カーニバルである!ハメは外しすぎてはいけない
短いので二話同時投稿。こっちは二本目。一本目もどうぞ。
年末が近づくにつれ、執筆時間が短くなってしまうのは察して欲しい所です。
週一ペースは何とか維持してみせる!
日が沈みかけた黄昏時。ドワーフの街の最下層の広場にある土俵。その周囲に、この街のドワーフ、若者から老人まで子供を除いたほぼ全員が集っていた。
水を掛ければ湯気に変わりそうな程の熱気に包まれた広場。その中心の土俵には……白い楕円形の物体が居た。
“あ~。てすと、てすと。ほんじつはせいてんなり。ほんじつはせいてんなり。すらいむはさいじゃくなり”
……別に声を出してる訳では無いのに、そんなんやってどうすんだ? と、ツッこむ者は居ない。と言うか、そんなん気にしてられないと言うべきか。
“では、これより、だいいっかい『どわーふでいちばんつよいのはおれだ!』せんしゅけんをかいさいします”
「「「「「うぉーーーーっ!!!!」」」」」
シノブの宣言に、天にも響くかの如く大声量で答えるドワーフ達。中には鼻息荒いのまで居る。
“きめるほうほうは、みなさんすっかりおなじみの『すもう』によってです”
「「「「「うぉーーーーっ!!!!」」」」」
“いちいは、これよりすうじつにわたって、みなさんそうあたりせんでたたかってもらい、いちばんかちてんのおおいひととなります”
「「「「「うぉーーーーっ!!!!」」」」」
“ちなみに、みなさんにはとうぜんおしごともありますので、はりきりすぎてけがなんてして、おしごとにししょうがでたばあい、じょせいじんからのかみなりがおちます”
「「「「「………………」」」」」
先程までとはうって変わって静寂に包まれるドワーフ達。何を想像したのか、冷や汗を垂らしてる者まで居る。
“なお、ゆうしょうしゃには、うちのこをいっかげつ、かしだします”
「「「「「――家の子?」」」」」
“めいさいかいじょ!”
そうして、シノブが光学迷彩を解除すると、シノブのすぐ隣に別のスライムが現れた。
ドロドロッとした所は普通のスライムと同じだが――色が違っていた。そのスライムは無色透明だった。
皆の困惑した視線を受けて、シノブが説明する。
“かくてるすらいむです”
「「「「「……カクテルスライム? 何だ、そりゃ?」」」」」
“このすらいむがうみだしたえきと、ほかのものをまぜると、かんたんにおさけがつくれます”
「「「「「――っ?!!」」」」」
――瞬間。ドワーフ達の目の色が変わった。
獲物を前にした猛獣の様な目・標的を捕捉した追跡者の目・遺跡の中で財宝を発見した目。
……一言で言えば『ギラついた目』である。
“ではみなさん。せつどをまもって「うぉーーーーっ!!!!」じこ、けがのない「ウオォーーーーッ!!!!」すぽーつまんしっぷ「Wuoooooーーーーッ!!!!」”
(……毛先ほども聞いてないよね。君達)
呆れるシノブ。野獣と化した連中を止める術など最早無い。てか、止める気も起きない。
シノブはさっさと土俵から降りて、場を譲る。すぐに二人、土俵へと上がってきて相撲が始まる。
(……無事に終わって欲しいんだけど……)
――この後。全ての取り組みが終了し、優勝者が決定したのは良いのだが……参加者の8割が怪我を負う事となり、女性陣からの雷が大盤振る舞いで落ちる事になる。
“じかいは、けいひんをちがうのにしようかな?”
「「「「「それだけは勘弁してくれっ!!!!」」」」」
(…………必死過ぎだよ)
ご愛読有難うございました。
本日のモンスター図鑑。
――――カクテルスライム――――
スライムの亜種。無色透明の身体を持つ。
『アルコール分』を『一定量消化吸収』する事で変化する。
治癒液の代わりに、酒の原液を生み出す事が出来る。
果物の絞り汁等と混ぜると、手軽に果実酒を作る事が出来る。飲み過ぎにご注意を。
…ちなみに、シノブはこのスライムを生み出す為に、スライムを酒樽の中に直接ブチ込み、樽一つ分の酒を使った為。後日、それを知ったエルフ達に「やり過ぎじゃコラァ!!」と怒られたりしていた。(酒好き男性陣はその後コッソリ褒めてたりしていた)




