呼ばれる
暑いよね。
今は7月なのにもう真夏のような暑さが続いていた。
そんな時には川や海、プールなどに入ると気持ちいいんだよね〜。
でもね?
そんな時に限って噂が出たんだよ。何って?勿論霊だよ。
どこに出るかって?
決まってるじゃないか。みんながいる場所だよ。
どうしてかはわからない。
人に引き寄せられたのか…。
あるカップルのビデオカメラにそれは写っていた。
彼氏が彼女を撮影しているようだ。
彼女はとても楽しそうにしていた。
2人してキャッキャって言いながらあちこち録画していたが、ある場所に来た時彼女の足が止まった。
そこは大きな岩場で、お世辞にも危なくないとは言えなかった。だから彼氏が彼女に降りるように言っている。でも彼女は聞いていないようでどんどん端まで歩いて行く。
「危ないぞ!降りろよ。」
「……。」
「里奈?」
名前を呼ばれても彼女は歩みをやめない。
高さはそれほどではないのだが、足を滑らせ打ち所が悪ければ即死というくらいの場所なのである。彼氏は焦った。
慌てて彼女の元へと岩場を伝いながら歩く。
彼女は今ボーッと突っ立っている。
今にも飛び込みそうだ。
慌てた彼氏は彼女の元へ。
里奈はボーッとしたまま微動だにしない。
引っ張ろうとしてもその場から動かない。まるでその場に打ち付けられて埋まってしまったかのようだ。その時彼氏のビデオカメラに写り込んでしまっていたのを彼氏は気づいていない。
里奈は表情を無くしていた。
そしてあろうかとか体を前後にゆすり始めたのだ。まるで勢いよく落ちようとでもしているかのようだ。
彼氏は焦った。もう録画どころではない。
ビデオカメラをその場に置いて里奈を何度も引っ張った。
他にも来ていた観光客の1人がデジカメで2人を写した。するとそこには無数の手が…。
彼女の足を掴んでいる。
彼女を引っ張ろうとしている姿も見て取れた。
「ヒーッ!?」
写した人も驚いたが、それを確認する意味で見た仲間が驚いていた。
「な、何だ?コレは…。」
見ていた人が何人か彼女の元へ走って行き、みんなでその場から引きずり下ろした。
彼女は両目をつむったままだ。
彼氏は皆に感謝した。
その時ビデオカメラを撮っていた人がポツリと言った。
「彼女、引っ張られてたね。無数の手が彼女の足に…。呼ばれちゃったのかなぁ?」
彼氏はビデオカメラを借りると映像を見直して引きつった。確かにそう見えたのだ。彼女の足を掴む無数の手。
その後、意識を取り戻した彼女はその時のことを全く覚えていなかった。
皆真っ青な顔をした。
その様子を見てただならぬものを感じた彼女は恐る恐る聞いたのだ。
「私を呼んだの誰?」




