ってじっとしていなければならないし、偉い人達も見にくるのだから。

 不死鳥のルルの姿を見られたら、大騒ぎになってしまう。


「ダメだよ。おるすばんしてなさいっ」


 ルルに向かって言い聞かせているが、ルルはツンと顔を背けてしまった。絶対言うことを聞かない体勢だ。

 とうとう、私の襟の隙間から服の中に飛び込んでしまう。


「わっ、もう。くすぐったいよ〜」


 ボタンとボタンの隙間から、ルルがちょこんと顔を出した。

 私はこめかみを押えて、ため息を吐く。


「……仕方ない。じゃあ、お父さんに連れて行って良いか聞くからね。……もし一緒に行くのを許してもらえても、絶対に外で顔を出しちゃダメだよ。鳴いたり、身動きするのもダメ」


 私がそう言うと、ルルの眼差しがこころなしかキリッとしたように見えた。任せておけ、ということなのかもしれない。

 それからルルはシュッと体をブラウスの中に引っ込めた。鳩時計みたいだ。時間がきたらピィと顔を出してきそう。

 私はため息を吐いて、白い毛皮のコートをはおった。これなら多少の膨らみは誤魔化せるだろう。

 ルルを説得しておけ、と、お父さんに言われていたんだけど……お父さんに、なんて言おう。


 階段を降りて居間につくと、そこには父が椅子に座って私を待っていた。


「お父さん、準備できた?」


 そう尋ねると、父は「ああ」とうなずく。

 いつものよれたシャツではなく、貴族のような格好をしていた。整った顔立ちがなおさら引き立って見える。

 じつは父は前の大戦の褒美として、一代きりの称号だが、名誉男爵の位を国王から賜っていた。

 本当はもっと高い爵位と領地をやろうと言われたらしいのだが、『面倒くさい』と言って断ったらしい。とても父らしい話だ。

 今はひげは剃ってさっぱりとしている。

 父の肩下に無造作に金髪が落とされていたので、私は自室から木櫛を持ってきて父の髪をとかした。

 ついでに首の後ろで一つのみつあみにして、私とおそろいの青いリボンをつけて完成。


「あのね、お父さん……ルルが付いていくって言って聞かないの」


 私がそう言うと、父が肩をすくめた。


「ルルは、お前に懐いているからな。……まぁ、良い。いざという時は、俺が魔法で何とかする」


 父がそう言ってくれたので、私はホッとした。

 お父さんは大賢者だから、やろうと思えば、できないことは何もないはずだ。片付け以外は。


 出かける準備を終えて、私達は家から出て鍵を閉める。

 父が呪文を唱えると、足元に【転移の魔法陣】が構築され、青白い光が私達の足元を照らした。

 今日の裁判では、私の養母マルグレードが、私をブラウン伯爵との間の子供だと偽ったことの審議が行われる。

 だから私達が訴えられた側ではないのだが……血の繋がりはなくても一時期の育ての親であるということで、ブラウン伯爵は私と養子縁組する権利がある、と訴えているらしいのだ。

 父と一緒にいられなくなるんじゃないか、と私は内心不安だった。


「怖いか?」


 隣にいた父が、そう問いかけてきた。


「……うん、少し」


「大丈夫だ。俺がついてる」


 父はそう言って、私の頭を撫でた。

 いつもは無愛想な父だが、いまは私を安心させるためなのか、穏やかな笑みを浮かべている。


「お前と俺は、魔力検査で親子関係が証明されている。この国では血の繋がりが重要視されるからな。間違っても、ブラウン伯爵と養子縁組されることはないだろう」


「うん……そうだよね」


 父の言葉で気持ちが落ち着いていくのを感じる。

 何が起こったとしても、父がそばにいるなら大丈夫。そう思えた。





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