第195話 中谷のヴァルハラ散策1
この話は番外編で中谷のヴァルハラでの生活を書いています。
また天界9階級の説明をしていますが、元の資料をかなり脚色しています。階級に属する天使たちも脚色しているので、本当はこの階級じゃないのに、この階級にいる。または階級がはっきりと記述されていない天使が、この階級にいる等の事があります。この話の中の天使達が聖書や資料通りとは思わないでください。
― 中谷side
にぎやかな広場から繋がる複数の廊下の先には多数の扉がある。一人の天使がその扉の一室を開けた先に探していた友人の姿があった。しかし書物の塔で顔は見えず哀愁を漂わす猫背の背中が見えるのみで、隙間に項垂れている頭を発見して指でつつくと、それはもぞもぞと身動きをした。
『章吾~生きてるか?』
「これが生きてるように見えるか」
『いや、屍に見える……』
195 中谷のヴァルハラ散策1
やっと終わった教科書的な書物をノロノロと片付けながら今日一日の勉強内容を思い出して吐き気がする。何だかんだ言ってラファエルに出された課題をギリギリとはいえこなしている自分をほめたたえたい。
天界に連れていかれてどれだけの時間が経ったのか感覚がいまいちわからないけれど、俺の裁判だって言われていた異端審問は無事に終了したらしい。結果は一応勝ったっていうのは教えてもらったけど、表情が硬いラファエルを見て、完全にいい結果にはいかなかったんだろうなと察した。でも表向きは勝利しているわけで俺への対応は変わり、今日遂に外出解禁令が出た。
完全に手が止まってる俺を見てリックが不満そうな表情で文句を言ってくる。それもそうだ、今回課題が終わったらリックにヴァルハラを案内してもらう予定だったから。
力天使の敷地内ならもう既にリックに全部案内してもらったから、やっと外出解禁令が出た今日こそ他の階級の場所も案内するとリックは言っていた。まぁ正確にはラファエルが案内するように頼んだらしいけど。
でも今のままじゃ確実に無理だよなぁ~もう病理治療学ってなんだよ。そんなん知らねえし。完全に項垂れてる俺に同じ力天使のアルミサエルが助け船を出した。
『章吾、クモ膜下出血の成因は脳動脈瘤破裂よ。高血圧が原因なのは脳内出血』
「え、そうだっけ」
『そうよ~テスト大丈夫?なんか色々混じってるよ』
「わかんねえ!もう無理!!」
『あらあらこれは全然駄目ね。脳血管疾患を全く区別できてないわね』
話に割って入ってきたのはレリエルって言う奴だ。こいつも最近なんか世話やいて来る。でもこいつはアルミサエルと違って助けてくれるけど、同時に楽しんでるから少したちが悪い。でも悪い奴じゃないし、別に嫌いなんじゃないけどな。
それをガリガリ書いてると、今度はアズラエルがやって来た。
『おーい章吾、時間だぞ。小テストやんぞ』
「え……まだ自信ないんだけど」
『こっちもスケジュールきちきちで面倒見てんだからつべこべ言うな』
ちくしょう……なんだよこれイジメ!?
アズラエルの小テストって難しいから嫌なんだよー!!アルミサエルの小テストなら○×で簡単なのに!こいつは全部記述式、しかも説明しろだからマジで嫌になる。
ブツブツ言いながら問題を解いていく俺の前でそれぞれは呑気に会話をしてる。
『そう言えば今日って臓器入荷の日だったっけ?』
『そうよ。それにしても今まで非番の日はのんびりしてたけど、章吾入って来てから楽しくなっていいわよねぇ』
『レリエルさんは章吾をからかいすぎですよ』
『なんだよお前ら非番って……俺なんか午後から解剖が待ってんのによぉ』
「うるさい!静かにして!」
怒鳴れば、全員頭を下げてシーンとなる。ラファエルに任されてる世話係が今の四人。
なんか出産とか婦人病とかの治療が専門のアルミサエルと、精神疾患系の治療が専門のレリエル、そんで力天使の副天使長で外科医的な役回りをしてて、脳血管疾患と心疾患が専門の怖い奴がアズラエルで、俺と一番一緒にいる時間が長い見習いのリック、専門は薬学だそうだ。
普段はリックが主な世話係だけど、ローテーションで他の奴らが来る。今回みたいに全員こんな時間に揃うのは珍しい。
何とか問題を解けてアズラエルに渡したら早速採点を始める。でも何かが違ったらしい、不細工な顔になってる。
『おい、脳塞栓症は心疾患によってできた血栓が剥がれて脳動脈を塞いで起こるって言ったよなぁ』
「そうでしたっけ……?」
『あ、このアホが!くも膜下出血の外科的治療にカテーテル手術だぁ!?おめぇ何も理解してねぇだろ。くも膜下出血の外科的治療は動脈瘤のクリップ手術っつっただろうが!お前マジで覚えるには身体に仕込んだ方がいいな。今度解剖させる』
「もうちょい嫌味失くした言い方出来ねぇのかよ!それと解剖だけはやめて!まだ心の準備が!!」
アズラエルの嫌味めいた解説を聞きながら、小テストのやり直しをさせられていく。
小テストは六割合格。いかなかったらまた三十分時間を与えられて同じ範囲を覚え直させられて小テストだ。向こうも嫌だし、こっちだって避けたい。
でも今回は運が悪かった。
『……50点満点中の23点。5割も行ってねぇぞ。この馬鹿谷章吾が』
「がーん……」
『口に出すな。はぁ……もういい加減にしてくれよ。俺解剖が今からあるんだって』
「うぐっ……じゃあやらないでいいよ」
『馬鹿、そういう問題じゃねぇ!と、言いたいところだがマジで時間無いから今日は大目に見てやるよ。ちゃんと復習しとけよ』
やった!なんか今日はついてるぞ!
アルミサエルが良かったねぇと言って肩をポンポンと叩いている。
アズラエルは本当に時間がないのか、小テストの点数を上乗せして結果表に書き込んでいく。これをラファエルに提出するからだ。そしてすぐに立ち上がって部屋を出て行こうとした。
『あ、お前ら飯今日何時食う?』
『えー章吾が帰り次第ー。そっちは何時に終わるのー?』
『さぁなぁ、多分今から数時間はかかるだろうからなぁ』
『章吾どうするの?貴方決めていいわよ』
レリエルに促されて少し焦った。急に会話振ってくるんだもんなぁ。
でも大体皆で一緒に飯食ってるし、別に6~7時間程度ならそんなに遅くはならないしな。
「待ってるよ」
『マジで?サンキュー。なるべく早く終わらせるよ』
アズラエルは俺達に手を振って部屋を出て行った。さぁて今日のノルマも終わったし、今から天界を散策だ!
リックは既に行く気満々で早く行こうと促している。
『気をつけなさいね二人とも。ラファエル様の許可を得てるからって、基本は他の階級の敷地内に入るのは余りしないから』
『はぁい』
レリエルに釘を刺されて、俺とリックは扉を開けて長い廊下に出た。この廊下をずっとまっすぐ歩いて行けば、大きい門があって、そこから力天使の敷地外のヴァルハラに出れる。
ヴァルハラの中って結構楽しいんだよな。なんか店とか普通にあるけど、置いてる物が見た事ない物ばっかで面白い。
扉を開けて力天使の敷地外に出た俺は興奮してた。
「久しぶりに出た!やっぱ外はいいよなぁ!」
『まぁ力天使の敷地内にも広い庭あるけど、やっぱ外はいいよねぇ』
リックはニコニコ笑ってラファエルが寄こしてきたネックレスを首にかけた。
これはラファエルの物らしくて、これを首に下げていればラファエルが頼んだって事が分かるから他の階級の敷地内に入っても大丈夫なんだそうだ。
リックはそれを一つ寄こしてきたので、それを首に下げた。
『さぁ章吾、まずはどこに行く?まぁ敷地内に入れるって言っても俺達は入口の広場くらいまでしか行けないから、今日中に全部回れるはずだよ』
「えーと……俺ぶっちゃけ他の階級知らないんだよな」
『あれ?説明してなかったっけ?』
「うん」
ハッキリ頷いた俺にリックはヴァルハラの階級を説明してくれた。
リックの説明はマジ長いんだから注意が必要だよな。
『まず天界には九つ階級があって俺達は第5階級なんだよ。第一階級が熾天使。ここに行けばカジノがあって楽しいよ。カジノは他の階級の天使も使うのは自由だから入り放題なんだ。第二階級が智天使。水の楽園って言われてて、すっごい景色が綺麗なんだよね。あとご飯が凄く美味しい。魔術に優れてる奴が引き抜かれてるからここには天界一大きい魔術研究所があるんだよ。力天使にもあるっちゃあるけど、ここよりはずっと小さい。第三階級が座天使。物凄い頑固者の集まりだよ。ここには記録部屋って言うのがあって、そこから下界を見る事が出来るし、記録書を見る事も出来る。魔術師が多くて大きい魔術研究所があるよ。第四階級が主天使。天界一の頭脳集団って言われてるほど頭脳明晰な奴が多い。天界一大きい図書館もここの敷地内にあるんだ。図書館は出入り自由だから俺達も頻繁に利用するよ。裁判所もここしかないね。第五階級が俺達力天使。天界一の医療技術が売りで、まぁ大病院的な場所だよね。第六階級が能天使。ここは戦の天使ばっかが集まっててすごいんだよ。お酒飲む人が多いからすっごい大きな飲み屋街があるんだよ。あとコロッセオで闘技大会がある事でも有名だね。第七階級が権天使。ここはなんていうか……すっごい女の子女の子してる。仕事もキューピッドとかが多いし……天界1大きい弓道場もあるんだ。第八階級が大天使。音楽が盛んで大きな演奏場があるんだ。第九階級の天使は大天使と一緒の敷地内にあるから、まぁ特に何かあるって訳じゃないけど……ある意味名物の鬼軍曹のカイリエル様とドS女のアナフィエル様がここにいるよ。以上だけど、どこから行く!?』
すっげぇ長い説明をちゃんと聞きながらどこに行こうかを考える。興味があるのはご飯が美味しいって言ってたとこかなぁ。
後、下界の様子を見れるって奴。もしかしたら皆の様子見れるかも……止めとこうかな。ただでさえ帰りたいのに、なんだか皆の姿を見たら泣きそうだ。
闘技大会って結構楽しそうだよな。あとギャンブルも楽しそうだし……あんま図書館は興味ないな。やっと勉強から解放されたのに、でも全部見て回るんだから最終的には行くのか。
うーん……全部回るならお楽しみは取っといた方がいいのかな?
「なぁ鬼軍曹って奴は第九階級だよな。位低い癖に偉そうなのか?」
『カイリエル様は熾天使の位を持ってる天使だよ。ただ第9階級の副天使長を務めてるからあそこに常にいるんだ。アナフィエル様も同じ。全ての階級の天使長は熾天使の位を持ってる。ラファエル様だってそうさ。まぁあれだよ、人間界で言う資格って奴?熾天使の位持ってても能力的に力天使向きだったり医療に興味があったりだったらこっちに来るし、章吾もラファエル様が引き取らなかったら天使だったんだよ』
「え!?嘘だろ!」
『あそこは天使になった人間が最初に運ばれる場所さ。そこでカイリエル様にしごかれて残りの八階級のどこに行くか選ばれるのさ。良かったねぇラファエル様が引き抜いてくれて』
「あはは……」
本当にね。
乾いた笑いしかできない俺を見て、リックもニカッと歯を見せて笑った。
さてと、まずはどこに行くかだよな。話ずれちまった。
「今日全部回るのか?」
『許可は今日しか出てないからね。できる限りは回るよ』
じゃあやっぱあんま行きたくないとこから行った方がいいよな。好きなとこを最後にした方が……でも嫌いなとこで時間取って回れなくなったら嫌だよなぁ~……どうしたもんか。
悩んでる俺にリックが提案を出してきた。
『じゃあ階級順に回るかい?熾天使からになるけど』
あ、それいいかもな。あんま行きたくない図書館とかも真ん中あたりだし、行ってみたいカジノが一番目だし。
頷いた俺の手をリックが引っ張って真っ直ぐ進んでいく。
向かっている途中、色んな天使にリックは頭を下げるもんだから俺も下げた方がいいのかなって思って下げながら歩いてきたから道はあんま覚えてない。
でも十数分歩いた先には力天使に似たような大きな神殿が立っていた。
『ここが熾天使の神殿だよ』
思っていた以上にこの場所は活気に溢れている。ってか神殿の前になんかチップ交換所があるんですけど……いいのかよこれ。こんなとこが第1階級な訳?
目が点になっている俺の腕をまた引いてリックが進んでいく。
『ここは前の天使長まではこんなに賑やかな場所じゃなかったんだけど、天使長がバラキエル様になった途端、急に娯楽施設が溢れちゃって……あの御方はギャンブルの天使って呼ばれてるだけあって、ものすごく本人もギャンブル好きなんだよ。仕事ほっぽいてギャンブルするくらいだからね』
「マジかよ……そんな奴が天使長でいいのか?」
『その代わり、ここのギャンブルはいかさまOKって事になってる。常に勝てる方法を模索し、相手にばれずに勝利をつかんでこそが美徳って言われるくらい。その影響かバラキエル様は観察眼が鋭い。あの方は状況判断がすごく上手くて、どんな状況でも冷静に最善の策を瞬時で考えつく。そこが熾天使の条件。どんな状況でも最善の策を一瞬で考えつく事』
へ、へぇ……やっぱ一番上の位って力が強いとかじゃなくて、そういう状況判断が求められるんだな。でもギャンブルで本当に鍛えれるのかぁ?
まぁ別にいいや、俺が入る訳じゃないし。とりあえず神殿の中に入ってカジノみたいな。
リックと話しながら神殿の中に入る。力天使は一応見張りの天使が居るけど、ここにはいないんだな。入ってすぐに大きな広場に出て右に行けばカジノ。左に行けば熾天使の集会所になっていた。
流石にそこには見張りの天使が居るみたいだけど。
リックは見張りの天使達にラファエルからもらったネックレスを見せた。
『これはラファエル様の刻印です。神殿内の散策の許可をお願いします』
『えぇ?お前その話聞いてたか?』
『い、いや俺は何も……でもこれは間違いなくラファエル様のだよなぁ』
話通してねぇのかよ。
心の中で突っ込んだけど、入れないんじゃしょうがない。正直カジノに行ければいいんだから中にそれほど興味はない。焦っているリックを余所に鼻歌を歌っていれば、見張りの天使達の焦った声が聞こえてきた。
『済まぬな。妾の手違いだ……貴殿達の話はラファエル殿から聞いておる。許可しよう』
「え、ありが、と……」
礼を言いかけて固まってしまった。
そこには顔は女だけど身体がでけぇ鳥の姿をした奴がいたからだ。え、天使ってこんなに不気味な姿の奴がいんのかよ……
固まった俺に見張りの天使達は慌てて頭を下げた。
『セラフィエル様、すみません!ほらお前達早く行け!』
「な、なんだよ急に……この鳥すごい奴なのか?」
『ちょっ……章吾!セラフィエル様に何てことを!』
え、なんでリックまで焦ってんの?
見張りの天使が俺を怒鳴ってくる中、セラフィエルって奴は笑い声を上げた。
『ははは!妾の姿を見てそのような反応は久しぶりよ。中々面白い奴じゃ。案ずるな、普段は貴殿が想像している天使の姿をしておる。じゃがこちらの方が落ち着いてな』
「ふーん……すごい変だよそれ。止めた方がいいぜ」
『ふふ、不評ならば普通の天使の姿になろうかえ』
そう言ってそいつは普通の女の天使の姿になった。うん、こっちの方がいいよ。
『ついて来い。広場までじゃが妾が案内してやろう』
「マジで?ありがとー」
『章吾~……』
セラフィエルの後ろをついて行く俺にリックがごつごつとどついてくる。
なんだよ何すんだよ~。睨み返せば焦っている表情のリック。
『あの御方は熾天使の副天使長なんだよ!あんな態度……』
『え?だって力天使だって副天使長アズラエルじゃん。俺達かなり馬鹿にしてるぞ』
『アズラエル様はまだ力天使内の方だから許されるけど、他階級の……ましてや熾天使の副天使長にあんな態度……』
「まぁ本人も怒ってねぇし、いいんじゃね?」
『もうどうなっても知らないからね』
まぁ怒ってないし、もしもの時はラファエルが守ってくれるだろ。
長い廊下を数分歩いた先にはいくつか部屋があり、その内の1つにセラフィエルは手をかけた。
『来た来た来たぁ!それストレートフラッシュ!』
『ぐおっ!なんじゃ貴様!わしはてっきり貴様はストレート程度じゃと……っ』
『騙されたなジジイ。僕がそんな簡単に表情読ますわけないだろ?まぁジジイはフルハウス辺りと思ってたけどな』
『ぐぬぅ……貴様なぜわかった』
周りからの拍手に包まれてドヤ顔を決めている少年と、悔しそうな顔のジジイ。それにしても何で相手の持ってるカードが分かったんだろう。これがバレないイカサマって奴なんだろうか?
『ばぁか、それ教えたら意味ないだろ?さて、こんなについてるんだ!今日はカジノですごく勝てる気がするね!』
『何をするんじゃ?』
『そうだね。ブラックジャックかバカラ、ファイブカードもいいね』
数人の天使が和やかに過ごしている中、二人の天使がポーカーで盛り上がっていた。
片方は俺より少し幼い見た目の少年で、もう一人はもういつ死んでもいいんじゃないかってくらいの年老いた禿げた小さな爺さんだった。少年の天使がポーカーで勝ったのを喜んでカジノに行くと言って立ち上がる。すげぇな、こんなとこまでギャンブルやんのかよ。
辺りを見渡すと、中にはダーツにビリヤード等が置かれており、本当に娯楽施設にあふれてる。
少年はじいさんを置いて、入り口に立っている俺達に近づいてきた。
『セラフィエル邪魔だよ。つかそいつら誰だい?見た事ないね』
『彼らは力天使の者だ、ラファエルから聞いたであろう。見学に来ると』
『おいおい見学にこんな所来ても意味ないだろ。カジノ行こうカジノ!アブディエルから稼いだ金があるから僕が奢ってあげよう』
そのまま肩を掴まれてズルズルと俺達は引きずられていく。
「え、ちょっ!」
『あぁアブディエルが誰だって?さっきの小さい爺さんさ。ちなみに僕はヤホエル。まぁ余り力天使とは親交ないけどよろしく』
「聞いてねぇよ!なんだよ折角広場に入ったのに……」
『あんな所入ってもつまらないだろう?カジノだカジノ。今日は絶対に当たるぞぉ~~』
こいつ人の話全然聞いてねぇ……
リックは言われるがまま無言で引きずられていっている。
「おいリックーどうするんだよ!」
『章吾カジノ行きたいって言ってたじゃん。丁度いいんじゃない?』
「確かに言ったけど……俺カジノ行った事ないからわかんねぇし」
『はぁ!?君行った事ないのかい!?力天使はお固いねぇ……』
「うっせぇー無駄遣いよりマシだぁー」
『無駄遣いじゃない!失礼だな君は!真剣勝負なんだ!!』
まぁ奢ってくれるならいいけどね。
そのままズルズル俺達は長い廊下を引きずられていった。
***
『セラフィエル、先ほどの小僧たちは何者だ?』
『ラファエル殿が御寵愛なさっておる者たちじゃ。カイリエル達の所に行かすことなくラファエル殿が力天使に引きぬいた』
『ほう……彼は医療専門者なのかい?』
『そこまでは知らぬ。じゃがバラキエル殿の占いでは彼は禍根の目になると出ておった』
『力天使は秘密主義ゆえ、行動が読めぬからのぉ……まぁザドキエル殿が監視しておる。大丈夫じゃろうて』
『だといいのじゃが……』




