一話 モンスター・トリップ・ワールド
「ここ…どこだ?」
目を開くとオレは石の祭壇の上に立っていた。確か公園にいて夕方だったはずなのに、何故か空は青い。スマホを取り画面を見るが、さっきまで夕方の時間を表示していた画面が何故か昼の十二時になっておりアンテナも県外になっている。
「これは…夢か…!? そうだ、さっきのメール!!」
さっき送られてきたメールの事を思い出し開くと、今度は光らず普通に読めた。
件名 「ご招待」
「桐華涼様
この度あなた様を真のMTWにご招待いたします。これまでにない新たな世界やモンスターとの出会いが貴方様をお待ちし、未知なる冒険をこれまでに育てられたモンスター達と共に楽しんでください」
「楽しめって…まさか、ここはゲームの世界? いやいやそんなまさか…」
そんなネット小説やら、ゲームのような事があるか と思っていると、もう一件メールがあるのに気づき開く。
件名 「ようこそ、真のMTWへ」
「さて、いきなりの事で驚かれたと思いますが、桐華様の現在いるところは石の祭壇と呼ばれ人里から離れた森の中になっております。
この世界では桐華様がこれまでゲームで育てられたモンスターや入手されたアイテム・装備などがゲームタブレットから取り出して使用・召喚が可能でそれらを使いこの世界を冒険してください。
但し、この世界はゲームと違う点がいくつもあり。特にモンスターや人に襲われ命を落とす可能性が高く十分に注意をして進む事をおススメします。 他に、ゲームでは見られない現象などがありますが、そこは冒険をしていく内に次第になれると思います。
それでは未知なる冒険に幸があらん事を」
「命落とすって…冗談じゃないぞ!!」
いきなりこんな知らない所に連れてこられ、大声を上げながら文句を言いながらメールを返信できないか試すが、結果は無駄だった。
「どうすりぁいいんだよ...」
途方に暮れながらスマホを動かすが、電話はもちろん地図やらSNSなどアプリを操作するがつながらない。だが、何故かMTWのアプリは何故か起動し、画面とは違った画面が表示される。
召喚士「リョウ」
召喚ランク10
状態 「普通」
装備「なし」
魔力 1000/1000
所持金99999千万E
画面には、オレに似せた赤い髪のアバタ―が映り、ステータスやら所持金まで表示されていた。
そして、今気づいたが。スマホの画面に映るオレの髪色になっており、今のオレの姿はゲーム内で使っていたアバタ―そっくりだった。
「ん? 召喚? なんだこれ?」
モンスターの欄を開くと、画面はいつもと変わらずオレの育てたモンスター達が表示されていたが、よく見ると「召喚」と書かれた見慣れないボタンがあった。試しに押してみようとしたが、傍の草が揺れ慌てて顔をそっちに向けるとーー
「う、うさぎ?」
音の正体は白く小さなうさぎだった。しかも額に小さな角が生えており、確かあれは白うさぎと言う、低ランクのモンスターだった事を思い出す。
白うさぎを見て、本当にここはゲームの世界だったのか と思っていたら。白うさぎが突然どこかに走りだし、白うさぎのいたところに何かが飛び出してきた。
「な? お、狼!? 」
飛び出してきたのは、大きな口に鋭い牙を生やし茶色い毛色をした狼でソイツは「フォレストウルフ」と言う名でゲームの中で何度も見た事があった。
フォレストウルフが逃げている白うさぎを睨み今にも追いかけようとしているのに気づき、オレは慌てて足元にあった石をフォレストウルフに向け投げ石はウルフの頭部に命中した。
「げ!! やばっ!!」
石を投げられ怒ったフォレストウルフがオレに向かって走ってくる。オレは逃げようとして後ろに下がるが、足元の石につまずき後ろに倒れてしまった。
「うぁ!?」
声を上げ尻餅をついてしまう。そして、前を見ればフォレストウルフが口を開け鋭い牙を見せながら近づき、オレはタブレットを強く握りしめ目を閉じるとーー
ドンッ!!
「…ん?」
傍で大きな音が。まるで何かを踏みつけたような音が聞こえ、恐る恐る目を開くと...蒼炎を纏った一角獣がいた。さらに蒼炎の一角獣の前にオレを襲おうとしていたフォレストウルフが頭に大きな蹄の跡をつけ地面にめり込んで倒れていた。
「お、お前は…」
目の前にいる蒼炎の獣には見覚えがあった。オレがゲームで育てていたモンスターで火属性の「フレアユニコーン」だった。
フレアユニコーンいや、フレアはオレの方を向き顔を近づけオレの顔をさすってくる。まるで、大丈夫か? と聞いているかのようでオレは戸惑いながら礼を言いつつ、フレアの顔を優しくさすり。少し落ち着いてきてから立ちあがりタブレットの画面が見る。
〇フレアユニコーン LV100
ランク☆5
属性(火)
装備「火の護符」
召喚魔力「100」
画面にはモンスターのレベルや装備などが表示されていた。もしかしてさっき召喚のボタンを押したからか? オレはタブレットに何か変わった箏は何かないかと思いタブレットを操作し続けていると
召喚士「リョウ」
魔力 900/1000
フレアを召喚したためステータスにある魔力がその分引かれていた。
「もし召喚とかやりすぎて、魔力がなくなったら...小説とかだと死ぬってあったけど…」
思わず体が震えるとフレアがオレの体を温まるように体を寄せてくる。体にある蒼炎は触れているオレを燃やすことなくオレを暖かくしてくれた。
「ありがとう、フレア」
フレアに礼を告げると、フレアはオレから離れてしまいピクリとも動かず地面に埋もれていたフォレストウルフに向け大きく口を開き蒼炎を吐き出してフォレストウルフを跡形もなく燃やしてしまった。
これにはどう答えていいのか戸惑ったが、一応礼を言うとフレアは再び体を寄せてくる。
「えと、他には何かないか? 例えば、アイテム…」
タブレットを睨み、今度はアイテム欄を開く。そこから、適当にアイテムを選ぶとオレの目の前に何かが出現し地面に落ちてきて拾ってみる。
「…本当に出てきたよ…」
オレが手にしているリンゴに似た小さい果物。赤い果実はモンスターの体力を回復させるアイテムで、試しに一口かじると甘くて美味しかった。と、傍にいたフレアが赤い果実を見つめているのに気づき、タ
ブレットからまた赤い果実を取り出しフレアに渡すと、大きく口を開き食べ始める。
「ん? あいつ…」
気づけば、遠くでオレ達を見ている白い物体が。さっきのフォレストウルフから逃げていた白うさぎがいた。試しに、白うさぎに近づき食べかけの果実を地面に置いて見ると白うさぎが果実に向って走り小さな口を動かし食べ始める。
…少しぐらいいいよな と思い。食べているのに夢中の白うさぎの体に触れてみた。最初は 何!? とこっちに顔をむけるが、何度もなでていると白うさぎは落ち着いたのかまた果実に夢中にかぶりつく。
ふさふさで暖かい毛並みに思わずオレが夢中になってしまい白うさぎが果実を食べ終えるまでオレはなで続けていて。ふと、タブレットが何かに反応しているのに気づき画面を見てみると
〇白うさぎ LV10
ランク☆1
属性(土)
白うさぎのステータスが表示されていた。ちなみにモンスターのランクは、上がればステータスの限界や使えるスキルなど増えていくが、ランクを上げるにダンジョンなどに落ている星の石と呼ばれる特殊なアイテムを使う必要がある。
「って、もふもふしてる場合じゃないかった。モンスターが出るしアイテムがマジで出るってことは本当にゲームの世界なんだなここ…で、どうやって帰ればいいんだ?」
誰も答えてくれない独り言をつぶやきオレを、二匹のモンスターが不思議そうに見つめるのであったーー