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cloudy sky

作者: 田貫うどん
掲載日:2014/02/27

世界の不安定要素

影が現われ、やがて薄れて消えていく

太陽が厚い雲に覆われる度に繰り返される

目が生まれ耳が生まれる

徐々に器官が増えていき、一つのモノになる

見る光景、聞く光景、触れる光景

理解という概念はそこにはなかった


生まれ落ちる度に汚れていく大地に

重なり合って山になり、

敷き詰め腐った光景から始まる

泣き声はだんだん聞こえなくなっていく



目を開くと雨だった。

優しいとか激しいとか、今の僕には分からない。

ただ、晴れた空から落ちる雨は地面に到達する前には消えていて、

不思議に思うわけでもなく通り過ぎている。

見慣れた光景だった。

いつも空は晴れ。空は雨。空は曇り。空は・・・

日が昇る度、両手で覆い隠した目。

閉じるわけでもなく見開いた目に映りこむ薄暗い影を感じる。

疲れる事を知らないわけではなかった。

永遠と繰り返される出来事に日々苛立ちを覚えていく。


見えないものが見える力なんてあるはずも無い。

今起こっている事象、全てが嘘の塊である。

一つ、また一つ、地中から湧き出る水の様に全て流されるまま過ぎればいい。


ふと気が付く。

吸い込まれそうな光景が広がっている。

怖れは感じないのだが、躊躇う気持ちが大きいのは何故だろう。

何も捨てるモノがないはずなのにジレンマはここでも続いている。

断ち切る理由が有るはずなのに、諦めている理由、言訳がある。

俯きがちに歩き出し、一瞥して目を閉じる。

こういった時、風がやけに冷たく感じる。

そして両手はまた覆っているのだろう。


重なり合った山。

いつかこの場所で僕も重なる。

高く高く詰まれた山。

通り抜けると身体に染みこんだ嫌な臭いだけ連れて。



空から見下ろすカラスのように、突き出したクチバシでその身を貫く。

夜でないと見るのを躊躇わせる光景。

汚れた地面に撒き散らせた誰かの記憶。

二度と目覚めない、悲しみさえどこかに忘れて。

無気力で、膝から崩れ落ちたら希望は深く眠るように。


理解する世界。

全ては一つに纏められる。

希望とか絶望とか全て一つ。

考える事は無意味なのだろうか。

頭を揺らし天を仰ぐ。

そのまま倒れれば良かっただろうに。

何も分からないまま歩くことをやめないのは、

潜在意識の中の恐怖と己の置かれた状態が最悪だということ。



光を見つめることは目の前の山で数えること。

闇に紛れることは山になるということ。

眠りにつくのはいつも明け方で、暗闇とは仲が良い。



一定のリズムで歩き回る。

左右にビルが聳え立ち、僕を圧迫する夕暮れの光景。

日が沈むに連れてビルが吸い込まれ目の前に幕が下りる

渦を作りながら歪んでいく空間は、先にある道を塞いでいく。

目を閉じても襲い来る恐怖は、絶海に残されたかのよう。



友人と呼べる人がいた。

本当に友人だったのか、彼はどう思っていたのか今は分からない。

彼が僕と同じ様にさ迷い歩き続け、同じように眠りについた。

本の話が好きで、よく薦められたのを覚えている。

その日は明るい空だった。

彼を見つけたのはいつも通るあの山の前。

見て見ぬ振りをしていた。

後になって思い出す、彼だったと。

次の日に彼に会いに行く。

もう全て無くなってる姿はとても綺麗だ。

違和感を覚えたのは、いつも手に持っていた本が無いことだ。

悲しくない訳ではない。

理解が出来なかったと思う。

駆り立てられる衝動、彼が好きだった本を探した。

やっと見つけ出し、そっと彼に持たせると気が抜けたように涙が溢れだした。



綺麗な言葉は好きですか?

ただ単にそういう単語を並べるだけなんて、悲しすぎる。

現実逃避にはちょうどいいかもしれない。

昔好きだった夢とか希望とか、翼を羽ばたかせるとか。

今になってはなんて曖昧なんだろうと思う。

言うだけは簡単なんだけど、現実を見たら絶望に陥る。

気持ちよく歌う詩人は偽りの心を持っているのだろうか。

心の中の闇は押し込まれ、理想を歌う現実に満足している。

嘘偽りの世界。僕はそんな世界は欲しくない。

涙なんて流すものか、嘘で塗り固められたくだらない歌なんかに。



光の届く先、その場所で身を焦がす僕がいる。

雨が大好きで太陽なんてなくなればいいと思っている。

輝いている人は眩しくて直視することなんて出来やしない。

けれど、そんな人も嘘の塊で、きっと苦しいはずだ。

僕は見て見ぬ振りをする卑怯なモノだ。

綺麗な物を綺麗と言えぬ小さな存在。

否定されるべき存在。

ただそれでも何も変わらずに存在している。

理解できない何かを求めて。



恐怖とは目の前で起こっている現実を現実だと認識して初めて体感する。

普段何気ない事では恐怖さえ感じることはないだろう。

当たり前な事に恐怖を感じることはあるだろうか。

死は必ず訪れる。しかし死を恐れないということは無理だろう。

当たり前なのに、必ず死ぬのに、なんで恐怖を感じなければならないのか。

明日が来ることが当然なんて、誰もが思ってるなんて。

矛盾だらけの世界。

死んだら何になる。

あの山に重なるだけだ。

死んだ人の気持ちはどうなる。

そんなの何もない。

何故そう言える?

だって何も言わないじゃないか。

しかしきっと何かあるはずだ。

でも何も無い、何も無いんだよ。




何も無い。

歩き回る。

何も無いから歩く理由も無い。

だけど歩き続けるのは何故だろう。

同じ場所に立ち止まって、同じ場所で眠って、同じ場所で食べて。

気がつけばまた同じ場所。

ドロにまみれたような手は山に向かって石を投げつける。

気づかなければ良かったなんて、思っているのも忘れてしまいたい。




歩き続けた先に僕は光を見つけ出せるのか。

光とは「目先の金銭である」と、今を生きる人に相応しいモノである。

金銭ではない、それをも超越した何か。

その何かっていうモノは今の僕、いや、誰にも分かりはしない。

幸せ?快楽?それとも苦痛なのか?

近くに感じる光の温かさは前にも増して感じにくくなっている。



足元には汚い世界が広がる。

朝も昼も夜も誰とも知れないうめき声が聞こえる。

聞こえるだろうか、あの叫び声が。

終わることの無い絶望の叫びは死ぬまで響き続ける。

訳も分からず物を食らい、動くことが出来ないまま眠りにつく。

これは不幸と言えるのか、いや何もしないまま生きていられるのは幸せなのかもしれない。

生かされているのは誰かに望まれているからだと、考えてみれば不安を消す為の錯覚。

世界が滅びに向かう。

無駄に生きながらえている人々を見るたび、僕は深くため息をつく。

そして見ない振りをして今日を過ごしている。

いつまで続くのだろう。

楽になるとか苦しくなるとか、きっと誰も終わらせることができない苦しみに耐えているのだろう。

僕が終わらせてやる。

無駄に生を過ごす人々よ。

今は理解できる人もいれば狂っている人もいるはずだ。

徐々に動き出す歯車に、死という閂をもたらすような出来事。

そんな普遍的な事を望んでいる。

不謹慎とか栄誉とか、他人が思うほど誰も気にしてないし、自分のこと意外は興味ない。

まして他人のことなんてどうでもいいと思っている。

可笑しな話だろうか。

本当にそうなのだろうか。

目を閉じ考えてみても同情とか哀れみとか、そういった考えが頭を埋めるだけ。




夢ならば良かったと白日の下、惰眠を貪る。

夢・・・僕はそこで本当の自由を与えられた。

しかし意識とは違う動きをする。

目の前で起こる悲劇とか喜劇とか、ただ見ていることしか出来ない。

考えることは自由だ。身体さえ動けばといつも思い、忘れてしまう。




近づいてくる。

終わりを告げる鐘の音はもうすぐ空から雨のように降り注ぐ。

希望だ!絶望だ!死の宣告だ!

鏡に写った僕の表情はとても、醜く見える。

泣いているのか、それとも喜んでいるのか。

心の底では喜んでいる気がしてならない。

あの山と同じになる。

汚い底の世界。

誰から見ても喜びなんて沸きはしないのに。

手招きしている、そのように見えないか?


今頭の中で何かと何かが絡み合い、目つきは鋭く焦点が合わない。

弦が弾けるように後ろに倒れると、全てを知っているかのような冷笑をした。

もう考えることをしない身体はあの山の上で光を失っていく。

それでも星はいつにも増して輝いているというのに。

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