表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/67

とある事実発覚である!厄介な事この上ない

実際に小説を書く事でわかる事もあると、しみじみ思う今日この頃……

気がつけば微妙にプロットを外れて……でもコッチの方が良いかもと思ってしまう事が時々……

(1~2~3~4♪ 2~2~3~4♪)


 『グリーンスライム』になった翌日の朝。彼は切り株ハウスの前で、相も変わらず日課の体操をしていた……いや、『プルプル』が『グニグニ』に変わっているか……


(さて。今日も元気に、いってみよ~♪)


 何時も通りに切り株ハウスに印を一つ増やし、彼は散策を始める。向かう先は一つ果実の木である。


(~~~♪、~♪、~~~♪、~~♪)


 心の中で口ずさみながら森の中を進む。途中でイモ虫や角ウサギに出会ったりするのだが――自分に対する態度が変わっている。

 昨日の黒犬達と似たように、いつもなら逃げ出す距離に近づいても、何も反応しない。試しに触れられる程に近づいても態度は変わらない。気がついていない訳では無い。こちらに気づいているのに、気にしていない。


(なんで、色が変わっただけで、こんなに態度が変わるんだろ? あー、アレが有ったら良いのにな~)


 思い浮かべるのは、転生する時に『管理者』が見せてくれた生物図鑑。アレの異世界バージョンが有ればこの謎も解けるのに……

 そんな事を考えながら目的の木へ辿り着き、木を登り、枝の上で果実を食べ始める。


(ん~~。こうなってみると味覚が無いのが残念だよ)


 こうして、果実を当たり前に食べられるようになり、『人間』だった頃の味の記憶が蘇るので、無いものねだりなのはわかっているが、どうしても考えてしまうのである。


(まあ、考えてもどうにもならないのはわかってるんだけどね……ん?)


 枝の上で食事しながら考えていると、話し声が近付いてくる。視線をそちらに向けると、三人組の男達が歩いてくる。

 十代半ばぐらいの赤髪の少年。同じく十代半ばぐらいの黄色の髪の少年。そして大きな器? と言うか鍋? を背負った二十代の赤髪の青年。皆、共通して何かしら簡素な武装をしている。その三人が辺りをキョロキョロしながら歩いている。


(なに探してるんだろ? ゴブリン……じゃ無いみたいだけど……?)


 なにせ、小さな草むらや茂みの中まで四つん這いになって探しているのだから……今までこの森で見た、どの冒険者達とも様子が違う。

 そんな彼らの話し声が聞こえてくる。


「見つかん無い……ホントに居るんですか、この森に?」

「目撃証言が有るんだから居るんだろ? とにかく探すぞ」


 赤髪の少年の言葉に青年が答える。


「俺もこの森には良く来ますけど……グリーンスライムなんて見た覚え無いですよ?」

(――! ボクを探してるんだ……やっぱり、昨日助けなければ良かったかな?)


 思い浮かぶのは昨日の少女、自分を見たのは彼女だけだから、そこから広まったのだろう。


(――ところで、その背負っている鍋みたいなのって、もしかしてボクを入れる為の?)


 せめて、もっとマシな物はなかったのか、と声を大にして言いたくなる彼である。


「あの……そもそも何で探して捕まえないといけないんですか?」

「ん……? ああ、お前グリーンスライムについてしらないのか?」


 黄色の髪の少年の質問に、青年がしょうがないな、とばかりに答える。


「グリーンスライムは変わった習性を持っていてな。スライムみたいに獲物を溶かそうとしないんだよ」

「えっ? どうゆう事ですか?」

「あいつら、傷ついた生き物を見るとその傷を治そうとするんだよ。学者共が言うには傷から流れ出る血液、ってか体液が目当てで、傷を治すのはそいつが死ぬよりも、生きててまた傷ついてくれればその度に体液を吸収出来るかららしい」


 青年はペラペラと自分が持っている知識を喋り続ける。


「しかも、他の生き物達も本能レベルでその事を知ってるらしくてな。グリーンスライムは襲われるどころか、警戒心も持たれないんだよ」

(あっ、森の皆の態度が変わったのはそれが理由なんだ)


 納得、とばかりに心の中で頷く彼。そして、眼下の会話を聴き続ける。


「――って訳で、グリーンスライムは生きてる限り傷を治してくれる。捕まえとけば、もう傷薬はいらないし……それに、街の医療所や研究者なんかに高く売れるぞ」

「マジですか!」

「ああ、チマチマ薬草採取するよりも、金になるぞ。わかったら良く探せ!」


 青年の声に他の二人の少年が、俄然ヤル気を出し、辺りを探し続ける……正直、目が血走っているのでかなり引く……ていうか怖い。

 三人はそのまま頭上の彼に気付かずに立ち去って行く。


(流石にスライムが木を登るなんて思ってもみないんだろうね。でも困ったな……諦めてくれるまでは、見つからない様にしないと……ハァ)


 一体どれだけの期間隠れ続けなければいけないのか、と平穏な生活を愛する彼としては、頭が痛くなってくる……いや、スライムは痛みを感じないけど……




――――スライムスニーキング中――――


(抜き足、差し足、忍び足)


 あれから、辺りの様子を見て木から降り、細心の注意を払いながら彼は森の中を進んでいる。

 あのまま、木の上に居れば安全ではあるが、一生過ごすなんて事は当然出来るはずもなく、彼は考えた末に行動を開始した。

 一つ目の案は住む場所を変える。しかし、少し変えたところで、さっきの人間達の様子を見ればしつこく探し続ける事は間違い無い。いっその事、この森から出て行く――しかし、これは無理……というか無謀である。なにせ、彼はこの森の外の事は何も知らないのだから……

 ならば二つ目の案、安全な場所に住む――木の上も考えたが、果実を全て食べてしまえばそれで手詰まり……そこで彼はある事に気がついた。


(グリーンスライムになった事を逆に利用しちゃえ♪)




――――続・スライムスニーキング中――――


(後もう少し――――着いた!)


 人間やゴブリンに見つからず、彼は目的の場所へとたどり着いた。そこは、森の中では少しひらけた場所で、数多くの黒犬達が寝ている場所――彼等の()()()の中である。

 グリーンスライムがモンスターに襲われないのならば、その真っ只中に入る事で人間から守ってもらおうと考えたのである。

 実際に、縄張りに入ったことで黒犬達の何匹かは、寝ていた身体を起こしてこちらを見るが、すぐにまた寝てしまう。


(悪いけど君たちを利用させてもらうよ。代わりに傷ついたら治してあげるからね)


 寝ている黒犬達の間を進み、手近に有る木の中で一番大きい木――7メートル程――を登る。時間を掛けて枝まで登った彼は、5メートル程の高さから辺りを見渡す。


(黒犬達は全部で十数匹。縄張りの範囲はあの辺りまでかな?……となると、ボクの行動範囲もそこまでか)


 おおよその範囲を見定めた彼は、今度はその範囲内の環境を確認する。幸いな事に青い果実が実った木と、自分がグリーンスライムに変わったであろう原因の薬草が群生している場所が有ったので、食事に関しては心配は無さそうである。


(後は、一応念の為に……)


 彼は、今登っている木で一番太い枝の根元を、表皮も一緒に溶かして窪みを作る。自分の身体がちょうどはまる大きさに。


(これなら、ボクが寝ている間に落ちることも無いよね。しばらくは、ここをセカンドハウスにしよう)


 念には念を入れ寝場所を木の上にする。さらに、今日からは行動するのも夜にする――黒犬達が活動し、他のモンスターが眠る夜に。


(という訳で、前世の皆、オヤスミ~~)


 元の世界の『家族』達を心に思いながら、彼は仮眠を取る。




   *   *   *


(……ん?)


 物音で起きた彼は、辺りがすっかり暗くなっている事に気づく。どうやら、すっかり夜になっていたらしい。

 木の下を見下ろすと、何匹かを残して黒犬達がどこかへ行くところだった。おそらく、餌を獲りに行ったのだろう。


(…………)


 しばらくの間、木の上でジッとしていた彼は、周囲に何の音もしないのを確認してから地面へと表皮を滑り降りる。

 目標は先程見つけた青い果実が実った木。地面へ降りた事で黒犬達がこっちに気づくが、やはり襲っては来ないので、すんなりと辿り着く。そこから時間を掛けて木を登り、青い果実を取り込んで食べる。前に食べた赤い果実はリンゴに似ていたが、こちらは楕円形で瓜に似ている。


(ホントに味覚が無いのが残念だよ……ん?)


 この実はどんな味なのかと考えていると、何時の間にか木の下に黒犬達が集まり、こちらを見上げていた。


(…………えい!)


 何となく、今食べようとした実を地面へと落とす。それはすぐに一匹の黒犬に食べられてしまい、他の黒犬がまたこちらを見上げる。


(……えい! えい! ついでに、えい!)


 結局その場にいる黒犬の数だけ果実を落としてあげてから、彼は木を降りる。自分の食べる分が減るが、他に薬草等も有るのだから別に良いかと思ったからである。

 木を降りた彼は真っ暗な森で、さてどうしようか、と考え始めたところで、どこかへ行っていた黒犬達が戻ってきた――角ウサギやイモ虫を咥えて。

 狩りに行かなかった黒犬達も集まり、食事が始まる。程なくして彼等の食事が終わり、後には自主規制なモノが残る。

 彼はソレに近づくと、角ウサギの角だけ取り込む。流石に、他のモノは『元人間』としては食べる気にならない――と言うか気が起きない。起きちゃいけない。


(そこまで追い詰められている訳じゃ無いし……んん?)


 ふと気がつくと、自分のすぐ近くに二匹の黒犬がいた。他の黒犬達が大型犬サイズなのに比べ、この二匹は中型犬サイズと小さい。


(子供なのかな? さっきは見なかったけど……隠れてたのかな?)


 その二匹は、彼に鼻を寄せたり、前足で触ってきたりと積極的に触れてくる。


(好奇心旺盛だね♪)


 何となく、微笑ましい気分になった彼は、セカンドハウスにした木に向けて移動する――すると、二匹も後をついてくる。


(…………)


 一旦止まる――二匹も止まる――また移動する――また二匹もついてくる。


(…………懐かれてる?)


 彼はそのまま動き続ける――円を描く様に。ジグザグに。時には急にバックしたり――そして、二匹も完全についてくる。

 傍から見れば、実に奇妙と言えるだろう。そんな事をしている内に――


(――て? 気がつけば空が明るくなってきてるし……)


 どれだけ夢中になっていたのだか、角ウサギの角もとっくに消化されている。内心苦笑いして彼はその場に止まる。

 二匹は親であるだろう黒犬について行き、茂みの中に入る。他の黒犬達も思い思いの場所で眠ろうとしている。

 それを見て彼もセカンドハウスの木を登り、窪みに身体を入れる。


(早く、ボクの事を人間達が諦めてくれれば良いんだけど……それじゃ、前世の皆、オヤスミ~~)


 元の世界の『家族』達を心に思いながら、彼は再び眠りにつく。

ご愛読有難うございました


本日のモンスター図鑑


――――グリーンスライム――――


スライムの亜種と言える存在。『生まれてから一定時間の経過』『一定期間生物を食べていない』『一定量の薬草(もしくは、それに準ずる物)の消化吸収』を満たす事でスライムが変化する。

傷ついた生き物を癒す習性を持つ為、他の生き物を襲わないし襲われない人畜無害なモンスター。


つまり、捕まえてきたスライムに薬草を与え続けると、いずれグリーンスライムに・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ