お見舞いである!粗品なんて送らない
短いので二話同時投稿。一本目。
年末が近づくにつれ、執筆時間が短くなってしまうのは察して欲しい所です。
週一ペースは何とか維持してみせる!
(う~~~~ん。どうしよう?)
エルフの村の、とある家の屋根の上。朝日を受けて輝く白い楕円形の物体――ホワイトスライムのシノブである。
朝の日課である体操を終えたシノブは、朝起きてからず~っと悩んでいた。
悩みの内容は、先日告げられた朗報――ユーフィの目が見える様になった事である。当然シノブも喜んだので会いに行こうと思ったのだが……手ぶらで行くのは気が引けたので、何か持っていこうと考えた――が。
(何を持っていけば良いのかな?)
祝いの品に何を持っていこうか、何が良いのか悩んでいた。
――品物? 隠棲してる種族に喜んで貰える物なんて、心当たりが無い。
――食べ物? 山奥なんで、持ってくのに一苦労どころじゃ済まない。
(……せめて、人間の姿になれれば、手作りの物をプレゼント出来るんだけどね~)
されど、今の自分はスライム。粘液状生物。料理も工作も出来はしない。
(……となると、今の自分で出来る事で喜んで貰うには…う~~ん)
考えるが、早々には浮かばない。そもそもスライムじゃ、出来る事より出来無い事の方が多いのだから、ある意味仕方が無いと言えるのだが……
しかし、そんな事で諦めるシノブでは無い。こうなったら、と前世の知識まで引っ張り出して何かないかと考える。
(…………あっ)
* * *
所変わって龍族の村。既に日も沈んだ刻限。ユーフィは自分の部屋でスォイル・エフィと共に待っていた。
「――それで、お父様。シノブさんは?」
今までは固く閉じられていた両の目蓋をしっかりと開き、誰も見る事の無かった青い瞳で、実の父親を見つめるユーフィ。
視覚を手に入れてからの彼女の生活は、文字通り色が付いた。こうして親の顔を見る事が出来るし、何より心が晴れやかになった。もう少し、もう少し時間を掛ければ、外に出る事も出来る――そんな気もしている。
全ては、あのスライムのおかげ。感謝してもしきれない。そんな彼が訪ねて来たと聞けば、ユーフィがやや興奮するのは仕方が無いと言えよう。
「イヤ。来るには来たんだけど……『贈り物があるから待ってて』と言って、どっか行ってしまったんだよ」
困惑顔で答えるスォイル。彼としても、急にやって来て急に去っていったシノブの行動に頭を捻らざるを得ない。
「……贈り物を取りに、戻ったという事かしら?」
エフィも首を傾げている。それなら最初から持って来れば良いのに……どういう事だろうか?
「取り敢えず、彼が戻って来るのを……うん? あれは?」
――と、スォイルが窓の外を指差す。
そこにはゆっくり宙に昇る大きな光の珠があり――
「「「――うわぁ……」」」
――空高く昇ると、光の珠は無数に弾け飛び、空中に巨大な華を咲かせた。しかも、弾け飛び小さくなった光の珠は徐々に色を変え、ゆっくりと消えていく。
しかし、消えてもすぐに、また次の光の珠が昇っていき、新たな華を咲かせる。
「……綺麗」
夜空に咲く色取り取りの大輪の華。決して、自然界では見られぬ幻想的な光景に、思わず時を忘れて見入ってしまう。少しでも、この光景を鮮明に記憶に焼き付ける為に。
――数分後。約20発の『花火』による夜空を背景にした催し物は、ユーフィ達だけで無く、それぞれの家で眺めていた龍族全員が無意識にしていた拍手の音で終わりを迎えた。
「――ははっ。流石にコレはたまげたね」
「ええ。凄い贈り物ね。ユーフィ」
「はいっ!」
良い意味での、予想外な贈り物に顔を綻ばす3人。彼が戻って来たら、どの様なお返しをしようかと考えつつ彼の帰りを待って――
「「「…………あれっ?」」」
――一向に帰って来ないシノブに、揃って首を傾げていた。
ちなみに、何故シノブが戻って来なかったかと言うと……
(誰か……へるぷみ~……)
……調子に乗って『花火』を打ち上げ過ぎた所為で、初めての魔力枯渇になり、『たれパンダ』ならぬ『たれスライム』となっていた。
その後。おかしいな? とスォイルが様子を見に来るまで、彼は一歩も動けずにいたのであった。
ご愛読有難うございました。
二本目もどうぞ。




