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後処理である!ボク知らない

なんか最近パソコンの調子が思わしくない……

買い替え時かな?

まさかパソコンも熱中症とか言わないよな?

「うむむむ……」


 王都の中央に位置する、白を基調に造られた、この国の象徴だぜ、とばかりに見事な城――『王城』

 その城のとある一室で一人の男が唸っていた。白髪混じりの黄色の髪と口髭を持ったこの人こそ、人間の国の国王様である…………が。


「ぬううう……」


……目の下には(くま)が出来ていて、頬が少し()けていて、肌に潤いが無いのは歳の所為だけでは無い……ぶっちゃけ、碌に寝ていないのが良くわかる。

 どう考えても、休養を取るべきなのだが、そう出来ない事情がある……それは、今国王が座っている机に山の様に積まれた羊皮紙――処理すべき書類の山である。

 彼はここ数日寝る時間を削ってまで処理しているのだが……とても追いつかない。


「うぬぬぬ……」


 眉間に深い皺を刻んで唸っても、事態は好転しないし、何よりも投げ出す事は出来ない。許されない。

 この書類の山全てが、数日前に起きた『出来事』に関する物だからである。

――一般兵による違法奴隷の解放及び関係者の捕縛――

 『寝耳に水』なこの出来事は、文字通り寝ている間――真夜中に起こり、そして終わってしまった。

 翌朝、国王が起きた時には、奴隷にされていた子供達は既に保護され、関わっていた貴族と売買をしていた組織は既に捕らわれ、見つかった売買記録から、かつて関わっていた連中への追及も行われ、教会どころか王都中にまで一連の出来事が広まっている始末。

……それを聞いた国王が思わず現実逃避して、二度寝を決め込もうとするのも無理はなかった。


「ぐぬぬぬ……」


 やらねばならない事は多過ぎた。

 捕らえられた組織の全容解明、及びまだ捕縛していない者・捕縛を逃れた者の探索。

 保護された奴隷とその家族への対応。

 そして関わった・関わっていた貴族達の処分――これが大問題であった。理由は単純、国法において違法奴隷に関わった者は即『死刑』である。それだけ重い罪なのだから、当然その周囲の人間――親族もただでは済まない。

 親・子・兄弟等の親族が関わっていた所為で爵位や役職の剥奪・降格、財産や領地の没収・改易等の処罰をしなければならない者が後を絶たないのである。

……で、その結果が国の運営にまで波及している……そもそも、国王を補佐する宰相が今現在()()調()()()でここにいない、と言う事が現状を物語っている。大臣の中にも数名……その下となれば、どんだけ~な状況である。


「うぬ゛ぬ゛ぬ゛ぬ゛……」


 そんな訳で、現在政務等は上手く回ってない。要職に就いている者がいなくなるのに、その穴を埋める者もいない。他の人で補うのも、質でも数でも限界がある。

 苦肉の策として死刑の者は仕方が無いが、処罰の者に関しては自分が就いている役職を任せられる後継者を育て上げるまでの猶予を与えようとしている。当然、それが終わればすぐに職を退くのは決定事項である。


「ぐぬ゛ぬ゛ぬ゛ぬ゛……」


 その上、処罰する者だけでは無い。事を成し遂げた一般兵達には恩賞を与えねばならない。しかも、働きに見合った恩賞でなければ、事の成り行きを興味深く見ている平民達が納得しない。下手すれば暴動に発展するだろう。

 かと言って、騎士の称号やら爵位やらを与えれば、あまりにも突然の出世に既存の貴族達と軋轢が生まれるのは間違い無いだろう。下手すりゃ貴族街で血生臭い事が起きる。


「GuNuNuNuNu……」


 国内でもこれだけあるというのに、加えて国外的なものもある。

 教会――教国も今回の事に関わっているどころか、中心に近い所にいる。寄付金もそうだが、しばらくは教国の発言力は強くなるだろう。

 そして何よりも、獣人達には謝罪・賠償しなければならない。交易のレートも変わり、獣人達の畜産物の物価は上昇するだろう……しばらくは、没収した財産等を注ぎ込むでどうにか出来るだろうが、長期的には厳しくなるのは目に見えている。向こうがレートを元に戻してくれるのはいったいどれだけ先か……

……問題は山積みである。そう、この机に積まれた書類の山の様に……


「――ぬああああぁぁーーーーっ!!!!」

「――って?! お待ち下さい、父上ーーーーっ!!」


 突如、書類が積まれた机を卓袱台(ちゃぶだい)返しよろしくひっくり返そうとした国王を、丁度部屋に入って来た青年が慌てて止める。

 入って来た青年――第一王子は父親である国王にしがみつき必死に止めようとするが、国王の暴挙は止まらない。止められない。


「――っ! 仕方ありません! お許し下さい、父上!!」

「ぐはっ!!」


 止められないと判断した王子が実力行使で国王を止める……頬を殴った手がパーで無くグーな所が非常に気になるが……


「――はっ?! 余は何を?!」

「正気に戻りましたか、父上……」


 イっちゃってた眼が元に戻ったのを見て、安堵の息を吐く王子。

 最も、王子の顔も父親に劣らず目に隈が出来ていて、普段ならばイケメンな顔が非常に残念な事になっているが……このままでは王子も何時か逝っちゃう……イヤ、イっちゃうだろう。


「それで、よろしいですか? 父上」

「うむ。良くわからんが助かった」


 頬を撫でながら、椅子に座り直す国王。そして、王子もそんな父親に持っていた書類を手渡す。

 受け取った国王は、ざっと内容に目を通す。


「…………これが結論か?」

「はい。法院の者達とも話し合った結果。このあたりが妥当と言う事になりました」

「むぅ……」


 書類に書かれている事は、今回の件において処罰される人物の名前・処罰の内容及び、減らされる・没収される領地と財産等である。その内容に国王は思わず唸る。


「爵位や財産云々はともかく、これだけの領地が浮くのか……」


 減らされる・没収されるで空位になった土地が非常に多い。しかも、没収されるより減らされる方が多かった為、小さめな土地がアチコチに点在しているのである。


「……直轄領にも出来ぬし、他の貴族に与える事も出来ぬ……どうしたものか……」


 直轄領にしても、その土地には管理する者を置かなければならない……が、そんな余分な人員居る訳が無い。居れば自分達はここまで苦労していない。

 他の貴族に与えるのは出来ない、と言うよりもしちゃいけない。理由は単純、与える名目が無いのである。今回の件では、罰せられる貴族以外の貴族達は何もしていない。(ゆえ)に、褒美として与える事は出来ないし、何もしていないのに与えるなどすれば、後々の騒動の種になる事は間違い無い。

 『功績無しでも領地が貰える』なんて前例を造れば、今後浮いた土地が出来る度に貴族達が「くれくれっ!」と集ってくるだろう。下手すれば、陰謀・暗殺で領主を消して、浮いた土地を造って……と考えるバカすら現れるかもしれない。


「……土地の事に関しては考えが有るのですが……」

「うん? どうするのだ?」

「今回の件で活躍した者達に、爵位と共に与えるのです」

「…………」


 視線で先を促す国王。その顔はやつれていながらも、為政者としての顔になっている。


「どちらにせよ、今回の件では彼等には恩賞を与えねばならないのです。それも相応な物を……爵位と領地ならば、一般兵な彼等にとっては破格の物。これは他の者達にも示しが付きます」

「ふむ」

「そして、何よりも彼等をこの王都から遠ざけられます」

「……貴族達との衝突を回避する為か?」


 国王の問いに頷いて先を続ける王子。


「彼等は今回の一件で民衆にも支持されていますからね……王都に置いておいて、下手な事に巻き込まれては堪りません。それに、彼等の多くは貴族達に対して良い感情を持っていません。そんな連中に近づくのは彼等も嫌でしょう。与えた領地へ移ってもらいましょう」

「与える爵位も、領地を与えるのに必要だからであって、言うなれば形式的な物……中央での政治には関わらせないつもりか?」

「はい。彼等もその方が良いと言うでしょう」

「表面的には大出世。その実は左遷か……」


 国王の言葉に頷く王子。確かにいい案だと国王も思う。だがしかし、懸念事項が一つ有る。


「だが、領地運営に関してはどうする? 素人がいきなりやって出来るものでは無い事は知っておろう?」

「そちらに関しては、補佐できる人材を付けるしかないでしょう。ですが、直轄領にするよりかは派遣する人員を減らせるでしょう。あくまで補佐なのですから」

「……それでも、駄目だった時はどうする?」

「その時は、その失態を理由に領地を没収すれば良いのです。ですが、それはまだまだ先になるでしょう」


 そこまで聞いて、国王は王子の言いたい事に感づく。


「……()()()()か?」

「そうです。余程のバカか、騙され上手でも無い限り……若しくは予想外の災害等が起こらない限りは、暫くは大丈夫でしょう。前任の領主のしてきた事を引き継げば、1~2年は保つでしょう。その頃には、私達にも余裕が出来ている筈ですから、その時点で真っ当に運営出来ていればそのまま任せてしまえば良いし、駄目なら没収します」

「ふむ、補佐役の者に監視も兼任させれば可能か…………わかった、そうしよう。それと、与える領地はその土地出身の者が居たら優先してやれ。家族や知り合いが居るとなれば領地の運営を(おろそ)かにはせんだろう」

「わかりました」


 と、ここで二人して息を吐く。処理すべき案件の一つは片付いた……されど、書類の山は変わらずに、雄々しく聳え立っている。


「……報告によると、今回の件では裏で暗躍していた者がいるらしいと言う事だが……」

「……はい」

「……色々と言いたい事は有るが、その後の余や、他の者達の事も考えてほしかった……」

「……同感です……」




   *   *   *


(でも、そんなの関係無~い♪ でも、そんなの関係無~い♪ だって、ボクスライム~♪)


 王都の人間達の苦労など知らないとばかりに、悠々自適に街道に沿ってのんびり進むスライムこと、我らが主人公シノブ。

 現在彼は、ユユを獣人の村へと送り届ける一団の後を尾ける様に、姿を消しながら進んでいる。

 一応、万が一を恐れての事だが、今の所その心配は無い。


(~♪ ユユにはもうちょっとだけ、我慢してもらわないとね~)


 あの時、牢屋の中で事の成り行きを説明したシノブは、一緒には行けない事と自分の事は秘密にしておく事も伝えておいた。

 不承不承ではあるが、ユユも納得してくれた。最も、時々辺りをキョロキョロしているのは、自分を探しているのだろう……指摘したら「違うっ!」と言うだろうが……


(上手くいったんだけど、一つだけ問題が……どうしよ?)


 王都に向かう時とは違うのんびりとした旅路の中、内心で溜め息を吐くシノブ。

 事を成し終えた彼に残った問題――それは『時間』である。彼は既に予定していた滞在時間を()()()上回っている。

 つまり、彼の帰りを待っている人物からすれば……


(……3日……イヤ、5日ぐらいは離してくれないだろうな~)


 涙目()つ無言の訴えをするであろうエルの姿が容易に想像出来る。


(まあ、仕方ないよね~。甘んじて受けよ)




































   *   *   *


「報告は以上ですか?」

「はい」

「長きに渡って蔓延(はびこ)っていた悪を断罪する事がようやく出来たか……」

「それも重要ですが、より重要なのはこちらです……この件では裏で動いていた者が居ると言う事と子供達の事。間違い無いのですね?」

「はい。事が起きた数日前に保護された子供達は、(みな)傷が治療されていました。それ故、最初は違法奴隷だと気付けなかった様です……子供達も目が覚めた時に自分の身体を見て驚いていたそうです」

「……やはり『聖女様』か?」

「……治療に関してもそうですが、何より子供達を助けた人物を()()見ていないそうです。当時の記録によれば、聖女様は各地を渡り歩きながら治療を施していましたが、時には御身を狙われた事もあるそうです。そんな時は光魔術で御身を隠されて事無きを得たとか……」

「ですが、もし本当に聖女様ならば、何故ここにお出で下さらないのですか?」

「うん? ああ、お前勘違いしてるぞ? そもそもこの国は聖女様が造られたものでは無いのだからな」

「ええ。この国は、あくまでも彼女を慕う者達が彼女の死後に造り上げた国です。それ故、彼女自身がこの国をどう思っているのかはわからないんですよ」

「ですが!」

「ああ、お前の言いたい事は良くわかる。だが、それとこれとは話しが別だ。俺達は彼女の助けになりたいのであって、有難(ありがた)迷惑になるつもりは無い。それに、記録によれば彼女は亡くなられる3ヶ月前まで旅を続けていた程、一ヶ所に留まらない人だったらしい」

「そんな御方がここにお出で下さると思いますか? 間違い無く、留まる様に要求するであろうこの教国に?」

「それに、まだ『本物』か確認出来た訳では無いしな」

「…………では、私達はどうすれば?」

「まずは、全ての教会にこの情報を流せ。他言無用を徹底させてな。後、同時に『再確認』もだ」

「貴方は既に知っていると思いますが……各地に存在する教会、その本当の役割を……」

「はい。生まれてくる子供の確認。聖女様の生まれ変わりが現れた時に、すぐに保護出来る様に……」

「そうだ。そっちの再確認を急がせろ。確認漏れが無いかどうかを」

「はい。わかりました」

「……私は獣人達の方にも探りを入れようと思います。万が一と言う事も有りますから……」

「……無いとは言い切れないか……今回の件、獣人の子供も関わっていたしな」

「ええ。ですが、()()()()の種族が関わっていた場合はお手上げですがね」

「直接的な関わりが殆ど無いからな。仕方ないか……俺としては、末端の連中の動きの方が気になるが……偽物ならともかく、もし本物だったとしたら……」

「ええ。暴走しない様に目を光らせておきましょう」

「……個人的には、どちらであっても厄介なんだがな」

「……今のは聞いていない事にします」

「スマンな」

ご愛読有難うございました。


本日のモンスター図鑑はお休みです。

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