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Ring Of Solomon〜from the under world〜  作者: *amin*
第4部(最終章)
181/207

第181話 激化していく戦い 

 あれからどのくらいの時間が経過したのか、俺もアスモデウスもボロボロで、相手はずっと涼しい顔だ。腕なんてもう折られてるんじゃないかってくらい赤黒く腫れあがっていて、殴られた腹はむかむかして今にも吐いてしまいそうだ。でもここで負けたらすべてが終わることは分かっている。

 俺は一生逃げられないしアスモデウスは殺される。絶対にあきらめたらいけないんだ。



 181 激化していく戦い



 『あーもうお前との喧嘩も飽きてきたわ。勝負決めようぜそろそろ』

 『こっちとしても一刻も早くお前と白黒つけたいよ。次がラストと行こうか』


 アスモデウスとアザゼルはお互い傷だらけだ。サタネル同士の剣の合わせあいは、はっきり言って壮絶だ。素人の俺でも分かるくらい、剣を弾きあう音も大きく、まずお互いに隙がない。でも二人には僅かな隙が分かるんだろう。そこを狙っていく。アスモデウスが頑張ってるのに俺は一向にアバドンに歯が立たない。


 サタナエルのこの白い炎が牽制になってるのか、アバドンは必要以上俺に近づかないのはいいけど、一気に距離を詰められたら心臓が止まるくらい驚いて身動きが出来なくなってしまう。


 早くシャネルを助けなければいけないのに、このままだとジリ貧だ。勝てるビジョンが見えない。


 アバドンが拳を僅かに突き出してきて攻撃する機会を伺ってる。あいつがあの動作の後、攻撃してくるって分かってるのに反応できない体が憎たらしい。


 一歩だけ後ろに俺が下がったのを見て隙を見つけたのか、一気に加速をつけて詰め寄ってくる。今回こそは動かなきゃいけない!そう思って腕を突き出した瞬間、奴が一瞬で視界から消えた。どこに行ったんだ!?


 『口ノ割リニ、貴殿ハ全ク相手ニナランヨ』


 後ろから首に腕を回されて、そのまま羽交い絞めにされる。足は宙を蹴り持ち上げられて身動きが取れなくなる。息苦しさから抵抗するためにサタナエルの炎が宿った手で、あいつの腕を握るけど、あいつはビクともしてなかった。


 『カヨウナ軟弱ナ炎デハ我ノ肉体ニ傷一ツツケラレヌ』

 「くっそぉ……っ!」

 『あーあ終わったね。逃走劇終了~!お疲れ様でした~!!』


 炎がきかないとかあるのかよ!?じゃあなんでこいつは今までサタナエルの炎に距離をとって戦っていたんだよ!全然効いてないじゃないか!握っている部分はやけどのように水ぶくれができているが、一瞬で灰にできるような力ではない。

 この状況をラハグが拍手をしてニコニコ笑ってる。アバドンはそのまま俺の首をギリギリ締め付け、息苦しさに咳が漏れた。


 『一度首ノ骨ヲ折ッテオコウ。抵抗ガデキナクナルヨウニナ。心配スルナ。マタ繋ギ合ワセテヤル』


 冗談じゃない!ふざけるんじゃねえよ!!そんなの嫌に決まってる!!でもサタナエルの炎はこいつには役に立たねえし、一体どうすりゃいいんだよ!サタナエルの力以外でこいつに対抗できる力……そうかこれがあった!

 これが成功するかは分からないけどやるしかない!きっとこいつは今なら油断してる!

 アバドンの腕を掴んでいた手をアバドンの顔の前に持っていく。今から自分がやることの恐怖で顔が青くなっていくけど、仕方ない……仕方ないんだ!


 『何ダ?オ手上ゲカ?』

 「出て来い!!」


 そう叫んだ瞬間、手から浄化の剣が現れる。俺の手はあいつの顔の前に持っていってる。つまり剣が現れた瞬間にあいつの顔に剣が突き刺さるはずだ。


 『ナンダトッ!?』


 アバドンの声が聞こえて、腕の力が緩まった瞬間にアバドンの腕から慌てて逃げた。あいつの顔を突き刺せたんだろうか?恐る恐る振り返ると、そこには傷一つ付いてないアバドンがいる。なんで、全く効いてないのか?


 「嘘……」

 『中々策士ヨノォ……危ウク顔ニ穴ガ開ク所デアッタ。御苦労ラハグ』

 『怖いねえ。浄化の剣って奴は好きな時に好きな場所に出せるんだ。奇襲にもってこいの剣だね』


 またあいつ……どうやらあいつがまた一瞬の間に結界を張って攻撃を防いだようだ。アバドンですら身動きがとれなかったっつーのに、遠く離れてたこいつは俺の攻撃をお見通しだったようだ。これで決まると思ったのに!!


 ギリッと食いしばった歯は鈍い痛みを訴える。全てをアスモデウスに頼るわけにはいかない。こいつだけは俺が倒さなきゃ!アスモデウスはアザゼルと激しい攻防戦を繰り広げている。そんな相手に助けてくれなんて言えない。俺が倒すしかないんだ!


 アバドンとラハグは浄化の剣をまじまじと眺めている。


 『ホウ……ソレガ天使ノ(ちから)ヲ操ルト言ウ浄化ノ剣トヤラカ。マタ随分派手ナ剣ダナ』

 『あの剣からは俺達の嫌いな天使のエネルギーを嫌って程に感じる。あの剣から攻撃食らったら多分かなり致命的な傷になるよ』

 『私ノ体ヲ裂ケル程ノ力ガアレバナ』


 アバドンが再び俺に攻撃を仕掛けてくる。こいつのスピードについていけるはずがない。なら避ける隙を与えない大量のカマイタチで今度はこっちから迎え撃ってやる!剣を真上に立てた俺にアバドンが怪訝そうな表情を浮かべる。でももう遅い。


 「行け!」


 掛け声とともに現れたのは何十ものカマイタチ。それが方向も定めずに乱雑に飛び回る。そのカマイタチはアスモデウスとアザゼルも巻き込んで行き、後方にいたラハグと結界の中にいるシャネルをも巻き込む。


 『無造作に攻撃するのか。厄介だな……』

 『問題ナイ。ヘシ折ル』


 どこから来る?アバドンはどこから……その時、カマイタチが相殺される音が聞こえ、慌ててそっちに体を向けた。そうだ、カマイタチを使って四方八方防げば、あいつの行動がきっと読み取れる!ご丁寧にカマイタチをかわさずに相殺させるくらいだ。この音で確認できる。カマイタチが時間を稼いでくれてる隙にもう一度、カマイタチを出すようにイメージを吹き込む。

 今度はもっと大量に、もっと密度が高いものをっ……


 「行け!」


 再び俺の掛け声と共に数十ものカマイタチが剣から放出される。再び現れたカマイタチが地面や木などを薙ぎ倒したお陰で土煙が舞い、視界が多い尽くされる。でも聞こえてくる。あいつがカマイタチを相殺させてこっちに向かってくる姿が。


 『アバドンいったん戻れ!視界が悪いのは不利だぞ!』


 ラハグの叫び声が聞こえる。やっぱりあいつは俺の狙いなんてお見通しだったみたいだ。でもそんなのどうでもいい。アバドンは確実にこっちに向かってくる。その音が聞こえる方に特大の竜巻をお見舞いしてやろうと剣に再びイメージを吹き込む。連続使用はやっぱ未だに慣れなくて頭ガンガンするけど仕方ない。これでこいつが倒せるならちょっとの頭痛なんか構うもんか!

 音がどんどん大きくなってくる。奴が俺に近づいてくる……音が聞こえる方向に剣を向けて、言葉を放った。


 「くたばれ筋肉野郎」


 剣から出た竜巻はイメージ通りの大きさと激しさで一直線に進んでいく。そして何かにぶつかる音が聞こえて、さらにカマイタチまでも追い討ちをかけるように向かっていく。未だに視界が優れない中、物凄い風が吹き荒れて、立っていられなかった俺はその場に尻餅をつきながらも真っ直ぐ前を見つめた。


 数秒後に風が止み、視界が少しずつクリアになっていく。そして視界に入ったのは膝を突かず、立っているアバドンがいた。嘘だろ……あれでも倒せなかったのか……これがサタネルの力なのかよ……


 でもアバドンは口と胸から血を流している。そしてアバドンの左胸に剣を突き刺しているアスモデウスの姿が次第に鮮明に映っていった。


 『アスモデウス……』

 『あの一瞬の土煙で上手くアザゼルを撒けたよ。カマイタチにばかり気が行って俺に全く気づかなかった……それがあんたの敗因だ』

 『くっそ……!アスモデウスてめえ!俺との戦いの最中によそ見しやがったな!』


 切れるアザゼルを他所にアスモデウスが剣を抜き取れば、アバドンはその場に突っ伏し動かなくなった。


 やった……倒した……止めを刺したのは俺じゃなくてアスモデウスだったけど、それでもこいつを倒したんだ。途端に訪れた安堵感から体中が鈍い痛みをあげる。腕を見ると、青あざや内出血だらけだった。殴られた部分は未だに鈍い悲鳴をあげてるけど、でも大丈夫だ。俺はまだ戦える。ゆっくりと立ち上がって、次に剣を向ける相手はラハグ。


 こいつはアバドン以上に多分厄介な相手だ。アバドンの拳や俺のカマイタチを簡単に防いでやがったし、考えてる事なんて全てお見通しだった。流石にこの状況にいつもの弱気を出す事が出来ないのか、ラハグが少しだけ不機嫌そうな表情でロッドを強く握りしめる。


 『あのさ、そういうご都合主義みたいなのでさ、サタネルが倒せるとか思われるのが一番腹が立つんだ。面倒くさいなあ……大人しくしとけばいいのに』


 地面が振動する。ラハグがやってるのか?周辺の木々が浮き上がり、足元がおぼつかない。なんだこれ!?

 周りの木や岩が宙に浮きあがり俺とラハグを囲うように漂っている。やばい、これ嫌な予感しかしない。

 無言でラハグがロッドを振り下ろした瞬間、そのすべてがこちらに向かって落ちてきた。


 「ぐっ……!いけ!」


 剣にイメージを吹き込み自分の頭上だけでも守るように竜巻を出す。複数回使用したことで頭痛がして竜巻の威力も弱い。けど、それでも使うしかない。なんとかある程度は粉砕できたけど、小さなかけらや壊しきれなかった物が周囲に落ちて立っていられずに尻もちをつく。

 しかし今度は立っていられないほどの重力が襲い掛かり、地面に突っ伏した。


 「拓也!」


 シャネルの悲鳴が聞こえ、返事をしたいけど指一本動かせない。無言でロッドを握っているラハグは一歩一歩近づいてきたが、ギリギリ攻撃の届きそうにない場所で立ち止まる。


 『降参するって言いな。面倒だけど殺したら駄目だってお達し出てるんだ。君が降参しないっていうのなら、両手の骨は粉砕させてもらおうか。あとは、腰から下は必要ないから潰す。下半身なくても生きていけるしね』


 ぐ、くそ……!

 何とかこの場所から脱出しないと……サタナエルの炎を再び使用しようと、腕に力を込めた瞬間、体にかかる重力が消え、嘘のように軽くなった。それと同時に金属がぶつかる音が聞こえ、目の前にアスモデウスの剣が転がる。


 『てめえな、そこまでする意味ねえだろ!』


 アスモデウスが剣を投げて俺を助けてくれたのか……だとしたら、今アスモデウスは丸腰だ!アザゼルの攻撃を耐えるしかなくなったアスモデウスは、傷を庇いながらも懸命に避けている。どうしよう、アスモデウスを助けないと、慌てて剣をとりに行こうと起き上がった俺をラハグが勿論見逃すはずもなく足元がぐらつき、体に再び負荷がかかる気配を感じる。

 どうやってもこいつには勝てない!

 咄嗟に出てきた解決法はあまりにも汚く情けない方法だった。


 「こいつを殺す!」


 血流して倒れているアバドンに剣を突き立てると、アザゼルとラハグの動きが止まった。まだ死んでない、こいつは生きてる。だから人質としての価値があれば……

 ラハグは黙ってロッドを下ろした。効果あるのか?


 『こっちにも人質いるの忘れてない?』


 顔が真っ青になる。そうだ、シャネルがあいつにつかまっていた!!でもここで折れたら負けだ、サタナエルの炎を出して威嚇する。シャネルに手を出したら絶対にこいつを殺してやる。

 その時、ラハグが何かに気づいて一歩後ろに下がる。下がった場所に何かが現れ、その姿を見てぞっとする。


 『おーい選手交代、次は俺らでいんじゃね?』


 立っていたのはベヘモトとサマエル。マジかよ……まさか援軍?ベヘモトが現れたことによる恐怖が甦り、嫌な汗が出た。ベヘモトはケタケタ笑いながら地面に倒れているアバドンを蹴っ飛ばした。こいつ、仲間じゃないのかよ!!


 「なっ!」

 『邪魔だぜぇアバドン。負けた奴がいつまでも視界に入ってんじゃねーよ、鬱陶しい』


 仲間を助ける所が蹴っ飛ばすなんて……!

 でもアスモデウスと戦ってるアザゼルは舌打ちをしてベヘモトに食って掛かった。


 『あぁ!?俺らが先に見つけた獲物だぞ!易々と逃がして溜まるか!』

 『アスモデウス素手じゃん。そんな相手にお前勝てねえの?うけんだけど』

 『んだと!』

 『アザゼル、ベヘモトの言う通りだよ。俺達は一回戻ろう』


 ラハグは倒れているアバドンを宙に浮かせてアザゼルを諫めるが、もちろんそんなことで納得に置く相手ではない。しかしラハグ自体はもう戦う気がないのか、シャネルにかけていた結界もとき解放した。駆け寄ったシャネルを受け止め、動向を見守る。


 『てめえも俺が負けると思ってんのかよ!?』

 『思ってないさね。でもアバドンの治療が先だ。どうも、彼は俺達に考慮はしてくれないみたいだし』


 ラハグはべへモトを睨みつけ嫌味を言うが、相手はフンと鼻を鳴らして笑った。


 『冗談じゃねえ!帰るなら勝手に帰れ!俺を巻き込むな!!』

 『アザゼル、本当にやめた方がいい。一度戻ろう。べへモトの戦い方は君と相性が良くない。ごめんね、君の願いはかなえてあげられない』


 ラハグがそう呟いた瞬間、アザゼルの体が急に地面に突っ伏した。そのまま動けないアザゼルに再度謝罪をいれ、そしてラハグが何かの呪文を唱えればアザゼルとアバドンの姿は消え、ラハグ自らも姿を消した。


 『アザゼルに十八番の重力攻撃かますとか……あいつもやるときゃやるじゃねえか』


 ベヘモトがくつくつ笑いながら、静かになった空間を騒がしいものにしていく。冗談じゃねえぞ……もう俺だってアスモデウスだって傷だらけだ。そんな状態で更にベヘモトとサマエルと戦えなんて……


 『さぁ選手交代。後半戦の突入だ』


 ベヘモトが楽しそうに笑う。でもこっちとしては全然笑えない。どうやら俺が皆の所に帰るのは予想以上にしんどそうだ。でも何でサマエルまで来るんだよ!あんたは俺を助けてくれるって言ったじゃないか!

 審判が行われた時だって守ってくれるって言ったじゃないか!なのにあんたはなんで今ここにいるんだよ!?なんでベヘモトと一緒にいるんだよ!可笑しいじゃねぇか!


 「な、なんでサマエル……あんたは俺の味方じゃなかったのか!?」

 『……あくまでもお前が俺達の側についた場合のみの条件だ。裏切るお前を見逃すわけにはいかない』


 サマエルが構えたのを見て、アスモデウスも剣を構える。

 嘘だろ……止めてくれよ。


 『お前を殺して俺が指輪を継承する。それで全て無かった事にしてやるさ』



アザゼル…グレゴリの堕天使たちの筆頭を務め、サタネルにも分類される強壮な堕天使。

元は座天使であり、第3階級の天使長であるラジエルの性格を変えるきっかけを作った張本人。

ラファエルに荒野の穴倉に数千年もの間封印されていた事もあり、ラファエルに対する復讐心は大きい。

また自分以外に封印されているグレゴリの堕天使達であるシュミハザやアラキバ達を復活させるために死力を尽くしている。


ラハグ…サタネルの称号を持つ悪魔。

彼は「混沌」を意味する悪魔であり、海を支配する者とも呼ばれる。

気弱で泣き虫な青年であり、相棒のアザゼルの影にいつも隠れている。しかし魔力の高さは実はサタネルの中でも1番高く、得意の重力攻撃に逆らえる者はいない。


アバドン…アバドンはサタネルと分類される強大な堕天使の一人であり、その名の持つ意味は「破壊者」そして「滅ぼす者」。

屈強な体格をした大男であり、その力は地獄でも類を見ない。

戦いを好むが、意外と思慮深い面を持つ。



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