閑話 未来永劫変わらぬ想い
ちょっとハクロのお話
時間軸は結構前になるけど
「・・・レイ様、昼寝ですかね」
学園に入学するよりもずっと昔、ハクロがレイの使い魔になって1年経とうとしていた時であった。
いつもなら暴君の森でレイの魔法の練習の相手をするハクロだが、今日はぽかぽかした天気であり、ちょっと休憩している間にレイは昼寝をしていた。
大の字で寝っ転がり、のびのびと安らかに寝ている。
暴君の森と言う名前の森の中だが、別に凶暴な動物やモンスターが出てくるわけでもない。
でも一応寝やすいようにとハクロは考え、適当に近くの木々に糸をかけてハンモックを作り、レイの身体をハクロは抱え、そこに寝かせて糸で作った布をかけて冷やさないようにした。
「むにゅ・・・・すぅ・・・」
「ふふふ、よく寝てますね」
レイの寝息を聞き、ハクロは思わずその寝顔を見て微笑んだ。
・・・・レイの使い魔になってから、ハクロはずっと一緒に過ごしてきた。
まだ幼げな子供なのに、高度な魔法をいとも簡単に操り、その魔力も無尽蔵かと思えるほどなのをよくわかった。
けれども、こうして寝ている姿は年相応の物であり、なんとなく安心させるのである。
幼い顔つきではあるが、将来的には綺麗に、レイのあの本当に血のつながりがあるのかと疑いたくなるような兄弟とは正反対になるだろう。
一応、寝ているレイに何か起きないように周囲に警戒をして意図を張り巡らせつつも、レイのそばにハクロは立ってその寝顔をちらりちらりと盗み見をする。
・・・・自身の主でもあり、家族のように接してくれるレイに対し、ハクロはなんとなく懐かしいような感情を持つようなことがあった。
遠い、遠い昔から、生まれ変わるその前からレイの事を知っているようであり、共に過ごしていたかのような感情があるのだ。
魂が覚えているかのような、惹かれているかのようなそんな想い。
懐かしく、愛しく・・・・・そのような感情が幾重にも重なっているかのようにハクロは思える。
ずっと離れることがない、永遠の繋がりのようなそんな感覚。未来永劫変わることがないような運命なのかもしれない。
けれども、別に気分を悪くするようなものではなく、むしろもっと嬉しくさせるかのようなモノである。
レイの寝顔を見ているうちに、ハクロはレイの身体がそこにあるのか確かめるかのようにちょっと触り始めた。
そして、ちょっと糸を下げて、レイの事を抱きしめやすいようにして寝ているレイを起こさないようにそっと後ろから抱きしめる。・・・前から抱きしめたら窒息するのはすでに学習済みである。そこはきちんと考えるのだ。
死して、抱きしめた後に、その腕の中にある温かみをハクロは感じ取る。
そこにレイがきちんといて、生きている。そして、その温かみを感じながら自身はその傍にずっといるのだと。
・・・もしかしたら、自分がこの人の使い魔になったのは決まっていた運命のようなものかもしれない。
はるか遠い遠い昔、永遠にそばに自分が付き添うと誓って輪廻転生しているのではないかとさえ思えた。
そして、もしそうだとして今も自分はこうはっきりと誓えるだろう。
「ずっとレイのそばに、何があっても、死んだ後でも、生まれ変わった後でも必ずそばに従い、付き添うのである」と。
変わらぬ運命、去れども絶対共にできる運命。この運命は何人にも断ち切れず、一生続く、いや、一生を超えて続くのだろう。
心地よい風が吹き、暖かな日差しが自身の背中を温め、その前ではレイが寝ており、彼を抱きしめて前からもハクロは温まっている。
「・・むにゅ・・ハクロ・・・・」
「・・!。・・・・ふふふ」
自分の名前が寝言で出たのを聞いて、ハクロは微笑む。
今こうして抱きしめているから夢にまで自分が現れたのではないかと、少し可笑しく思えて笑ったのだ。
自分は夢の中にまで従っているのかと。
使い魔になってから過ごす日々は、その前に過ごしていた時とは違って心の底から暖かく、安らぐ日々である。時折魔法が迫ってくるのはちょっと怖いけど。
そして、レイの事を愛しいと思えるようになったのはそう時間はかからなかった。
レイをさらに抱きしめハクロは心の底で誓う。
必ず、何があろうとも、どんな姿になろうともレイのそばにずっと自分がいて、付き従っていくのだと。
未来永劫変わらぬこの思いを胸に、ハクロはレイの顔にそっと口づけをした後、ハンモックに寝かせ直せ、その寝顔を見守りながら起きるまでそばについているのであった。
永遠に、何度生まれ変わってもこの人のそばにいることができるような想いを抱えながら・・・・・
魔物使いシリーズを通して、ハクロはどの作品でも必ず登場していた。
最初の頃からずっと、主を慕って生まれ変わり、その傍に仕えるように運命づけられたモンスター。
いや、自らその道を選び、必ず主と一緒になるようになれたモンスターだろう。
その愛は何度生まれ変わっても変わらず、未来永劫つながっていく・・・・・。




