第30話 ペット認定
ちゃんと目はあったしアイコンタクトも送った。ストラスは賢いから伝わったと思っていた。
なのになんでこんなことになったんだろ?
「拓也、これは一体……そう夢よね?なんとか言って」
母さんは真っ青になって俺に問いかけて、母さんとは対照的で、ストラスは腕の中で不快そうにふんぞり返っていた。
30 ペット認定
事の発端は俺と母さんの言い合いだった。シトリーと話しているのがバレて、以前母さんの友達からリークされていた明らかに学校外の友人とつるんでいる説の動かぬ証拠を突きつけられ、どう対応していいか分からなかったんだ。
母さんは苛立ちが隠せない様に腕を組んでトントンとリズムよく指をはじいている。イライラ度がマックス状態というのがわかり、ますます縮こまってしまう。
「拓也、母さん言ったわよね?変な人と付き合ってないって」
「あいつは確かに見た目はチャライけどそんな奴じゃねーよ」
「じゃあなんであの時、嘘をついたの?そんな人じゃないのならちゃんと説明してくれればいいじゃない。やましい事があるから母さんに言えなかったんでしょ?」
うっ……なんて痛いとこをついてくるんだ!そうだよ、やましい事しかないから言えないんだよ!!分かってるならもう聞いてこないでくれよ!って言いたいけど言えない!開き直りてえ!
「だから母さん言っても信じそうにないからさ!」
「母さんを信用してなかったの!?ちゃんと説明してくれれば信じたわよ!」
「じゃあ今度連れてくるよ!それでいいだろ?」
半ば開き直った俺の態度に母さんが納得するはずもなく、しかしそれでもまだ俺を信じたい気持ちがあるのか縁を切れとは言ってこない。連れてくると言う言葉を信じているようだ。これマジでシトリー連れて行かなきゃいけないぞ。あいつにマナー講座の動画見せて勉強させないと……
一つの話題が終わりを告げたら次だ。母さんの視線はストラスに向いている。それに関しては対応できるからストラスをポンポン叩きながら母さんに告げた。
「わかったよ。捨てればいいんだろ?捨てるよ」
「あんた何言ってるの?簡単に捨てられるわけないでしょ。大体その首輪や頭につけてるやつはどこで買ったのよ。あんたまさかどこかの家から盗ってきたんじゃないでしょうね」
「まさか!」
「まあいいわ。保健所に連絡しましょう」
「それはダメ!」
そんな事されたらもうストラスをもう取り戻せないじゃんか!
しかし母さんは譲らない。ストラスはムカついてきたのかプルプル震えている。フクロウ扱い嫌いだもんな……でも今はそれを気にしている場合じゃない。母さんは鞄から携帯を取り出して保健所の電話番号を調べる。
「ままま、待ってって!多分、保健所もう今日は開いてないかも!」
「残念ね拓也、時間外窓口って言うのがあるのよ。それに今は動物を勝手に捨てちゃいけないのよ、野生化したらどうするの!?保険所に預けたら問題ないわ。拓也邪魔しないで!」
「ダメだって!頼むって母さん!」
そんなことされたら最悪殺処分じゃないか!?本当に無理!それだけは無理!!
『いい加減にしなさい!』
ストラスの怒声に室内がしーんと静まり返る。聞き覚えのない声にきょろきょろ首を動かしている母さんと直哉、うなだれてしまった澪、そして固まっている自分。
そんな中、ストラスは肩をふるわせている。
『拓也、もう本当のことを仰いなさい。どう隠してもいずれはバレるのです。貴方の頭では誤魔化しきれませんよ』
「拓也、そのフクロウ……え、フクロウって言葉覚えられたかしら?インコ?」
「ストラス喋れんの!?なんで!!?」
母さんは突然のことにパニックを起こし、直哉も驚きのあまり部屋に入ってきた。澪も焦ったような目で俺を見てくる。やってしまった。
『まったくもって面倒だ』
いや、面倒にしたのはお前だよ。黙ってりゃいいのに。
「拓也、あなた一体……」
母さんは直哉を近くに引き寄せこっちを見てくる。
もう話すしかないのか。だって他に逃げ道なんてないし……
俺は今までのことを洗いざらい全て話した。
指輪のこと、悪魔のこと、上尾の事件やドイツの事件、犯人が捕まっていないのは悪魔のせいだという事、澪と光太郎と中谷は全て知っていて協力してくれているということ。もちろん母さんと直哉は信じていなかった。最初はいろんなとこに突っ込みを入れてきたけど今は違う、真っ青な顔で話を真剣に聞いている。
「だからストラスを保険所に出すわけにいかないんだよ」
ひとしきり喋り終えると、麦茶を飲んだ。
なんかもうどうにでもなれ。
「拓也、あなたが言ってることは本当なのよね?その、でもこんなのを見ちゃったら」
「……まだ信じてないなら他の奴も呼ぶよ」
「さっきの男の人が……もしかして?」
「そ。俺の契約悪魔なの。まあ今は人間の世界エンジョイしてて危害くわえたりとかは全くないんだけどね」
一刻も早く信じてほしくて携帯を取り出した俺に澪は隣で大人しく話を聞いていたが、不思議そうに首をかしげた。電話帳に登録されているシトリーの番号にかけると、すぐに声が聞こえてきた。
流石にあの別れはまずいと感じていたのか、相手の声色は普段と違い心配の色を含んでいる。
『おいおい、お前大丈夫だったのかよ?あれはかなり切れてたぞ』
「うん、だからもう全部話した。家に来てほしいんだ。証拠見せたいから」
『……証拠ってお前また随分吹っ切ったな。しゃーねえな。待ってろ、行ってやる。場所は誰か分かんのか?』
「多分ヴォラクが知ってる」
『了解。わかんなかったらまた連絡するわ。あ、拓也、心配すんなよ。家族が最後まで抵抗するんなら俺の力使えばいいんだからな』
シトリーなりの励ましなんだろうが、そんな未来来てほしくない。家族の感情を悪魔の力で思い通りにするなんて……罪悪感で立ち直れないよ。
電話が切れたのを確認して、俺は母さんの方に顔を向ける。
「今からくると思う。三十分くらいかかるかもしんないけど」
「……そろそろお父さんも帰ってくるわね」
「全部言うよ。父さんにも」
俺はそう言ってシトリー達が来るのを待った。
予想通り、三十分を過ぎたころ、インターホンがなり、皆の肩が揺れる。
「来た!」
「お、時間通りかな」
どんなのが来るか想像がつかない直哉は母さんの後ろに隠れて、母さんが警戒をにじませている。
俺はインターホンで返事をしてシトリーだと確認すると家にあげた。リビングに案内して入ってきた皆を母さんと直哉は若干怯えた表情で見ていた。
「お邪魔しまーす。あ、この人が拓也のお母さん?初めて見た。拓也お母さん似だね」
警戒を緩めないまま見つめている母さんとは対照的にヴォラクは呑気に俺と母さんを観察する。
まあ、手っ取り早く信じてもらうために見た目の変化が大きいヴォラクとシトリーに頼むのがいいだろう。
「なぁ、悪魔の姿に変身してくれないか?」
俺がそう言うと、シトリーが眉をひそめた。
「え〜俺に豹になれって言うのかよー」
「一回だけだよ。いいじゃん俺もまだ見たことないし」
「ちぇっ……ったくしょうがねぇな」
シトリーはぶつくさ言いながら母さんと直哉の前に立った。
「な、なに……?」
「一回だけだから」
母さんの直哉を抱きしめる手に力がこもる。
シトリーはそう言うと、光とともに翼の生えた豹の姿をとった。これが、シトリーの悪魔の姿なのか……なんていうか、本人は嫌がっているけど超格好いい。
「なっ!!」
「う、うわああぁぁああ!!」
直哉は恐怖のあまり母さんに抱きついて泣き出してしまった。
『ンダヨ!コノ荘厳ナ姿ヲ見テ泣キ出スナンテ失礼ナ奴ダナ!!』
「お前から下品なオーラが出てるんだよ。隠しきれないんだな」
『パイモンッタラ素直ジャナインダカラ♪』
シトリーはふざけてパイモンにウィンクする。パイモンは絶句してしまったが。ていうかシトリーって悪魔の姿になっても言葉話せるんだな。ウインクしてテヘペロしている豹を俺は初めて見たぞ……
「次は俺の番〜?」
「よろしく」
ヴォラクは前に乗り出すし、天使の姿になった。羽で宙に浮いているヴォラクは手品でも何でもなく、母さんと直哉は目を丸くした。
「てっ天使!?」
「おーおー。崇めろぃ崇めろぃ」
直哉がまたしても大声をあげる。
ヴォラクは反応に気を良くしたのか、宙に浮かんで偉そうにふんぞり返る。
「母さんわかってくれた?」
「拓也……あなた、もう意味が分からないわ」
「ただいま」
なんか間が悪いな。父さんが帰ってきたみたいだ。一体どんな反応をするのやら。
リビングに入った父さんは視界に入ったシトリーとヴォラクの姿に押し黙ってしまった。
「拓也、お前の友達か」
「あ、うん。てか突っ込むとこそこなの!?」
「そうか、最近のコスプレとやらはすごいんだな」
『こすぷれ?』
コスプレじゃないんですけど―――――!
ヴォラクとシトリーは聞きなれない言葉に首をかしげる。
「父さんこれは本物なんだよ。じゃあ二人とも人間に戻ってくれ」
人間に戻ってくれ?父さんは聞いたことのない日本語に首をかしげる。
二人は豹と天使の姿から人間の姿に戻った。あ、父さん本格的に固まっちゃったみたい。母さんが縋る様な目で見ているけど、なんか役に立たなそうだな。
「拓也、どういうことか説明してくれ」
「了解」
俺は洗いざらい父さんにも一から説明した。
あり得ない話に父さんは目を丸くしながら話を聞いていたが、母さんよりは理解が早く口元を手で押さえながら顔をあげた。
「つまり拓也がその指輪に選ばれたということか?そして悪魔と戦わなきゃいけないと」
「そう言うこと」
「信じられんが、こんな光景を見たら……で、実際に悪魔とは戦ったのか?」
「うん。上尾の連続殺人事件は悪魔が起こしたことだった」
「な、なんだと」
父さんは目を丸くし、真っ青な顔で俺を見てきた。
「そういえば事件はなくなったけど犯人はまだ捕まってないわ。拓也あなた……」
母さんは俺の腕をとってポロポロと涙を流した。
母さん……?
「もしかして、危険な目に遭ったの?殺されそうになったとかないわよね?」
大丈夫だって言えないのが悔しい。グッと一文字に結んだ口を見て、母さんは嗚咽を漏らして泣き始めた。
「どうして貴方がこんな事……」
だから言いたくなかったんだ。泣き崩れる母さんを見て、すさまじい罪悪感に襲われる。まるで自分が悪いことをして傷つけたような罪悪感。俺だって泣きたいのに……
じくじく心臓付近が痛みを上げ、歯を食いしばっているせいで母さんを励ます言葉もかけてあげられない。
「拓也は頑張ってます……」
さっきからずっと黙っていた澪が決心したように前に出た。
母さん達は澪を黙って見ている。
「怖いって、こんなの止めたいって、いつも言ってます。でも頑張ってるんです!あたし達を守るために……だからもう受け入れてあげてください!拓也を一人にしないでください!」
「澪……」
一人だなんて嘘ばっかりだ。一人だったらとっくにこんな事止めてる。
澪や光太郎や中谷やストラス達がいてくれるから、俺は一人じゃないから。
「母さん、父さん、直哉、信じてくれないんならそれでいい。こんな事、受け入れられるわけないから。でも俺は戦うよ。俺には皆がいるから。澪たちが信じてくれてるからそれでいい。だから俺たちは普通の家族すればいいんだ。今までどおりに。俺、できる限り家にいるようにするから」
『まだわからないのですか?』
ストラスは羽をばたつかせ、泣いている母さんの前に立った。
『拓也が気を遣っていることがわからないのですか?特異な人間であるというプレッシャーをまだ感じないのですか?なぜその様に拓也を追いつめるような真似をするのです!?』
「わたしは……!」
「拓也」
母さんの言葉をさえぎって父さんは俺の前に膝を着いて肩に手を置く。
「話は未だに信じられない。でもお前は嘘をつく子じゃない。それだけはわかる」
「とう、さん」
「お前は悪魔から人間を守ろうとしているのだろう?」
「……多分、そんなとこ」
「やってみなさい。いや、やって下さいかな?全て信じる。私も受け入れる努力はする」
「あなた!」
父さんは振り返って首を縦に振る。
「息子が、人類を守ると言っているんだ悪魔から……守ってもらおうじゃないか」
その言葉に母さんは何かを決心したように呼吸を飲み込んで、俺に顔を向ける。
「母さんはもう何も言わないわ。でも絶対に怪我はしないこと。いいわね」
「うん」
「さ、ご飯にしましょうか。遅くなっちゃったわね……貴方達も食べていってね」
「そんな悪いですよ。こんな大人数」
セーレは慌てて首を振るが、母さんは譲らない。
「いいわ。もっと知りたいの。拓也に起こったこと」
「じゃあ手伝いますよ」
「料理できるの?ありがとう」
母さんは少し怯えを含んでいたものの涙を拭い微笑んで、セーレと台所に向かった。
残された俺たちの間に沈黙が漂う。
「お前さーいつまで隠れてんだよ。弱っちぃなー。拓也譲りかよ」
ヴォラクは父さんの後ろに隠れている直哉に軽く舌打ちをした。なにか今、不愉快な発言が聞こえた気がするんだけどヴォラク君。
直哉は見た目同じ年くらいのヴォラクに馬鹿にされたのが悔しかったのか食ってかかる。
「俺は弱くない!」
「よえーよ。後ろからでしか言えないんだろ?ばっかみてぇ」
「馬鹿じゃない!いきなりなんだよお前!」
直哉は頭に来たのか、ヴォラクの目の前までドスドスと歩いてきた。
「これで弱くもないし、馬鹿でもない!」
「あー……そういうことにしといてやるよ」
ヴォラクはニヤリと笑い、直哉の肩を叩いた。
「ヴォラクの奴、慣れないことして……」
「パイモン?」
パイモンはクスリと笑い、やり取りを眺めている。
「気を遣ったんですよ。あいつなりに主の生活を奪った罪悪感はあるのでしょう」
「あいつそんなこと……」
「気にする必要なんかねぇのになー!」
「お前は少し気にしろ。もとはと言えばお前があの時間、あの場所を歩いてたのが原因だぞ」
「すさまじい濡れ衣だな。俺とお前の関係にヒビが入るわ」
シトリーはギャハハと大声で笑うので、それにムカついて軽く肘鉄を入れてやった。
「それにしてもまさか現実に起こるなんてな」
父さんはハハ……と軽く笑った。
「父さん?」
「小さい頃、誰だって一度は想像するだろう?空を飛んだり、巨大な悪を倒してヒーローになったり。いつの日か、そんなことはあり得ないと、それが当たり前になっていたんだが……なんだか夢物語を読んでいる気分だ。拓也、これからは気兼ねなく何でも相談しなさい。多分力になれないことの方が多いが、それでも話すだけで気分が楽になることもある」
「父さんじゃなきゃダメなことっていっぱいある」
「拓也?」
そう。父さんはいつだって俺の味方でいてくれた。
「母さんが信じてくれなくても父さんは信じてくれた。俺は嘘つかないって言われた時、すっげーきしかった。やっぱ父さんは俺の味方なんだって思えた」
「拓也……」
「だからありがと」
俺は父さんに笑いかけた。
父さんは俺の頭を撫で、未だにヴォラクと睨み合っている直哉を引き寄せた。
***
その後、セーレと母さんが作った夕飯を食べ、俺たちは今後のことを話し合った。
母さんに今日のことを話したら案の定、驚いた声が帰ってきた。
「エジプト……」
「その武装集団が今回の相手」
父さんも思った以上に危険な状況に顔を青くする。
「大丈夫だって!こいつ等が守ってくれんだからさ!心配ないって!」
そうは言っても、不安は拭いきれるものではなく父さんと母さんは黙ってしまった。しかし直哉は目をぱちくりさせている。
「ねーねー俺もエジプト行きたいよ!連れてってよ!」
「わー中谷みたい……」
直哉は俺の服をつかんで、的外れなことを言ってくる。
うん、俺もそう思ったよヴォラク
「駄目だって。危険なんだから」
「じゃあアメリカ連れてって!」
こんガキャ……
軽くゲンコツしてやろうと思ったがそこはあえて踏みとどまった。無理なものは無理と言っても直哉は駄々をこね続ける。
「直哉。兄ちゃん本気で怒るぞ」
本気で切れるとわかったら直哉は途端におとなしくなった。とりあえず、明日も行ってみるということで今回の話は終わった。俺は皆を送り出し、澪を家まで送った。
「ありがとう」
「いや、別に」
そしてそのまま軽く澪の家の前で雑談になった。
「分かってくれてよかったね」
「うん」
「明日、気をつけてね……」
「ありがと」
俺は澪にそう言って笑い、家に帰った。
『拓也。コレを何とかしなさい』
家に帰って一番にストラスから言われた一言だ。
これとは直哉の事。どうやらストラスが随分気に入ったようで抱きしめて離さないらしい。
「自分で何とかしろよ」
『できたらそうしています。しかし中々力が強い……』
くぅ!と歯を食いしばって抵抗を見せるストラスを直哉は笑って羽交い絞めにする。そりゃ直哉が子供とはいえフクロウと人間じゃ力の差は歴然だろう。ぜえぜえ言って息も絶え絶えのストラスが流石に可哀想になり、俺は直哉の腕からストラスを奪い取った。
「あ!」
「可哀想だから開放してやれって。あんまぎゅうぎゅうにされんの好きじゃないんだから」
「ちぇー……」
直哉は不満そうに口を尖らせ、ストラスを見上げた。
ストラスはフンッ!と鼻を鳴らし、直哉に背を向ける。
「そういや、もうお前のことばれたからリビングにも好きに行っていんじゃね?」
俺は手をポンと叩いてストラスに告げる。ストラスは首をかしげたが、状況を理解したのか頷いた。母さんがこれからストラスの飯も作ってくれるのかな?
「母さん、ストラスの飯ってこれから作ってくれる?」
「え、フクロウってあれでしょ?ネズミとかの生肉たべるんでしょ?鶏肉でいい?」
『いえ母上お気になさらず。このストラス、ポテトチップスだけで一か月以上持ちこたえた身。雑食でありますゆえ、皆さんと同じもので結構ですよ』
すごい丁寧な言い方だけど中身は人間と同じものを食わせろと言う結構図々しい願いだ。でもみんなと同じもので大丈夫という発言と、直哉がえらくストラスを気に入り一緒にご飯を食べたいと言った言葉が決定打になり、ストラスはこれから家で一緒に飯を食うようになった。
「拓也、あんた……いくらなんでもポテトチップスばっかりは可哀想でしょう……なんでほかにもっと食べさせてあげないの」
『そうです母上、もっと言ってください』
「こいつが喜んで食ってたんだよ!!」
なんだストラスこの野郎!母さんを味方につけやがって!!
あまりにも母さんに説教食らうので、逃げるように自室に向かい、ベッドに横になった。
なんか今日は本当に大変だったなぁ。めちゃくちゃ疲れたし……そう考えていると、うつらうつらと夢の中。
『拓也……仕方ありませんねぇ』
ストラスの声が聞こえて、温かい重さが体に乗ってきた。あぁ布団かぁ……さんきゅーストラス。でも声が出ない。結局俺はストラスに何も言わずにそのまま眠りこけてしまった。
『休めるときに休みなさい。これから忙しくなるのですから』
その言葉が俺に届くことはなかった。
登場人物
父さん…拓也のパパ。おおらかでのんびり屋。
母さん…拓也のママ。しっかりもので少し小言くさい。心配症。
直哉…拓也の弟。小学5年生。生意気盛りに育っている。