第101話 錬金術の恐怖
セーレside ―
「セーレ、俺行くから……中谷よろしくな」
拓也はそう告げて、俺の腕を支えにして立ち上がり、ゆっくりと契約者の元に向かっていく。引き止めないといけないのに、拓也の決意に何も言えなくなってしまう。
どうして危険に足を踏み入れるんだ、君は被害者じゃないか、こんなことに巻き込まれて……泣いて逃げたっていいはずなのに、どうしてそこまでして無理に前を向こうとするんだ。恐怖に押しつぶされそうなくせに、どうして俺達のために命を懸けようとするんだ……!
「Mir tut es leid……Was ist es für einen Sohn mit einer Frau.(すまない……妻と息子の為なんだ)Sterben Sie leise.(大人しく死んでくれ)」
契約者である男がそう拓也に呟いて包丁を向け、拓也が息を飲むのがわかる。
やっぱり今からでも止めるべきだ。そう思ったけれど拓也の肩にストラスが飛び乗ったことで行動は起こせずに終わった。ストラスは確認するように拓也に一言だけ聞いた。
『行けるのですか?』
「うん……」
101 錬金術の恐怖
「中谷、大丈夫か?」
「ひ、ひっく……」
必死で背中を規則正しいリズムでぽんぽん叩くけど、中谷は中々泣きやまない。でもそれは無理もないだろう、人が死ぬところを見てしまったんだ。しかもあんな形で……心の傷は相当深いはずだ。俺があの時、怪我さえ負ってなかったら……こんなに苦しめることもなかったんだ。
「すまない中谷……」
全部俺のせいだ。謝っても済むわけじゃないが、謝らずにはいられない。いつもの元気な姿からは想像もつかないほど、今の中谷は精神的に不安定だ。そんな中谷に謝るしかできず、罪悪感で押しつぶされそうだ。本当は俺よりもヴォラクがいた方がいいのかもしれないけど、ヴォラクはザガンによって作られたパイモンとヴアルと戦っており、とてもじゃないけど中谷の側に居られるわけがない。
でもやっぱりこっちの様子が気になるのか、チラチラこっちに視線を送っている。もうこの状況にこっちまで頭がやられそうだ。
『痛い!痛い痛い痛い!!』
『わざとらしく大声出すなよ!』
偽物のヴアルの大げさすぎる悲鳴が室内に響き渡り、ヴォラクが苛立ちを隠せない怒声をあげる。大した怪我を負ってもいないのに、痛い痛いとわざとらしく悲鳴をあげる度に、拓也と中谷が肩を震わせている。あのヴアルに憑依した悪魔は明らかに中谷たちの反応を見て楽しんでいる。そしてそれに気付いて怒り狂い、冷静な判断ができなくなりだしているヴォラクの反応も楽しんでいるんだろう。最低な奴だ。
でもパイモンはヴォラクと違って冷静で、相手を後ろに引かす事で自らも距離をとった。本当に彼がいてくれてよかった……でもこういう時、何もできない自分に劣等感を感じてしまう。
そんな俺の気持ちを知るはずもなく、表情を崩さないままパイモンがヴォラクに声をかけた。
『ヴォラク、こいつ等の動き……』
『うん。パイモンの動きも本物とはかけ離れてるし力も弱い。所詮偽物なんだよ』
パイモンとヴアルの見た目は錬成出来ても、戦い方までは完璧には錬成できないみたいだな。そりゃパイモンやヴアルレベルのコピーが出回ったら大変なことになる。そこはまた違うんだろうな。俺から見ても分かるほどに力の差は歴然だ。
恐らくヴォラクとパイモンならすぐにケリを付けられるだろう。でも二人がそれをしない理由はわかりきってるけど……
『ヴォラク、一瞬で首をはねろよ』
『嫌だね。いたぶって殺してやる』
『それはお前の願望だろう。俺もできれば手足を削いでいきたいが、今は中谷を優先しろ。時間をかけていたぶれば、その間あいつは悲鳴をあげ続けるぞ。これ以上中谷に聞かせる必要もないだろう』
『…………わかったよ』
ヴォラクが投げやりに相槌を打って、またこっちに視線を送る。中谷はヴォラクの方を見ておらず、俺にしがみついてる。どうやら中谷の視線がこっちに向いてないかを確認したかったみたいだ。そのままの体勢キープしろとアイコンタクトを送られて頷く。心配しなくても見ないと思うよ、こんな状況で顔を上げることなんてできないだろう。中谷を確認できたヴォラクは今度は拓也に視線を送る。
拓也の方は今だに契約者の間との睨み合いが続いており、事は進展していなかった。
『拓也の奴……契約者とやり合う気か?』
『それは何としても阻止しなければな。主はトラウマもある』
トラウマ……あの子の事か。拓也の中で未だに深い根を張り続けるシスター。確かにまた拓也が誰かを殺してしまったら、今度こそ壊れてしまうかもしれない。それだけは阻止しなければ。同じ事を思ったのか、ヴォラクとパイモンは頷きあうと一気に決めるとでも言うように加速をつけて偽物のヴアル達に切りかかった。
『ここまでか……まあヴォラクと……ましてやパイモンを止められるわけがないか。わりいなラスティ、ミッシェル、最後の仕事だ』
ザガンが少し憂いを帯びた声で二人に声をかけると、その悪魔たちはザガンの言葉に満足そうにほほ笑んだ。パイモンとヴォラクと剣を合わせていくうちに相手が力負けしてバランスを崩していき、そこを見逃すほどヴォラクは甘くない。ヴォラクはその隙をついて偽物のヴアルに剣を振り上げた。
しかしその瞬間、ヴアルが今までにない大声をあげた。
『助けて!中谷!拓也!!』
ヴアルの出した悲鳴に反応するように拓也と中谷が弾かれた様に顔を上げて偽物のヴアルに視線を送る。
まずい!中谷の視界を手で覆うけど、咄嗟のヴアルからのSOSに偽物とわかっていても助けなければと言う気持ちになってしまったのか手をはねのけられる。
「ヴアル!!」
中谷の声が響く。ヴォラクも剣をしまいたいのだろうけど、振り上げて、なお且つ振り下ろしている剣の方向修正をできるはずもなく、パイモンが首を斬れって言ったのをヴォラクは忠実に守った訳で……結果、拓也と中谷が見てる目の前で偽物とはいえ、ヴォラクはヴアルの首を落としてしまった。
ヴアルの首が落ちて、切れた部分から血が噴き出した。その血はヴォラクにもかかり、白い床は絵の具でも垂らしたかのように真っ赤に染まっていく。呆然としてしまって我に返る。見てしまった……なんてことをしてしまったんだ俺は!ヴォラクの頼みすら果たせなかった……
中谷の方を振り返ると中谷の体は先ほどよりも震えていて、歯がカチカチと音をたてている。目からは更に大粒の涙が溢れていて、顔はこれでもかというくらい血の気が引いていた。そんな中谷にヴォラクが心配そうに走り寄り、手を伸ばす。
『中谷っ』
「うあああぁああ!来るな!やめろ!!」
『なか、たに……』
中谷がヴォラクを拒絶した……ヴォラクの伸ばした手は思いきり叩き落とされ宙を舞った。中谷は必死に俺にしがみついて、ヴォラクを見ないように顔を背ける。そんな中谷に近寄って来る度にヴアルの血で真っ赤に染まった髪の毛から床に血がポトポトと落ちていき、その音に反応するように俺にしがみつく力が強くなる。
「来るな……来るな来るな来るな!」
『こっち向いてよ。契約者だろ?なんで拒絶すんの……向いてよ!!』
「ひっ!ひぃ……」
「よせヴォラク!中谷を刺激するな!」
俺がそう怒鳴ればヴォラクの動きがぴたりと止まる。そして今度はヴォラクの目から大粒の涙が溢れて、そのままヴォラクはその場に膝をつく。目から零れた涙は床に落ちる前にヴォラクの顔についた血と混じり合って透明から赤く染まっていく。
『向いてよ、拒絶しないでよ……嫌わないでよ』
「ヴォラク……」
カランッ……
剣が落ちる音がして現実に引き戻される。そうだ、この光景を見てたのは中谷だけじゃない。拓也も見てたんだ。案の定拓也は剣を落とし、呆然とヴアルの首を見ていた。目すら逸らせないのか、ガタガタ震えながらヴアルの死体を凝視している。
『拓也!これは偽物です。本物のヴアルがここに居ないのはわかっているでしょう?』
「……わかってる、けど」
ストラスが必死でそう説得するが、拓也も中谷と同じ割り切る事が出来ない。そして同じ反応をしているのは契約者の男も同じ。呆然とした顔をし、その場にへたり込んでしまった。
『今だな。行けラスティ』
皆の動きが止まっているのをいい事に、ザガンは偽物のパイモンに何かを命令した。
すると偽物のパイモンが真っすぐ拓也に向かって走り出した。
「ひっ!」
『拓也、避けなさい!』
『主!しゃがんでください!』
拓也はパイモンに言われたとおり、剣を振り下ろされる瞬間にしゃがむことでそれを回避したが、避けきれず拓也の髪の毛数本が切られ宙を舞った。その髪の毛を偽のパイモンが拾い、ザガンに渡す。
『よくやったぜ。ひひ』
ザガンは拓也の髪の毛を手に入れて、どこかに消えてしまった。
まずい!これで拓也が錬金術で作られてしまう!
自分の目的を達成したのか、目の前ではニヤニヤ笑っている偽のパイモンの姿。
『主!目を瞑っていてください!一瞬で決めます!』
パイモンがそう大声で告げると同時に拓也が目を固く瞑り、耳も塞ぐ。
『俺は俺の仕事を忠実に遂行した。何も悔いはないさ』
『……その忠誠心だけは認めてやる』
パイモンは一言だけそう言うと、一気に偽のパイモンをその場で切り捨てた。頭が体から離れると同時に真っ赤な液体が床を赤く染め上げる。もちろんその血はパイモンにもかかり、パイモンは血まみれになってしまった。その光景を黙って見ていた契約者は包丁を落とし、ヒステリックに泣き叫び頭を抱えた。
「……Ich kann nicht fähig sein, Sie zu ermorden……Ich bin schon unerfreulich!(……殺せる訳がない……もう嫌だ!)」
そのまま本格的に泣き出した契約者の男にストラスができるだけ優しい口調で話しかける。
『Warum schlossen Sie ein Vertrag mit dem Teufel?(なぜ貴方は悪魔と契約をしたのですか?)』
「Eine Frau und ein Sohn……Durch Alchemie.(妻と息子を……錬金術で)」
『なるほど』
詳しい話は分からないが、最低限の情報だけである程度理解できたんだろ。ストラスは頷いて俺たちに向きなおった。
『この男性は家族をザガンの力で錬成していますね。拓也に包丁を向けたのも、その見返りというところでしょうね』
『ふざけたことを』
怒りの隠しきれないパイモンは軽く舌打ちをし、ザガンが逃げていた方に足を進めていく。どうやら後を追いかけるみたいだ。
『ストラス、主の傍に』
『パイモン?』
『この姿じゃ拒絶されるだろうからな』
パイモンの体は偽物のパイモンの血でビショビショだ。目を瞑っている拓也には確かにきついだろう。現に、パイモンのその発言に肩を震わせて、目を開けていいのか迷っているくらいだったから。
でもそれよりも。
「ひぃ……ひっく、ひっく」
「中谷、辛いものを見せたな。すまない」
何度も謝り続けるけど、中谷はそれに反応を返してくれじ、ただ泣き続けるだけ。いつものあの太陽のように明るい笑顔も、皆を和ませる楽天的な言葉も何も出てこない。本当に中谷なのか?そう言いたいくらいだ。
『ヴォラク、ザガンは恐らくこの奥だ。仕留めるぞ』
『…………わかってるよ。失うものは何もない。楽に死なせはしない。八つ裂きにしてやる……』
今まで聞いたことのない低い声でそう呟き、ゆらりと立ち上がったヴォラクはゆっくりと足を進める。その表情は怒りに満ちており、目が血走っている。ヴォラクとパイモンは奥の部屋に消えていった。
そしてその光景を目を開けた拓也が見て、一言呟いた。
「俺も行かなきゃ」
『拓也、まだそんなことを……無理することはありません。貴方には酷すぎます。おそらく錬成された貴方と戦わなければならないかもしれません』
「悔しい。何もできなかった……どうして何もできないんだよ。俺の、大切な人たちを傷つけた奴に泣き寝入りしかできないなんて嫌だ。俺だって、あいつを殺したいくらい憎んでるんだ」
拓也は剣をつきながら、ゆっくりゆっくりとパイモン達が進んでいった出口に向かっていった。
***
拓也side ―
実験室から出た先は一本道になっていて、先に光が見える。パイモン達の姿は確認できないけど光の先にいるはずだ。そう思いながら剣をついて、一歩一歩ゆっくりと前に進んでいく。体には力が入らず、走って向かう余裕はない。横からはストラスの不安そうな声が聞こえてくる。パイモン達はもう戦ってるのかな?ザガンを追いつめてるのかな?
『貴様……なんてふざけた事を!』
目の前に光が見え、そしてそこからパイモンの怒声が聞こえて必死に足を動かすと、明かりがついた部屋の中に辿り着いた。その部屋の中に二人がいるのに安心したと同時に、その先に突っ立っている者を見て戦慄が走った。そこにはもう一人の俺が立っていたから。
ああそうか、そう言えば髪の毛を切られたんだった。もう一人の俺が光の宿さない虚ろな眼差しでその場に立ち呆けているのを見て、ヴォラクが大声を張り上げた。
『どこまで腐ってんだよてめえは!殺してやる!殺してやる!!』
『ははは!熱くなって馬鹿みたいだな!それに例え俺を殺した所で無意味だ。審判の日にはいずれは蘇るんだよ』
『それが理解できない。死者の魂は蘇るのには年月がかかる。審判の日が近づいているのとお前達が復活を遂げるのに何の関係があるんだ?』
よくわからない会話に口を出すことができない。ストラスですら首をかしげてるほどだし、俺が中に入れるわけがない。でもザガンはパイモンの問いかけに信じられないとでもいうように目を丸くした。
『お前、本気でそれ言ってんの?俺に命令が下ってんだからお前にも理由とかそういった情報は届いてるはずだろ……ああ、そうか。お前本気で俺らに喧嘩売ってきてんだ。バティンやマルコシアス裏切って……そんなことしたってお前が辛いだけなのにな。まあ、お前達がそれを知る必要はない。黙って継承者を差し出せばよかったのにな』
訳が分からない。呆けている俺にザガンは妖しく笑いかけ、まるで幼子にでも話しかけるように優しい声を出した。
『難しく考えることはないさ。お前はただルシファー様に従っていればいいんだから』
「俺の意思は無視かよ……ふざけんな」
『やれやれ』
ザガンはため息をついて、錬金術で作った俺を後ろに置いてロッドを構える。呆けている俺の横でパイモンとヴォラクが剣を構えるのを見て、今から戦うんだということを実感する。特にヴォラクは怒りを抑えきれないのか、剣を強く握りすぎて腕が震えている。
『切り刻んでやる』
『人間くさくなっちまったなヴォラク。今までのお前なら血なまぐさいショーは大好きだったはずなのに……俺は昔のお前の方が好きだったよ』
残念そうに呟いたザガンにヴォラクは目を見開いて歯をギリっと音が出るほど噛みしめた。
そんなヴォラクにザガンはロッドの先を向ける。
『お前たちの血をワインに変えてやるよ』
そう囁いた瞬間にロッドから光線のような光が放たれた。パイモンとヴォラクはそれをかわして、ザガンに一直線に走って行く。光線が当たった部分の床は見るも無残に砕けているのを見て背筋がぞっとした。
『ひひ!そうこなくちゃな!』
ザガンは更に光線をロッドから放っていく。どうやらあいつは遠距離戦主体らしい。ヴォラクとパイモンは近距離線主体だから中々距離を詰めれなくてきつそうだ。俺が何とかしなきゃ、今回こそ俺の力が必要じゃないか。
震える体に鞭を打って剣にイメージを吹き込んでいく。剣が光るのを確認して、俺は剣をザガンに向けた。
「行け!」
声と共に剣からは高圧に圧縮された水が一直線にザガンに向かっていく。これで少しでも動きをけん制できたら!そう思ってたのに、ザガンは呆れたような声を出した。
『チンケな魔法だな。フォカロルのに比べたら水鉄砲だ』
ザガンがロッドを構え、何かを唱えていく。
どういう事だ!?水が凍っていく!
放った水はザガンに届く前に氷になってその場で固まってしまった。
『水を氷にするのなんて簡単だろ?自分の魔法喰らっとけや』
その瞬間、氷が弾けて俺たちに襲い掛かる。
「うあ!」
『主!』
思わずストラスを抱きしめてしゃがみこんだ俺をパイモンが抱きしめた事で、ザガンが放った氷がパイモンを襲った。
「パイモン!」
『この程度は平気です。心配しないでください』
そんなこと言ったって……パイモンの背中には氷が突き刺さって血が出ている。
氷を避ける事が出来たヴォラクはパイモンの姿を見て、更にザガンに対して苛立ちを募らせていく。
『いい加減にしとけよ……』
『ひゃはは!怒るなよ。ショーはこれからだろ?絶望のショーの幕開けだ!』
ザガンがパイモンにロッド向け、何かを呟いた途端、パイモンの体が震えだした。
「パイモン……?」
『しまった!あの氷……!』
何のことかわからない。でもパイモンは理解したみたいでザガンを睨みつけた。でもザガンはただ攻撃をしただけにしか見えない。それなのにパイモンがこんなにフラフラするなんて、よほど傷が深いんだろうか?さらに不安になって傷が深いのかと聞けば、パイモンは首を振る。
『違います。私は奴の錬金術にやられたようです』
「え?」
『奴の持っているあのロッド、あれはかなり特殊なものです。錬金術などの魔術の補助にも使えますが、一番の特徴は化学物質を自在に操る事です。あのロッドは奴が望んだ化学物質をどんなものであれ具現化します』
化学物質を?でもよくわからない。化学の勉強はしてるけど、化学物質とかそんな細かい所までまだやってないし……一体何を指してるって言うんだよ。でもザガンはパイモンの説明に満足そうだ。
よくわからないけど、俺のせいでパイモンはヤバい目に遭ってるんだ!それだけは理解したザガンに向かって声を絞り出す。
「何したんだよ!」
『はぁ……今の説明を聞いてわからないなんて継承者って頭悪いんだな。あいつは氷、つまり水を喰らったんだ。そんでフラフラしてんのは赤血球が溶血したことによって貧血が起こりかけてんだよ』
「よう、けつ?」
『さっきの氷にな、少し面白いもんを加えたんだよ。アルキルベンゼンスルホン酸塩っつー界面活性剤をよぉ。界面活性剤は親水基と疎水基を持つ両親媒性分子だ。それゆえに細胞の中まで届きやすい。さっきの氷が溶けて血液中に流れ込むと、界面活性剤の効果で脂質でできている赤血球の細胞膜が溶けて溶血するんだよ』
話が難しすぎる。俺には全くわからない。
でも溶血ってなんか溶けるって事だろ?
『頭の悪い継承者でも察しがついたかな?溶血するっつーのは赤血球が死滅するのと同じこと。それと同時に血液不足でパイモンは貧血起こしてぶっ倒れそうになってんだよ。溶血性貧血ってやつ?ひゃはは!』
「てめえ!」
『わかったかよ継承者。お前みたいな雑魚が無駄な意地を張るだけで状況は悪化する。お前は黙ってルシファー様の命令に従っときゃいいんだ』
どうしよう……また俺のせいで状況が不利になってしまった。パイモンは本当に苦しそうで倒れそうになってるし、ヴォラクはパイモンの状況を見たら一発の攻撃も喰らえないし、慎重になってしまう。何とかしなきゃ、魔法を使わなきゃ、だけどまた俺が出しゃばってヴォラクが怪我をしたら?そう思うと体が言う事を聞いてくれない。
『君の魔法はその程度なのか?』
またなんて都合のいい時に声が聞こえてくるんだ。でも聞こえてきた声はウリエルの物じゃなく別の男の物。
「誰だ?」
『君はいつも俺の力を使っているだろう?俺の力はあんなものじゃない』
俺の力……そう言えば水を使った時は自分の力って言う女がいたな。じゃあ風を操る奴なのか?とりあえず何でもいい、勝てるコツがあれば是非とも伺いたい。早く終わらせて泣いてる中谷を慰めに行ってあげたい。
「何でもいいよ、強いとかどうでも。すげえ魔法使ってくれよ」
『イメージのシンクロが大事だ。君が俺のイメージと同じ物を考えてくれたら発動できるだろう』
そんなのわからない。風なんて竜巻とカマイタチしか使わないから。
とりあえず俺はいつも使う竜巻のイメージを剣に吹き込むことにした。
『お前気でも触れたのか?独り言の次はまたでしゃばりかよ』
ザガンがゲラゲラと俺を笑っている。確かにさっきの男の声が聞こえない奴からしたら明らかに俺の独り言だろう。でも何だっていいんだ、この状況を打破できるなら何だって。剣が今までにないくらい輝いてる。それを見て同じイメージだったんだと確信する。自信満々にザガンに剣を向けた俺をザガンは呆れた目で見てきた。でも今度の魔法はすごいはずだ。絶対に!
「行け!」
『……俺のイメージとは違うんだがな』
え!?
男の声が聞こえた時には既に遅し。竜巻が剣から繰り出された後だった。
でも今まで俺が使ってたのよりも遥かに強い竜巻だ。これなら!
『けっそれが本気じゃねぇよなぁ?』
しかしザガンはロッドから何かの液体を出して竜巻に液体を吸いこませていく。
今度は何をする気なんだよ!
『へへ、こんな竜巻を爆発させたら面白そうだぜ』
爆発?何を……!
『拓也!構えなさい!ザガンが出した液体は恐らく揮発性の高い物質です!爆発を起こしますよ!』
『酸素ボンドの揮発性の高さは半端じゃねぇぜ。もうおせぇよ!!』
ザガンのロッドから炎が出てきて、その炎が竜巻の中に吸い込まれていく。
そしてそれと同時に凄い爆発音が聞こえ、爆風が俺たちを襲った。
「うお!」
その爆風は凄まじく、簡単に吹き飛ばされてしまった俺は床に思いきり頭と背中を打ちつけた。でもその爆風を喰らったのは俺だけではなく、パイモンもヴォラクもストラスも勿論ザガンも皆爆風の中に姿をくらましてしまった。
「パイモン!ストラス!ヴォラク!!」
視界から消えてしまった皆の名前を呼ぶけど返事はない。
それと同時にまたやってしまった。と言う後悔の念がよぎる。
『ひゃはは!ちょっとおふざけが過ぎたかな?すげぇ爆発だったなぁー』
ザガンは少しだけ体に火傷を負ってるけどピンピンしていた。そして煙の中からは同じく火傷を負ったヴォラクとストラス、そして完全に吹き飛ばされて倒れているパイモンの姿。
慌てて走り寄って体を揺すると苦しそうに顔を歪める。
「パイモン!」
『拓也!よしなさい!貧血の相手を揺するんじゃありません!』
ストラスに怒られて慌てて手を離したけど、じゃあどうすればいいんだ!
パイモンは起きあがるのも辛そうだ。更に吹き飛ばされた衝撃も相まってかなり苦しそうにしている。
「また俺のせい……」
何で良かれと思ってやった事がこんな結果にしかならないんだ!こんなのあんまりじゃないか!何をやっても駄目じゃないか……
項垂れてしまった俺を見て、頭の中に響いた声の奴がため息をついた。
『諦めるな。仕方ない……俺の力を見せてあげるよ』
奴がそう言った瞬間、指輪が薄く輝きだす。
『あれがソロモンの指輪。俺たちを栄光に導く切り札……』
ザガンが目を輝かせているのが分かる。
そして光る指輪に呆気に取られていると、また頭に声が響いた。
『何をしてるんだ?早く魔法を使いな』
「えっ……そんなこと言われても何をすれば』
指輪の魔法なんて使いこなせないよ。剣を手に入れるまで俺は全く使い物にならなかったんだぞ。今もならないけど。
『簡単さ。俺の名前を強く唱えればいい。そうすれば一時的に君の力を借りて俺が魔法を放ってやる』
「名前……」
『ラファエルだ。指輪の継承者』
ラファエル……こいつはそんな名前なのか……言われた通りに指輪にラファエルの名前を唱え続ける。するとさっきまで部屋の中に吹き荒れていた爆風が再び集まっていき、ウリエルの時同様、体が乗っ取られていく感覚がする。俺の口が勝手に言葉を紡ぎ、ザガンに指をさす。
『全てを切り裂け』
その瞬間、さっきの爆風が弾けるように四方八方に飛んでいく。これはカマイタチ!?
でも俺の魔法の比じゃない。もっとすごくて、もっと強力だ。
『なっ……そんな馬鹿な!』
ザガンは必死で避けながら何とかロッドで俺を攻撃しようとする。でもラファエルのカマイタチのあまりの猛攻に攻撃する体勢も取れずに舌打ちをした。その間にもカマイタチがザガンの体に命中していく。そして一番大きなカマイタチがザガンに襲いかかった。
『ここで終われるか!』
ザガンがそう叫んだ瞬間、庇うように錬金術で作られた俺が前に出てくる。
そしてカマイタチは偽物の俺の体を切り裂いた。
「うああぁああぁぁぁああ!!」
偽物の俺の悲鳴が部屋の中に響き渡る。口から血を吹き出し、下半身と胴体が真っ二つに裂け、即死した。でもそのカマイタチは俺の体を貫通してザガンの体も切り裂いていた。
『嘘、だろ……』
ザガンが血を吐いて地面に膝をつく。全て終わった、終わったのに真っ二つに裂けている自分の体を見て、こっちまで体のあちこちが痛くなった。まさかこんな形で自分の最期を見ることになるなんて……どこも怪我なんてしてないはずなのに、ズキズキと鈍い痛みが体に走り続ける。その場に座り込んでしまった俺にラファエルは声をかけた。
『悪いな。少々過激すぎたな……これはお詫びだ』
頭にその声が聞こえラファエルが何かを呟いたと共に、ラファエルの感覚が体から無くなっていた。
消えていく……その感覚がはっきりとわかった。
『主』
「パイモン?大丈夫なのか?」
『ええ急に。あいつが倒れたからなのかわかりませんが……』
ああ、ラファエルが言ってたお詫びってそれの事。嬉しいはずなのに今のこの気分では喜びを大声で現せない。俺は軽くパイモンの肩を叩いて、また目の前に広がった光景を見つめる。
『それよりこいつ早く戻さない?』
ヴォラクの言葉で現実の戻され、目の前で倒れこんでいるザガンに視線を向ける。全身血だらけで必死で起き上がろうとしているが、それすらままならないようだ。ヴォラクはそんなザガンに近づき、その顔を思い切り殴った。何度も何度も殴るヴォラクの手は少しずつ赤くなっていく。
「ヴォラク!止めろ」
『中谷やお前、俺たちが受けたもんはこんなもんじゃない!』
わかるよ気持ちは。でも殴った所で気持ちは晴れない。なんでだろうな、ぶっとばして土下座をさせてやろうって思っていたのに、そんなことをしてもらったところでどうせ許すことなんてできないんだ。
それにもうこんな奴に関わりたくない。顔も見たくない。さっさと地獄に戻したい。
「それでも止めろって言ってんだよ!早く返そう……契約者呼んで来てくれ」
『……わかったよ』
俺の言葉にヴォラクは納得がいかなそうだったけど言う事を聞いてくれた。ヴォラクが契約者の元に向かっていったのを見て、俺はパイモンとストラスに手伝ってもらって魔法陣を描いた。その中でザガンは不敵に笑った。まるで自分が負けたのなんか分かってないように。
数分後にヴォラクが契約者を引きずって戻ってきた。契約者は少し暴れていたがヴォラクはそんなのお構いなしというところだ。
『連れて来たよ』
『強引ですね』
ストラスとヴォラクのやり取りを男は呆然と見ている。
「Ich werde das machen was……?(何をするんだ……?)」
『Ich stellte ihn zur Hölle zurück.Leihen Sie die Macht bitte.(彼を地獄に返します。協力して下さい)』
男はストラスが指す彼がすぐに分かったようだ。震えながらも頷いた。よかった……これで終われる。
男はポッケから宝石のついたアンクレットを取り出した。
『ゾイサイトのアンクレット。間違いなく悪魔ザガンの契約石』
男はパイモンに言われた通り、召喚紋の中に契約石を入れて呪文を唱え始める。
そして自分が返されると言うのに、今だにザガンはおかしそうに笑ったまま。
『ひひ……』
「まだ何か可笑しいのかよ」
偽物の俺の死体を見て笑い続けている。最低な奴だ。
しかしザガンは俺の質問に答えず、笑い続けたまま地獄に返されてしまった。
「終わった」
やっと終わったんだ。終わったと言うのに後味が悪い。胸がズキズキ鈍い痛みを伴う鼓動を続け、胃がムカムカして吐きそうだ。でもやるべきことがある、中谷の所に行かなきゃ。ストラス達にそう言い残し、部屋を出た。
『さて、私達は拓也達の死体を何とかしなければなりませんね』
『……しんどい作業になりそうだ。』
契約者の男はただ黙って飛び散った血を自分の白衣を脱いで拭き出した。
何度も何度もパイモン達に「ごめんなさい」と謝って。
実験室に戻ると、だいぶ落ち着いたのか、中谷はもう泣きやんでいた。声をかけると中谷は少し肩を震わせて、セーレの服を掴んだまま恐る恐る俺に振り向いた。その目は罪悪感に満ちていた。
「池上ごめん。俺……」
それは俺の台詞だ。こんなことに巻き込んで、こんな怖いものを見せて、必死で謝ってくる中谷を見て、胸が締め付けられる。だってあまりにも痛々しいから。俺が謝れば中谷は首を振る。自分が情けないと言う。そんな事ない、あんなのを見て平気だと言う方がおかしい。そう考えると、中谷のようにパニックにならなかった俺は少し頭がいかれてるんだろうか。
「ヴォラクにも謝らなきゃな……酷い事言ったし」
「ごめん……」
「池上、俺後悔なんてしてないよ。確かに怖かったけど、これは俺が選んだことだから。だからお前が謝ることなんて何もない」
中谷はゆっくり立ち上がり、実験室の光景を見つめる。床に転がっている偽物のパイモンとヴアルの死体、それを見て眉を悲しそうに下げた。真っ赤に染まってしまった部屋の中は鉄の匂いが漂って、この場所で如何にむごいことが起きたかと理解させるには十分すぎた。
「中谷」
そのまま実験室の中で呆けていると、人間の姿に戻ったヴォラクが気まずそうに立っていた。体中血だらけで髪の毛は赤く染まっているヴォラクはいつもの生意気な姿からは想像もできないくらい怯えている。その姿はまるで怒られる子供のように縮こまっていて、目に涙を溜め、ビクビクしながらも一歩ずつ中谷に近づいた。恐らく先ほどの拒絶がよっぽど堪えたんだろうな。
「中谷ごめん。俺、俺……」
「泣くんじゃねえよ。俺までまた悲しくなんじゃん」
「だって、だってぇ……」
ヴォラクは中谷に飛びついてわんわん泣き始める。
そんなヴォラクをあやしながら、中谷も涙を流す。
「ごめんな。あんな酷いこと言って本当にごめん」
ヴォラクは返事をしない代わりに中谷にしがみつく力を強くした。ヴォラクの血が中谷の服にこびりついてしまったけど、中谷は気にせずにヴォラクを抱きしめ返した。完全に蚊帳の外になってしまった俺とセーレはその光景をただ眺めるだけ。だけどセーレがポツリと言葉を漏らした。
「中谷って少しだけブエルに似てるんだよね」
「ブエルと?」
「うん……ブエルもね、ああやってヴォラクをあやすんだよ。怪我をした時、怖い物を見た時、ああやって」
ヴォラクがなつく訳だね。
セーレはそう言って少しだけ笑って、その後に悲しそうな顔をした。
なんでそんな顔をしたのかは俺には分からなかった。
***
ダニエルside ―
二週間にわたる忙しい引越しの準備がやっと終え、家の中の細かな荷物を車に入れて準備は完了した。
大きな荷物はもう新しい家に送ったから。
「Ist, es erforscht Institut plötzlich?Obwohl Sie dort hineingehen wollten?(急に研究所を止めるってどうしたの?やっと入りたかったとこに入れたんでしょう?)」
荷物をまとめながらクレアが不思議そうに問いかける。
それを俺は笑ってごまかした。
クレアとケネスは死んでいた三年間の記憶がない。でもザガンの錬金術のおかげなのか知らないが、時間の感覚に疎く、三年の記憶がないことも全く気にするそぶりもない。役所の書類はザガンの手を借りて改ざんしておりクレアとケネスの死亡届は闇に葬られ元の生活を取り戻しつつあった。
だからクレアとケネスにとっては昨日までバリバリ研究所で働いていた俺が急に辞めると言い出した事に驚いているみたいだ。そんな二人が車に乗るのを確認して俺も車に乗りハンドルを握る。後部座席ではケネスが窓を開けて、今か今かと出発を待っていた。
新しい引っ越し先はこの場所からかなり離れた場所にした。でないとケネスが地元に子供に会ってしまうかもしれないから。ケネスには記憶がなくても他の子供には記憶がある。死んだはずのケネスが同じ小学校に再び通学できるはずもない。だから一から全てやりなおすんだ。今度こそ……
クレアが乗りシートベルトを締めたのを確認して、俺はエンジンを入れた。
「Was würden Sie machen, wenn ich das Forschungsinstitut verlasse?(研究所を止めた後はどうするの?)」
「Werden Sisogar der Lehrer der Schule werden?Weil die Lizenz der Lehrerwissenschaft dauert.(学校の教師にでもなろうかな。理科教諭の免許は持ってるから)」
今度は本当の化学の楽しさを伝えるために。
俺の返事を聞いてクレアはおかしそうに笑いだした。
「Ist es seltsam?(おかしいか?)」
「Ich bin froh.Würden ehemalig, daß Sie kaum zum Haus nur in einem Studium zurückkommen?(嬉しいのよ。前のあなたは研究ばかりでろくに家にも帰ってこなかったでしょう?)」
そうだったな、もっと大事にすればよかったな。この平和は壊れない、当てのない根拠のせいで俺は大事なものを失ったんだから。今度はアットホームパパにでもなるかな。精一杯この二人を愛そう。
ケネスが窓を開けて景色を楽しそうに眺めているのをクレアが危ないから顔を出すなと注意している。
俺は、この光景をもう一度取り戻したかったんだ。
思わず涙が出そうになるのをこらえ、俺はハンドルを握りしめ目的地に車を走らせた。
今度こそは絶対になくさないように……
***
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古ぼけた洋館、その中で三匹の悪魔が顔をしかめていた。
『ザガンやられたんだって?へ、ざまあねえな。言いだしっぺは負ける法則だな』
『まぁまぁ。でもあいつを倒すとなると俺たちもウカウカしてらんねえぞ』
ザガンの事を軽く鼻で笑ったフォカロルと違い、アンドラスは鋭利な剣を握りしめ低い声で呟く。
その二人を見て軽く笑いながらレラジェはアンドラスを茶化した。
『怖いのかアンドラスーなんなら怖がってるお前のために俺らで一斉攻撃しかけてあげてもいいんだぜぇ?』
『ぬかせ糞レラジェ。大体てめぇより俺の方がつえーっつの』
『んな怒る事かよ。もういいよ。お前なんて今後一切絶対にフォローしてやんないかんね』
ケラケラ笑いながら茶化したレラジェをギロリを睨みつけアンドラスはレラジェを一蹴し、レラジェは唇を尖らせてアンドラスを睨み返す。
二人の様子を見てフォカロルがそれを静止した。
『おいお前ら話が逸れてっぞ。大体ザガンは舐めてかかるからこんな目に遭ったんだ。力で俺たちが負けるはずないだろ。さっさと仕留めりゃいいんだよ。向こうが仕掛けてきたときに相手してやればいいだけだ。それまでは好きにやればいいんだよ』
三匹はお互いの顔を見て頷き合う。
『ゲームは続行』
巨大な弓を抱えてレラジェはため息をつく。
『あーあ、ぶち殺していいのなら話は早いけど生け捕りだからなぁ。なんでそんなに指輪にこだわるんだ?あんなのくれてやりゃいいじゃん』
『駄目だ。指輪の力は絶対的に必要だ』
フォカロルの言葉を聞いて、レラジェは思い出したように頷いた。
『そっかそっか。そうだったなー』
『ああ、あの力があれば俺たち悪魔の準備は完了だ。後は審判を望むだけ』
『あのお方の復活に継承者が必要だったな。分かりやすくていいけど』
そうだ。俺たちが連れていけば全てが完了するんだ。
今度こそ忌々しい天使どもを根絶やしにな。
登場人物
ザガン…ソロモン72柱序列61番目の悪魔。
33の軍団を従える王であり、その長官をも兼任している。
その姿はグリフォンの翼を有する牡牛とされているが、人の姿もとる。
知能が非常に高く、現代で言う錬金術を得意とする。
その力はただの石を黄金に変えたり水をワインに変えると言う。
また彼の有名なエピソードとして血液をワインに変えたというエピソードがある。
ダニエル…スイスでヒトの遺伝子の研究をしている科学者。
強盗によって家族を亡くし、家族を蘇らせるためにザガンと契約をしていた。
仕事一筋で家庭を顧みらなかったらしい。