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喧嘩伝  作者: 小森
5/14

幕間 トリガー

 

 その子どもは、生きながら、死んでいた。


 __は、それをみて、なんだか、とても。


 とても。


 とても、くるしくて、かなしくて、くやしくて。


 泣きたくなったんだ。






 ………………………………………


 幼子は石の中にいた。

 刑務所と呼ばれる、その石の中に、世界に生れ落ちた直後から、存在した。


 それは刑罰だった。

 定められた処遇。

 罪を犯したが故の罰。


 幼子は罪を犯したのだ。

 生れ落ちるという罪。

 産声をあげるという罪。


 その代償を、今、支払っているにすぎない。


 幼子の父は首をはねられて死んだ。

 幼子はそれを知らない。


 幼子の母は元からおらぬ。

 幼子はそれを知らない。


 幼子の四肢はもぎ取られた。

 幼子はそれを知らない。


 幼子の眼球はくりぬかれた。

 幼子はそれを知らない。


 その幼子は、なにもかもを知らない。

 言葉も、表情も、動作も、知識も、なにもかもを。


 石の部屋で、幼子は、死ぬまで代償を支払う。

 ゆるやかな死しか許されない    は、いつか、自然に即し、息を止めるその瞬間まで、なにも知らずに生かされる。

 けれど、なにも知らぬその子は、それゆえに。






 死すら知らない。






 ………………………………………


 ウイルスの除去を開始します。






 完了。


 __に空きができました。補填します。

 

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