暗闇に潜むモノである!イヤ、そんな仰々しいモノじゃ無い
短いので複数同時に投稿。
思いついたネタによって文字数が変わる。
「くそぉぉ……」
すっかり夜も更けた刻限。エルフの村の外れで、ヤルバンは一人悪巧み……いやバカ巧みをしていた。
「誰だよ、魔属石何て渡した奴……アノ野郎を始末しづらくなっちまったじゃねえか……」
……本当に懲りない男である。やっぱりシビレないし、憧れない。
「村の外で……いや、それだと……かと言って……やっぱり……ん?」
一人でアレコレ考えている最中に、ふと物音が聞こえたので、そちらを向く。
しかし其処には、夜の木々と――一体の人形が落ちているだけだった。子供と同じサイズで結構な大きさだが、汚れやほつれが酷くみすぼらしい。恐らく誰かが捨てた物だろう。
ヤルバンは気にせず、再びバカ巧みに戻る。
「アイツが……その時に……予め……んん?」
アレコレ考えている最中に、再び物音が聞こえたので、またそちらを向く。
しかしそこには、変わらずに人形が落ちているだけである。
「何なんだよ? ったくよぅ…………あ゛?」
悪態を吐きながら、再びバカ巧みに戻ろうとして……気づく。気づいてしまった。
――あの人形……落ちていた場所が変わってなかったか?――
「……ハハハ……んな事有る訳……ヒィ?!」
再度した物音に振り向く。そこには人形が落ちている……ただし、さっきよりも少しだけこちらに近い所に。
「……目の錯覚だ……見間違いだ……オレの記憶違いだ…………であって欲しい」
――ヤルバンの視線の先。そこには、今まさに起き上がろうとしている人形の姿があった。
「…………」
あまりのショッキングな光景に声が出ず、ただ口をパクパクと動かす事しか出来無い。
人形は、起き上がろうとしてはバランスを崩して倒れるのを繰り返しながらも、ゆっくりと着実にヤルバンへと近づいて来ている。
――指なんて無い丸い手は、ハッキリとヤルバンへ向けて伸ばされている。
――目も鼻も無いのっぺりした顔は、確かにヤルバンの方を見ている。
自分の許容量を超えた事態に、遂にヤルバンの恐怖が限界を迎える。
「ぽげぎゃーーーーっ!!!!」
* * *
「……こんな夜中に大声出しおって。何事かと思って来てみれば――」
アムリナを筆頭に村の皆がやって来てみれば、そこには腰を抜かしてへたり込んでいるヤルバンと――
「――何があったんじゃ? シノブ?」
――人形の中から出て来たシルバースライムが居た。
「人形に何ぞ入って、何をしていたんじゃ?」
“じっけん”
「何の実験じゃ?」
“ひとへのぎたい”
「…まだ、試しておったのか。結果はどうじゃ?」
“うまくたてない”
「うん?……平衡感覚が無いから、バランスを崩しても上手く立て直せない? 歩くどころか立つのもままならない? なるほどのぅ…………で、何で此奴は悲鳴を上げたんじゃ?」
“ぼくもよくわからない。じっけんしてたらきゅうにひめいがきこえたから”
アムリナの問いにシノブも内心、首を傾げて答える。
……種を明かせば、シノブが実験していた所にヤルバンが後からやって来た。ヤルバンはシノブに気がつかず、シノブは人形の中に入ってたのでヤルバンに気がつかず、お互い気がつかないままでいた。人形がヤルバンに向かって来たのは、中に入っていたシノブが狙ってやった訳では無い……単に、進行方向にヤルバンが居ただけであった。そんな事とは知らずにヤルバンは自分に向かって来ていると勘違いした……以上である。
「……まあ、詳しい話は夜が明けてから聞こう。誰か、そのへたり込んでる奴に手を貸してやれ」
“うん”
「「「「「はい」」」」」
「……何か臭うぞ? お前?」
「ゴメン。ウ○コ漏らした」
「「「「「…………」」」」」
ご愛読有難うございました。
本日のモンスター図鑑はお休みです。




