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馬鹿は馬鹿である!そろそろ決着着けない?

皆さん良いお年を~。

そして……




スマ~~ン!!

私の頭ではこれが限界で~~す!!

ネタが……ネタが……思い浮かばない。

「――チィ! 面白く無え」


 村の中を、悪態を吐きながら歩くヤルバン。時々石ころを蹴飛ばす様は、まるっきりチンピラの様である。

 彼がイラついている理由は――間違い無く、(くだん)のホワイトスライムである。最も、そのホワイトスライムの方からしてみれば、完全な八つ当たりであるが……


「どいつもこいつも、スライム如きに(こび)売りやがって……」


 他の皆が聞いたら「売ってないよ!」とツッこまれるであろう言葉を呟きながら、ヤルバンは歩き続ける。

――正直な所。彼はこの村でかなり……イヤ、凄く浮いている。ホワイトスライム――シノブを一方的に敵視している所為で。

 確かに、シノブを『教国』の連中から隠す為に一苦労はあった。しかし、そんな事シノブがこの村に(もたら)した事に比べれば、些細な事であると皆は思っている。

 だが、この男はそう考えない。考えられない。最弱のモンスターである『スライム』が、エルフと対等な立場で接せられる事に納得がいかない。オレ達は誇り高い種族だ。あんなモンスターの助けなど必要無い。彼の頭の内はその思いで占められている。

……決して、エルがあのスライムに懐いているからでは無い…………筈。


「――ん?」


 そんな事を考えながら歩みを進めるヤルバン。

 そして――


「――ぶめらっ!!」




   *   *   *


「――それで、結局?」

“さんかしゃのはちわりが、けがをしちゃった”

「……ドワーフ達が、グリーンスライムを数体欲しいと言ってきたのは、そうゆう理由じゃったか……」

「ん……だいじょうぶ?」

“そこまでおおきなけがをしたひとは、いないから”


 村の中にて、井戸端会議みたいに話し合っているのは、アムリナ・セムイル・エル・シノブである。

 話題の中心は、先日ドワーフの街で行われた相撲大会である。急遽、ドワーフ達からグリーンスライムを沢山送ってくれと連絡があり、いきなりどうしたのだと事情を知っていそうなシノブに聞いたのであった。

 そんな、和んだ雰囲気の中――


「――テーーーーメーーーーエーーーーッ!!!!」

「「「…………」」」

(…………)


――突如聞こえてきた叫び声に、皆の顔が疲れた表情になる。顔が無いスライムのシノブですら、そう言う表情をしてると雰囲気で丸分かりである。

 皆が溜め息を吐く中、ヤルバンがズザザザ、と勢いを付けながら現れる。現れるが……


「――どうゆうこったコラァ!!」

「それは、こちらのセリフじゃ……どうしたんじゃ? その格好……」


 アムリナの言葉に、その場に居たシノブ達だけで無く、何事だと集まって来た皆もウンウンと頷く。

……ヤルバンの姿は、一言で言えば滅茶苦茶であった。髪の一部が焦げてチリチリになっているし、上半身の右側はズブ濡れ、左側は土で汚れている。右足はズボンがズタズタに引き裂かれてるし、左足には植物の蔓が幾重にも絡まっている。

 何があればこんな姿になるのだか……


「どうしたもこうしたも無ぇ!! 村ん中歩いてるだけで、テメェの下僕共がオレに魔術をブチ込んでくんのはどうゆうこった!!」

“うちのこたちを、げぼくよばわりしないでよ”

「うっせぇ!! キッチリ説明しやがれっ!! テメェ、オレに恨みでも有んのか?!」

(((((有るに決まってるだろう)))))


 その場の全員の心が一つになった瞬間であった。

 しかし、言ってる人はアレだが、言ってる内容は流石に聞き逃せないので、アムリナがシノブに尋ねる。


「どういう事何じゃ? 何で此奴だけが被害に遭っておるのじゃ?」

“たぶんだけど”

「何じゃ?」

“うちのこたちって、ぼくにたいするあくいやてきいに、びんかんにはんのうするんだよね”

「……つまり?」

“おおかた、あるきながらぼくをどうしようか、かんがえてたんでしょ? だから、うちのこたちがそれにはんのうしたんだよ”

「…………自業自得と言う事か「ちょっと待ったぁーーーーっ!!!!」……五月蝿い奴じゃの。何じゃ?」


 ヤレヤレと言った雰囲気のアムリナ…と言うかその場の全員。エアリード機能を持たないヤルバンは、大袈裟な身振り手振りと共に捲し立てる。


「被害者はオレでしょうが!! なのに何でオレが悪い事になってるんですか!!」

「……じゃから、お主がシノブに対して悪巧みしているからの事であるから、元を正せばお主が悪いんじゃろ」

「フッざけんな!! どいつもこいつも、オレよりそいつの肩を持ちやがって!! オレよりもそんなスライムの方が良いって言うのかよっ!!」

「「「「うん」」」」

「オマエ等何て嫌いだぁーーーーっ!!!!」


 何処かへ向けて走り出すヤルバンだが――


「――ふぼっふ!!」

「「「「「あっ」」」」」

(あっ)


――空から器用に木々の隙間を抜けて降りてきた巨大な鳥――フェズの下敷きになった。見事なまでのベストタイミング。狙ってやったので無いとしたら、彼は余程の星の下に生まれたに違いない。

 フェズはそんなヤルバンを気にも止めず、シノブの元へやって来る……ヤルバンは……まあ、生きているからOKで。


“おかえり”

「ごくろうじゃったの」

「ん」


……そして、全てを無かった事にする一同。エルフの村は今日も平和である。




   *   *   *


「――って! 終わらせて堪るかーーっ!!」


 黄昏時。ヤルバンは夕日の日差しの中、吠えていた。

 村外れのあんまり人が来ない場所。その視線の先には色取り取りのスライム達――メイジスライム達が勢揃いしていた。

 何故こんな所に居るのか理由はわからないが、これは絶好のチャンスとばかりに、ヤルバンは己の風魔術を放とうと構え――


「喰らい“ちょうでんじきりもみげりーー!!”――ほぶえっ?!」


――ようとした所で、(よこ)(つら)を思いっ切り強打されてブッ倒れた。

 頬を抑えながら視線を向ければ、そこには白いスライム――シノブが居た。


「何しやがるコラァッ!!」

(それはコッチのセリフ何だけどね……やっぱり来たよ、コイツ)


 内心で嘆息するシノブ。何でこんな村外れにメイジスライム達が居るかと言えば、()()()()()()()()()()である。

 何故そんな事をしたかと言うと――


“きみとはいいかげん、けっちゃくをつけようとおもって”

「――良く言った!! 決着付けたろうじゃ無ェかーーっ!!」


――喧嘩を売る為だったりする。

 幾らシノブと言えど、五月蝿い・しつこい・ウザいの三拍子揃ってるヤルバンに対してストレス溜まっていたので、ここらでいい加減発散しようとしたのであった。スライムだって怒る時は怒る。ましてや中身は人間。舐めたらアカンぜよ。

 ついでに言うと、折角育てたスライム達に害が及ばぬ様に、と言う理由も有ったりする。知らない所でコッソリ暗殺……コイツなら間違い無く殺る。

 そんな訳で、敢えてこんな場所にメイジスライムを集めて、ヤルバンを誘っていたのであった。


「喰らい“すらいむふらっしゅ”――眼がっ! 眼がーーっ!!」


 先手を取ろうとしたヤルバンが、逆に先手を打たれて目を抑えて悶絶する。

 その隙に、シノブは水属性の魔属石を使って水を生み出し、自分の身体を大きくする。大きさはそんなに無い。精々。直径1メートル(ほど)である。


“れっ~つ。こん〇~いん!”


 態々(わざわざ)、見る人も居ないのに光文字を描いた後に、自分の身体を平べったくする。

 すると、その上にメイジスライムが乗っかり、やはり平べったくなると別のメイジスライムが乗っかり……と言った事を繰り返し、ヤルバンの視力が戻った頃には――


“すらいむぴらみっど~!!”


――これ以上無い(ほど)にインパクトの有るモノが出来上がっていた……うん。確かに見た目インパクトは有るよ。インパクトは……

 ピラミッドと言うよりも跳び箱……カラフルだから、ひな祭りの菱餅(ひしもち)にも見えるその物体を前に、ヤルバンは気圧された様に一歩後ずさる。


「……相手に取って不足無ぇな」


……カッコ良い事言ってるが、相手がカラフル過ぎてシリアス感、皆無である。

 そんなヤルバンを無視してシノブは先手を取る。


“しゅーと”

「――ぬおわっ?!」


 描かれた光文字に反応して火弾・水弾・石弾・真空波・葉っぱカッターがヤルバンに殺到する。

 慌てて、身を投げ出す様に回避するヤルバン。しかし、スライム達の攻撃は続く。


“しゅーと”

「――のあっとー!!」


 再び描かれた光文字に反応して次弾が飛ぶ。森の中だからか、火弾の後に水弾が撃たれてちゃんと消火している安心仕様。

 最も撃たれてる方は回避に必死だが……


「――っ!! 調子乗んなコラァーーッ!!」


 逃げながらもヤルバンが何とか己の風魔術を放つ。しかし――


(甘い! 一輪車モード!)


――一番下のシノブが他のスライム達を乗せたままダッシュで避ける。五つのスライムを乗せているというのに、乗っているスライム達は少し揺れる程度で落ちたりしない。見事なバランス感覚である。

 そして、お返しとばかりにスライム達の猛攻は続く――


“きゃっち”

「――うおっ?!」


――急に伸びた草に足元を取られ――


“がーど”

「――チィッ?!」


――風魔術を土壁で防がれ――


“こーるど”

「――ぶぎゃっ?!」


――凍った地面に足を滑らせ――


“ぶらすと”

「――ほぶふぅ?!」


――圧縮した空気の塊に吹っ飛ばされ――


“ふゃいあー”

「――じゃあああぁーーっ?!」


――木に燃え移らない様に放たれた火炎放射から逃げ回り――


「ぜ~は~、ぜ~は~、ぜ~は~」

(ここまでだね)


――ボロボロ()つ息が上がった状態でヤルバンはブッ倒れていた。そんなヤルバンにトドメを刺そうと近づくシノブ。

 しかし――


「――掛かったな。喰らいやがれーーーーっ!!!!」


 突如身を起こしたヤルバンが渾身の風魔術を放つ。この近距離・このタイミングならば確実に命中すると放たれた圧縮空気弾は――


(ていやっ!!)

「……へっ?」


――次の瞬間。シノブが身体を思い切り弾ませて、トランポリンの様に乗せていたスライム達を真上に放り上げた事により、完全に空を切った。

 そして、綺麗に落ちて来て元通りに積み重なるスライム達。それを呆然と見つめるヤルバン。


「……そんなの有りかよ」

“ありだよ。しゅーと”

「はぶぅっ?!」


 為す術も無く一斉射撃をモロに喰らうヤルバン。流石に気を失った様である。

 それを見届けると、シノブは合体(?)を解除する。


(これに懲りたら、少しは大人しくしていて欲しいよ)

“ぜんた~い。せいれ~つ。しゅっぱつしんこ~う”


 そして理路整然とした一列縦隊で去って行くシノブ以下メイジスライム一同。

 後には、ヤルバン一人残される。










「――――覚えてろよ。このままじゃ……」

ご愛読有難うございました。


本日のモンスター図鑑はお休みです。

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