第2話 ソロモン72柱
「拓也見つかった?」
あれから俺は母さんに澪を家に送ると言う名目で二人で澪の家に向かった。澪の家は人がいないし、なにしろこのフクロウがばれたら厄介だったから。
澪の家に着き次第、携帯とパソコンをフル稼働してこのフクロウのことを調べまくった。
2 ソロモン72柱
「ソロモン72柱……あった。やいフクロウ。名前は?」
『なんと失礼な……主でなければ目をくりぬいてやる所です。私の名はストラスです』
今一瞬すっごい怖いこと言わなかった?言ったよね?気にしたら怖いのでここはあえて無視しておこう。
ソロモン72柱、ストラスで検索したら結構な検索結果が出てきて、一番上のサイトでその名前を探してみることにした。
「頭に王冠を乗せたフクロウ、または烏の姿で現れる。銀の爪を持ち、目の周りは赤いという。博識学者のような悪魔で、占星術や薬草学、石などの知識に優れ、召喚した者にその知識を授けてくれる。七十二柱の悪魔の中では呼び出しやすい」
悪魔の中で呼び出しやすいって……別に俺呼んでないよ!しかもめっちゃいるじゃんこいつら。
ストラスは自分のことを紹介されると俺の目の前に降り立った。
「なっなんだよ!?」
思わず身構える俺。だってこんな現実、そう簡単に受け止められるもんか!俺が、いつ、なにして悪魔を呼び出したっていうんだ!悪魔なんて漫画とかゲームの世界でしか見たこともないのに、いきなり現れたこいつを、どう処理すればいいんだ!大体呼び出した奴絶対他にいるよ。そいつの所行けよ!
ストラスはそんな俺にため息をついて羽で頭を殴ってきた。
「あだ!!」
『なんだじゃありません。一から百まで説明せねばならないのですか?面倒くさい。呼び出してきたのはそっちでしょう。あなたの望みは何ですか?』
「は?望み?」
澪は俺の腕にしがみついた。怖かったんだろう、体が震えている。俺だって怖いんだ、家に一人の澪はもっと怖いだろう。澪の背中をなでながらストラスに向きなおった。
『悪魔を呼び出すには望みがあるからでしょう?私が得意とすることは先ほど貴方が仰ったとおり、占星術、薬草学、鉱物ですね。さぁなにが聞きたいのです?』
「そんなもんねーよ」
大体全部わけわかんねーし、興味もないし、そんなこと知ったってって感じなんだけど。そう答えたらストラスはただでさえ丸い目をもっと丸くさせた。いや、まあ向こうからしたら呼び出しておいてお願いないってなんで呼んだんだって思うだろうけど、本当に俺無関係だから。
動物だけど可愛いなんて思いたくない、可愛くなんか……ないんだからな。う、ぐぐ、モフモフしてやがる。触りてえ~~~!!!
『何を仰っているのです?貴方は目的があって私を呼んだのでしょう?』
「いや呼んでないし!それ勘違いだから!」
ストラスは怪訝そうに俺を睨み付けた。ふ、ふん!フクロウに睨まれたって怖くねえやい。
身構えた俺の目の前で羽を広げてくるストラスに若干のけぞる。なんだよ!やる気か!?相手はフクロウだ。多分、勝てる?こいつ火を噴いてきたりとか、ないよな?
『なるほど……ですから魔法陣もなく召喚されたのですか』
魔法陣?なんのことなんだよ……
ストラスは目の前を羽でバタバタしながら飛び回った。正直うざかったから、体をキャッチして机の上に強制的に置いたら不機嫌そうな顔をされた。めっちゃモフモフで気持ち良かった。
『召喚したのが私でよかったですねぇ。他の悪魔なら貴方はきっと殺されていた』
「はい?」
『私は戦闘向けではないのでそういう野蛮なことはしませんが……では私の戻し方も知らないのですね?』
「あ、ああ」
しれっと恐ろしいワードを入れられた気がするが、こいつは少なくとも危害を加える気はないと言ったので、少しだけ安心する。
勿論戻し方を俺が知っているはずもなく、頷いた俺にストラスは溜息をついた。
『では仕方ありません。私が元の世界に戻るための魔法陣を作ってもらえますか?』
よくわかんねえけど、こいつがいなくなるのなら喜んで協力してやろうじゃないか。
ストラスは近くのテーブルに降り立った。
『ではまず魔法陣を書きなさい。その箱と板で調べたら載っているでしょう』
箱と板って……もう笑うしかない。でも言われたとおりにパソコンで魔法陣を探してみると、丸い円の中に変な紋様をかたどった絵を見つけた。もしかしてこれを描けってこと?めっちゃ難しそうじゃね?コンパスいるくねこれ?
「これのことか?」
『まさしく。私がちゃんと入る程度の大きさでこの魔法陣を描きなさい』
なんかフクロウに指図されるとむかつくが、言われた通り澪と家の中を探して大きめの型紙にボールペンで魔法陣とやらを描き写した。魔法陣ってやつが完成に近づくたび、やばいことをやっているような感覚がわいてきて、ちょっと怖くなってくる。
魔法陣が書き終わるとストラスはその中に入った。
『では呪文を唱えなさい。本当は聖水で身を清めなければならないのですが……そのような物はなかなか手に入らないし、貴方は私とそんなに長く触れ合っていないのでまぁ身を清めなくても大丈夫でしょう。では次に呪文です。私が一回言いますので一言も間違えずに詠唱しなさい。ああ、我が霊ストラスよ、汝わが求めに答えたれば、われはここに人や獣を傷つける事無く 、立ち去る許可を与えよう。行け、しかし神聖なる魔術の儀式によって呼び出された時は、いつでも時を移さず現われるよう用意を調えておけ。われは汝が平穏に立ち去ることを願う。神の平和が汝とわれの間に永久にあらん事を、アーメン』
な、なんだって?覚えられん。
「悪い。もう一回言ってくれ」
『なんと物覚えの悪いことでしょう!?』
ストラスはギャーギャー言いながら羽をばたつかせた。
たかがフクロウでも本気で怒るとちょっと怖い。
「悪かったって!ゆっくり言ってくれ。書き写すから」
『このような愚鈍な者に呼ばれたというのですか』
あぁん?調子こいてんじゃねぇぞ!……なんてことは思ってても言えない。
「すいません」
俺ってこんなにチキンだったのか?いやこの場合、みんなこうなるよな。だって相手は話すフクロウだぞ?未知の世界だろこんなの。
「よし……じゃあいくぞ」
あの後、俺は文句を言われながらも呪文を書き写し、間違えない様に練習しストラスにOKだと告げる。この時点で澪の家に来てから一時間以上が経過しており、そろそろ母さんから早く帰って来いと連絡が来る頃かもしれない。
ストラスは再び魔法陣に入り、俺が呪文を読むのを待っている。よ、よし、やるぞ。
「ああ、我が霊ストラスよ、汝わが求めに答えたれば、われはここに人や獣を傷つける事無く 、立ち去る許可を与えよう。行け、しかし神聖なる魔術の儀式によって呼び出された時は、いつでも時を移さず現われるよう用意を調えておけ。われは汝が平穏に立ち去ることを願う。神の平和が汝とわれの間に永久にあらん事を、アーメン」
もしかしたら光ったりとかするのかもしれない。そう思い、俺と澪は目を瞑り、来るかもしれない衝撃を待つ。しかしいつまで経っても何も起こらず、恐る恐る目を開けるとストラスが目を丸くして突っ立っているだけだった。おい、何も起こってないぞ。
室内に変化はなく、何の音も聞こえるわけでもなく、なんの光も出るわけでもなく、完全に自分の怪しい独り言っていう一番恥ずかしい結末で終わりを告げた。
『どうなっているのです?呪文はこれで間違いないはず…』
ストラスも首をかしげている。じゃあ俺が間違っているわけではないってことだ。つまり、こいつが戻れないってことは追い払うしかない?でもこいつは俺を主とか言ってたっけ?じゃあ追い払えない?
一生このまま?どうしよう、有り得ないことが起こりすぎて思考がネガティブになっちゃう……
澪は半泣き状態でこっちを見てきた。え、いや……そんなかわいい顔で見られても俺にはどうしようもないし。ストラスはため息をついて魔法陣から抜け出し、人の頭の上に座った。
「おい乗んなよ。まさかテメー腹いせに俺の頭の上に糞でもする気か?」
『誰がそのような下劣なことを……全く貴方が主だなんて先が思いやられます』
こっちの台詞だ!
ストラスはそのまま俺に語りかけた。
『しかしこの状態はおかしい。一度ちゃんと調べたほうがよさそうですね』
「調べるってどうやって?」
ストラスは鼻で笑う。その反応があまりにもお前は戦力外だから聞いてくんなと物語っており、バカにされたことにちょっと……いや、かなりむかつく。
『貴方では無理でしょう。とりあえず私がそれは調べておきますから心置きなく』
いや心置きなくって……そのままいなくなってくれたら一番いいんですけど。とりあえずストラスは俺から離れる気はないらしい。家族にばれたらまずいので、今日は澪の家に泊まってもらうしかないかな。でも澪は怖がってなかなか首を縦に振ってはくれない。一人でストラスと一緒に一日を過ごすが怖いのは当たり前だけど、流石に状況を理解して部屋に閉じ込めておくと、サラッと酷いことを言って一日家においてくれることを承諾してくれた。
明日は家から出て行くみたいだし大丈夫、だよな。調べておくとか言うんなら、そのままいなくなってくれるよな?何かあったら連絡してと告げて自分の家に戻り、次の日、澪を迎えにいくことにした。
来週は終業式だ。とにかく来週までにはこんな漫画のようなことは終わらせたかった。
***
「やっぱり指輪はとれない……か」
朝起きて指輪を改めて引っ張ってみたが取れない。いきなりこんな厳つい指輪つけていって学校で何言われるか不安だけど、仕方なくそのまま学校に行くしかない。没収されないといいなぁ。外れないってなったら学校で騒ぎになりそうだ。
「あんたそんな指輪つけていくの?外しなさいよ」
ほら来た。早速母さんが目ざとく発見して突っ込んできたじゃん……
「分かってるよ。お気に入りだからギリギリまでつけとく」
「……訳わかんないことを。なくしたって知らないわよ」
俺に何言っても無駄だと思っているのか、それ以上何も言わず、母さんは俺が食べた朝食の食器をさっさと片付けていく。母さんに行ってきますと告げ、澪を迎えに行くと既に向こうは道路に立っていた。
「あれ?澪、あのフクロウは?」
その質問に澪は首を横にふり、泣きそうになりながら答えた。
「朝起きたらもういなかったの。窓が開いてたから自分から出てったみたい」
あー?あいつ勝手に出ていったのか!?しかも防犯上最悪なことして消えていきやがって!いなくなったのは喜ばしいことだけど……なんか嫌な予感がするな。
澪の家は荒らされた形跡などはなかったようで、とりあえず俺たちは二人学校に行くことにした。
学校につくとグラウンドでは野球部が朝練をしており、その横を通りながら会話をする。
「うおー野球部がんばってんなー」
「だって今地区大会が始まってるでしょ?うちの野球部もうベスト8までいってるし。でも次は甲子園常連校の上田商業とだから、もう駄目だって皆言ってるけどね」
野球部の中には俺の友達も何人かいる。と言っても、まだ一年だからほとんどがスタメンではないんだけど、一人だけスタメンはってる凄い奴がいるんだ。
「がんばってるなぁ中谷」
中谷は俺と同じクラスで野球部のエース。中学でも野球部に入っており、この高校にもスポーツ推薦で来たくらいだし、一年なのにレギュラーに選ばれている。
あいつとは別の中学で高校でクラスが初めて一緒になったけど、明るくて馬鹿やってるから誰とでも仲良くなれるタイプだ。現にクラスのムードメーカーだし、普段は野球部の奴らとつるんでいることが多いみたいだが、俺や光太郎とも仲が良くて三人で時々遊んだりもする。とにかく野球に命かけてるって言葉が似合うくらい毎日練習していた。
そっか、あいつがんばってんなぁ。
心の中でがんばれとエールを送り、そのまま校舎に入った。
「おっす拓也!あ、指輪さっそくつけてんなぁ。それゴツいな」
「そういうお前もつけてんじゃん」
教室の前で澪と別れ、教室に入ると光太郎が挨拶してきた。
周りを見回すと、他にもレベッカに行った奴はいたみたいで、昨日のセールで買ったのか指輪や小物を身につけている奴らがいて少し安心する。でもよかった、これならきっと没収はされないな。
光太郎もピアスをつけており、うちの高校の校則が緩くて助かったなと話しながら席に着く。
学校は何事もなくいつもどおりに終わった。
半分寝てたけど授業を聞き、弁当を食い、掃除をし、あっという間に放課後になった。何も起こらない一日は当たり前の日常で、帰ろうとしたら教室がざわめきだした。なんだと思って皆がいる窓をのぞいてみると……ストラス?
そこには木の上にとまっているストラスがいた。視線は確実に俺のいる教室に向かっている。睨んでる……明らかにこっち見てるよ!てかなんでこの場所分かったのこいつ!?まさか、一日中付け回してた!?
「こんなとこになんでフクロウがいんだよ?」
「てゆうか頭になにかつけてない?かわい〜」
窓からのぞいている生徒は珍しいフクロウに興奮している。いやいや可愛いなんて、見た目にだまされちゃいけないよ。こいつ昨日俺の頭殴ったりつついたりしたからね!?
こんなところで油を売っている場合ではない!みるみる血の気が引いていき、鞄を持って昇降口に走って向かった。
「拓也!」
そこにはすでに澪がいて、俺と同じように青ざめた表情から状況を把握していることがうかがえる。
「澪、ストラス見たのか!?」
「うん!皆ざわついてたからなんだろうって思ったら……」
「とにかく家に行こうぜ!あいつマジずっとこっち睨んでんだよ!」
俺は靴を履き替え急いで学校から出ようとした。
「拓也、あたし怖い」
澪の言葉で俺は立ち止まった。澪は真っ青になって震えており、その表情は泣きそうになっている。
「こんな、こんなの……急になんでこんなことになったの?」
「それは帰ってからゆっくり話そう?今はストラスだよ」
澪の手を引いて学校の外に出ると、ストラスは俺たちに気づいたのか木から離れ、後をついてくる。
その様子を見ていた他の生徒から残念そうにつぶやく声が聞こえてきた。
「あ、行っちゃった」
「可愛かったのに」
何が可愛いもんか……こんなクソ鳥。
***
家に誰もいないと言うことで澪の家に向かうと、ストラスは窓を開けたら家の中に入ってきた。あまりにもあっけらかんとしているストラスにイラついて声をあげて怒鳴るも、当の本人は素知らぬ顔だ。
「お前学校に来んなよな!つかどうやって俺の場所を探し出したんだ!!」
『だから邪魔しないで何も語らずにいたではありませんか。フクロウと言うものは話さないのでしょう?心配せずとも大丈夫ですよ。ほっほっほ』
こ、この鳥はいけしゃあしゃあと!なに気を遣ってやったじゃん。みたいなこと言ってんだよ!
するとストラスが急に俺をジッと見てきた。
『それよりも大変です。私がここに召喚された理由がわかりました』
は?召喚された理由とか知らんし。どうせ別の誰かが召喚して、それが失敗してなんでかここに来ちゃったんだろ。おかげでこれからオカルト番組を真面目にみられるようになりましたよ俺は。
ストラスは机に降り立ち、事情を説明してくれたけど、事態は思ったより深刻だった。
『何者かが我々の封印を解いたのです』
「封印?え?お前召喚されたって言ってたじゃん」
あまりにも唐突な状況を理解できず、突っ込んでしまった俺にストラスは首を横に振った。
『ソロモン72柱、その全ての悪魔の封印を何者かが解いたのです。誰がそのようなことをしたかは分かりませんでしたが、大変なのはここからです。私のような者が召喚されたところで特に何も変わりはしません』
いや十分かわってるよ。ていうか72匹もこんなのがいんの?
『しかしレラジェやアイム、グラシャ=ラボラスやフォカロル等の戦闘に特化した悪魔までも召喚されてしまいました。彼らの力を必要とする人間が彼らを利用したら……人間の世界に悪魔が関与してくることになる。それは世界に混沌しかもたらさないでしょう。そして不思議なのが同時に悪魔が全て召喚された。召喚者も分からず、場所も恐らくランダムだ。私はたまたま指輪の継承者である貴方の所に召喚されてしまったのでしょう』
なんだって?いまいち何言ってるかよくわからんけど、ストラスみたいなのが沢山いて、一斉に世界に飛び出してきたってことだよな?そんで、こいつは見たまんま戦いに弱い奴らしいけど、中にはめちゃくちゃ強いのがいて、そいつが暴れまわるかもって?
頭が真っ白だ。だってこんなこと信じられるわけないじゃん。
『あなたの持っている指輪はソロモンの指輪と言い、古のソロモン王が悪魔を使役するために神から授かったと言う伝説の指輪です。なぜ、貴方の元にあるのかは知りませんが、その指輪を私たち悪魔は欲している。神と天使の宝なのだから。召喚された悪魔たちはソロモンの指輪の持ち主がいると言う情報を手に入れ次第、貴方を狙うものもいるでしょう。拓也、悪魔を地獄に戻すには指輪の力がなければ倒せません。普通の人間が、悪魔に勝てるはずがないのだから。また今までの日常を送りたいのなら、72柱の悪魔全てを貴方は封印しなければならない。それがその指輪に選ばれた者の試練なのです』
「ふざけんなよ。俺がそんな指輪の継承者なわけないじゃん。つかそれならお前にやるよ。これ持って消えてくれ」
好きこのんで手に入れたわけじゃない。探し求めていたわけでもない。ただ、本当に偶然が重なって俺のところに来ただけだ。別にほしくもないし、欲しがるんならくれてやる。だから、俺をこの意味の分からない非日常に巻き込まないでくれ。
だけど目の前の普通なら存在するはずのない喋るフクロウは俺の訴えを認めてくれない。
『ではなぜ指輪が取り外せないのです?その指輪は継承者にしか身につけられないものなのです』
そんなの知るかよ!はずしてやる絶対に!!
でも指輪は全く外れない。なんで、どうして?ふざけんなよ、嘘だろ?そんなの……
「俺がそのすっげえ悪魔とかと戦わなくちゃいけないってことかよ?」
ストラスは頷いた。
嘘だと言ってほしかったのに……だって俺は普通の人間だし。普通に生きてきて、普通に学校に通って、それがこんな漫画みたいなことに巻き込まれるなんて……そんなの嘘に決まってる。こんなの信じられない。
目の前がちかちかする。視界がゆるむ。
「拓也……」
あ、俺泣いてんのか?
澪の不安そうな声もストラスの射抜くような視線も、何も何も感じない。
だって信じられないから。次の日には普通の生活が送れるって今も思ってるから。
しかし俺は思い知る。
残酷なまでにこの指輪は俺を巻き込んでいくことを。
***
「さーって、久々の人間界だ。楽しませてもらわなくちゃね!誰だか知らないけど、俺を召喚して姿くらますなんて、どうなっても知らないよ」
そして運命は狂いだす。