お礼周りである!……そんな顔しない
仕事先でインフル感染者が現れました。
皆さんも気をつけて。
“ただいま”
「「「「「……ハァッ?!!」」」」」
三日ぶりにドワーフの街に帰って来たシノブを迎えたのは……大勢の困惑した顔と叫び声だった。
……無理もない。たった二日で銀色が真っ白に変わるなど、誰が予想出来よう。ただでさえ珍しいシルバースライムが、見た事も無いホワイトスライムに進化してくるなど、夢にも思うまい。
「……オマエ、ホントにシノブか?」
“そうだよ”
「…………」
グレッコの問いに答えるシノブ。しかし、グレッコは半信半疑のままである。
「……何で、色が白くなってんだ?」
“いろいろあったんだよ”
「便利な言葉だな、オイ! ンな事言ってねぇで、キチンと一から説明しやがれっ!!」
ガー、と吼えて詰め寄ってくるグレッコ。周囲のドワーフ達も無言の圧力を掛けてくる始末。
(仕方無いな、もう~)
流 石に詳しく話すのはアレなんで、大まかな経緯を告げるシノブ。それを聞いた後、グレッコ達ドワーフ一同声を揃えて言った。
「「「「「何やってんだオマエ?」」」」」
(ボクに言われても困るんですけど?)
ちょっと複雑な家庭内の事情に首を突っ込んだら、結果として進化してしまっただけの話しじゃないか~、とシノブは思う。
「「「「「イヤ! 普通のスライムは他所の家庭内事情に首を突っ込まねぇし!!」」」」」、
律儀に声を揃えて返すドワーフ達。台本でも持ってんじゃないか? とばかりの見事さである。
“まあ。すぎたことをいってもしかたがないよ?”
「……オマエは……」
何故か疲れた様子で首を振るグレッコ。深~い溜め息まで吐いている。
「……タイミング良いんだか悪いんだか……」
“なにが?”
「エルフ達から連絡が来た。もう戻ってきても大丈夫だってよ」
(案外早かったね~)
もっと長引くと思っていたのだが、大丈夫と言うのであれば大丈夫なのであろう。
……となれば、ここは一旦帰った方が良いのかもしれない。主に子供達の為に……自分の為に。
“とりあえずは、いったんかえろうとおもう”
「そうか。まあしょうがねぇな。しかしそうなると……誰が相撲の行“ふぇず。とつげき”――どわーーっ! スマン! 失言だった! それはマジで洒落になんねぇーーーー!!」
描写されていなかったけど、帰って来たシノブの傍にずっと寄り添っていたフェズに頼むシノブと。恥も外聞も捨てて土下座するグレッコ。後一瞬遅かったら、本当に突撃されていただろう。
(それじゃ~。善は急げってね。頼んだよフェズ)
フェズの頭の上によじ登るシノブ。フェズはいつもの定位置にシノブが来てくれた事で嬉しそうである。
“じゃ~ね~”
「おう。いつでもまた来いよ!」
“うん”
グレッコ達が見送る中、フェズが羽ばたき空へ飛ぶ。あっと言う間に街が小さく見える程に空高く上昇して、シノブの誘導に沿ってエルフの森へ向けて飛んで行く。
(……さて。皆はボクを見て、どんな反応をするかな?)
* * *
“ただいま”
「「「「「………………」」」」」
久しぶりにエルフの村に帰って来たシノブを迎えたのは……大勢の呆然とした顔だった。
……無理もない。急に空からデッカい鳥が降りてきたと思ったら、頭の上には真っ白なスライム。その上、その見知らぬスライムがいつも通りに光文字を描いて挨拶してきたのだから、皆の頭がオーバーヒートしても可笑しくはない。
しかし、このままでは話が進まないと、アムリナが代表して話しかける。
「……シノブかい?」
“うん”
「……取り敢えず、経緯を語ってくれんかの? 一体、何があったんじゃ? 何で白くなってるんじゃ?」
再び経緯を話すシノブ。それを聞いて、やや呆れ顔になるアムリナ。
「……龍族の所に行っておったとは……しかも、進化してくる上にそれが新種。しかも白とは……とことん、こちらを驚かせてくれるの……」
“しんかにかんしては、ふかこうりょくだよ”
「それはそうじゃがの……寄りにも寄って白とは……」
溜め息を吐くアムリナ。無理もない……シノブの存在を教会の連中から隠す為に、ドワーフ達の所へ行って貰っていた。その間自分達は、明らかに取って付けたような名目で訪れた教会の連中の応対を、多種多様な腹芸等でいなしてきた。その甲斐あって、教会の連中にシノブの存在を悟られる事無く追い返す事が出来た。
……なのに、事が終わって帰って来たシノブは、更にヤバイ方向に変わってきている始末。本人の意図したものでは無いとは言え、流石にアムリナも愚痴の一つは零さずにはいられない。
“だいじょうぶだったの?”
「うん? ああ、大丈夫じゃったよ。そもそも、アチラが探しているのは『ヒト』。コチラが隠しているのは『スライム』。その辺りの齟齬が上手く働いてくれたからの」
そう言って笑うアムリナ。彼女がそう言うのであれば大丈夫なのであろう。シノブは信頼する。
「後の問題は――」
“うん。わかってる――”
そう言って両者が同じ場所に視線を向ける。そこには――
「アレをどうするかじゃ」“あれをどうするかだよね”
――エルを筆頭した子供達に纏わりつかれているフェズがいた。子供達は羽毛のモフモフ具合にご満悦。フェズの方は躾がちゃんと行き届いているので、子供達を振り解くといった事はせず大人しくしている。
「……アレ、まだ雛鳥じゃよな?」
“うん。すこしまえまでは、とぶこともおぼつかなかった”
「今はともかく、大きくなったら村には置いておけんぞ?」
“うん。わかってる”
その点に関しては既に調……ゴホゴホ、躾はしてあるので大丈夫と告げるシノブ。彼がそう言うのであれば大丈夫なのであろう。アムリナは信頼する。
「おお?! 何だこのデカい鳥は?! そうか今日は焼き鳥パーティーか!! 早速このオレが解体して“ふぇず。つっつき”――ふぎゃあぁぁーーーーっ!!!!」
――そしていつも通りに現れて、いつも通りに制裁されるヤルバン。ああ、変わっていない……
「一応、獣人達の所にも顔を出しておいた方が良いかもしれんの」
“りょうかい”
* * *
“ひさしぶり”
「「「「「……ハイッ?!!」」」」」
久しぶりに獣人の村にやって来たシノブを迎えたのは……臨戦態勢に入っていた大勢の困惑した顔と叫び声だった。
……無理もない。急に空からデッカい鳥が降りて来たので皆で身構えていたら、頭の上には真っ白なスライム。その上、その見知らぬスライムがいつも通りに光文字を描いて挨拶してきたのだから、皆が状況についていけなくても無理はない。
しかし、このままでは話が進まないと、ラダが代表して話しかける。
「……シノブか?」
“うん”
「………………」
何とも言えない表情で黙り込むラダ。周りの皆も同じ様な状態。流石に三度も同じリアクションとなると、落ち着けるシノブ。
……そして、やはりユユを筆頭した子供達に纏わりつかれているフェズ。羽を毟られそうになったので逃げ回り、子供達は面白がって追いかけている。
「……色々あった様だな」
“さっしがよくてたすかるよ”
「所でモノは相談なのが……」
“なに?”
「あの鳥に、他の村への荷物運搬を手伝って貰う事は可能だろうか?」
(…………)
ラダの提案に考え込むシノブ。
“ぼくがついていればたぶんだいじょうぶだけど、ちゃんとごほうびあげないと”
「それに付いては心配要らん。例の、熟成シャボントード肉が余っているのでな」
“ならだいじょうぶだね”
――これより後。度々獣人の村やエルフの村の近辺で大きな鳥モンスターが見られる様になったとか……
ご愛読有難うございました。
本日のモンスター図鑑はお休みです。




