・・・後始末させられる者
本日5話目
SIDEガウン・フォン・ストラクト
ストラクト王国の国王であるガウンは、入学審査が行われ夜、王城の会議室にて己の政治を補う重臣たちと共に、学園の方で行われた入学審査の結果にあったとんでもないレベルの人物の情報を聞き、やや苦笑をしていた。
そして、その周囲にいた重臣たちはそのガウンの様子を見て「ああまたこの人は何かやらかしたんだな」とあきらめと悟りを開いたような顔をしていた。
・・・ガウン国王は政治面などでは悪くはなく、有能でありこの国の発展を目指す良き国王なのは皆よくわかっている。
どことなく人を引き付ける力にあふれ、年を取ってきたとはいえ衰えを見せないその力に尊敬はこの場にいる全員がしていた。
だが、困ったことにこの国王・・・必ず何かをやらかすことがあるのだ。
ある時は技と盗賊につかまってその本拠地で暴れて全員逮捕をしたり
またある時は孤児院に変装して手伝いに行き、悪徳の借金業者が来た時は調べさせ上げ自ら潰す
そしてまたある時はわざわざ旅人に変装し、その領地の現状を見に行って悪政を敷いていた領主の清兵衛をしに行くことがあった。
別い悪いことをしておらず、むしろその豪快さで国民たちに親しまれる言い国王である。
だけど・・その行動力のあり過ぎに全員悩ませられるのだ。
なにせそんじょそこらの悪党に負けないほどの力を持ってはいるのだが、あくまでもこの国の大事な国王であり、その命は大切にしてほしいのである。
娘や息子がいるため、万が一のことがあっても王位は継承されるが、その万が一を起こしてほしくないとこの場にいる全員が思うのだった。
そして今回の学園の入学審査での報告の際に聞いていた国王の表情を皆観察して、その様子から「また何かやらかしたのではないか」と推測ができた。
ある意味、この場にいる国王を除く全員共通して長年付き合わされてきた苦労人でもある。
「・・・国王陛下、まさかまた何かやらかしたのではないでしょうかね?」
その国王に対し、全員の総意をまとめたような発言が重臣の一人から出る。
「あっはっはっはっはっは!!私はやらかしてはいない!!やらかしたのはその少年の方だ!!」
豪快に笑いながらも、皆の白い目線にガウン国王は冷や汗を流す。
「ほう、このレイ・フォン・アルスと言う少年・・・・アルスと言うことは国王が5年前に向かわれた伯爵の子供と言う事ですよね?この時にしか接点はないだろうし、どう考えてもあなたが何かを吹き込んだようにしか思えないのですが・・」
「いやいやいや、5年前に確かにその少年に有ってはいるし、全力を入学審査で出してみろと言ったことはあったけど・・・・あ」
「「「「「やっぱりあなたが元凶じゃないですかぁぁぁぁぁl!!」」」」」
ついうっかり口からこぼれた言葉に、その場にいた国王を除く全員がツッコミを入れた。
国王とは言え、この人は不敬罪とかは気にしないので、全員思いっきりツッコミを入れることができるのである。
「その全力の結果がこれですか!?」
「あなたが吹き込んでなんでこういうことになったんですか!!」
「筆記満点、魔法適正全属性にあり、魔力測定不可能、極めつけは水と炎の魔法を合成し新しい無茶苦茶な魔法をだす魔法審査の測定不可能な結果ですか!?」
全員怒涛のツッコミを国王へと入れていく。
本日の昼間に行われていたベタリアンにある学園での入学審査。
その結果はこの王城へと届き、その中に、美しいアラクネを使い魔にしている貴族の少年が入学し、前代未聞な結果を出したというのがある。
そしてその少年がそのような行為に至った元凶がこの彼らの目の前にいる国王であった。
全員がツッコミを入れて落ち着いたところで、ガウン国王はなぜこのような行為をさせようとしたのかという弁明が行われた。
「・・・じつはな、5年前に親友でもあるデーン伯爵から息子の事を手紙で聞き、見に行ったことがあるのだ」
そして、そのアラクネを従えていた息子・・・レイと言う名前だったが、その才能は一目見るだけでも国王には恐ろしいほどのものだと思えた。
「5歳の時点であれだけの実力を持ち、これから先の成長を考えると不安があったのだよ」
もし、5歳の時点でその力を狙うような輩が出れば、惑わされて戦争の道具にされたり、他国にわたってこの国の脅威となる可能性があった。
そこで10歳になって学園に入学する際に行われる入学審査にガウン国王は目をつけた。
ここでいろいろととんでもないことを5歳のとき以上にやらかしてもらえれば、まずそう簡単には手を出すようなやつは出るまい。
この10歳の年齢になればそれなりの判断もしっかりしてくるだろうし、ここでいくら目立っても惑わされる可能性は少ないと思えたのだ。
そこで、10歳になるまでレイについての情報がどこにも漏れぬように国王直属の諜報部隊に命令して秘匿できる状態にして、今日までその存在が隠されていたのである。
この事は、当の本人であるレイも知らないことであった。
「それに、彼が従えているアラクネだが・・・知能が高いだけではなく、実力もそれなりにあるモンスターだ。レイの身に危険が及んだ時に確実に周囲に被害が出ることも考慮したのだよ」
・・・考えていないようで、国のためになるようにガウン国王は考えている。
国が栄えるためにも、滅びの道をたどらぬように見極め、最善の選択を彼は選ぶのだ。
「・・・本音はと言うと?」
「いや、結構美しいアラクネだったので盗撮したいなと」
「「「「「台無しじゃん!!」」」」」
ハクロと似た意味での残念性をガウン国王は持ち合わせているようであった。
これで反乱がおきていないのだから、人望があると言えばいいのか、あきらめてる人が多いというべきか・・・・・。
結構人気がある国王で、それなりに政治もよさそうだけど問題があるとすれば自分から積極的に動き過ぎているという事である。
重臣の人達の苦労がものすごくわかるような気がするなぁ。




