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続・お勉強である!コツは掴まないとわからない

再び、この世界に関する事を小出しします。


個人的に思うんですけど……イキナリ○○を使おうとして使えますかね?

 とあるエルフの村の中。とある家の、とある少女の部屋の中。朝日が差し込むその部屋の中で奇妙に蠢く物体――それは……


(1~2~3~4♪ 2~2~3~4♪)


……日課の体操をしているスライムな彼――シノブである。ブレないね君……


(終~了~。それじゃ、起こしてあげよ)


 そして、丸テーブルの上にある彼専用の寝床――大きな籠の中に布を敷き詰めたヤツ――からベッドへ移動して、寝ているエルの頬をつつく。


(あ~さ~、朝だよ~)

「――ん……んぅ……ん~~」


 (ほど)なくして、起きたエルがベッドの上で大きく背伸びをする。そして、彼に挨拶する。


「……ん……おはよ」

(うん、おはよ~)


 伸ばした身体をフリフリ振ってアピール。そして、エルは服を寝間着から普段着――身体にフィットした長袖の上着にスパッツの様に身体にフィットしたハーフパンツ――に着替える。

 その間にシノブは、伸ばした身体で器用にカーテンを開けている。


「――ん」


 着替え終えたエルと一緒に部屋を出てダイニングルームへ向かう。

――これが、この部屋での朝の一幕である。最も、時には抱きマクラの如く一緒に寝る事もあるが……涙目の子供には逆らえない……




――――みんなでお食事中――――


「「「「ごちそうさま」」」」

(ごちそうさま)


 朝の食事を終えて一息つく一同。ただし、スライムな彼の前には、お茶では無く木で出来た入れ物――卒業証書入れるアレみたいな形――が数本置かれている。


「それじゃ、お願い」

(うん、わかったよ)


 入れ物の中に治癒液を少しずつ注いでいくシノブ。この後、コレは『製薬所』に持って行かれ調合に使われる。

 本人的には、自分が死なない程度ならばいくらでも出せるので、この村に住まわせてもらってる以上当たり前の代価だと思っているが、この村の住人達からすれば、ここまで効果の高いモノを三食寝床だけで貰っても良いものかと頭を悩ましている……しかも、子供達の遊び相手もしてもらっているし……

 そういう訳で、この村での彼の存在価値は非常に高い……彼自身は気づいて無いが……


(はい。終了)

「――ありがとう」


 全ての入れ物に注ぎ終えた後、礼を言ったセムイルが入れ物を持って出て行く。それを見届けた後、シノブはエルと一緒に家の外へと向かう。何時も通りに子供達と遊ぶ為に。

……ただし、彼の上にエルが乗っかっているが……自分の上に女の子座りで乗っているエルを落とす事無く進む……スライ○ナイト? イヤ、銀色だからメタ○ライダーか?




   *   *   *


「「「「「またね~!」」」」」

「……ん!」

(バイバ~イ)


 順番に彼に乗せてもらって遊んでいた子供達と、昼食の時間が来たので別れて家に帰る。

――昼食後、眠たげなエルを部屋まで運んだ後、リビングルームで何時も通りに『共通文字』を教えてもらう。




――――スライムお勉強中――――


「――これで、共通文字に関してはオシマイじゃの」

“ありがとう”


 小一時間程の勉強を終えて、アムリナがそう告げる。彼も文字版で感謝を伝える――だけで無く、質問する。


“ききたいことがあるんだけど”

「聞きたい事? 何じゃ?」

“まじゅつについて”

「……そういえば、説明した事が無かったのぉ……では、続いて『魔術』について勉強するかの」


 そう言って軽く咳払いした後、アムリナは魔術について語りだす。


「まず初めに言っておくが、魔術を使う事自体は簡単じゃ。『魔力』と『イメージ』……この二つだけ有れば良いんじゃからの……」

(……それって、決まった呪文とか魔法陣みたいなモノは必要無いって事?)


 思っていたよりアッサリしていたので、ちょっと拍子抜けするシノブであった。


「……ただし、扱える『属性』は生まれながらに決まっておってのぉ。一人に一つか二つまでじゃ」

(…………少なっ!)


 思っていたより厳しいので、ちょっと驚くシノブであった。


「――で、扱える『属性』というのが『火』『水』『風』『土』『木』『闇』『光』の七つじゃ」

“それはどうやってわかるの?”

「簡単じゃよ。コレじゃ」


 言って、アムリナが自分の緑色の髪を摘む。


「髪と瞳の色でその者の『属性』がわかるんじゃ。『火』なら『赤』という具合に……『属性』を二つ持っておるなら髪と瞳の色がそれぞれの色になる――ちなみに『緑』は『木』じゃ」

(わかりやすいね~……ん? という訳は?)


 話を聞いて、シノブがふと気づいた事をそのまま訪ねてみる。


“それじゃこのむらのひとたちは?”

「そうじゃよ……というか、わしらエルフは皆、森に住んでおるからかのぉ……『木属性』じゃよ。じゃから皆の髪と瞳の色が緑色なんじゃよ。無論、中には『二つ属性持ち』で瞳の色が違う者がおるがの」

“かみのいろじゃなくて、ひとみのいろがちがうの?”

「うむ。『二つ属性持ち』の場合、その属性に得手、不得手があっての。得手の方が髪の色に出るらしい……そういった事を全て引っ括めてわしらエルフは『森の人』とか色々呼ばれておる」


 なるほど~、とシノブが内心で納得し――たのも束の間、新たな疑問が湧いたので尋ねる。


“でもカレリナさん、ひをだしてるよ?”


 確か、彼女は髪も瞳も緑色だったはず……しかし、台所で調理している時に、魔術で火を出して鍋を温めていたのを見た事がある。それはどういう事だろうか?


「それは、コレを使っておるんじゃよ――」


 そう言って、アムリナがそれぞれの指に嵌めていた複数の指輪の一つを外して、指輪に付いているモノ――紫色の石――をこちらに見せてくれる。


「――わしらは『魔属石』と呼んでおる。コレを持って魔術を使うと、その時に使った魔術が『記録』される。その後に、石に魔力を注ぐと『再現』される……つまり、火属性持ちがこの石を持って火を出せば、その後は誰でも魔力を注げばこの石から火が出るんじゃ。お主が見たのはコレじゃろう」

(あ~~、そういえば確かにあった)


 台所で見たガスコンロに似た物の中心部に、これと同じ石――握り拳大のやつ――が嵌め込まれてた。あの時、彼女はあの石に魔力を注いで火を出して、鍋を温めていたようである。


「お主には馴染みが無いじゃろうが……この石、台所だけで無くトイレや風呂にも使われておるぞ」

(あっ、そうなんだ。どうりで納得)


――そう、この村の家には全てトイレ・風呂が完備なのである。スライムな彼には必要無い設備なので詳細は知らなかったが、それならばこのファンタジーな世界に似つかわしくない設備にも納得がいく。


(ガスコンロ的なモノも水道的なモノも、この石と魔力があればOKなんだ…………エコだね)


 科学文明世界なら、喉から手が出る程欲しがるんじゃないかな~、などと彼が考えている間にもアムリナの説明は続く。


「――で、大抵の者は、自分の持っていない属性の魔術を記録した石を、こうやって身に付けておるんじゃよ」


 言いながら、指輪を指に嵌めなおすアムリナ。その指に嵌めている指輪それぞれが異なる魔術を記録してあるのだろう。


“そのいしはかんたんにてにはいるものなの”

「うむ、小石程の大きさのモノなら、そこらで普通に拾えるぞ……最も、大きいのは北の山岳地帯でないと採れないがの」

(……そういえば、最初に居た森でも時々見た気がする……この石)


 あの時はそんな石気にしていなかったし、知る術も無かったから仕方ないか、と割り切るシノブ。そして、話を戻す。


“まじゅつそのものにかんしてききたいんだけど? みずやかぜとかはわかるけど、きはどんなまじゅつなの?”

「木属性か……一言で言えば『植物を支配する』魔術かの……木・草・花等を武器とする事が出来る。例えば、葉っぱを硬質化させて飛ばしたり、木の蔓を鞭みたいに操ったり――」

(予想通りな魔術だね……)

「――地面に生えてる雑草を硬質化させて相手の足を串刺しにしたり、花粉に毒性を付与して漂わせたり、色々じゃの」

(……前言撤回。以外にエグい)


 説明の前半と後半で、感じた印象が正反対になってしまったシノブであった。


「まあ、今のはあくまで戦闘を目的とした場合の事じゃがの……普段は植物の育成等に使っておるがの」

(だよね~)


 どっちかと言うと、その方がらしいと感じられる魔術だと思うシノブ。そして、思った事を告げる。


“でもしょくぶつがないところじゃないとつかえないのはふべんだね”

「その通りじゃがの……そこは、試行錯誤を重ねてじゃよ。こんな風に――」


 言って、アムリナが腕を振るとローブの袖から鞭のような物が伸びる――初日にバカを吹っ飛ばした例の武器である。

……良く良く見ると鞭と言うには平べったく、腕に巻き付けてあるので包帯の様に見える。ソレの一部が解けて蛇みたいに縦横無尽に動いている……いや、動かしている。


「森に生えておる『メーリェンの木』の表皮を剥いで加工したモノじゃ。植物の一部じゃから木属性の魔術で操れる。しかも、火に耐性もあるから燃えん」

(へ~~……でも何だろ? コレと似たようなのを見たような気が………………あ~、あれだ。エジプトの……パピルス? あれも確か植物から作ってたからかな?)


……何故か、『縛れ! パピ○ス!』という言葉が頭の中に浮かんだが、即効で消し去るシノブ。


「確かに、木属性はちと不便じゃが型にはまれば強い……少なくとも、この森の中で負ける気はせん。それに、こういった道具も多くある。じゃから、決して弱くは無い」

“なるほどね……ところでさ”

「なんじゃ?」

“ぼくにはまじゅつはつかえるの?”


 と、ここにきて実は一番聞きたかった質問をする。魔術のある世界に居る以上、聞かずにはいられない。期待せずにはいられない。


「……………………」


……神妙な顔で黙り込むアムリナ。その顔を見て、ダメなのかと落ち込むシノブ。

 たっぷり、一分程経った後、アムリナが答える。


「……正直な所、わからん……この世界の全ての種族は皆、魔術を使える……しかし、モンスターに関してはマチマチじゃ」

“どうゆうこと?”

「モンスターの中にも、魔術を使うのはおるんじゃよ。本能的にのぅ……しかし、お主がそれに当てはまるかどうか……そもそも、シルバースライムはレアすぎて滅多にお目にかかれんのじゃ。500年近く生きてるわしでも、お主が初めてじゃ」

“……じゃあどうしたらいいの?”

「……自分の中にある魔力を感じ取れるか、じゃの……魔力が有るにしろ無いにしろ、それが出来んとどうにもならん……」

“どうやってかんじとるの?”

「スマンの、こればかりは個人の感覚じゃ。口での説明では伝えきれん……それさえ感じ取れれば、後はそれを内から外へと出す感じじゃ」


 アムリナの話しを聞いて、意識を自分の内側へと向けるシノブ。

――意識を集中し――瞑想に入り――心を穏やかにして――感情の波を平らに――自分の中の常識を頭の隅に追いやって――もう悟り開いちゃうんじゃね? というぐらいに深く潜った所で――


(――――これ?!)


――と、自分の中で何かを掴んだ感じがした。そして、ソレを一気に内側から外側へと解き放つ!


(――イっけえええぇぇぇーーーー!!!)


 心の雄叫びと共に内から生み出され、外へと解き放たれたソレは見事に形を成した――







――治癒液として……


(……あれ?)


 出たのは、お馴染みの治癒液……見事に治癒液、どう見ても治癒液、全然治癒液、完全に治癒液、とにかく治癒液……である。


(え~~と……もう一回)


 再び意識を自分の内側へと向け、掴んだ何かを外側へと解き放つ――


(…………何で?)


――けど、出たのはまたもや治癒液。


(……トライアゲイン)




――――スライム悪戦苦闘中――――


「……のう、今日はそのへんで止めておかんか?」

(………………)


 アムリナの提案に不承不承、賛同するシノブ……結局、魔術は一回も発動しなかった……

 イヤ、確かに自分の内側で何かを感じ取れるのだが、ソレを外側へ出そうとすると治癒液が出てしまう……何か、自分の中で歯車が噛み合っていない感じがする……


(何回やっても何回やっても上手くいかないよ……ハァ)


 内心で溜め息をつきながら、時間を掛けてコツを掴むしかないかと思うシノブであった。




……それから数日後。夕暮れ時に屋根の上で黄昏ている銀色のスライムが居たとか……

ご愛読有難うございました。


本日はモンスター図鑑では無く、植物図鑑


――――メーリェンの木――――


パッと見では普通の木。厚い表皮は簡単に手ではぎ取れる上に、10日程で元通りになる。

ただし、とても燃えにくい。火炎放射器レベルの炎でも表皮に焦げ目を作るのが精々。

ある人物が実験した所、溶岩の中に放り込んだらやっと燃えたとか。

成長がとても遅く、2メートル程の大きさになるまで10年近くかかる。

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