父さんの友達?
本日3話目
まだ設定とかを微妙に話に出す。
「今日も遊んだよねー」
「遊びと言うか、魔法の特訓のように思われますがね」
森から家に戻り、ハクロがレイのつぶやいた言葉に苦笑する。
「あれ?」
よく見ると、家の前に何やらそこそこな感じの馬車があった。
とはいっても、家にある馬車とは違いやや控えめな印象・・・というか、印象に残りにくいか?
「なんか魔道具が使用されていますねアレ」
「魔道具?」
なんかちょっと心くすぐるような名前がハクロの口から出た。
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「魔道具」
魔道具もしくは魔導具とも表記されることがある道具の総称名。
魔法が練り込まれた道具で、魔力を流すか魔石と呼ばれるモンスターの体内にある物体をセットすることで稼働し、その力を発揮する。流通量が少なく、やや高額なものが多い。低価格で売られている物としては、コンロの様なものがある。
このほかにも魔剣とか言われる類のものがあるのだが、こちらは魔道具とは違う区分らしい。
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「うーん・・・レイ様に仕える前に狙われていたって話をしてましたよね?」
「言ってたな」
ハクロの見た目・・・蜘蛛の部分は蜘蛛の部分でまだいいとして、上半身の人間の女性に見えるところの美貌は麗しい。
そのせいか、俺に会うまでに人に狙われていたことがあるようで、あまり触れてほしくないような話題らしいけど・・・・。
「その時に嫌になるほど魔道具を見ることが多くて、おかげですぐに見分けがつくようになったんですよ」
「あー・・・なるほど」
捕らえるために使用されていたものが多くて、そのせいでどれが魔道具なのだとかが直感でわかるようになったそうだ。苦労が多そうだね・・・。
というか、高額なものが多いのに使用されていたってことは・・・・・それだけハクロを捕獲しようとする輩がいたのか?
今はまだそのような奴とか見ないけど、用心しておいたほうが良さそうだ。
で、ハクロの説明によるとあの印象に残りにくいような馬車はその手の魔道具とやらが使われているらしい。
・・・・でも、なんでそんな馬車が我が家の前に?お客さんなのかな。
「ただいまー」
家の中に入り・・・
「おお、レイ帰って来たか」
・・・父さんが出迎えてました。
「・・・なぜ父さんが出迎えに?」
いつもなら書斎とか、兄たちの勉強の様子を見に行ったりしていて、ほぼ放棄のような感じだけどな。
あ、ハクロが来た時は相談とか乗ってくれているからそこまで放棄していないか。
「ああ、私の昔の友人が遊びにきてな、ザッハたちは今はまだ勉強中だし、レイの方を先に紹介しておこうかと思ったところで帰宅してきたからな」
・・・勉強を止めさせて紹介させる方法ってあるけど、その手を取らないってことは何か裏でもあるのかな?
まあ、あまり気にせずに客間へ向かった。
「待たせました、この子が三男のレイです」
「ほっほっほっほ・・・この子がお前の息子の一人か」
客間にあった椅子に座っているのは、ちょっと好々爺って印象の爺さんである。
・・・でもなーんか違和感を感じるな。
と、一緒にいたハクロが一瞬眉をひそめた。
「ん・・・・?魔道具で変装してませんか?」
「ほっほっほっほ・・・・あれ?案外あっさり見破られたな」
ハクロのつぶやきが聞こえたようで、その爺さんはあっさりと白状した。
というか、違和感程度にしか感じなかったのに見破るハクロすごいな。
「そのアラクネとその息子がお前の手紙に遭った子たちかな?デーン?」
「はあっ・・・もう素に戻ってるぞ、ガウン国王様」
「いやいやいや、今はお忍びだし、国王ってつけなくっていいだろ。お前との仲ではないか」
ん?今なんと?
会話の中になにやらとんでもない言葉が入っていたような・・・・・・・。
と、爺さんの姿が一瞬にして、父さん程の年齢に見えるまだ現役そうな男性の姿となった。
ひげが生えていなくてスッキリしているが、なんとなくがっしりとした気丈そうな印象がある。
「この変装をすぐに見破るとは、レイとやら、お前の使い魔であるそのアラクネはずいぶんと優秀だな」
あっはっはっはっはと軽快そうに笑うおっさん。
もうおっさんと言った方が正しいような気がするけど、ずいぶんと明るそうな人である。
「さてと、ここできちんと私も名乗ろうか。我が名はガウン・フォン・ストラクト・・・このストラクト王国の国王である!!」
「「・・・・国王!?」」
父さんが何やらもう慣れたかのように肩をすくめていたけど、俺とハクロは同時に驚愕の声を上げたのであった。
なんで国王が一介の貴族の家に来ているんだよ!!
「~~~と言うわけで、我が友デーンの手紙からお前たちの事を知って、興味を持ったので来てみたのだ」
「なるほど・・・・・そういう事ですか」
わざわざ父さんと国王様が説明をしてくれました。細かくかつ省略してわかりやすい。
「いつの間に手紙なんて出していたんですかね?それになんで国王様宛に手紙が・・・」
「ああ、それは・・・」
「勿論、このガウンとデーンは昔からの悪戯友、ゲフンゲフン、親友だからだ!!」
父さんが答える前に、国王様が元気よく返答した。
でも、今一瞬何かごまかさなかった?悪戯友達って何をやっていたんだろうか・・・・。
「昔まだ私が王ではなく王子としていたころに、学園に通っていたらデーンに会ってその日のうちに意気投合し、悪戯小僧ゲフンゲフン、互いに優秀な生徒として学園に名をはせたのだ!!」
「ごまかせていないよ!!」
「いたずらで有名になっていたんですか!?」
レイとハクロのツッコミが同時になった。
不敬罪とかになりそうなものだが、今はお忍びでここに来たらしく、一応無礼講と言うことでと国王自身がそう言ったので遠慮なしである。
・・・というか、父さん本当に何を昔やっていたの・・・・?
半目で見ると、さっと目をそらされた。うん、後で問い詰めてみようか。
「・・・今息子に問い詰めるとか思われたような気が」
「あっはっはっは!!元気な息子でいいではないか!」
父さんのつぶやきに、軽快に豪快に笑う国王様。
心底明るい性格のような人だなぁ・・・・悪い感じもしないけど、ちょっと豪快過ぎな気もする。
「おっと、もうお忍びでこれる時間を説明で大半使ってしまった!!」
ふと懐から国王様は時計の様なものを出した。
そういえば、この世界の時間とか日付とかって前世に近いんだよな。でも時計も普通にあるようだけど、貴族ぐらいしか持っていないようだ。
なんせ時刻をその近隣の貴族の家からの鐘の音とかで知らせてもらえるようだし、あんまり必要がないのかもしれない。
とにもかくにも、国王様は慌てて帰る用意をし始めて、ふと何かを思い出したかのような顔になった。
「そうだ忘れていたな。レイとやら、お前はその年で魔法がかなり使えるようだな」
「あ、はい」
なんか見抜かれているような気がしたので、この際正直に話したほうが良いかも。この人国王だけあって、人を見抜く目とかがなんかあるような感じもあるからね。
さっきからの会話の最中にも、人を見定めるような眼をしたのも見逃してないのだ。
「10歳になって学園に入学する時だが・・・その時に入学審査と言うのがある」
入学審査・・・・学園に入る際に、どれだけの実力とかがあるのかを調べる審査があるらしいというのは本で読んで知っていた。一応、貴族とか平民とかは関係ないけど、ある程度実力がないとこの世の中って生きていけないからね。
貴族な生活をしていて、反乱で死亡。平民していて、いつの間にか貴族にされて暗殺されるみたいなこともある、結構物騒な世の中だからな・・・・。
「そこで全力を出してみてほしいと思ってな。まだ先になるが、その実力を見てみたいのだ」
何やらやや真剣そうなまなざしで国王が見てきた。
ハクロと顔を合わせて見て、ハクロの方もこれは従ったほうが良いのでは?みたいな表情を浮かべている。
・・まあ、全力を出してみてもいいか。別にはっきりバレて困るようなこともないしな。
「・・・はい、わかりました。でも何かあったらフォローを頼みますよ」
「あっはっはっはは、しっかりしているな!!」
そう笑って馬車に乗り、国王は帰っていったのであった・・・・・・。
「で、父さん。あの国王様と昔何をしていたんですか?」
「・・・」
「あれ!?逃げた!?」
くるっと振り返って尋ねようとしたら、父さんの姿がその場から消えていた。逃げ足早っ!?
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SIDEガウン・フォン・ストラクト
「はっはっは・・・末恐ろしい子供だったな」
馬車の中で、ガウン国王はふとそうつぶやいた。
第一印象としてレイに抱いたのは・・・・力の差。
国王たるもの、人を見る目がなくてはと鍛えた結果、ある程度までの力量を国王は計れるようになっていた。
そんな中で、今日見た親友のデーンの息子であるレイは・・・・はっきりいってかなりのものである。
今の年齢は5歳だが、これから先成長し、より強大なものになると感じ取れた。
将来有望だが、そのぶん彼を取り合う争いも危惧される。
心配性と言われそうだが、大げさなものでもないだろう。
それに、レイの使い魔であるアラクネ・・・ハクロとか言ったか。あの使い魔はガウンがお忍びでふざけ使用する変装を見抜いた。
それだけでも相当な実力があるだろうと見抜けたし、あの人間ではたどり着けないような完成美とも言える美しさ・・狙うような輩がでるだろう。いや、既にいると確信できた。
それを防止するにはとガウンは考え、帰り際にレイに学園の入学審査で全力を出してみるようにと伝えた。
あらかじめ全力を出してもらって力を他の者たちに見せつけさせ、万が一の時に自信がフォローに回ることによって、先に小心者とかのような奴らを締め出す。
その他に力を狙うようなやつらは、水面下で駆け引きをするだけである。
昔からの親友であるデーンの息子、せめてもの守ってあげようとガウンは思ったのであった。
「・・・おおそうだ、時期的には確か・・」
と、ここでガウン国王はもう一つの事を思い出した。
もしかしたら、結構都合良いことになるかもしれないと、ついほおを緩ませるのであった。
・・・城に帰ったあと、こめかみに青筋を浮かべた重臣たちに叱られたのち、たまりにたまった仕事をやり遂げさせられて悲鳴を上げたのは言うまでもない。
・・・この国王に苦労してそうな人が多そうだな。
大丈夫かなこの国?不安しかない様な気がする。