やっぱいるのかそんなやつは
しょっぱなから飛ばしている感じがする
「おい穀潰し!!」
・・・不快な声と呼ばれ方をして、レイは速攻で無視をした。
ハクロも同様に冷たい表情になっている。
「おい聞こえているのかよこの穀潰し野郎が!!」
「そうだそうだこの野郎!!」
どこのガキ大将とその取り巻きのようなやつだよ。あ、身内だ。
学園に入学して数日、次の授業のために移動していたら廊下で不快な声が響いた。
いやいや振り返ってみれば、そこにはバルトとザッハ・・・・俺の兄たちがそこにいた。
今は俺10歳、バルト14歳、ザッハ13歳と年齢は離れているのだが、この兄たちはなんというかものの見事に連続留年状態らしい。そのせいで今年同学年と言うなんとも嫌な構図になっていた。
この学園は一応5年で卒業ができ、15歳以降は成人のように扱われるのが普通らしいが、この兄たちは情けないというか・・・出来が悪すぎたというべきなのか。
というか、このまま来年も留年したらどうなるのだろうか。そこがすごい気になる。
ちなみに、学園に入学してから情報を集めてみたところこの兄たちは性懲りもなく遊びまくっているのが留年の主な原因だという。自業自得じゃないか。
「って、バルト兄さんとザッハ兄さん・・・・なんかやつれてないか?」
ふてぶてしい顔つきはそのままだけど、ちょっと頬がこけているぞ。不快さを通り越して憐れむレベルだな。
「うるさい!!こちとら補習を毎日受けているのになかなか進級できないんだぞ!!」
「そうだ!!お前がいい点数を取ったりしているのがいけないんだ!!比べられる俺たちの立場にもなってみやがれ!!」
うわぁ、物凄い逆恨みと小物臭がするよ。
「・・・道化ですね」
ハクロが不快そうにつぶやく。うん、わかるわかるよ。
周囲の他の生徒たちもこの様子を見ているけど、兄たちに対して白い目線を向けているよ。
それが分からないって・・・・もう本当に救いようがないというべきか。
「と言うわけでお前がいい点数なのは何かずるをしているに違いない!!」
「そこでこいつでも喰らえ!!」
と、ザッハ兄さん・・・いやもう「兄さん」と呼ぶのが面倒になった。
ザッハが何か投げつけてきたので俺はひょいとかわした。
見ると、何やら白い手袋が。あ、これってもしかして・・・・・
「よけるなよ!!正式な決闘の申し込みの手袋をよけるなよ!!」
「あたるまで投げるぞ!!」
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「決闘」
ストラクト王国の貴族での正式な決闘の申し込みは手袋を相手に投げつけ、当てたら受け取ったとみなして決闘をすることになる。
何かを賭けての事となり、この学園では闘技場にて決闘が開催され、どちらが勝利するかなどの賭けも行われる。
代理人が認められており、使い魔も代理人として可能である。
決闘を行い、両者で決めた賭け事を守らなかった場合、厳しいバツが待ち受けている。
最悪、貴族家の長男だった場合は家を受け継げなくなるといったこともある。
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投げまくられていたけど、全弾はずれ。思いっきりかわしやすかったね。
・・・・避けられている時点でやめておいたほうが良いとは思うけどなー。
「はあっ・・・レイ様の兄たちでしたよね。もういい加減にしておかえりくださいませんか?」
呆れたかのようにハクロが肩をすくめてそう言い放った。
「そうだそうだ!!」
「ハクロさんの言うとおりだぞ!!」
「ハクロちゃんの主に対してなんてことをしているんだ!!」
「穀潰しなのはお前らだぞ!!ハクロさんい迷惑かけるな!!」
周囲からもヤジが飛び交い・・・・・あれ?ハクロに対しての言葉しかないな。俺のことに関してはどうなのだろうか。
入学直後から、ハクロは目立っていて、教室でも俺の隣でじっと一緒に授業を受けていて、その姿からもどうやら人気が出たようである。
・・・・主の俺がおまけ扱いだよな。悲しい。
魔法がとんでもないレベルなのは注目を浴びたようだけど、力よりもハクロの方が注目を浴びるとはこれいかに。
ちょっとトホホな気分になったけど、そういえばもうすぐ授業が始まるんだった。
「あー、兄さんたち、決闘なんて受ける気はないからね。ハクロ、次の教室まで全速力」
「了解です」
バルトとザッハが俺の言葉に対して顔を真っ赤にして何か言う前に、俺はハクロの背中に飛び乗って素早くその場を離れたのであった。
「と言うことがあったんだよな」
「へー、お前の方も大変なんだな」
間に合った次の授業は薬草学で、先生が説明をしているときにレイは隣の席にいる最近友達になった奴に話しかけた。
彼の名前はザフォン・フォン・セルン。レイと違ってセルン家の長男の立場にいると表向きではそうなっている。
・・・実は偽名らしく、なんとまさかのこの国の王族で第1王子だとか。王子がこの学園に通っていたのは衝撃の事実である。
しかも、第1王女も同学年にいるらしいけど、こっちはまだあったことがない。
学園にもいろいろ事情があって・・・・
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・基本的に全員平等同じ授業を受ける。
・ただし、入学審査の時の実力次第では一部授業免除となることがある。
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レイの場合、魔法が優れていたために魔法に関する授業で初年度は免除された。
初年度は簡易的な魔法を教えるものらしいが、レイはそれがほとんど使用できているので教えることがなく、そのため免除である。
場合によっては15歳になるまで免除と言う可能性もあるそうだけど、流石にそこまで免除にはなりたくない。
書斎にあった本にかかれていた魔法を覚えて自分で改良しただけだし、出来るだけ多く学びたいからね。
まあ、ハクロがいるから魔物使いの方に関しても多くは学びたい。
で、その肝心の王女だが、こちらはなんとすべて免除。
・・原因は国王様らしく、この第1王女はいろいろと知りたがったもので家庭教師とか専門とかを読んで講師させたりしているうちに全部覚えてしまったのだとか。
真の天才は王女だったか。
そのため、学園に来ることはほとんどなく、たまに学友に会いに来る程度で出会えたらその日はラッキーとかいうジンクスまで誕生していた。
「でもそれを考えたらザフォンもザフォンだよな」
「あっはっはっは・・・俺の場合は剣術の方が免除だけどな」
この気軽に話せる相手だけど、この人剣術審査でトップだったようだ。
で、魔法の方で俺がトップだったから興味を持って、話しかけられて、境遇は違えど意気投合して今は親友です。
「ああいう愚兄って何で生まれるのでしょうか・・」
「それはねハクロさん、生まれうべくして生まれてしまったようなものだからだよ」
「そういうものか」
「そういうものなんですね」
「そういうものなんだよ」
ものの見事にそろったので互いに笑い、
「おい!レイ、ザフォン、ハクロ!!今は授業中だぞ!!」
と、先生にそろって怒られました。この学園、平等だからザフォンが王子でも、ハクロがモンスターで使い魔でも平等に叱るんだよな。
ハイハイすいませんと謝り、授業に集中するのであった。
今日の授業がすべて終わり、さて寮へ戻ろうかとした時だった。
「おい穀潰し!!」
・・・デジャヴ?またかよ。
振り返って見ると、あきらめが悪いのかバルトとザッハがそこにいた。
ただし、1度目とは違って何やら今度は髪が焦げている。魔法で何かやらかしたようにしか思えない。
「今度こそ決闘を受けやがれ!!」
手袋をどこにそれだけ持っているんだという量を投げてきたけど、またまた全弾かわしてやりました。
いい加減にあきらめておけよ・・・・。
「というかさ、決闘決闘と言っているけど、具体的に何がしたいんだよ?」
「よくぞ聞いたなこの穀潰し!!俺たちはお前に対して土下座をしてさらにその使い魔を俺たちに差し出すように要求するのが目的だ!!」
「逆恨みと私利私欲のためか」
単純明快でわかりやすく、最悪なやつらだなと再認識した。
「じゃあ、俺が勝ったらどうなのさ」
「俺たちが土下座して学園内を裸で逆立ちしながら10周してやるよ!!」
「誰が得するんだその行為・・・・」
うわぁ、想像したら吐きそうだな。
でもうっとうしいし・・・
「だったら追加で、俺が勝ったらお前らは今後一切俺たちに関わらないでもらいたいね。何か報復とか、間接的にも直接的にもしようとしたらその今言った裸逆立ち学園内を20周してもらうよ」
「いいだろう!!俺たちが穀潰しに負けるものか!!」
「どうせ魔法だって大げさに伝わっているだけだ!!」
・・・なんだろう、心配したくなるぐらいこの兄たちの頭がおかしいと思える。
まあ、決闘は受けることにしたけど・・・
「ハクロ、あれって全力でつぶしたほうがいのかな?」
「いいんじゃないですかね。でも、あの様子だと代理人を出す可能性が高いですけどレイ様は負けないでしょう」
よし、この際心もバッキバキに折ってやるか。
このバルトとザッハのモデルはおそらく皆さんは予想が付くかと思います。
うーむ、綺麗なバージョンを出せるのか出せないのか?
ザフォンって一応これからも出るサブキャラ扱いかな。
 




