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Ring Of Solomon〜from the under world〜  作者: *amin*
第4部(最終章)
157/207

第157話 ルシファーとの邂逅

 手を引かれて歩きだしてどのくらい時間が経過しただろう。

 いつまでも景色が変わらずゴールが見えないことに次第に足にしびれが走り、もつれて転びそうになっても相手が足を止めることはなく顔を顰めた。

 少女との会話はなく、ただ死に近づいている。その感覚だけが脳を支配していた。



 157 ルシファーとの邂逅



 「ここ」


 ついた先には巨大な城が建っていた。

 これがルシファーの城なんだろうか?そう思うと呼吸が止まる感覚がした。少女は見張りの悪魔を一瞥して俺の手を引いて城の中に入っていく。悪魔たちの視線を体中に浴びながら、少女に手を引かれる。

 そこから先はまたデカイ城の中をただ黙々と歩く。会話はないし、したくもない。このまま逃げようと手を少しでも動かすと、強い力で握られ逃げる事なんてできないと理解する。

 半ば引きずられる様にして金とか宝石で飾られた大きくて豪華な扉が目の前に見えてきた。


 ― 絶対にあれだ。


 その俺の判断は正しかったようで、少女はその扉に手をかけて俺に振り返った。


 『粗相のない様にね。ルシファー様は貴方を可愛がる気でいるの。彼の機嫌を損ねない様にね』


 損ねたら殺されるんだろう。それなら上手くやらないと逃げるチャンスもない。返事をしない俺に少女は顔を顰めたが、大して気にすることもなく巨大な扉を細い腕で開けた。


 心臓がバクバク破裂しそうなくらいうるさい。


 息を飲んで、俺は自分を引っ張る少女の後をついて行った。

 

 中は広い部屋で、これまた金銀宝石で装飾された天井に窓、椅子、テーブル……凝った装飾品が並んでおり、その中央の大きい長方形のテーブルに六匹の悪魔が座っていた。


 こいつらの誰がルシファーかは何となくわかった。椅子は長方形の長い辺に三つずつ計六個、そして短い辺に一つ一番豪華な椅子。そこに座ってるのは髪の長い本当に美青年って言葉が似合う男で、何となくだが俺はこいつがルシファーだと感じた。


 でもそれと同時にどこかで見た事があるという錯覚にも襲われた。


 少女は俺を余った豪華な椅子に座らせて自分の席に着く。椅子はフワフワで、ここが地獄じゃなくてマンションとかだったら、そのまま全身の力を抜いてただろうけど、それもできない。震えてる俺を見て、体中に豪華な宝石をつけてる黒髪の女が俺の顔を覗き込んだ。


 『本当にこれなの?フォカロルったら間違えたんじゃないの?』

 『あの子は間違えないわ。仕事はきっちりする子だもの。それに指輪してるでしょ』


 俺を連れてきた少女がそう言えば、黒髪の女は笑みを深くする。女版シトリーそっくりな妖艶さが漂い、見惚れそうになったが、慌てて目を逸らした。こいつら、フォカロルの名前を口にした。忌々しい……その名前を聞いただけでイライラする。

 そのまま全員の視線が注がれて気まずい。この場から逃げてしまいたい。思わず恐怖から零れ落ちそうになった涙が目に溜まっていく。

 その時、多分ルシファーだろうなと思った奴が俺に話しかけてきた。


 『何も怖がる必要はない我らの希望よ。ようこそ地獄へ』


 柔らかい言い方に思わず顔を上げた。直線上の椅子には見惚れそうなほど綺麗に微笑んでいる男の姿。余りにも優しそうな声で言うから呆気にとられてしまった。いきなり殺されそうな感じがしてたけど……どうやらそうではなさそうだ。

 何となくその事に安心して息をつくと、自然と体の緊張が解けてしまい、ソファに埋もれてしまった。相変わらず全員の視線が痛いけど、俺は下を向く事でそれを回避した。

 そんな俺に頭に王冠をかぶって目が隠れてる男が俺に問いかけてきた。


 『お前は話は聞いてるのか?なぜ自分が地獄に連れてこられたのかを』

 「……サタナエルを……」

 『正解。言ってみれば君は強大な悪魔の子供なんだ。今の所、君を取って食おうとする奴はいないだろう。安心しな』


 安心しなって言われても……それなら家に返してほしい。なんて事は口が裂けても怖くて言えない。返事をしない俺に男が「反応がないな」と話してる。ていうかこいつら誰なんだ?七匹いるからこいつらが七つの大罪なのか?ルシファーっぽい奴以外は全く分からない。こいつらは何者なんだ?

 その俺の気持ちを代弁するかの様に、黒髪の男が俺に話しかけてきた。


 『混乱しているな、無理もない。だが時間がないのだ。早めに行動はしてくれ』


 返事をしない俺に気を悪くした様子もなく、男は話を進めていく。

 やっぱりこいつらは七つの大罪なんだ。そう言えばソロモンの悪魔にも七つの大罪がいるって言ってたけど、それは誰なんだろうか?

 それを考えている俺に、男は自分の名前を明かした。


 『そう言えば名を言っていなかったな。私はルシファー。私の事は好きに呼んでくれて構わない』


 やっぱり……こいつがルシファーなんだ。おもわず体を硬直させた俺を全員がおかしそうに笑っている。

 何が面白いんだ。こっちは恐怖で何も言うことすらできねえよ。ルシファーが笑っている奴らを静めて、再び俺に視線を向ける。射ぬかれそうな視線に顔を上げられない。


 『希望よ、君は全てを知っているのだな?自らがサタナエルの子供であると』


 返事をしない俺を見てもルシファーは気にもせず淡々と話を進める。


 『それは肯定と受け取っていいのだな?ならば話は早い。フォカロル達はとても優秀な悪魔だ。サタナエルの力に目覚めていない君を地獄に送りこむようなことはしないはずだ。サタナエルを君の炎で目覚めさせてくれ。それで準備は完了だ、審判での勝利を意味するだろう』


 ルシファーは立ち上がって、俺の前まで歩いて来る。必然的に手で頭を覆った俺を見て、周りから笑い声が漏れた。そして怯えてる俺の腕を掴み、無理やり椅子から立たせる。こちらの事情などお構いなしの行動に相手と視線が交わり、恐怖から視線が足元に向かう。


 「いって……!」

 『ならば自らの足で歩けばいい。その足は飾りではないだろう?』


 そのまま腕を引かれて引きずられるようにルシファーの椅子の後ろにある、金色の扉に向かっていく。


 この先に何があるって言うんだ?まさかサタナエルが待ってるって言うのか?息を飲んだ俺に、一度だけ視線を寄こした後、ルシファーは扉に手をかけた。


 ギィ……と言う重い音が響いて扉の先の部屋が少しずつ見えていく。


 大きな水晶が広い部屋のほとんどを占めていて、その水晶の前にこれまた豪華な椅子が置かれているだけだった。その水晶の中に、小さな男の子が眠っていた。いや、凍らされてるのか?なぜかその子供に引きつけられて、俺はルシファーの腕を振り払って、その子供の所に走り寄っていた。子どもの目は固く閉じられている。指一本動く気配はない。なのに、なぜこんなにもこの少年を知っているような気がするんだろう。お前が、俺にずっと話しかけていた奴なのか?


 『やはり懐かしいか?自らの父親は』


 父親?冗談も休み休みにしてほしい。だれがこんな奴を父親だなんて思うもんか。でもやっぱりこいつがサタナエル……夢の中で俺に何回も語りかけてた奴。幼い容姿の子供、こんな子供が最強の悪魔って言うんだろうか?ジッと見つめた所で子供が目覚める事はない。この子が目覚めるには俺の力が必要なんだ。


 気づけば夢中になって子供を覗き込んでいた俺の様子をルシファーは満足そうに眺めている。

 その後ろにフードを被った男が近づき、ルシファーに耳打ちをする。


 『ベルフェゴール、やはり間違いはなかったようだ。彼は我らの希望だ。サタナエルを見て、何かを感じている』

 『……しかし指輪の力を使いこなせそうな雰囲気はない。彼からはサタナエル様の力を微塵も感じない。暫く時間がかかるのでは?』

 『構わんさ。じっくりと使いこなせていけばいい。彼がこの場にいる限り、私達の望みは達成されたも同然だ。希望の力を引き出すのは任せたぞ』

 『御意』


 二人の会話なんて耳に入らない。

 ただ俺は夢中で眠っている子供を眺め続けた。


 ?side ―


 『おいおい、あんなのが継承者だっつーのか?ヒョロヒョロのガキじゃねえか』

 『逆に俺はあの子でよかった。怖そうな子だったら嫌じゃん』

 『ラハグは本当に怖がりね。人間を怖がってどうするのよ』


 クスクスと笑って拓也達の様子を遠くから眺めているのはポニーテイルの可愛らしい少女と青年と少年。

 少女は気弱そうな少年を茶化して遊んでいる。

 少年は青年の後ろに隠れるが、ひっぺがされている。


 『ラハグうぜー。あっち行け』

 『そんなぁ~!そんな事言わないでよアザゼル~』

 『はぁ……本当何でこんな泣き虫がサタネルの称号を持ってるのかしら』


 サタネル、地獄の王を意味する称号。

 悪魔たちの頂点に君臨する者。

 サタネル達も待ちわびていた。彼が復活を遂げる日を。


 『後で私達も挨拶をしに行きましょう』

 『えー怖いよー。指輪の継承者だろ?サタナエル様の炎使われたらどうすんの』

 『ばっか、あのガキは全く使いこなせてねぇ。あんなのただの火遊びだ』

 『じゃーアザゼルが盾になってよね』

 『てめえ……毎回俺を盾にして隠れる癖に、よく偉そうに言えるな』


 アザゼルに頬をつねられて涙目になっているラハグ。

 すぐ泣くんだからと茶化す少女は止める気はなさそうだ。


 もうすぐ会える。彼に会う事が出来る。

 彼は継承者を何万年も待ち続けた。あの最後の審判での敗北から何万年も。

 全てが順調に行っている。そして全ての準備が整うのだ。


 さぁ我ら悪魔にそのお姿を……


登場人物


ルシファー…魔王とも呼ばれる地獄の王。7つの大罪の“傲慢”を司り、サタネルの称号までも持つ地獄の王であり、その姿は長く美しい髪を持つ美男子と言われている。

その威厳ある姿に反抗できるものはいないとされる。

自らの側近にバティン、パイモン、バルマを据えており、妃の1人にグレモリーが存在する。

冷静で思慮深く、仲間には寛大。非の打ち所のない人物。

堕天する前は天界で神に最も近い天使と言われており、天使9階級の第8階級“大天使アークエンジェルズ”と第9階級“天使エンジェルズ”の天使長でもあった。

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