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修羅場である!誰にも止められない

お気に入り件数150達成~♪

本当に皆様有難うございます。最後まで見捨てないで下さい。



その時のノリと言うか勢いで行った事を、後々見返すと「何だコレ?」となる事ってありますよね……

 冬の寒さも(やわ)らぎ、春の訪れも近い、とある一日。

 そんな季節の移ろいを感じる(みやび)な心は、今この場では不要の一言で切り捨てられる。それ程までに緊迫した雰囲気が漂っていた。


――対峙するは、幼き体躯の者達。

 されど、その視線に込められた決意と、その胸の中で熱く(たぎ)る想いは、決して大人達に劣るモノでは無い。

――さあ、この戦いを邪魔する者は居ない。

 言うべき事はお互い視線で語った。

 互いが互いを敵として認め合い、互いが互いとも己の勝利を望む。

 ならば戦え! 己が力を持って敵を打倒せよ! 

 勝利の美酒に酔えるは勝者の証! 敗北の苦渋(くじゅう)に塗れるは敗者の(むくろ)

 前者を望むなら勝利せよ! 後者を嫌うなら勝利せよ!

 己が勝利は己が手で掴むからこそ、何よりも甘美となる! この真理は、幾度(いくたび)の時を経ても不変!

 さあ、戦え! 勝利の為に!







   *   *   *


(……なんか、もんのスゴ~く大袈裟に書かれてるけど、実際はそんなモンじゃ無いからね。作者の突発的再発厨二病だからね。この物語は『ほのぼの』タグが付いてるからね。『進○の巨人』見た後のテンションで書いちゃってる所為だからね)


……()りげ無くメタ発言している主人公――シルバースライムのシノブ。

 そして、エルフの村の中にある広場で互いに睨み合う、エルを筆頭としたエルフの子供達と、ユユを筆頭とした獣人の子供達。


「「「「「…………」」」」」

「「「「「…………」」」」」


……何でこんな事になっているかと言うと、時間は少し(さかのぼ)る。

 今日は、定期的に行われている獣人達との交易の日である。(ゆえ)に、何時も通りに獣人達が馬車……イヤ、()車数台に畜産品とその他色々を乗せてやって来たのだが……何故か、ユユと獣人の子供達も一緒について来ていたのであった……何があった、トゥーガ。

 着いて早々、ユユ達はシノブを探し始めた。そして見つけたのが……シノブとスランポリン――スライムのトランポリン――で遊んでいるエル達であった。

 お互いが気づき合った直後、両者共に臨戦態勢に入った。

 そう、目と目が遭った瞬間敵だと気づいたのである。


――そして今に至る。


(……お互いにやる気満々。止めるのは多分……イヤ、絶対無理。そして何よりも――)


 シノブは周囲に視線を巡らせる。そこには――面白そうに遠巻きに眺める皆が居た。中には飲み物を用意している者・どっちが勝つか賭けている者まで居る。


(――誰も止める気無し)


 ハァ~ヤレヤレ、と内心で肩をすくめたシノブは、取り敢えず事情を聞く為に目的の人物へと移動する。エルもユユも気に止めない。そんな余裕無い。


“ひさしぶり。らだ”

「久しぶりだな」

「知り合いかの?」

“あっちでいろいろとせわになった”


 アムリナと一緒に居たラダと軽く挨拶を交わす。彼がここに居るのはわかる。今回の交易で来たのだろうから。わからないのは……


“なんでゆゆたちがここにいるの? だれがきょかしたの?”

「ああ。それはだな……」


 シノブの問いに、どこか疲れた様子で話し出すラダ。


「シノブに会いに行くと言って聞かない上に……厩舎に立て篭り……どうやって懐かせたのか……リーファントに乗って、村中を走り回り……そのままの勢いで門を……」

“うん。わかったからもういいよ。もういいからね”

「……大変じゃったの」


 遠い目で語るラダを労わるシノブとアムリナ。そんな一人と一体に、すまないと返して話を続けるラダ。


「何とか取り押さえる事は出来たのだが……そんな事があったのでは、流石に村長も考えざるを得なかったのだ……シノブ」

“なに?”

「定期的にこちらに来て貰いたい。そちらの事情も理解しているつもりだが、再び同じ様な事が起きるとなると……」

“うん。わかった”


 ラダの訴えに即答するシノブ。原因の一端が自分に有る以上、断る訳にはいかない。


「――始まったぞ」


 アムリナの声に視線を移すと、エル達とユユ達が衝突していた。身体能力で上回る獣人に数で対抗するエルフ。戦況は良い感じに拮抗していた。


「う~~む。やはり、子供でも個人では獣人の方が上か」

「しかし、巧みな連携に翻弄されているのも事実」


 子供達の争いを眺める一同。何時の間にか、ラダ以外の大人の獣人達も加わり応援している。


(頑張って~。傷ならボクが治すからね~)


……何だかんだ言って、結局見守るシノブであった。




――――子供達闘争中――――


 約30分後。決着は着いた。争った皆は、髪は乱れ、服も乱れ汚れ、所々に引っ掻き傷を付けられ、息を荒げて全員地面に倒れていた――そう、()()である。


“これってひきわけ?”

「……そう判断するしか無いのぉ。お主はどう思う?」

「こちらも異存は無い」


 シノブの問いに答えるアムリナと同意するラダ。それを聞いて子供達の手当てに動き出すシノブ。周囲で観戦していた連中は、良く戦ったと拍手喝采している。


「――と言う訳で、今回は引き分けじゃ」

「「「「「やだっ!!」」」」」


 手当てが終わり、立つのはまだ少し無理なので座り込んでいる子供達に結果を告げるアムリナと、それを認めない子供達。

 一番騒いでいるのがユユであり、一番睨んでいるのがエルである。


「しかし、それ以外に「ちょっと待って下さい!!」……何じゃ、ヤルバン」


 アムリナの言葉の途中で出て来たのは、何時ものバカ……もといヤルバンであった。

 獣人達はともかく、エルフ達は冷めた眼で見ている。今度は何する気だコイツ、と言いた気である――――が。


「この場はオレに収めさせてはくれませんか?」

「――?……いいじゃろう」


 今までに見た事の無い真剣な表情で言ってくるヤルバンに、アムリナ以下この場に居る全てのエルフが驚く。

 周囲の困惑など他所に、アムリナの許可を得たヤルバンが続ける。


「そもそも、今回の発端はそこに居るシルバースライムです。子供達はソレを賭けて争いました」

(ボクの意思を無視してね)


 内心でツッこんでおくシノブ。そんな事は知らずにヤルバンは続ける。


「しかし、結果は引き分け。しかも、両者共に納得はいってない」


 そうだ、とばかりに頷く子供達。


「かと言って、決着が着くまで争わせるのは危険です。何時かは大怪我する」


 確かに、と頷く大人達。


「そこで――」


 一言区切るヤルバン。皆が期待する中、堂々と、自信満々に告げられた内容に――









「――その原因であるコイツをブッ殺せば、もう争う理由も「ウラァッ!!」――ぶふぇっ!!」


――思わず手が出たのは、久々の登場、アーバン。飛び出して来た勢いのまま、右ストレートを叩き込む。

 しかし、そこで終わらない。コンボは続く。


「マトモな事を言うかと思ったらよぉ!! 何時もと変わんねえじゃねぇかっ!! さっきの真剣な雰囲気はどこへ行ったんだよっ!! ウソかっ?! フェイクかっ?! 飾りかっ?! 偉い奴にはそれがわかんねえのかっ?!!」


 言ってる意味が段々支離滅裂になっているが、やっている事は正確である。

 左ボディ(肝臓)から右フック(顎)、左フック(こめかみ)に続けて右アッパー(顎)、浮いた身体に左後ろ蹴り(突き刺す様に鳩尾(みぞおち))、トドメにジャンピングニードロップ(再び鳩尾(みぞおち))。惚れ惚れする程の見事な制裁コンボ。

 その後に子供達が寄って集ってタコ殴り。後にはボロボロになったヤルバンが残される。

 それを見ていた他の連中は、共通した思いを持っていた――少しでも期待した自分がバカだった、と。


「「「「「…………」」」」」

「「「「「…………」」」」」


……と、タコ殴りしていた子供達がお互いに顔を突き合わせている。

 そして――




   *   *   *


「「「「「わ~~!!」」」」」


 一緒になって遊ぶ子供達。昨日の敵は今日の友……と言うべきか。すっかり意気投合している。大人達は、皆揃ってウンウンと頷いている。

 ただし……


(結局、こうなるんだね……ハァ)


 エルフ・獣人、両方の子供達を面倒見なければならなくなったシノブは、内心で溜め息を吐いていた。

ご愛読有難うございました。


本日のモンスター図鑑はお休みさせて下さい……。

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