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喧嘩伝  作者: 小森
7/14

幕間 セーフティ

 

 一般家庭、と言えばいいのか。

 俺の家はごくありきたりだった。小さな不満はあるが、生きていけないわけではない。大きな買い物はできないが、少しの贅沢ならできる。屋根がある。床がある。扉も、窓も、布団も、テレビも、エアコンも、冷蔵庫もある。不自由のない暮らし。


 その程度の、生まれだった。


 だから、この世界を知ったとき、彼女を知ったとき、俺は、同時に未知を知った。

 己自信にも降りかかる理不尽。その、不幸を知ったのだ。

 俺は身震いをした。人間の不幸が、そこに転がっている。

 あたりまえの顔で。

 当然であるかのように。

 そんなことはないのに。

 俺は得ていた。過去、別の世界で、俺の世界で。平凡であるからこその、幸せを、得ていた。これはなんだ。俺の目の前にいるのはなんだ。不幸。これが。そうなのか。驚いた。戦慄した。嫌悪した。けれど、だからこそ、俺は、それを。






 愛した。






 好きだ好きだ好きだお前の不幸が好きだ。お前のその影を含んだ顔が好きだ。お前の生きる意味。なんの意味もない。意味もないのに生きている。お前が好きだ。好きだ好きだ好きだ。くだらない命。間違った命。お前は生まれるべきではなかった。底辺。その言葉すらもお前には相応しくはない。お前に命など無用だ。不必要だ。どうしようもないほどに。お前は、お前は、お前は、そう、お前は。生きている意味がない。お前には、生きている意味がない。だから。だからこそ。


 愛しい。


 俺の、ただひとりの子。

 お前をずっと、見ていたい。






 ………………………………………


 城に二人の子供がたどり着いた。

 片方は少年。片方は少女だった。

 二人を出迎えた男は、しゃがみこみ、慈愛に満ちた目で子供たちの顔を眺める。

「ようこそ」

 そして、少女に向かって言った。

「ここが、君の墓場であり、職場であり、そして」






「家である」






 ………………………………………


 検索中。


 該当が**件ありました。

 **********

 ******

 *******____停止。






 再検索。


 該当が1件ありました。

 エルム・__。





 補填開始。






 補填完了。

 

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