表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ring Of Solomon〜from the under world〜  作者: *amin*
Ring Of Solomon~from the another world1~
200/207

第200話 中谷のヴァルハラ散策6

 『何をしている貴様ら!それでもヴァルハラの一員か!?そんな事では他の階級への昇格はあり得んぞ!』

 『ほらほら、そんな事では痺れなくてよ?もっと激しく舞いなさい!』


 ……うわーこりゃまた最強に個性的な奴らだな。

 オールバックのいかにも騎士風の男が剣を振り回しながら天使(エンジェルズ)の奴らに渇を入れ、炎で燃え盛る鞭を持った女が笑いながら地面を鞭で叩いている。

 どうやらあいつらが噂の鬼軍曹のカイリエルにドS女のアナフィエルかぁ……



 200 中谷のヴァルハラ散策6



 第九階級天使(エンジェルズ)の敷地内に入った俺達は広場に向かう前に、まず訓練が行われていると言う別の神殿に向かった。

 そこで見たのがかなり厳しそうな訓練。しかも上司が怖いし……

 天使達はひぃひぃ言いながら言われたメニューを何とかこなしていた。


 「リック……お前これを乗り越えたの?」

 『ヴァルハラに招待された天使はまずここに送られるからね。避けて通れない門さ』


 俺ここに行かされなくて良かった。こんなとこに行かされたら多分三日で死ねる。

 大声で怒鳴りつけるカイリエルは怖い。マジで鬼軍曹って言うのに相応しい気がする。そして鞭を持って高笑いしてるアナフィエルも怖い。ドS女の称号は伊達じゃない。なんだか一番ここの階級がきついんじゃないのか?

 訓練を見て顔を青ざめさせてる俺の袖をリックが引いてきた。


 「リック?」

 『章吾見て。あそこにバラキエル様とラジエル様がいる』


 え?どこに?

 指さされた先にはトランプを持った少年と髭を蓄えた禿げジジイが訓練を眺めていた。バラキエルって確か熾天使(セラフィム)の天使長でラジエルは座天使(スローンズ)の天使長だよな?

 なんでそんな奴らがここに居るんだ?あいつらの階級の神殿に行った時に会わなかったけど、こんな所に居たのか。

 二人とも結構真剣な目つきで訓練を見つめている。一体何をしてるんだろう。


 「なんであいつらがここに居るんだ?」

 『スカウトの天使を探してるんだろうね。熾天使も座天使も人数の少ない階級だから、こうやって新入りで自分達の階級に向いてる奴を探してるんだよ。気に入った奴はその場でスカウト、すぐにこの地獄のしごきから抜けられるって訳』

 『その通りだ少年達!』

 「うおぉ!」


 急に声が聞こえたもんだから、俺とリックは声を上げてあからさまに驚いてしまった。

 慌てて振り向いたらニヤニヤ笑ってるウリエルの姿があった。

 頭を下げたリックに大して、頭を下げない俺にウリエルは顔を顰めた。


 『お前仮にも部活やってたんなら上下関係シャキッとしてるはずだろぉ。いいけどよ』

 「なぁんかウリエルって上って感じしないからさぁ」

 『お前喧嘩売ってんのか!?』


 ウリエルの怒声にリックは肩をすくめ、声に気づいたカイリエルやバラキエル達がこっちに振り向いてきた。

 トランプをクルクルいじりながらバラキエルが俺達に近づいてくる。


 『相変わらず騒々しいねぇウリエルは。もう少し静かに出来ない訳?』

 『うっせ、こいつに言え。全てこいつが悪い』

 「俺!?」


 ギャーギャー騒ぐ俺達をラジエルが射抜くような目で見つめている。

 それに気づいたら騒ぐ気が無くなった。座天使の奴らは俺を嫌ってる。座天使の天使長であるこいつはその筆頭なんだ。

 なんだか目を合わすのが少し怖くて逸らした時、リックが小さく悲鳴をあげた。その視線の先には鬼軍曹に相応しい鬼のような表情を浮かべているカイリエルって奴がいた。なんだか背景もまがまがしい物しょってるように見える!


 『貴殿達、この場をなんと心得る。この場は心技体を鍛える場所であれば、貴殿らの様に騒がしく談笑する場ではないっ!!』


 大きな声で怒鳴られて、俺トリックだけじゃない。ウリエルやバラ消えるも固まってしまった。目前には剣を持って仁王立ちしているカイリエルの姿がある。

 なんだかゴゴゴ……と言う効果音が聞こえて来るほどの威圧感を醸し出しており、どうやら騒いでた俺達に我慢ならなかったらしい、カイリエルの怒りの矛先はウリエルとバラキエルに向いた。


 『貴様らも何をしている!?熾天使の天使長に七大天使と言う位を持ちながら、このような場所で油を売る暇などあると言うのか!騒がしく場を乱して他の者の迷惑になると言う事を考えんのか貴様達は!?』

 『わ、悪い……俺が、いやバラキエルが悪かった』

 『何言ってるんだい?君がここを見学している力天使(ヴァーチャーズ)のお客様に絡んでたのを止めてあげたんだよ。君に話しかけられて怯えてたからね』

 『貴様ウリエル!』

 『ち、ちげぇって!てめぇバラキエル!』

 『何か違うのかい?証人でも出すかい?まぁ僕が勝つだろうけどね』


 説教が始まりそうになったカイリエルに平謝りするウリエル。バラキエルって奴はうまくウリエルに責任を丸投げすることに成功したらしい、涼しい顔をしている。

 俺とリックはあまりの迫力と怖さに返事をすることすらできない。そんな俺達にアナフィエルまで近づいて来る。


 『あらぁぼくみない顔ねぇ。この階級に来たことあるかしらぁ?記憶にないわぁ』

 『む、確かに。貴様の顔は見た事がないな。引き抜かれた者か?』


 アナフィエルの問いかけにカイリエルの視線までもが俺に向いて来る。

 ガチガチに固まった俺にカイリエルの額に青筋が出て来る。やばい怒ってる!早く返事をしないから怒ってるんだ!


 「え、えーと力天使(ヴァーチャーズ)に引き抜かれて……」

 『聞こえん!もっと大きな声で言え!』

 「力天使に引き抜かれたから、ここには来ませんでした!今日は見学で来ました!!」


 思いっきり大声で返事をした俺に満足したのか、カイリエルの青筋が消える。

 こえー……もうやだよここ。


 『そうか、そう言えばそのような話を聞いたな。貴様はこの階級に一歩も足を踏み入れてないのだな?そのような奴は珍しい。少し訓練を受けていくか?』

 『それいいじゃなぁい~可愛い子は私大歓迎よぉ~』


 やばい!身の危険!俺の大事な何かがここで奪われる気がする!特にこの女に!

 ジリジリと近づいて来るカイリエルとアナフィエルが恐ろしくて断るなんてできない。でも断らなきゃしごかれる。こんな場所でしごかれる気はない。ただでさえ力天使で毎日勉強で精神的にしごかれてるんだ。肉体的な試練まで与えられては困る!


 「あ、あの……俺、アズラエル待たせてるんでもう行きます!」

 『ちょっ……章吾!』


 リックの腕を掴んで全力疾走。

 後ろからはカイリエルの「待てぇ!」と言う怒声が聞こえたけど、怖くて振り返る事も出来ない。

それと同時に心に決めた。この階級には二度といかねぇぞ!!そんな決意を胸に、俺は久々に筋肉をフルに使って全力疾走した。


 『くそ……なんて逃げ足の速い奴だ。ここで鍛えればかなりの物になるだろうに』

 『ははは!一本取られたなカイリエル!』

 『まぁ私は貴方達を逃がす気はないけどぉ~ねぇウリエル』

 『え゛!?ば、バラキエルは?いねぇぞ!』

 『奴は逃げて行ったぞ、どさくさに紛れてな。だがそうだな……貴様折角来たのだから付き合え』

 『いやだあぁぁああああ!!!』


***


 何とか神殿を逃げ出した俺達は急ぎ足で広場も回って力天使の敷地内に戻った。色々回ってもう足はくたくただ。最後はまさかの全力疾走したしよ。リックも息を切らしてる。

 でもやっぱここが一番落ち着くよ。もうこの環境に慣れたんだな。

 リックと広場に向かうと、やっぱりもう解剖が終わってたらしく、アズラエルが戻っててアルミサエルとレリエルと会話をしながら俺達を待っていた。俺達に気づいたアルミサエルが手を振ってくる。


 『あ~章吾、リックー遅かったじゃない。お腹減っちゃったー早く行こう』

 『お前何でそんな荷物持ってんだ?手ぶらで行ったんだろ?』


 アズラエルに突っ込まれて思い出して土産を皆に渡した。

 それぞれ喜んでくれたから良かった。アズラエルなんかメチャクチャ興奮してたし。意外と酒好きなようだ。

 そのまま皆で少し話をして食堂がある場所に向かう。その途中でアルミサエルが声を出した。


 『あ、ラファエル様』


 アルミサエルが声を出した先にはラファエルの姿があった。

 ラファエルは何冊かの本を持っている、良く見てみたら医学書だ。こいつマジで勤勉だよな。

 気付いたラファエルも「おー」と言って、こっちに歩いてきた。


 『何?皆で今から飯?』

 『そうですよ~ラファエル様もご一緒しません?』

 『んー……じゃあそうさせてもらうかな。一人で寂しい思いしてたから』

 『可哀そうなラファエル様を連れていってあげますよ~』


 アルミサエルがラファエルの腕をとってルンルンに歩いて行く。面食いなアルミサエルからすれば、ラファエルは追っかけの対象なんだそうだ。

 その後ろを俺とリックが追いかけて、レリエルが笑いながら、アズラエルが呆れながらついて来る。

 俺はラファエルの横に追いついてラファエルを見たら、視線に気づかれて振り向かれた。


 『章吾、今日勉強はかどった?』

 「あ、ま、まぁ俺様にさせたら余裕だったぜ!」

 『なんで今どもったんだよ。まぁ小テストの結果もちゃんとできてたみたいだし、いいけどね。そろそろ正答率8割を見たいところだけどね』


 アズラエルが息をついたのが俺から見えた。ばれなくて良かったーまぁ絶対にばれないだろうけど、話題に出されるとドキッとする。

 そのまま他愛ない会話をしながら食堂を目指す。でもラファエルって凄い奴なんだな……しかも凄い奴なのに鼻にかけないし、ちゃんと皆の面倒も見れてるし、皆に信頼されてる。


 「なぁラファエルーお前ってすごい奴だったんだな」

 『章吾!なんて言い方をっ……』

 『なんだよ、今頃気づいた訳?』


 リックが慌てて俺を咎めたが、肝心のラファエルは全く気にしてなさそうだ。

 俺を咎める訳でもなく、少し茶化した返事が返ってきた。


 「うん、最初は馬鹿にしてたけど、今日お前がすげえ奴って事わかったよ」

 『……最初の言葉は気になるけど』

 「まぁ細かい事はいいじゃん。他の階級見て思ったよ。それぞれ色んな個性あるとこだなぁって……でも俺ここに引き抜かれて良かった!リックや皆と仲良くなれて!」

 『章吾……』

 

 リックが目を丸くして感動して泣きそうになってる。そこで泣くのかお前。アズラエルとレリエルもクスリと笑って俺を見て頷いた。

 アルミサエルは『あたしもだよ~』って相変わらずのんびりした口調だけど同意してくれた。ラファエルも笑ってる。


 『それは遠回しに言えば、もっともっとここで勉強したいってとってもいいんだよな?』

 「な、なんでそうなるんだよぉ~~!」

 『あはは、冗談だって!痛い痛いっ叩くなって』


 ボコスカ殴りだした俺を、ラファエルは笑いながら止めてくれと言って謝ってくる。


 こういうタイプの天使長が他にいるかな?熾天使(セラフィム)の天使長は表面は接しやすい雰囲気だったけど、実際はかなりしたたかそうな奴だったし、ガブリエルには皆が頭を下げて出迎えてたから、きっとそんなに陽気な奴じゃない。ラジエルとザドキエルは論外だし、カマエルはタイプは違うけど少しラファエルっぽいかな?あとハニエルもそう言うタイプだ。ラグエルは遠くから見ただけだったから良く分からないしカイリエルは無理、絶対に。


 俺ってやっぱり運がいいよな。勉強大変だけど、いいとこに引き抜かれて。


 やっぱラファエルに感謝だ。


 「あ~腹減った~今日何食べようかなー」

 『あ、そう言えば今日レバロ鳥が入ったって聞いたよ。トマト煮込み食べたいなぁ~量多いから章吾、半分こしない?これめっちゃ美味いんだよ~!』

 「おぉいいねぇ!じゃあ俺とリックで半分こしてー俺あと麺類食べてぇな!」

 『章吾良く食べるよねぇ』


 俺達が会話をしている横でアズラエルがラファエルに話しかけている。

 土産に買って帰った酒を見せてるから一緒に飲むのかな?


 『ラファエルさん、さっき章吾が土産で能天使(パワーズ)の酒持って帰ったんですよー一緒に飲みましょうよ』

 『いいじゃん!銘柄は?』

 『……天使殺し』

 『……すっごい度が強いあれか。俺は多分いけるけど、お前マジで酔うなよ。お前酔ったら介抱が大変なんだ』

 『大丈夫です。さっき自分自身に酔い止めの白魔法かけました』

 『準備万端かよ……』


 俺が買ってきたのはそんなに強いやつだったのか。

 ラファエル達の横で酒に強いレリエルがめっちゃ飲むって宣言してるし、酒を飲まないアルミサエルは少しだけ羨ましそうにしてる。

 未だに生き返りたいって思うけど、ここの奴らもいい奴ばっかで大好きだ。もう少しだけ、あともう少しだけならここに居たいって思う。そりゃいつかは俺は絶対にヴォラクに助けてもらう予定だけどさ、あと少しだけ。


 マジで早く来いよヴォラク、お姫様じゃないけど中谷様はお前を待ってんだぞ!



中谷の話はこれでお終いです。

この話は簡単なヴァルハラの紹介をメインにしています。中谷の散策はあくまでもオマケです。本編では地獄や悪魔をメインに書いていたので、この話で天界と天使が何となく分かってくれたら幸いです^^

これからの本編にも結構影響してきますので……そんなものを番外編で書くなという感じですが。

次はアスモデウスとサラの話を投稿したいと思います。


ついに200話まで行ってしまいましたが、ここまで読んでくれて感謝です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ