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久しぶりの現状確認である!色々言いたくならない?

本日は二話同時投稿。

こっちは二話目。ただし、前話を見なくてもストーリーは繋がってます。

前話は自分にとっては、ちょっと蛇足かな? と思ってますんで。

(……気分、最悪……何が悲しくて、()()の自分の死を夢の中で追体験しないといけないのさ……)


 目覚めて早々、愚痴(ぐち)を零さずにはいられないシノブであった。

 気を取り直して、周囲を見渡す。取り敢えず、今自分が居るのはユーフィの部屋に間違い無い。最も、本人は居ないが。


(取り敢えず、自分の身体を確認しよ……今度はどう変わってるんだか……)


 ベッド横の小テーブルに乗っている小さな鏡を使って自分を見てみる。


(…………ハァ~~~~)


――そこには、()()()なスライムが写っていた、


(………………)


 シノブは鏡を前に、何とも()瀬無(せな)い気持ちになっていた。『青』から『緑』、『紅』を経て『銀』になった後には『白』。我が事ながら、何なんだと言いたくなる。

 (はた)から見ればぶっちゃけハッカ飴。こういう場合、次は金色とかもっとスゴイ色になるのではないだろうか?……本当に進化したのか? 退化じゃないのか?……シノブの悩みは尽きない。

――と、ドアが開いてユーフィが入って来た。目が見えないのに、慣れた足取りでベッドの方へ歩いて行く。


(あ~。ちょっと失礼)

「きゃっ?!」


 ベッドに腰掛けたユーフィの膝の上に飛び乗るシノブ。驚いて声を上げた後、手で触れてソレがシノブだとわかる。


「……シノブさん……ですか?」

[そうだよ]

「――やっと、目覚めたんですか」

[どれくらいたったの?]

「半日(ほど)ですよ」

(結構経ってるね……イヤ、短い方かな?)


 触れている手に直接文字を書いて伝えるシノブと、それを読み取って答えるユーフィ。


「取り敢えず、お父様達も心配していたので元気な姿を見せましょう」

[りょうかい]


 そうしてシノブを抱きかかえたまま部屋を出るユーフィ。やはり、目が見えないのに慣れた足取りで居間の方へ歩いて行く。


「――お父様」

「うん?――ああ、目覚めたのかい?」


 居間に入ると同時に声を掛けるユーフィ。掛けられたスォイルは振り向くと、腕の中に居るスライムを見て事情を察する。


“おはよう。それとも、こんにちわ”

「うん。ちゃんと目覚めてる様だね」


 虚空に描かれる光文字を見て判断するスォイル。出会って一日なのにシノブの事がわかっている様である。


「――で、君……自分に何が起こったのか把握してる?」

“しろくなった”


 端的に述べるシノブ。それしか言えない。それ以外何を言えと?


“これって、なんのすらいむ?”

「……わからない」

(はいっ?)


 スォイルの言葉に意表を突かれるシノブ。長~い寿命を持つ龍族が()()()()()


「いやね。私達龍族も、見た事も聞いた事も無いんだよ。真っ白なスライムなんて……」

“ほんとに?”

「本当だよ。仮に……ホワイトスライムと呼ぶけど、『新種』の可能性が高いよ」

(……スイマセン。それって前よりも人間達に見つかったらヤバイのでは?)

「ちなみに、白ってまんま光属性の色でもあるんだよね」

(ホントにヤバイじゃん!! 『教国』の連中に見つかったらどうなっちゃうの?!)


 何か、進化する(たび)に生き辛くなっていってる事実に、愚痴の一つも言いたくなるシノブであった。


「――大丈夫ですか?」

[なんとか]


 心配そうに聞いてくるユーフィに答えるシノブ……良い加減腕の中から開放してくれないだろうか?


「他に何か変わった事はあるのかい?」

“かくにんしてみるよ”


 スォイルの問いに答えて行動を開始するシノブであった。




――――スライム検証中――――


(何も変わってねぇ~~~~っ!!!!!)


 山間へと沈む夕日を浴びながら、シノブは内心でめがっさ叫んでいた。

 あれこれ検証してみたが、シルバースライムであった時と比べても何一つ変わっていなかったのである。身体に関する事も。溶解液に関する事も。魔術に関する事も。

 流石に、生命力の強い龍族達なので治癒液に関しては検証出来なかったが……たぶん、コッチも同じであろう。


(何の為に進化したんだか、わかんないよこれじゃ……)


 文字通りに黄昏るシノブ。ああ、夕日が眩しい……


(……夕焼け小焼で~♪――――人間って良いな~♪)


 何とも懐かしい歌を歌いながら帰っていくシノブ……現実逃避では無い……と思う。


(ハァ~……こんな姿見たら皆……()? あっ?!――)




   *   *   *


“というわけで、いったんもどろうとおもいます”

「あ~。確かにそういう理由なら仕方無いね」


 帰ってくるなり早々、要件を切り出すシノブ。

 内容は単純。一旦ドワーフの街へ帰ろうというのである。少なくとも自分の無事ぐらいは伝えておかなければ、色々心配させてしまう。

 元々、龍族を見る為に来たのだから、目的は達成されている。


「しかし、急に現れて急に去って行くね」

“ごめんね。つぎにくるときはゆっくりしていくから”


 言われる通りなので素直に謝るシノブ。考えてみれば一日しか経ってない。濃い一日である。


「まあ、龍族は長寿だし……気長に待つよ」

“そこまでまたせないよ”


 気軽に話し合う一人と一体。そんなやり取りを微笑ましそうに聞いているユーフィに、エフィが尋ねる。


「……ユーフィ、どうかしたの?」

「えっ?」

「さっきから、時折顔を(しか)めてない?」


 二人の会話を聞いて、スォイルとシノブもユーフィの方を向く。全員の視線を受けている事を感じたユーフィは、軽く顔の前で手を振って何でもないとアピールする。


「あの……たいした事じゃ無いですから……」

「「却下」」“きゃっか”


 一言でぶった斬る二人と一体。まさか、即答で返されると思っていなかったのか。ユーフィ若干引き気味である。


「さあ、観念して白状しなさい」

「そうよそうよ」

“そうだそうだ”


 目は見えずとも、その場に居る全員が心配そうな顔をしている事がわかるユーフィは観念して話し出す。


「実は……さっきから、目の奥が(うず)くんです」

「「(うず)く?」」

「はい。こんな事初めてで……」


 困惑顔のユーフィ。しかし、それは聞いていた方も同じである。


「……ちなみに、その(うず)きは何時から起こってるんだい?」

「本当についさっきからです。目覚めたシノブさんをここに連れて来てから、時折……」


 更に困惑を深める一同。あまりにも最近過ぎて見当がつかない。


“こころあたりはないの?”

「イヤ、正直な所――ユーフィ?」

「あっ……またです」


 シノブの問いに答えようとした所で娘の様子に気づくスォイル。若干、眉を寄せながらユーフィも正直に答える。


「うん? 本当にどういう事なんだろう?」

“う~~~ん”


 男二人。揃って考える中。エフィが手を上げる。


「ちょっと、いいかしら?」

「何だい?」

“な~に~?”

「シノブ君。光球を出してくれない?」

“いいけど?”


 いきなりの要望にやや困惑しながらも、言われた通りに光魔術でソフトボール大の光球を出す。

 それを見届けてからエフィはユーフィに尋ねる。


「ユーフィ。今はどう?」

「はい。(うず)いてます」

「シノブ君。今度は消してみて」

“は~い”


 光球を消すシノブ。そして再度娘に尋ねるエフィ。


「今はどう?」

「……消えました」

「……もしかして、さっきからシノブ君が会話の為に描いてた光文字に反応していたのかい?」

「ええ。たぶんそうみたい」

(お~~。パチパチ)


 見事な推理に内心で拍手するシノブ。しかし、まだ謎は残る。


“なんでとつぜん? それになんでゆーふぃのめが?”


 ユーフィに初めて会った時。その場にいたスォイルに返事する為に光文字を描いた時は、ユーフィは目の(うず)きを感じていなかった。なのに何故今は(うず)きを感じるのか?

 それに、目が(うず)く事は何を意味するのか? 


「……まさかとは思うけど……」

“なになに?”

「光属性って、()()は治癒の能力を持った魔術なんだよね……君、白くなった事で、それに目覚めたんじゃないかな?」

(……え~~)


 そう言えば、シルバースライムになってから初めて魔術を使える様になった時に、その事を聞いた覚えがある。

 最も、治癒液を生み出せる自分には必要無いからと忘れていたし、使えなくても問題無かったが……


(でもさ~)

“ぼくのまじゅつでゆーふぃのめがなおりかけてるの? ぼくすらいむでゆーふぃはりゅうぞくだよ?”


 生命力の強い龍族をスライムが治癒出来る――頂点に立つ種族を最下位の種族が治癒する……いくら光属性の魔術とは言え、何か無理がある気がする。


「あっ、それは少し違うよ。光魔術の治癒って、その生物そのものが持つ治癒力を高めるものだから……」

「この場合は、ユーフィ自身の治癒力をあなたの魔術で強めているのよ。だから、使い手云々(うんぬん)は関係無いわ」

(そうなんだ)


 二人の説明を聞いて納得するシノブ――と、突然スォイルが立ち上がる。


「こうしちゃいられない!」


 そして、そのままの勢いで居間を……家を飛び出して行く。それをポカンと見送るシノブ。


“どうしたの?”

「魔属石を取りに行ったのよ。それにあなたの魔術を記録させれば、ユーフィ自身の魔力で自分の目を治療出来るでしょう?」

(納得)


 完治するのに、どれだけかかるかわからない以上、その方法は正しい。もし、完治するのに数年とか必要だとしたら、その間ずっとここに居なければならないが……それは無理であろう。主にエルフや獣人の子供達の所為で。


「――あの……」

「どうしたの?」

「……治るんですか? 私の目……」

「ええ。可能性は有るわよ」

「……そうなんですか……」

「――もうっ! 泣きたいなら泣いて良いのよ? もう我慢しなくて良いのだから」

「――っ~~!!」


 娘を胸の中に抱きしめて優しく告げるエフィ。そして縋り付く様に声を出さずに涙を流すユーフィ。


(ボクが気を失ってる間に、距離が近づいたみたいだね)


 邪魔にならぬ様に、音を立てずに居間を出て行くシノブであった。




   *   *   *


(――で、何でボクはここに居るのかな?)


 日が沈んだ夜。シノブはベッドの中に居た……ユーフィの。

 さり気なく抱きしめられ、そのまま部屋に連れられ、気がついたら抱き枕となっていた。

 見事なまでの自然な流れ。シノブもビックリである。


「あの……」

[なに?]


 ユーフィの声に、抱いている腕に直接文字を書いて答えるシノブ。


「有難うございます。お父様とお母様に、本音を話す事ができました」

[いつのまに?]

「あなたが気を失ってる間に……あなたがホワイトスライムに変わり始めた時、私の声を聞いてお父様達が駆けつけたんですけど……その時に、涙の跡見られちゃいまして……」

(あ~~~~)

「それで、何があったんだって……根掘り葉掘り聞かれちゃいまして……」

[どうなったの?]

「二人共、泣きながら私を抱きしめてきて……それから暫く話し合いました。今まで言えなかった事とか色々と……」

[よかったね]

「はい。それで、お母様は久しぶりに一緒に寝ようと私を部屋に連れて行くし。お父様は、そんな私達を優しく見送ってくれました」

(お互いのシコリが取れて良かったよ)

「そして……あの、その……翌朝、シノブさんをそのまま放置していた事に気づきまして……」

(………………)


 わかる。その時の光景は見ていなくてもわかる。親子の絆がより深まった感動の光景だったのであろう。

――だから、自分は蚊帳の外だったのだから忘れられるのもわかる。わかるが……納得出来無い。理性は納得しても感情は納得出来ない。

 (ゆえ)に、不貞腐れても仕方が無い。


[じっかにかえらせていただきます]

「あああああ!! ごめんなさい! ごめんなさい!」


 腕の中からするりと抜けようとするシノブと、慌てて強く抱きしめるユーフィ。弱々しくとも龍族。抱きしめる力は強く逃げられない。


[じょうだんだよ]


 そう書くと、安心してユーフィの腕から力が抜ける。


「とにかく、有難うございました」

[きにしないで。こどものせわをするのはおとなのやくわりだし]

「……私、これでも50年以上生きてますけど?」

[()()()よりも()()()だよ。じんせいけいけんほうふなこっちのほうがおとなだよ]


 前世持ち舐めるな、とばかりに心の中でドヤ顔を決めるシノブ。ユーフィは苦笑い。


「シノブさん。人間だった時はどんな姿だったんですか?」

[だれもがふりむくびだんし]

「?! ふふっ。それは何時か見てみたいですね」

[まずはめをなおしてから]

「はい……そうですね……」


 そのまま自然と寝入ってしまうユーフィ。


(無理言わないでよ……)


 自分はしがないスライムなんだぞ~、と軽く愚痴ってシノブも眠りにつく。

ご愛読有難うございました。


本日のモンスター図鑑。


――――ホワイトスライム――――


スライムの究極種。

存在を観測された事が無いのでデータ無し。

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